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第五話 小朧
しおりを挟む嵐の闇の中、清王朝の官僚服を身にまとった黒い小さな人影が、田舎の一本道を一心に走っている。
道沿いに並び立つ家々の戸はどこも閉まっていて、そこには門の神や護符が貼られている。人影は横目でそれを見ながら町はずれまで走ってくると、朱塗りの建物が目に入った。門は開け放たれているが、その小さな人影は入るのを躊躇している。
後ろを振り返ると、視界が霞むほどの雨の向こうに、黒い影が追ってきているのが見える。
あわてて辺りを見回すと、外壁の下のほうに小さな穴が開いていた。猫ならば優に通れるその隙間に頭を突っ込むと、懸命に身をよじらせながら這い進んでいった。
黄擣良は窓越しに降りしきる雨を見つめながら、さっきから何度も大きなため息をついている。夕食の片付けをしている李思然が、「お前も手伝えよ!」と度々叫んでいるが、黄の耳には届いていないようだ。
「雨ってさ、誰かの心の涙なのかもしれない…」
「はぁ?なんじゃそりゃ」
「ふん!バカめ!つまり俺の心は雨模様ってことだよ!」
しびれを切らして黄が怒鳴り声をあげると同時に、雷威がひょっこりと顔を覗かせた。「鈴はいるか?」
黄は煮えたぎるように顔を赤くすると、わざとらしく窓の方に顔をそむけてしまった。
「なんだ?黄は何怒ってんだ?」
あきれた顔で李が代わりに返答する。
「たぶんこの前の一件なんじゃないですかね。師傅(師匠)の誕生会にきてたでしょう、かわいい子が」
「ああ!あのおさげの娘か!フラれたのか?」
「しかもその娘、鈴に惚れちまって」
黄は李を睨みつけると、「余計なこと言うな!」とドスドス足を踏み鳴らしながら二人に迫ってくる。雷威はあごに手をあて、神妙な顔で続けた。
「実はな、昼間鈴と町に買い物に行ったんだが、その時妙に女たちから視線を感じたんだなぁ。あれは俺に向けられたものだったのか」
「なんでそうなるんですか…違うでしょう。鈴ですよ」
「あの野郎、色目使いやがって!」と、黄は地団駄を踏んでいる。
「心配するな、黄。あいつはタマなしだから、女もすぐにわかるさ」
「そういやこの間も女相手にヘタレてたぞ。そんな奴、襲るるに足らずだろう」
二人の言葉に、黄の顔が少しずつ明るくなっていく。「それもそうだな」
李は思い出したように、上背のある雷威を見上げた。
「ところでセンセイ、用事ってなんですか?」
「ああ…近くに霊気を感じるんだよ…ちょっと妙なんだがな。こんな雨の中外に出るのも嫌だから、鈴に行かせようと思って」
薄ら笑いを浮かべた黄が、「それは名案ですね。あの野郎、片付けも手伝わねえし…」と言いかけたのを、雷威が後ろから黄と李の口を手で抑え込んだ。
「しっ!二人とも静かしろ」
翠色の瞳を細めながら窓の外を凝視している。「何かくる」
李が小声で雷威に耳打ちした。
「さっきおっしゃっていた霊気ですかね?」
「いや…違うような気がする…」
「ここは廟だから入って来られないと思うけどな」
「招き入れなきゃな。師傅は老馬(馬さん)達と麻雀だし、この雨じゃ帰ってこれんだろう。俺はこの前のこともあるから、キョンシーの所に行ってみる。李思然は鈴を探せ。黄擣良は門を閉めてこい」
雷威が部屋を出ると、李は持っていた皿を黄に押し付けた。
「これ頼んだぞ。井戸は門のそばだからな。置いといてくれりゃあそれでいい。どうせこの雨じゃ洗わなくたって平気だろ」
言うなり李は大声で「おーい、鈴!!」と叫びながら、部屋を出て行ってしまった。
残された黄もしぶしぶ外に出ると、すごい勢いで降りしきる雨を見上げて顔をしかめた。とりあえず傘でも探すかと言い訳するように、再び部屋に引っ込んだのだった。
