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第一章 初恋の人
6.
しおりを挟む──まるで別世界。
全てが眩しすぎて、目が開けられない。
顔を上げられない。
……合コンの時よりも、居心地が悪い。
「……」
L字型の革張りソファの中央に座った大山は、斜向かいの席に代わる代わるやってくるホスト達と盛り上がり、始終会話を弾ませていた。
私は……と言えば。
話し掛けられはするものの、上手く返せなくて。結局、大山が全ての会話を回収する始末。
大山さんも私も、まだ19歳。
アルコール類の提供は法律で禁止されている為、ソフトドリンクがそれぞれの前に置かれている。
緊張のせいか。やたらと喉が渇き、5分も経たないうちにグラスが空になってしまった。
仕方なくテーブルに戻すと、それがスッと静かに目の前から捌けられる。
テーブルの端に置かれていたジュースが注がれ、また目の前にスッと出される。
「……話すの、苦手?」
「え……」
ドリンクを用意してくれたホストが、私に話し掛けてくる。彼はソファの端にある丸椅子を引き寄せて座り直し、私の顔を覗き込む。
短髪の黒髪。耳にはリングピアス。
綺麗な輪郭をした目。色素の薄い瞳。くっきりとした二重瞼。幼さが残る小さな顔。
その顔は……何処か、初恋の人の面影があった。
「俺も、実は苦手」
綺麗な形の唇が動く。
「……人見知りする方だから、何話していいか解んなくて」
ははっ、と声を出して笑う彼の目元には、小さな笑い皺。
人懐っこくて愛嬌のある笑顔。
パッと周りを明るくさせるのに、陽キャには決して見えない。
「初めてテーブルに付いた時、俺ね、作法の事で頭がいっぱいになってて。……ガチガチで。
で、先輩に突然、『美麗くんの……』 あ、|美麗(ミレイ)って、俺の名前ね。
『美麗くんの、すべらない話~』って、無茶ぶりされてさ。咄嗟に出たのが、ガキん頃入ってた、施設の話」
──施設
ドク、ンッ……
心臓が、大きく跳ね上がる。
その直ぐ後、ドクドクと全身が脈打ち、指先が小さく痺れる。
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