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しおりを挟むガヤガヤガヤ……
白川の手を握り、人々の流れに逆らいながら公園を後にする。
カラン、カラン、カラン、……
どれ位歩いただろう。
下駄の乾いた音が、辺りに響いて良く聞こえる頃には、人気のない暗い場所まで来ていた。
一面に広がる田んぼ。
普段から人通りのない、物寂しいあぜ道。その道を挟んだ田んぼの反対側には、水路と雑木林。長い事手入れがされていないんだろう。狂ったように草木が生い茂っている。
風が消え、肌に纏わり付くような湿気でむんとする。
ぼつん、ぼつんと立つ、心許ない外灯。ひとつ向こうの外灯が切れかかり、不規則に点滅していた。
夜空に浮かぶ半月と満天の星。見上げた視界にこれらが無かったら、きっと怖くて足が竦んでいただろう。
遠くから聞こえる祭りの音は、足元で聞こえる蛙の合唱にかき消されてしまいそうだ。
「蛍、見たことある?」
肩を並べ、田んぼ側を歩く白川に目をやる。
「この気候なら、見られる筈なんだけど……」
そう呟き、白川から田んぼへと焦点を合わせれば、白川が此方に顔を向けたのがぼんやり見えた。
「こんな……何にもないド田舎だけど。
でも、だからこそ。この時期に蛍が見られるのは、結構自慢だったりするんだ」
「……」
「……あ。ほら、あそこ」
白川の前を通り、田んぼの端に立って指を差す。まだ背の低い、稲の葉と葉の間からふわりと浮かぶ、黄緑色の小さな光。
光っては消え、消えては光る。
その幻想的で儚い光に引き寄せられたのか。カラン、と下駄を鳴らし、白川が僕の隣に立つ。
「……綺麗だろう?」
「……」
「人魂みたいだ、って言う人もいるんだ」
ふわっと高く上がると、僕の前から白川の前へと舞い移り、白い甚平や白い鎖骨を黄緑色に染める。
「……白川」
新たにふわりと立ち上る光を見ながら、ぼそりと呟く。
「お前、何でここに来たんだよ……」
それまで抑え込んでいた感情が、静かに溢れ出す。
どろどろと、マグマのようにドス黒い感情。僕の心をじわじわと飲み込み、笑顔の仮面を焼き溶かしていく。
「……」
なのに。何も感じないんだろうか。
白川は相変わらず、飄々とした表情を浮かべ、何も答えない。
「──何でだ!!」
ガッ……
その態度が、僕の感情を逆なでる。
直ぐそこにある束ねた銀色の髪を、思うより先に掴んで引っ張り下げた。
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