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転生〜統治(仮題)
危険な女神
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カイル王国の王都から少し離れた所で立ち止まると、ルークはカレンに連絡を取る為に通信用魔道具となっている指輪に魔力を込める。そのまま少し待っていると、カレンから返事があった。
「どうしました?」
「カレンに頼みがあるんだけど、今って時間ある?」
問題無いとの返答を受け、ルークは事情を説明する。一通りの説明を終えると、カレンが口を開いた。
「事情はわかりました。それで、私は何処へ行けば良いのです?」
「え?あそこは確か・・・ルーメルっていう街だったかな。知ってる?」
「すぐ近くですね。それでは現地でお会いしましょう。」
現地集合と言い放ち、一方的に通信を切られてしまった。女性を待たせる事が嫌いなルークは慌てて転移しようとするが、自分の立つ場所に気付いて取りやめる。
「ここで転移したら丸見えじゃん。全力で森に向かうか・・・。」
警備の観点から、カイル王国の王都近くに森は無い。少し離れた場所にはあるのだが、ルークは走りながら自身の認識を改める。
「少し離れたって言うけど、徒歩で30分は少しじゃないよな・・・。全力で走ったら数分ってのもなぁ。最早人間じゃねぇ・・・って人間じゃなかったか。」
くだらない事を考えながらも、あっという間に森へと到着したルークはすぐに転移する。そして目の前にカレンがいる事に驚くのであった。
「うおっ!?ってカレンか・・・。」
「すみません。目印を見つけたものですから、ここで待っていました。それで、この場所に地下道を作るのですか?」
カレンに問われ、少し考える。ここだと街から距離がある。だが他国と繋がる道である以上、街に近すぎるのもマズイかもしれない。その辺の距離感が、ルークにはわからないのだ。という事で、素直に聞いてみる事にした。
「街との距離って、ここが最適だと思う?」
「どうでしょうか?ただ・・・我々の認識をアテにするのは間違いだと思いますよ?」
どうやら世間一般とズレている実感はあるようだ。そんなカレンに関心しながらも、どうすべきか再度問い掛けてみる。
「う~ん、困ったね。ルビアには何も言われなかったしなぁ・・・。」
「目印としての穴を開ければ、あとはドワーフが何とかするのではありませんか?」
「あ!それもそうか!!流石はカレン、頼りになるね。」
すっかり忘れていたが、別に出入り口をオレが作る必要はない。そこはプロに任せた方が安全安心というものだろう。早速取り掛かろうとすると、カレンから待ったがかかる。
「すみませんが、私に任せて頂けませんか?」
「別にいいけど、どうかしたの?」
「近頃は送迎ばかりでその・・・運動不足と言いますか・・・。」
その言葉で納得した。カレンの仕事と言えば、ほぼ皆のタクシー代わりである。いくら女神と言っても、お肉はついてしまうのだろう。おデブな神もいるって話だったし、カレンが例外という事も無いと言う事か。
「それならカレンに任せるよ。折角だし、頼まれた魔物退治もする?」
「いいのですか!?」
オレの言葉に、カレンの瞳が輝いた。余程気にしていたのだろう。たまには運動する機会を与えた方が良さそうなので、頷きを返した。するとカレンは満面の笑みを浮かべて歩き出す。
しかし、冷静に考えてみるとおかしい事に気付く。魔法で穴を開けるのに、運動不足がどう関わるのか理解出来ない。声を掛けようと思ったのだが、真剣な表情で腰から剣を抜く姿に息を飲む。
考えてみよう。1メートル前後の剣で、距離2、30メートルの穴を開けられるとは思えない。シャベル代わりに使えるとも思えないので、益々カレンの行動の意味がわからなくなる。
