私を抱いて…離さないで

真田晃

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第四章 天罰

118.

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寝静まった住宅街。
それなりに、人も灯りもあった駅前通りとは違って、闇に包まれた路地裏は何処かうら寂しい。点々と並ぶ外灯。足下だけを照らすそれが、かえってそれを助長しているような気さえした。

「果穂」

隣を歩く先輩が、久し振りに口を開く。
つられて隣を見上げれば、先輩がいつもと違う……何処か難しい表情をしていた。

「……やっぱ、聞いていい?」

外壁の蛍光灯が切れかかり、チカチカと光る安アパート。ゴール目前という所で、先輩の足が止まる。

「菱沼と、何があったか……教えて」
「……」

真剣な眼差し。
私の心の奥底まで見透かそうとする、真っ直ぐな視線。
うっかり合わせてしまえば……もう、逸らせない。

「……」

言えない。
例えどんな悪い噂があろうと、私の口から何かを語っちゃいけない。
噂は噂のまま……そっと蓋をして、胸の内に仕舞っておかなくちゃ。

「果穂……」
「──ねぇ、!」

私の肩を掴み、引き寄せながら顔を覗き込む先輩。その間に割って入る、突然の女声。
驚いて見れば、そこに居たのは──

「遅すぎなんですけど」
「……ぇ」

ポニーテールを揺らし、ポケットハンドで近付く──実の妹。





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