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終幕と開幕
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「あ~気持ちよかった~」
「結構な長風呂だったねワトソンくん。」
「ありゃー最高ですね。高級ホテルに露天風呂、これ以上ない組み合わせですよ。」
「はっはっ。それは良い。お金があるからこそ楽しめる豪華な日常だね。」
「ホームズさんは行かなくて良いんですか?」
「私は部屋のシャワーで済ませたから大丈夫だよ。それに本を読むことの方が楽しみでね。」
「お金がガッポリ入っても変わりませんね。ホームズさんの生活って。」
「よくも悪くも貧乏性だということだよ。」
「まあ、昔から変わらないからこそ信頼してるんですけどね僕は。」
「・・・ふむ、ワトソンくんからそんな何の利益も産み出さない賛辞をもらうだなんて気持ちが悪いな。」
「僕を金にしか目が眩まないやつだと思ってません?」
「・・・思っているが?」
「ひっでぇ。」
「ぷっ、冗談だ。君の強すぎる正義感ゆえの行動に嫉妬してしまったんだよ。それに、金に目が眩むのは私自身だ。」
「金に目が眩むのに貧乏性な男ですか。奇怪ですね。」
「正義感が強いというのにその表現方法を違えてしまった猟奇的な男に言われたくはないね。」
「・・・」
「・・・」
「なんか飲みます?」
「では、コーヒーを。」
「ほいっ。」
「しっかし、考えてみたら何でこんなとこまで飛行機で来たんですかねぇ。」
「何を今さら。依頼を受けたからに決まっているじゃないか。」
「いや、事件解決って言ったって毎度のこと僕らの追う容疑者は逮捕前に死んじゃうじゃないですか。なんか、虚しくないんですか?」
「どうして君はいつもそうやって他人事にすることが出来るんだ・・・君と私の選んだ道だろう?仕方ないさ。」
「何もない、それこそ虚無を追って、何も捕らえられず、ただただ無能な民衆からの尊敬と報酬を得る。まさに金の亡者ですよ。」
「金の亡者、か。君が一番憎むべき相手ではないか?」
「ホームズさんがもし相棒じゃなかったら沈めてるかもしれませんね。」
「はっはっ。君がいうと妙にリアルで恐ろしいよそれは。」
「はぁ。なーんか虚しいんですよね・・・はい、コーヒーです。」
「ありがとういただくよ。・・・うん、ウマイ。」
「聞いてます?」
「あぁ、聞いているよワトソンくん。」
「なにか良い解決方法は無いですかね?名探偵さん。」
「そうだな・・・少し時間をくれ。日記を書き終えたいんだ。」
「どーぞどーぞ、ごゆっくりお書きください。解決方法があるんならいくらでも待ちますよ。」
「・・・よしできた。」
「ご苦労様です。ここのとこ毎日のように日記書いてますね。」
「ワトソンくん。もし、私も君のいう虚しさを感じていた、と言ったら信じるかい?」
「・・・ふざけてます?」
「いたって真剣だよ。」
「・・・どういうことですか?」
「簡単なことさ。僕らの伝記を残すのさ。」
「伝記・・・ねえ。」
「時にワトソンくん。こう考えてみてはどうだろう?」
「?」
「私たちの活動がもし、『名探偵ホームズとその助手ワトソン』という名前で後世に伝わる。我々の虚しい毎日はその為の前段階である、と。」
「歴史の偉人の仲間入りってことですか。」
「その通り。案外悪くない話だろう?」
「案自体は良いですけど、僕らのやってることがそのまま伝わったらそれは伝記じゃなくて証拠物品にしかならないですよ。」
「大丈夫。私が書くんだからね。」
「それは捏造にしかならないのでは・・・?」
「そんなことしないさ。書くことは全て真実だよ。ただ、」
「ただ?」
「時系列を弄っているだけさ。」
「それ、僕らのイメージ変わりますかねぇ?」
「もちろんだとも。きっと読者には正義の味方ホームズとワトソンに見えているさ。」
「・・・そうですか。よく分かんないですがホームズさんのことは信頼してるのでお任せします。」
「ありがとうワトソンくん。君は私の唯一の理解者だよ。」
「エセ名探偵さんにそんなこと言われても嬉しくないですね。おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。正義感に満ちたサイコ助手くん。」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「これまでが、そしてこれからが私たちの物語、というわけだな。」