当のカレンは、顔の横に剣を構えている。あの姿勢は刺突だろう。いやいやカレンさん、ちょいとお待ちなすってくれやせんか?いくらなんでも、それは非常識過ぎるでしょ。
「はあぁぁぁ!!」
カレンの掛け声に、オレの思考は中断する。見たままを伝えると、カレンは地面に対して斜めに剣を突き出した。どう見ても地面には届いていない。それなのに次の瞬間、想像も出来ないような光景が飛び込んで来る。
ーーズドーン
轟音に驚きながらカレンの足元を見ると、直径10メートル程の綺麗な穴が開いている。おかしい。いくらなんでも、それはおかしい。だが、現象には必ず理由があるはず。必死に考えていると、カレンが不吉な声を上げた。
「あ・・・。」
「あ」って言った?言ったよね!?それって予想外の結果が出た時に言う言葉だよね?振り向いたカレンの表情に嫌な予感がして、全力でカレンの横に移動する。そして足元の穴を見る。結果、当然のように言葉を失う。
「やりすぎちゃいました。・・・てへっ。」
「・・・・・」
オレは何を言えばいいのかわからなかった。目の前に広がる光景に思考が追い付かない。カレンの『てへっ』の可愛さにも。どちらも経験した事の無い光景であった。
「ルーク?・・・どうかしましたか?」
「・・・はっ!?ごめん、カレンの可愛さに見惚れてた。」
「え?そ、そうですか?改めてそう言われると・・・」
オレの言葉に、カレンは頬を赤らめてモジモジしている。とりあえず、これでこの女神は大人しくしているだろう。その間に状況を把握しなければならない。
まず、足元には直径10メートル程の穴が開いている。100歩譲ってそれはいい。しかし、だ。その穴の距離が問題だろう。暗くて良く見えないが、地下道を通り過ぎている事だけはわかる。
魔法で灯りを用意するか、直接降りて確認するかの2択である。だが、そこまで考えて気付く。最終的に、灯りを灯して直接降りなければならない。誰かが落ちる前に、この穴を塞がなければならないのだ。
冷静になったカレンが穴の中へ降りようとしている事に気付き、慌てて声を掛ける。
「ここはオレが対処するから、カレンは魔物退治に向かってくれる?」
「ですが・・・」
「急がないと被害が拡大しちゃうから。」
「そうですか?・・・ではお言葉に甘えて。すみませんが、お願いしますね?すぐ戻りますから・・・。」
申し訳なさそうにしながら、渋々といった表情でカレンが転移して行った。それを見届けたオレは、魔法で穴の中を照らしながら奥へと進んで行く。特に警戒する必要も無いのだが、慎重に進むこと数百メートル。体感では500メートル程だが、適当なオレの感覚などアテにはならない。
穴の大きさが次第に小さくなり、やがて入り込めない程の大きさとなった。ここが終点だろう。後でカレンを問いつめなければならない。オレは自重を求められてばかりだが、カレンの方が酷い気がする。
カレンの事はさておき、まずは穴を塞がなければならない。自国ならば使い道もあるのだろうが、他所様の領域で勝手な事をするつもりもない。
土魔法で土を作り出し、穴を塞ぎながら後ろ向きに歩く。転んでしまわないか心配するかもしれないが、幅10メートルの穴を塞ぎながらでは移動速度が赤ん坊以下となる。オレの穴埋め作業は、ルビア達が合流する直前まで続いたのであった。
カレンの失敗を無かった事にして、ヘトヘトになったオレはフィリップ国王そっちのけで休憩していた。というか寝てた。魔力よりも精神力をすり減らす作業となったのだ。
アニメじゃあるまいし、都合良く土魔法で穴を塞ぐなんて真似は出来なかった。少しずつ土を生み出しながら、ひたすら隙間を埋める。同じ色の土なんて作れないのだから、地下道付近に差し掛かった時には周囲の土を混ぜる作業まで追加される。何事も、程々が一番だという教訓となった。・・・オレのせいじゃないよね?
