蛍火

真田晃

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「ムショ帰りの黒川は、昔の知り合いが経営するガールズバーを訪れ、そこで出会った若い店員の女性と意気投合。二人は直ぐに、親密な関係となった。
理由は、溝口の時と大して変わんねぇ。……元妻の真奈に、顔や雰囲気が似ていたからだ」
「……」
「しかし、ガキが出来ると、女は黒川にアッサリ捨てられた。子供を出産後、何の因果か……この村に引っ越してきた」
「……」

……何だろう。
胸が、ざわざわする。
胸の辺りの布地を掴み、大きく息を吸って吐く。

「黒川光の一件で、教員職を退き、村役場の役員として働いていた溝口の前に、子供の手を引いた真奈そっくりの女が現れた」
「……」
「だが、その頃にはもう、女性への興味は無かったようだ。
きっと、忘れられなかったんだろうなァ。筆下ろしの相手である、黒川光の味が……」

「──やめろっ!」

眉間に皺を寄せた先生が、一喝する。
しかし、失言した横峰に悪びれる様子はない。

「おっと、これは失敬。
……つまりは、だ。興味の矛先が向いたのは、彼女の方ではなく──その息子だ」


コト……
語りながら取り出した携帯を、親指で操作した横峰が、僕の目の前のテーブルに置く。

高鳴る鼓動。胸のざわめき。
それらが、次第に大きくなっていく。
不安を抱えたまま怖ず怖ずと、その携帯の画面を覗き込む。

「……」

煌びやかな照明。華やかな店内。
カウンターを挟み、顔を合わせて談笑していたのは──派手なメイクに、肌を大胆に露出させた若い女性と、見るからに普通ではない雰囲気を醸し出した、オールバックに黒スーツの男性。
震えてしまう手を伸ばし、二本の指を使って画面をピンチアウトすれば、拡大された女性の顔は──僕の、母。


「………黒川、剛志……!」


その画面を覗き込んだ先生が、苦虫をかみつぶしたような顔で呻く。



「………ぇ……」


え………

……待って。
僕の本当の父親は──黒川くんの、お父さん……?


……それじゃあ……
僕と、黒川くんは……



半分血の繋がった、兄弟───



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