三人が食卓で話している時分、鈴は安置所にいるキョンシー達に、彼らの食べ物である線香を焚いていた。薄暗い部屋には額に霊符を貼られたキョンシーが何体も直立しており、その奥には棺も置かれ、遺体が眠っている。
雨のせいだろうか。いつもより湿り気を帯びた空気が、妙に重く感じられる。
不意にろうそくの火が消えた。気配を探ろうとしたその時、雨の間を縫って自分を呼ぶ声が聞こえてくる。鈴はとっさに外へ走り出した。
そのすぐ後に雷威が安置所に飛び込んでくるのだが、今になって思えばこの妖怪退治が、鈴と雷威の命運を分けたのではないだろうか。
先程よりも勢いを増した雨の中で、鈴は異様な霊気が混ざりあっていることにようやく気がついた。
「おい!鈴!」振り返ると朱塗りの回廊から、李思然が手招きしている。
「お前を探してた。センセイが様子がおかしいってよ。雷威センセイはキョンシーんとこ行ったから、俺たちは黄の方に加勢しに行くか」
「キョンシーには異常はなかった。黄擣良はどこだ?」
「門を閉めに行った。ちょっと待ってろ、傘を探してくるから。これじゃ風邪ひいちまう」
降りしきる雨を見上げて苦い顔をする李の腕を、鈴は無言で引っ張ると、土砂降りの雨の中を走り出した。
安置所はろうそくの火こそ消えてはいたが、キョンシー達は静かに整列しており、特に変わった様子はなかった。
(おかしい…外からも妖気を感じるが、ここにいるのはそんなもんじゃない)
雷威はろうそくに火を灯して辺りを見回すと、水に濡れた足跡がキョンシーの列の方へと続いているのが目に入った。
「おい、まぬけ。ばれてるぞ」
壁にかかっていた八卦鏡を取ると、キョンシー達の足元へと滑らせる。
「鏡だ!!」
小さな悲鳴とともに、キョンシーの足元から黒いかたまりが這い出してくる。雷威は構えていた桃剣を振り下ろそうとしたが、「待って!待ってください!」と声をかけられて、すんでのところで止まった。
「子ども!?」
這い出してきたのはキョンシーと同じ補服を着て、床までつくほどの長い辮髪を垂らした十歳前後の男の子だった。彼は必死に頭を下げて懇願し始めた。
「道士様、お願いです!僕は良いキョンシーなんです!退治しないで!」
「自分で自分のことを良い奴なんて言ってる奴が、一番あやしい」
「そんな!!」
「それにお前、見たところ相当強そうなキョンシーって感じがする。すごい霊気だぜ」
すると雷威は感心したようにしみじみと、「強いってよく言われないか?」と続けた。
道士の砕けた口調に釣られて子どもは満面の笑みになると、エッヘンと胸をそらせた。
「はい!僕、生きてるときから霊能力はすごかったんです!死んでも衰えておりませんよ!」
道士はハハハと空笑いすると、再び桃剣を構えた。「墓穴だ」
「えっ!?」
「お前みたいに強い奴を野放しにはできない」
小さなキョンシーは目に涙をいっぱいに溜め、再びペコペコと謝り出した。
あまりにもキョンシーらしからぬ言動に、さすがの雷威も拍子抜けしてくる。
「参ったな…」
いったん近くの机に剣を置くと、泣きわめく子どもに落ち着くように諭した。雷威はその泣きべその顔を見ながら、驚くべき違和感の正体に気がついた。
「お前、魂があるのか?」
通常キョンシーは“魂”は天に昇って抜けてしまい、肉体を動かす“魄”のみが残された状態である。だがしかし、目の前の少年キョンシーには魂魄が宿っているようなのだ。死んでもなお、まるで存命しているかのように振る舞っているのが何よりもの証拠だった。しかも彼の額には、符(お札)すら付いていないのだ。
「…魂ですか…そうですね。おそらくそういうことになりましょうや。しかしながら、生きていた時のことは、途切れ途切れにしか覚えておりません。思い出そうとしても、肝心なところが抜けているようなのです…」