こうして目が覚めた時には、既にドワーフ国王一行も無事に到着していた。ついでにカレンも。どう考えてもカレンの速度は異常だったのだが、オレは聞こえないフリをし続けた。スッキリした表情のカレンが印象的だったのは、言うまでもないだろう。
後日知る事となるのだが、カレンは大層嬉しそうに魔物を殲滅していたらしい。あまりにも異様な光景に、カイル王国軍にはフォレスタニア帝国に対する恐怖心が植え付けられたとか・・・。
オレが現実逃避していると、ルビアに連れられてフィリップ国王とルドルフ国王がやって来た。やっと開放されると思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「ルークよ、この地下通路は何処まで続いておるんじゃ?」
「え?何処までって・・・その辺ではないのですか?」
「いやいや、この穴はまだまだ続いていそうじゃぞ?」
フィリップ国王の質問に答えたが、間髪入れずにルドルフ国王が否定する。2人の表情を見て、オレは心の中でカレンに謝罪した。カレンの開けた穴なんて、大した事無かったよ。ははは・・・・・はぁ。
「申し訳ありませんが、私が直接開けた訳でもないですし、実際に確認して頂くしかありませんね。」
「そう言えば、そういう話じゃったな。ふむ・・・では追加調査にこちらから兵士を派遣しよう。」
「では先程の打ち合わせ通り、こちらからも職人を同行させますかな。」
オレが寝ている間に、ルビアが話をまとめてくれたのだろう。視線を向けると、ニッコリと微笑んでくれた。とりあえず、これで地下通路の方は片付いただろう。あとはフィリップ国王に、魔物の討伐状況を報告して終わりである。
「フィリップ陛下、魔物の討伐の件ですが・・・」
「あぁ、カレン様から大まかな説明をして貰っておる。出来れば短時間で終わらせる事の出来た理由を教えて欲しいのじゃが・・・。」
どうやって誤魔化そうかと思ったのだが、カレンに目で合図を送り口裏を合わせて貰う事にした。
「実は、私よりもカレンの方が足が速いんですよ。実演しますから、瞬きせずに見ていて下さい。カレン!向こうの森まで競争しよう!!」
「・・・わかりました。手加減無しの勝負という事ですね。・・・何か賭けますか?ルークが半分まで進んだら、私も走り出しますから。」
「・・・そこまで言われたら、嫌とは言えないな。じゃあ、勝った方の願いを聞くって事で!」
「ふふふ。わかりました。では、いつでも構いませんよ?」
流石にここまでバカにされて黙っていられる程、オレは甘くない。魔力で肉体強化を施し、初めから本気でいかせて貰う。森までは目算で約1キロ。全力疾走なら20秒だろう。
「じゃあ本気で走りますから、しっかり見ていて下さいね?」
「うむ。どれ程の物か、近衛騎士団長と共に見させて貰おう。」
フィリップ国王の返事を聞き、ルークは全力で森を目掛けて走りだす。あまりの速度に、全員が一瞬ルークの姿を見失う。その姿を見付けた時には、もうじき半分に差し掛かろうという辺りであった。カレンのスタートが近いという事で、全員がカレンの姿を探す。
するとカレンは何故か、周囲から距離を取った場所に立っていた。全員が不思議に思うより早く、カレンがルビアに確認を取る。
「ルビア、もう半分を超えていますよね?」
「え?あ・・・そうね。」
一瞬視線をルークへと移し、半分を超えている事に気付いて肯定する。再びカレンに視線を戻すと、女神様は微笑んでいた。
「それでは行きますね!」
カレンはそう告げると、真剣な顔つきとなる。次の瞬間、全員が信じられない光景を目にする。いや、ほとんど見えなかったのだが・・・。
ーードン!
