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五十嵐編
321.
しおりを挟むお風呂が沸き、五十嵐に支えられながら脱衣所へと向かう。
手足の痺れだけでなく、筋肉も極端に削られていて……少し歩くだけで、息切れと眩暈がした。
「風呂、一人で大丈夫そうか?」
「………うん」
何とか足に力を入れ、グラグラする身体を支える。壁に片手を付き、もう片方の手で服の裾を抓んで捲ろうとすると──
「手伝うよ」
見かねた五十嵐が、僕の代わりに服を捲り上げる。
中から現れたのは……いつの間にか付けられていた、数々のキスマーク。
透明な糊が張り付いて乾いたかのような、精液の跡。
「………うん」
何にもできない自分が、もどかしい。
……情けない。
「……ほら、手上げて」
「……」
「俺に寄り掛かっていいから」
「………うん」
五十嵐に身を委ねるようにして、両手を持ち上げる。
「……」
五十嵐の温もりと、五十嵐の匂い。
……別に、嫌いじゃない。
だけどもう、五十嵐とは、変な関係になりたくなんてない。
浴室のドアを開けた途端、湿度と熱気、籠もっていた湯気が襲い、直ぐに当てられてしまう。
一気に気力を奪われた後、頭が重くなって眩暈がした。
「……手、ここに付いて」
手首を掴まれ導かれたのは、浴室の壁。言われるままに両手を付けば、温度調節したシャワーを肩から背中に掛けられる。
「……」
久しぶりのシャワー。
項垂れれば、その一部の湯が顎先へと流れ落ちていく。
僕の背中や脇を、五十嵐の手のひらが満遍なく擦る。こびり付いた汚れまで、丁寧に洗い流すように。
「──!」
不意にその手が、僕の腰から臀部へと滑り落ち……薄い尻の谷間に、指先が差し込まれ──
「……こっち、見ないでくれよ」
「……」
「お願いだから……」
耳元で囁かれる声。
割れ目に沿って指が蠢き、シャワーで濡らした小さな入口をノックする。
ゆっくりと、侵入してくる指先──
「痛く、ないか……?」
「………」
洗うだけ……の筈なのに。
ナカに入った五十嵐の指が、ゆっくりと丁寧に動くせいで……
「──っん、」
やるならサッサと搔き回して、終わりにして欲しいのに。その仕草は、まるで挿入前の慣らしのようで……
「……っ、」
ザザ──ッ
性に対しての欲なんて、殆ど無かった筈なのに。心を許す人以外、絶対に……嫌だったのに……
あの時もそうだ。
五十嵐となんて、絶対嫌だったのに──身体が勝手に反応して、快感が簡単に掘り起こされて、僕を内側から壊していき……
ザ──ッ
……汚い……
誰にでも反応してしまう、汚い身体──ぷるぷると内腿が痙攣し、痛さを逃しながらも、快感を求めてお尻を突き出してしまう。
「………はぁ、」
要らない……
こんな、汚い身体なんて……要らない。
「──っ、!」
10
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