お父様は惚れっぽい!

ねこまんまときみどりのことり

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ネルフィスと使用人達

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 本来ならばリーネは、キャメロン公爵家で生粋の御令嬢として育つ筈だった。

 母ネルフィス(群青色の髪)と、父公爵ナユタ(金髪)から生まれた彼女は桃色の髪で生まれた。

 キャメロン家で桃色髪はほぼない色であるが、ネルフィスの生家、シベナッシー伯爵家ではそれほど稀な色ではなかった。
 桃色でなくとも、薄紫や赤色等が多く生まれる家系である。それを知る家門は少なくなく、リーネが不貞の子等とは思われてはいなかった。



◇◇◇
 ナユタは学園で才女と言われ、更に美しくて誰にも優しい人気者のネルフィスを公爵家からの申し込みで娶った。
 多くの者が望む彼女を妻にすることは、それほど秀でたものを持たず美形でもないナユタの優越感を強くした。


 育児放棄され、教育をまともに受けていないネルフィスは、メイドのように仕事をさせられていた。
 お嬢様でありながら懸命に働く彼女に、一部の侍女やメイドは文字を教えた。

「文字くらい覚えて貰わないと、買い物にも行って貰えないからね。これは仕事の一貫よ」

 などと周囲には言い放つも、本当は不憫な彼女の力になりたいと思っていた使用人達。
 伯爵夫人アンネは生家に追いやられ、嫡子のネルフィスは虐げられている。
 そして愛人ブルボンネとその娘マキシールが、伯爵カルドネと本邸で暮らす異常な状態だ。

 表立ってネルフィスを庇った使用人達は、カルドネとブルボンネの怒りを買って解雇されていた。
 その為生活を守る為に残された使用人は、カモフラージュしながら彼女を支えた。

 カルドネは勿論のこと、ブルボンネの父前侯爵の圧力もあり、外部に虐待の事実を漏らすことは出来なかった。

 本来食材費の予算は多く、贅沢な酒やジュースを好む伯爵達なのに、ネルフィスに対しては残り物や残飯をやれとブルボンネが命令してくるのだ。

 逆らえず応じる使用人達と徐々に受け入れるネルフィス。それを見るだけで胸が苦しくなる。

 だから使用人達は、伯爵家の裏庭で作っている畑の作物をネルフィスに差し出したのだ。

「やっぱり専門の農家で買わないと、野菜は美味しくないわ。今年の野菜もダメね」
「そうね。だからネルフィス様がそのお野菜を食べなさいな」
「朝一でもぎよると、少しは甘味が増して美味しいわよ」

「野菜の種と肥料は裏の小屋にあるぞ。時間がある時に庭師のバルタに使い方を聞いて、食べたい物を植えたら良い。うまくいけば、調理で使ってやるから」


 一見すればネルフィスに畑仕事や、まずい野菜を押し付けているように思える。
 けれどそれはネルフィスに、好きなだけ美味しい野菜を食べて貰う為だった。

 伯爵達の予算で野菜などいくらでも工面できるし、そもそも庭の畑のことなど気づいてもいない。多くの嗜好品(酒や高級なおつまみ)が毎夜消えていたから。

 単純にブルボンネがネルフィスに、嫌がらせしているだけなのだ。


 その後もネルフィスは、食べきれない野菜や果物を乾燥させて長持ち保存させる方法や、オイル漬けの技術を学んだ。
 種の収穫方法や、食べられる草、伯爵家の庭にある薬草(腹痛止め、傷薬)などの知識も得たのだった。


 さすがに肉や魚は、使用人の権限では満足にネルフィスに与えられない。だから卵料理を多くして、少しでもタンパク質を取らせていたのだった。
 
 使用人全員がネルフィスの味方ではないので、料理人やメイド達が気づかれぬようにそれとなく。


 聡いネルフィスは、少し成長するとそれに気づいた。
 表立って言えない為心の中で感謝し、学園の寮に入ったのだ。

 そんな彼女なので、学園は天国のように感じた。
 全てが自分の時間で、肉や魚も毎日食べられるのだから。

 そして勉強も楽しかった。
 今まで学びたくとも学べず、ある意味渇望していたので水を得た魚のように。

 伯爵家では愛人母子に意地悪されていた為、滅多なことでは傷つくこともなく、いつも笑顔だった。

 けれど人との関わりが薄かった為、男女共に積極的に来られても何を話したら良いか分からず、ただ「そうね」とニコニコしているしか出来ない。
 内心超ビビっていた。

(なんでこんなに人が来るの? どうしたら良いの? 誰か助けて~~~!!!!!)って感じである。


 それが孤高の星、高嶺の花と言われたネルフィスの真実である。


 公爵家との結婚時は、多くの支度金にカルドネは満足していたものだった。
 それなのに今さら暇潰しのように、ブルボンネはネルフィスを離婚させたのだ。

 多額の支度金はネルフィスには殆ど使われず、ブルボンネとマキシールの宝石を買うことに費やされたのにも関わらず。


 アクスイナ侯爵家のブルボンネの父マルトは、爵位を息子に譲り前侯爵となっていた。妻ラディカとはその後別居し、彼女は従姉妹グレイスと南の島でバカンス中である。

 その間にマルトは、カルドネを唆しマキシールを伯爵家の籍に入れた。さすがにブルボンネのことは、未だにラディカに逆らえず庶子のままだが。

 
 ネルフィスより3才年下のマキシールは12才の時に伯爵令嬢となり、その後に家庭教師を付けたがなかなか知識を吸収できず癇癪を起こしていた。
 その為ネルフィスの入っていた名門の貴族学校には通えず、今までと同じように平民や下位貴族の行く学園に通い続けたのだ。

 それもブルボンネの琴線に触れ、憎しみがネルフィスに向くことになった。

「始めから貴族になれていれば、マキシールだって今頃は名門の学園に通えていたのに。なんであの娘だけが。絶対に幸せになんてさせないわ!」


 もう完全に被害妄想である。
 だがその言葉通りにネルフィスは離婚され……。
 けれど、強く生まれ変わろうとしていた。

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