ホームズとワトソン

砕田みつを

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現場

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「ふむ、始めてきたときには焦っていてよく見ていなかったが、これがかの有名なサントス邸というわけか。」

「邸宅そのものでも充分豪華なのに、それに加えて中庭の隅々まで整備されてる・・・これじゃまるでテーマパークですね。」

「まあ、そんなテーマパークみたいな豪勢な家で物騒な殺人事件が起こってしまうなんて恐ろしい話なんだがね。」

「見てくださいホームズさん、玄関がもうあんな遠くに見えますよ。」

「・・・やれやれ。都合の悪い話はすぐスルーかね。」

「ホームズさん、遊んでる暇はないですよ、早くしないと日が暮れちゃいます。」

「それを言うなら日が明けちゃいますだと私は思うのだがね。しかし、急がなければならないことは事実だ。早速周辺を見て回ろう。」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「どうです?ホームズさん。」

「・・・」

「なにかありましたか?」

「・・・・・」

「まだですか?ホームズさん!」

「いやうるさいよ!!真剣に探してるんだから集中させてくれたまえ!」

「ええっ・・・だってもう30分は経ちますよ?」

「焦ってはいけないよワトソン君。じっくり丁寧にが定石だ。」

「定石っていうかホームズさんがただ景色を眺めてるだけにしか見えないんですが」

「なあ、ワトソン君よ。」

「?」

「君は初対面の人の家に入るとき、どこから入る?」

「?どこってそりゃ玄関でしょう。」

「もし、応答がなかったら?」

「ちょっ、急に置いてかないでくださいよ!・・・応答がなかったら、ホントに家に居ないか確認すると思います。」

「どうやって?」

「うーん・・・車があるかどうかとか、部屋の明かりがついてるかとかで判断しますかね。というか、そんなの誰でも思い付きません?」

「その通りだ。」

「いてっ!急に歩きだしたり急に止まったり忙しいですねもう・・・って、ホームズさん、どこ行きました?」

「ここだよ、ここ。」

「い、いや、声だけして姿が見えないんですけど。近くにいるはずなのに。」

「君は恐らくこの部屋の窓から中が見えていると思っていないか?」

「え?何をいってるんですか?さっきぶつかったこの窓ならは中のようすが見えますよ?ばっちり。」

「向かい側の窓も見えるかい?」

「見えます。向かい側の窓も、その向こうに広がる中庭の景色も。」

「もし、その先に私がいるとしたら?」

「もしって・・・そこには誰もいませんよ?」

「これが、この部屋の謎というわけだな。」

「・・・?」

「ここにいたんだよ、私は。」

「もうなにがなんだかさっぱりです。この窓から見える中のようすは偽物なんですか?」

「そのようだね。遠くから見てみるとこの部屋の内部だけやけに景色に解け合っていないのが気になったんだ。近くだとまったく違いに気づけない。」

「先生がいたのに気づけなかったのもそれで・・・」

「そういうことになるな。」

「でも、この家の所有者であるサントスさんはなぜこんな仕組みをこの部屋だけに作ったんでしょう?この豪邸の部屋数はそこら辺のホテルと同じくらいたくさんあるのに。」

「この部屋に誰か居て、何かをしていても外から見えないようになっている。つまり部屋の内部を偽造してるんだ、何故かなんて簡単だろう?」

「部屋の中に何かあるってことですか。」

「その通り。ようやく私の推理に着いてくるようになったじゃないかワトソン君。」

「最初から教えてくれればいいのに。」

「二人で調査してるんだから楽しみがないとね。」

「性格悪いですよ、ほんと。」

「そうと分かれば早いとこ内部を調査しよう。恐らく中にも偽造された部屋があるに違いないが、狙いさえ間違えなければいつか必ず辿り着けるはずさ。」



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