ひくひくと涙をすすりながらも、ひどく明瞭に返すこの少年は一体何者であろうか。雷威はにわかに子どもの肩を掴むと、切羽詰まったような声を出した。
「どうやってそうなった!?どんな術を使ったんだ!?お前を蘇らせた道士は誰だ!?」
子どもは再び泣きそうになる。それでも翠色の瞳は一心不乱に少年をとらえ続けた。
「その道士は左目に眼帯をしていなかったか!?」
「ぼ…僕…」
キョンシーはまたもや大泣きして謝り始めた。「僕はただ父上、母上に会いたくて…」
先ほどから妙に大人びた受け答えをする少年の素朴な願いに、雷威はようやく我に返った。泣きわめいている子どもをあやそうと、道長(キョンシーを率いる先達)がキョンシーを連れて歩くときに使う三清鈴(三叉鈴)を鳴らしてみせた。「ほーら、これ何だろうなぁ」
途端に少年は頭を抱えて苦しみだした。
「ぐあああっ頭に響く!!」
「すまん、キョンシーだったな」
鈴と李思然が門までくると黄擣良の姿はなく、代わりに開け放たれた門の外に傘をさした女性が立っていた。こんな嵐の晩に女一人といういかにも怪しげな様子ではあるが、女を無視するのも忍びないため、念のため門の内側から李が声をかけた。
「何かご用ですか?」
傘で顔は見えないが、すらりとした美しい体形にねずみ色の褲(ズボン)の上に囲裙(前掛け)を締めた粗末な格好で、まるで下女が仕事を抜け出してきたような風体であった。
彼女は何か小声で呟いているようだが、降りしきる雨音で全く聞き取れない。鈴と李はしばらく顔を見合わせていたが、埒が明かないので門を越えて彼女のそばまで近づいて行った。
「どうかされましたか?」
「もっと腹から声を出せ」
すると彼女は傘を後ろに傾け、ぱっと顔をあげた。女の顔を見た鈴と李思然は、あまりの衝撃にたじろいだ。その隙に、女は鈴の唇に自身の唇を重ねたのだった。
雨音に混じって鈴の音が聞こえてくる。雷威は桃剣を取り直すと、少年キョンシーへ目配せをした。
「君はここで待ってろ。色々聞きたいことがあるからな」
「こんな所で!?僕、キョンシー怖いですよ!!できるなら客間で待たせてもらえませんかね…」
「お前もキョンシーだろう?図々しい奴だな。あんま調子に乗るなよ」
部屋を出て行こうとする雷威の黒い長袍の裾を、少年はあわてて掴んだ。
「妖怪はここまでは入ってこられませんよ」
「なに?お前知ってるのか?」
「はい。画皮に追われて、僕はここまで逃げてきたのですから」
「画皮?」
「ご存知ありませんか?画皮というのは人間の皮にきれいな女の人の絵を描いて、それを被っている妖怪です。だまされた男の人を食べてしまうんですよ」
「……お前名前は?」
「小朧です」
「俺は雷威だ。つまり小朧、画皮の狙いはお前ということだな?だってお前は強いもんな。その霊力目当てに、さぞや他の妖怪たちからも狙われたりするんじゃないの?」
少年キョンシーはまたもや道士の言葉にのせられて、「よくおわかりで!」と嬉しそうである。雷威は小朧の小さな手を握ると、ニヤリと微笑みかけた。
「哈哈(はは)、また墓穴だ。強いんなら問題ないな。それにお前が連れてきたんだから、自分で落とし前つけなきゃな」
「そんなぁ!!」
小朧は途端に真っ青になって抗議の視線を送ったが、時すでに遅しであった。
黄擣良はやっと探し出した傘を広げると、皿を左わきに抱えて外へ出た。
開け放たれた門の外に人影が見えるが、どうも様子がおかしい。立っているのは一人だけで足元に黒い塊が見える。黄が駆け寄ると、傘を差した女の足元で、鈴と李思然が倒れているではないか。
女が傘を後ろへそらせた。その姿に黄は目を見張った。
そこに立っていたのは鈴であった。…いや、違う。鈴の顔をした女だ。
(双子…?)