重量感に満ちた音と共に、カレンが立っていた場所の地面が吹き飛ぶ。既ににカレンの姿は無い。まさかと思い、全員が森の方へと視線を向けると、森の木々が倒れる所であった。
この時のカレンは、数百年ぶりに全力疾走であった。ルークの真横へと差し掛かった時、ルークと目が合った。微笑んで手を振っていたのだが、すぐに森へと到達する。そして、勢いを殺せないまま森へと突っ込んだのであった。
ルークを含めた全員が目を見開き、口を開けたまま硬直する。全員が状況を飲み込んだのは、森から出て来たカレンの姿を捕らえてからであった。
「全力なんて久しぶり過ぎて、感覚が掴めませんでした。・・・・・てへっ。」
比較的近くにいたルークにしか見えなかったのだが、本日2度目の『てへっ』であった。ルークはカレンの可愛さに見惚れていたが、他の者達は違う事を考えていた。
「「「「「「「「「「戦女神ヤベェ!!」」」」」」」」」」
「どうしました?」
「カレンに頼みがあるんだけど、今って時間ある?」
問題無いとの返答を受け、ルークは事情を説明する。一通りの説明を終えると、カレンが口を開いた。
「事情はわかりました。それで、私は何処へ行けば良いのです?」
「え?あそこは確か・・・ルーメルっていう街だったかな。知ってる?」
「すぐ近くですね。それでは現地でお会いしましょう。」
現地集合と言い放ち、一方的に通信を切られてしまった。女性を待たせる事が嫌いなルークは慌てて転移しようとするが、自分の立つ場所に気付いて取りやめる。
「ここで転移したら丸見えじゃん。全力で森に向かうか・・・。」
警備の観点から、カイル王国の王都近くに森は無い。少し離れた場所にはあるのだが、ルークは走りながら自身の認識を改める。
「少し離れたって言うけど、徒歩で30分は少しじゃないよな・・・。全力で走ったら数分ってのもなぁ。最早人間じゃねぇ・・・って人間じゃなかったか。」
くだらない事を考えながらも、あっという間に森へと到着したルークはすぐに転移する。そして目の前にカレンがいる事に驚くのであった。
「うおっ!?ってカレンか・・・。」
「すみません。目印を見つけたものですから、ここで待っていました。それで、この場所に地下道を作るのですか?」
カレンに問われ、少し考える。ここだと街から距離がある。だが他国と繋がる道である以上、街に近すぎるのもマズイかもしれない。その辺の距離感が、ルークにはわからないのだ。という事で、素直に聞いてみる事にした。
「街との距離って、ここが最適だと思う?」
「どうでしょうか?ただ・・・我々の認識をアテにするのは間違いだと思いますよ?」
どうやら世間一般とズレている実感はあるようだ。そんなカレンに関心しながらも、どうすべきか再度問い掛けてみる。
「う~ん、困ったね。ルビアには何も言われなかったしなぁ・・・。」
「目印としての穴を開ければ、あとはドワーフが何とかするのではありませんか?」
「あ!それもそうか!!流石はカレン、頼りになるね。」
すっかり忘れていたが、別に出入り口をオレが作る必要はない。そこはプロに任せた方が安全安心というものだろう。早速取り掛かろうとすると、カレンから待ったがかかる。
「すみませんが、私に任せて頂けませんか?」
「別にいいけど、どうかしたの?」
「近頃は送迎ばかりでその・・・運動不足と言いますか・・・。」
その言葉で納得した。カレンの仕事と言えば、ほぼ皆のタクシー代わりである。いくら女神と言っても、お肉はついてしまうのだろう。おデブな神もいるって話だったし、カレンが例外という事も無いと言う事か。
「それならカレンに任せるよ。折角だし、頼まれた魔物退治もする?」
「いいのですか!?」
オレの言葉に、カレンの瞳が輝いた。余程気にしていたのだろう。たまには運動する機会を与えた方が良さそうなので、頷きを返した。するとカレンは満面の笑みを浮かべて歩き出す。
しかし、冷静に考えてみるとおかしい事に気付く。魔法で穴を開けるのに、運動不足がどう関わるのか理解出来ない。声を掛けようと思ったのだが、真剣な表情で腰から剣を抜く姿に息を飲む。