「結構な長風呂だったねワトソンくん。」
「ありゃー最高ですね。高級ホテルに露天風呂、これ以上ない組み合わせですよ。」
「はっはっ。それは良い。お金があるからこそ楽しめる豪華な日常だね。」
「ホームズさんは行かなくて良いんですか?」
「私は部屋のシャワーで済ませたから大丈夫だよ。それに本を読むことの方が楽しみでね。」
「お金がガッポリ入っても変わりませんね。ホームズさんの生活って。」
「よくも悪くも貧乏性だということだよ。」
「まあ、昔から変わらないからこそ信頼してるんですけどね僕は。」
「・・・ふむ、ワトソンくんからそんな何の利益も産み出さない賛辞をもらうだなんて気持ちが悪いな。」
「僕を金にしか目が眩まないやつだと思ってません?」
「・・・思っているが?」
「ひっでぇ。」
「ぷっ、冗談だ。君の強すぎる正義感ゆえの行動に嫉妬してしまったんだよ。それに、金に目が眩むのは私自身だ。」
「金に目が眩むのに貧乏性な男ですか。奇怪ですね。」
「正義感が強いというのにその表現方法を違えてしまった猟奇的な男に言われたくはないね。」
「・・・」
「・・・」
「なんか飲みます?」
「では、コーヒーを。」
「ほいっ。」
「しっかし、考えてみたら何でこんなとこまで飛行機で来たんですかねぇ。」
「何を今さら。依頼を受けたからに決まっているじゃないか。」
「いや、事件解決って言ったって毎度のこと僕らの追う容疑者は逮捕前に死んじゃうじゃないですか。なんか、虚しくないんですか?」
「どうして君はいつもそうやって他人事にすることが出来るんだ・・・君と私の選んだ道だろう?仕方ないさ。」
「何もない、それこそ虚無を追って、何も捕らえられず、ただただ無能な民衆からの尊敬と報酬を得る。まさに金の亡者ですよ。」
「金の亡者、か。君が一番憎むべき相手ではないか?」
「ホームズさんがもし相棒じゃなかったら沈めてるかもしれませんね。」
「はっはっ。君がいうと妙にリアルで恐ろしいよそれは。」
「はぁ。なーんか虚しいんですよね・・・はい、コーヒーです。」
「ありがとういただくよ。・・・うん、ウマイ。」
「聞いてます?」
「あぁ、聞いているよワトソンくん。」
「なにか良い解決方法は無いですかね?名探偵さん。」
「そうだな・・・少し時間をくれ。日記を書き終えたいんだ。」
「どーぞどーぞ、ごゆっくりお書きください。解決方法があるんならいくらでも待ちますよ。」
「・・・よしできた。」
「ご苦労様です。ここのとこ毎日のように日記書いてますね。」
「ワトソンくん。もし、私も君のいう虚しさを感じていた、と言ったら信じるかい?」
「・・・ふざけてます?」
「いたって真剣だよ。」
「・・・どういうことですか?」
「簡単なことさ。僕らの伝記を残すのさ。」
「伝記・・・ねえ。」
「時にワトソンくん。こう考えてみてはどうだろう?」
「?」
「私たちの活動がもし、『名探偵ホームズとその助手ワトソン』という名前で後世に伝わる。我々の虚しい毎日はその為の前段階である、と。」
「歴史の偉人の仲間入りってことですか。」
「その通り。案外悪くない話だろう?」
「案自体は良いですけど、僕らのやってることがそのまま伝わったらそれは伝記じゃなくて証拠物品にしかならないですよ。」
「大丈夫。私が書くんだからね。」
「それは捏造にしかならないのでは・・・?」
「そんなことしないさ。書くことは全て真実だよ。ただ、」
「ただ?」
「時系列を弄っているだけさ。」
「それ、僕らのイメージ変わりますかねぇ?」
「もちろんだとも。きっと読者には正義の味方ホームズとワトソンに見えているさ。」
「・・・そうですか。よく分かんないですがホームズさんのことは信頼してるのでお任せします。」
「ありがとうワトソンくん。君は私の唯一の理解者だよ。」
「エセ名探偵さんにそんなこと言われても嬉しくないですね。おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。正義感に満ちたサイコ助手くん。」
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「これまでが、そしてこれからが私たちの物語、というわけだな。」
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