蛍火

真田晃

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51.身代わり

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「………なぁ、」

ドカッ。
突然頭上で声がしたかと思うと、僕を奥へと追いやった男が、空いたスペースに腰を下ろす。

「その話、ちょっと詳しく聞かせろや……」

後ろでひとつに束ねた、ツーブロックの長い黒髪。痩せ型。面長で狐目。黒地のTシャツの袖口から、チラリと見える刺青。
反社を匂わせるその男と目が合い、一瞬、何が起きたか理解できない。

「誰だ、お前──」
「……俺? 俺は、黒川剛志と溝口啓造の同級生だよ」

僕の代わりに先生が警戒する声を上げれば、狐目の男が腰を浮かせ、ズボンのポケットから何やら取り出す。

「一応フリーのジャーナリストやってる、横峰正義せいぎだ」

少しよれた名刺をテーブルに投げると、他所のテーブルから拝借した灰皿を乱雑に放り、悪びれる様子も無く煙草に火を付ける。
正義──名前とは正反対の風貌に、滑稽さを覚える。

「……なぁ、お前さ。こーいう話、知ってっか?」

咥え煙草で名刺を元の場所ポケットに仕舞うと、ソファの背もたれに寄り掛かり、通路側に投げ出すように足を組む。

「容疑者″kei″は、SNS上で所謂『駆け込み寺』を運営している。……大人しくて何処にも居場所のない、自殺志願者の若者を見つけては、彼等に優しく声を掛け……駆け込み寺へと勧誘し、居場所を与えている。
″kei″は彼等にとって、救いの″神″そのもの。
その小さな世界で崇拝され、神格化された″kei″は、もう一つの顔を持っていた」
「……」
「今から15年程前。″kei″は、お気に入りターゲットの男児にプライベートアドレスを密かに送り、自分が特別であるという優越感を与えた。
彼の場合、父親からの暴力に怯え、学校でも苛めを受けていたらしい。その相談に乗る流れで、最もらしい理由をつけ……例えば、怪我の具合を知りたいとか何とかヌカして、男児の顔写真や全裸写真を送らせている」
「……」
「『僕と、本当の家族になろう』──″kei″からのメッセージに心酔したその男児は、周囲の誰にも告げずに、リアルで″kei″の元を訪れ……」
「……」
「──と。まぁ。ここまでが、世間に広く公表されてる情報だ」

ふぅー、と白い煙を吐き、灰皿に灰を落とす。

「その″kei″が管理する『駆け込み寺』だが、一時期、この村役場のパソコンから操作された形跡があったんだよ」
「……、!」
「誰のだと思う?」

再び咥えられる煙草。数秒間、その先端を燃やしながら、赤い炎が明るく輝く。
フーッと白い煙を吹き上げた後、得意気な表情に変わった横峰が、片肘をつき小山内の顔をじっと見据える。


「……『溝口』の、からだ」


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