考えてみよう。1メートル前後の剣で、距離2、30メートルの穴を開けられるとは思えない。シャベル代わりに使えるとも思えないので、益々カレンの行動の意味がわからなくなる。
当のカレンは、顔の横に剣を構えている。あの姿勢は刺突だろう。いやいやカレンさん、ちょいとお待ちなすってくれやせんか?いくらなんでも、それは非常識過ぎるでしょ。
「はあぁぁぁ!!」
カレンの掛け声に、オレの思考は中断する。見たままを伝えると、カレンは地面に対して斜めに剣を突き出した。どう見ても地面には届いていない。それなのに次の瞬間、想像も出来ないような光景が飛び込んで来る。
ーーズドーン
轟音に驚きながらカレンの足元を見ると、直径10メートル程の綺麗な穴が開いている。おかしい。いくらなんでも、それはおかしい。だが、現象には必ず理由があるはず。必死に考えていると、カレンが不吉な声を上げた。
「あ・・・。」
「あ」って言った?言ったよね!?それって予想外の結果が出た時に言う言葉だよね?振り向いたカレンの表情に嫌な予感がして、全力でカレンの横に移動する。そして足元の穴を見る。結果、当然のように言葉を失う。
「やりすぎちゃいました。・・・てへっ。」
「・・・・・」
オレは何を言えばいいのかわからなかった。目の前に広がる光景に思考が追い付かない。カレンの『てへっ』の可愛さにも。どちらも経験した事の無い光景であった。
「ルーク?・・・どうかしましたか?」
「・・・はっ!?ごめん、カレンの可愛さに見惚れてた。」
「え?そ、そうですか?改めてそう言われると・・・」
オレの言葉に、カレンは頬を赤らめてモジモジしている。とりあえず、これでこの女神は大人しくしているだろう。その間に状況を把握しなければならない。
まず、足元には直径10メートル程の穴が開いている。100歩譲ってそれはいい。しかし、だ。その穴の距離が問題だろう。暗くて良く見えないが、地下道を通り過ぎている事だけはわかる。
魔法で灯りを用意するか、直接降りて確認するかの2択である。だが、そこまで考えて気付く。最終的に、灯りを灯して直接降りなければならない。誰かが落ちる前に、この穴を塞がなければならないのだ。
冷静になったカレンが穴の中へ降りようとしている事に気付き、慌てて声を掛ける。
「ここはオレが対処するから、カレンは魔物退治に向かってくれる?」
「ですが・・・」
「急がないと被害が拡大しちゃうから。」
「そうですか?・・・ではお言葉に甘えて。すみませんが、お願いしますね?すぐ戻りますから・・・。」
申し訳なさそうにしながら、渋々といった表情でカレンが転移して行った。それを見届けたオレは、魔法で穴の中を照らしながら奥へと進んで行く。特に警戒する必要も無いのだが、慎重に進むこと数百メートル。体感では500メートル程だが、適当なオレの感覚などアテにはならない。
穴の大きさが次第に小さくなり、やがて入り込めない程の大きさとなった。ここが終点だろう。後でカレンを問いつめなければならない。オレは自重を求められてばかりだが、カレンの方が酷い気がする。
カレンの事はさておき、まずは穴を塞がなければならない。自国ならば使い道もあるのだろうが、他所様の領域で勝手な事をするつもりもない。
土魔法で土を作り出し、穴を塞ぎながら後ろ向きに歩く。転んでしまわないか心配するかもしれないが、幅10メートルの穴を塞ぎながらでは移動速度が赤ん坊以下となる。オレの穴埋め作業は、ルビア達が合流する直前まで続いたのであった。
カレンの失敗を無かった事にして、ヘトヘトになったオレはフィリップ国王そっちのけで休憩していた。というか寝てた。魔力よりも精神力をすり減らす作業となったのだ。
アニメじゃあるまいし、都合良く土魔法で穴を塞ぐなんて真似は出来なかった。少しずつ土を生み出しながら、ひたすら隙間を埋める。同じ色の土なんて作れないのだから、地下道付近に差し掛かった時には周囲の土を混ぜる作業まで追加される。何事も、程々が一番だという教訓となった。・・・オレのせいじゃないよね?
