死にたがりな悪役令嬢

白湯

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〜第3話-2*〜

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ーNo side

 俺の声に振り返りもせず、遠ざかっていく姿。
 今まで1度もそんな事なかったのに。

「恐れながら王太子殿下、アルベルティ公爵令嬢にあのような無礼は赦されません。どれほどエクスタリア家に貢献なさっているか、分かっておられるはずです」

 ……分かっている。それこそ何度も何度も言われた

 アルベルティ公爵家は、王となりうる権力を持ちながらもエクスタリア家にずっと遣えている一族である事。それこそ、我々王族と近しい関係だ。

『初めまして。アメリア・アルベルティです』
『ロナルド、この子がお前の婚約者だ』

 たどたどしい挨拶に、ふわふわな淡いピンク色の髪をした少女。父からそう紹介され少し心が踊る。しかしその子の側には憎き男が立っている。
 以前剣術の試合が開催された時、為す術なく負けてしまった相手。

 それからも何度か戦う機会があったが、どうしても勝てなかった。たった2歳差なのにそれが悔しく、剣術以外にも勉学も頑張るが勝てず、以降出来損ないの王子、等不名誉な声を王宮でも耳にするようなった。

 それからは、悔しさから関係ない婚約者に当たってしまっていた。
 アメリアは何も言わないから…それに甘えきってしまっていたのだ。

「分かっている…謝罪する。追いかけるからお前達は付いてくるな」

 教場に戻ったかと思い、立ち去っていった後を追いかけると、少し離れた茂みから小さい呻き声が聞こえた気がして、近寄ると横たわるアメリアがいた。

 食事中は全く気付かなかったが、顔色が青白く魘されているようだ。
 それに、なんて格好で寝ているのだ。

 どうするか悩み、取り敢えず声を掛ける為、手を伸ばすと背後より声を掛けられる。

「これは、これは。崇高なるエクスタリア殿下ではありませんか。我が妹になにか御用ですか?」

 声は普段通り柔らかく微笑んでいるが、鋭く俺を睨み付けるその瞳。1度も勝てる事が出来ない、大嫌いな男がそこに立っていた。



 相手を牽制しながら、アメリアに目を向ける
 ·····やはり顔色が悪いな。朝食もあまり食べていなかったからな。

 それにしても……なんて格好で眠っているのだ。
 襲われでもしたらどうするつもりなんだろうか、この姫君は

「……どうしてお前がここに」

 私をキッと鋭く睨み付ける、昔から少しも変わらない敵意に満ちた瞳。
 取り敢えずアメリアのこの姿は、この者にはみせたくない。

「私もここには入れますからねぇ。まぁ、それは殿下もご存知でしょう?ーーそれより、妹から本日話がいっているかと…後日父から詳細は陛下に伝わるでしょうが。それを踏まえて、殿下はどうしてここに?」

「──ッッ、その話なら承諾していない」

 複雑そうな表情をする男を無視し、上着を脱ぎアメリアに掛け、そのまま横抱きをして抱き抱える。

「王太子殿下…この子が貴方を愛してる間は勿論我慢出来ます。この子の好きなように、自由に生きるよう支援するのが私の役目ですからね。ただ、この子を傷付ける事があれば”俺”は貴方を許せなくなります。お忘れなきよう」

 内心イライラが止まらない。アメリアのこの姿をみたというだけで正直不愉快だ。

「……今回はこれで失礼する」

 そう言うと案外素直に去って行った。この場を去ろうと思ったが手間が省けたな。
 木にもたれかかって座り寝かせたアメリアの髪を梳く。全くこのおてんば娘は、心配事ばかり増えてしまう一方だ。

「もっと…監視の目を増やすべきか」

 なんて思っていると、魘されているのか徐々に呼吸が荒くなり、何か言っているようだ。

「……めんなさい、ごめんなさい」

 ポロポロと頬を伝う涙。苦しそうな謝罪の言葉に胸が締め付けられる。
 ……一体なんの夢をみているのだろうか。

「アメリア…泣かないでおくれ」

 流れる涙を指で拭う
 少しすると、うっすらと目を開き誰かの名前を呼ぶ

 …誰だ?聞いた事も無い名前だ。

 すると涙を流しながら愛おしそうに、俺の頬に手を伸ばし触れる熱い手の温もり。触れられた所に熱が籠る。

「貴方を愛してる。……貴方を愛してしまって…ごめんなさい」

 なんだ…王太子と婚約破棄したのは好きな人が出来たからなのか。

ーー嗚呼、この子にこんなに愛される男が心底羨ましいと思うと同時に、なんとも忌々しい存在だろうか。
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