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しおりを挟む「……」
話には聞いていた。
けど、ここまで似ていたなんて……
母がアゲハを溺愛する理由を見せつけられたようで、胸がざらつく。
「達哉が生きていた頃の話、お母さんから聞いた事ある?」
僕の反応が、思っていたのと違っていたんだろう。テーブルに並べたプリクラと証明写真を拾いながら、男がさらりと聞いてくる。
「………いえ。母は僕を、嫌っていますから」
喉を詰まらせながらそう答えれば、男の手が止まる。
「どうして?」
眉尻を下げ、憂いを帯びる瞳。それを隠すように、口角を少しだけ持ち上げた微笑は、酷く寂しそうで。直視できず、左右に視線を揺らしながら瞳を伏せる。
「僕が産まれた時……交通事故に遭って、亡くなったから。
僕を見ると、その事を思い出してしまうみたいで……」
「……なにそれ」
クスクスッ。
突然、男が吹き出したように笑う。
「志津子さんって、前からオカシイ人だと思ってたけど。……そう」
「……」
それに驚いて視線を上げれば、口元に笑みを浮かべながら、集めた写真を元の場所に仕舞っていた。
「それじゃあ……今までずっと、可愛がって貰えてなかったんだね」
「……」
「もっと早く、さくらを引き取れば良かった……」
伏せられていた視線が持ち上がり、戸惑う僕を射抜く。
「……!」
その瞬間──幼い頃の出来事が、走馬灯の如く脳裏を駆け抜ける。
存在自体を否定され。全てを拒絶され。蔑んだ目で見られ。理不尽な理由で折檻部屋に閉じ込められ。その上、僕が大事にしていたものを容赦なく壊された。
それでも。母の気を引こうと、何度も話し掛けたり、明るく振る舞ったりした事もあったけど……
『お前なんか、産まなきゃよかった──!』
母との溝が埋まる事は、なかった。
「まだ言ってなかったよね。
僕は、達哉の弟。──君の『叔父』にあたるのかな」
「……」
「名前は、工藤若葉」
そう言った男性──若葉が身を乗り出して片手を伸ばし、僕の片頬をそっと包む。
「僕はね、……さくらが平穏な人生を送っていれば、それで良いと思ってた」
「……」
「だけど。そうじゃないのだとしたら……」
細くて綺麗な指。
いつの間にか濡らした涙の縦筋を、その親指がそっと拭う。
「僕と一緒に、暮らさない?」
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