こうして目が覚めた時には、既にドワーフ国王一行も無事に到着していた。ついでにカレンも。どう考えてもカレンの速度は異常だったのだが、オレは聞こえないフリをし続けた。スッキリした表情のカレンが印象的だったのは、言うまでもないだろう。
後日知る事となるのだが、カレンは大層嬉しそうに魔物を殲滅していたらしい。あまりにも異様な光景に、カイル王国軍にはフォレスタニア帝国に対する恐怖心が植え付けられたとか・・・。
オレが現実逃避していると、ルビアに連れられてフィリップ国王とルドルフ国王がやって来た。やっと開放されると思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「ルークよ、この地下通路は何処まで続いておるんじゃ?」
「え?何処までって・・・その辺ではないのですか?」
「いやいや、この穴はまだまだ続いていそうじゃぞ?」
フィリップ国王の質問に答えたが、間髪入れずにルドルフ国王が否定する。2人の表情を見て、オレは心の中でカレンに謝罪した。カレンの開けた穴なんて、大した事無かったよ。ははは・・・・・はぁ。
「申し訳ありませんが、私が直接開けた訳でもないですし、実際に確認して頂くしかありませんね。」
「そう言えば、そういう話じゃったな。ふむ・・・では追加調査にこちらから兵士を派遣しよう。」
「では先程の打ち合わせ通り、こちらからも職人を同行させますかな。」
オレが寝ている間に、ルビアが話をまとめてくれたのだろう。視線を向けると、ニッコリと微笑んでくれた。とりあえず、これで地下通路の方は片付いただろう。あとはフィリップ国王に、魔物の討伐状況を報告して終わりである。
「フィリップ陛下、魔物の討伐の件ですが・・・」
「あぁ、カレン様から大まかな説明をして貰っておる。出来れば短時間で終わらせる事の出来た理由を教えて欲しいのじゃが・・・。」
どうやって誤魔化そうかと思ったのだが、カレンに目で合図を送り口裏を合わせて貰う事にした。
「実は、私よりもカレンの方が足が速いんですよ。実演しますから、瞬きせずに見ていて下さい。カレン!向こうの森まで競争しよう!!」
「・・・わかりました。手加減無しの勝負という事ですね。・・・何か賭けますか?ルークが半分まで進んだら、私も走り出しますから。」
「・・・そこまで言われたら、嫌とは言えないな。じゃあ、勝った方の願いを聞くって事で!」
「ふふふ。わかりました。では、いつでも構いませんよ?」
流石にここまでバカにされて黙っていられる程、オレは甘くない。魔力で肉体強化を施し、初めから本気でいかせて貰う。森までは目算で約1キロ。全力疾走なら20秒だろう。
「じゃあ本気で走りますから、しっかり見ていて下さいね?」
「うむ。どれ程の物か、近衛騎士団長と共に見させて貰おう。」
フィリップ国王の返事を聞き、ルークは全力で森を目掛けて走りだす。あまりの速度に、全員が一瞬ルークの姿を見失う。その姿を見付けた時には、もうじき半分に差し掛かろうという辺りであった。カレンのスタートが近いという事で、全員がカレンの姿を探す。
するとカレンは何故か、周囲から距離を取った場所に立っていた。全員が不思議に思うより早く、カレンがルビアに確認を取る。
「ルビア、もう半分を超えていますよね?」
「え?あ・・・そうね。」
一瞬視線をルークへと移し、半分を超えている事に気付いて肯定する。再びカレンに視線を戻すと、女神様は微笑んでいた。
「それでは行きますね!」
カレンはそう告げると、真剣な顔つきとなる。次の瞬間、全員が信じられない光景を目にする。いや、ほとんど見えなかったのだが・・・。
ーードン!
重量感に満ちた音と共に、カレンが立っていた場所の地面が吹き飛ぶ。既ににカレンの姿は無い。まさかと思い、全員が森の方へと視線を向けると、森の木々が倒れる所であった。
この時のカレンは、数百年ぶりに全力疾走であった。ルークの真横へと差し掛かった時、ルークと目が合った。微笑んで手を振っていたのだが、すぐに森へと到達する。そして、勢いを殺せないまま森へと突っ込んだのであった。
ルークを含めた全員が目を見開き、口を開けたまま硬直する。全員が状況を飲み込んだのは、森から出て来たカレンの姿を捕らえてからであった。
「全力なんて久しぶり過ぎて、感覚が掴めませんでした。・・・・・てへっ。」
比較的近くにいたルークにしか見えなかったのだが、本日2度目の『てへっ』であった。ルークはカレンの可愛さに見惚れていたが、他の者達は違う事を考えていた。
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