彼女は柳眉をひそめて、「助けてください。この人たち急に倒れてしまって…」と歌うように黄にささやきかけた。
普段の黄なら、双子説で押し切って手を差し伸べただろう。しかしおさげ髪の少女を横取りされ、今は顔も見たくない相手である。
黄は持っていた皿を彼女に投げつけたが、女は身を翻して避けると、さっきまでの柔和な様子が消えて薄気味悪く笑い始めた。
「化けの皮を剝がしてやる!」
黄は傘を下に置くと構えの姿勢をとった。女に手をあげるというのには一瞬躊躇したが、鈴の顔というのが後押しして、黄は間合いをつめると拳を突き出した。女はとっさに傘を前にして防御の姿勢をとったが、黄にはこれが狙いであった。突き出された傘を力任せに引っ張ると、つられて女もバランスを崩して前のめりになった。その背中に、用心のために持ってきていた符を貼り付ければ、女はすごい声で悲鳴をあげてのたうち回った。背中の服が溶けて皮膚が焼けただれている。そこに容赦なく雨が打ちつけ、女の顔や服をさらにどろどろと流し始めた。
「やっぱり妖怪だったな!」
「…お前のせいだ…お前のせいだ」
人間の皮がむき出しになった状態で、女はよろよろと倒れた。黄がとどめを刺そうと近づいても、力なく呟いている。
「この娘、男みんな恋をする…描いた…人間食べられるから…」
「残念だったな。その顔じゃあ、俺はだませねえよ」
勝利を確信した黄は油断していた。女は急に身を反転させると、地面に倒れている鈴と李を両脇に抱え上げ、ものすごい速さで逃げ去っていった。
「あっ!!待て!!」
あわてて後を追う黄だが雨で視界も奪われ、徐々に引き離されていく。女の半身はすでに人間の皮が剝がれかけており、むき出しになった部分からは青色の皮膚が覗いていた。
必死で追いかける黄の頭上から、急に声がした。
「あなたの狙いは僕でしょう」
すると雨粒とともに天から雷威が舞い降りてきて、そのまま桃剣で女の皮を縦に切り裂いた。断末魔の叫びをあげながら、中から青色の鬼が這い出てくる。雷威は符を燃やすと桃剣の先端に付けて、そのまま画皮の心臓を貫いた。青い炎が一気に鬼の体を包み、道士は人差し指と中指を立てた右手で振り払う。あっという間に妖怪の姿は消え、後には煙が漂うだけとなった。
「黄擣良!ケガはないか!?」
雷威が振り返ると、黄は地面に転がっている鈴と李思然を抱き寄せて二人の頬を引っ叩いている。
「センセイ、こいつらが目を覚ましません!」
すると再び頭上から声がした。「生気を吸い取られていますね」
見上げると、空から子どものキョンシーが降りてくるではないか。
「キョンシー!?」
驚く黄の肩を雷威が叩いた。「こいつは大丈夫だ」
「えへへ。僕、小朧っていいます。よろしくどうぞ」
呆気に取られた黄を無視して、小朧と名乗る少年キョンシーは続けた。
「気を失う程度ですから、休ませれば問題ありません。でも良かったですね。心臓を取られていたら死んでいましたよ」
「助かったぞ、小朧」雷威はかがんで少年の頭をなでた。小朧はすかさず胸をそらせて、誇らしげにしている。
「僕がいてよかったですね!」
「そもそもお前が逃げ込んで来なきゃ、こんな面倒は起きなかっただろ」
黄擣良も続けて釘をさす。「おいチビ、調子乗んなよ!」
もっともらしい指摘をされ、小朧はあわてて話題を変えようと、「そんなことよりお二人を運びましょうよ。弱ってしまいます」と二人を促したのだった。
びしょ濡れの状態で部屋に戻った一行は、先に鈴と李思然を休ませることにしたが、その際小朧は改めて鈴の顔を見て腰を抜かした。
「こっこの人!!画皮だ!!」
「残念だがこっちは男だ」と、鈴の服を着替えさせながら黄擣良が答えた。
「本当だ…」
二人の会話を聞いていた雷威が、怪訝そうな顔で寄ってくる。「黄、どういうことだ?」
「ああ、センセイは絵の具がとれた姿しか見てないですからね。あの画皮って妖怪、鈴の姿に化けていたんですよ。って言っても体は女でしたけどね」
「…そうか、それで鈴があっさりやられたのか」
「俺も最初はびっくりしましたよ。双子かなって思ったんですけど、そういやあの妖怪なんか言ってたな…この娘に男はみんな惚れるから描いたんだ、みたいなこと言ってましたよ」
着替えさせた鈴を乱暴にベッドへ放り込むと、黄は今度は自分が着替えながら苦笑している。
「悪趣味ですよね。よりによってこいつですよ。きっとどこかで鈴を見かけて女だと思ったんですよ。それで描いて化けたんだ。ま、おかげで俺は命拾いしましたけど」
深い翠色の瞳が、鈴と黄を交互に見つめている。
「だが黄、こうも考えられないか。俺たちは鈴を知っているから自動的に鈴だと思うが、そうじゃなくて、鈴そっくりの別の誰かを手本に描いたものかもしれないだろう」
それを聞いた黄の顔は、みるみる青ざめていった。
「大変だ!!あんな美しい双子の姉妹がいたなんて!!妖怪に自分の姿を描かれて、さぞや困っていることだろう!!」
取り乱す黄を椅子に座らせると、雷威はいきなり両手を前に広げ、左右同時に中指と薬指を輪にして親指にくっつけた。「これが狐狸(狐)」
「はぁ?」
困惑する黄を尻目に、さらに右手をひっくり返して耳の部分を組み合わせ、丸くしていた中指と薬指を広げそこに親指を組んだ。組み合わせた指で出来た中央の穴から、美しい翠色の瞳を覗かせる。
「俺の言いたいことがわかるか、黄擣良。お前も危なかったってことだ。これは“狐の窓”。日本の呪術的な手遊びで、この穴から覗けば、相手の正体を見破れる」
「日本ってセンセイの故郷ですか?」
「まあな。お前は女のこととなるとすぐうわべだけ見る癖がある。だが、一番大事なのはそこじゃない」
先生は組んだ指を解いて、李思然の介抱している小朧を手伝おうと腰をあげた。
「修行が足らんと言うことだ。わかったらさっさと湯を沸かしてこい。寒くて風邪をひきそうだ」
ぶつぶつ文句を言いながら立ち上がった黄の背中に、雷威の声が追いかけた。「おい!」
「えーまだ何かあるんですか?」
「肝心なことを忘れてた。さっきの狐の窓、安易にやるなよ。覗くときは覚悟しろ。お前が見えるということは、向こうもお前を見つめていることになる」
この時、黄擣良は軽く返事をした程度であったが、彼はこの夜のことを生涯忘れるとこはなかった。そしてずっと後のことだが、彼は人生でたった一度だけ、狐の窓を実践することになる。
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