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相澤と速水〈3〉気付かない現状
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《やっぱり…このままじゃダメだ…!》
この数日間、胸の中で膨れ上がるモヤモヤした感覚がある。それは今までに無かったものだ。俺は「その感覚」の正体を掴みきれないでいる。
速水と出会ってからは混乱の連続だった気もするが、無視さえしていれば「その内に何とかなる」と思っていた。いくら腹が立っても面と向かってやり合う気など更々無い。上手く利用して「腹の虫が治まれば良い」ぐらいに考えていた。天敵相手に真っ向勝負をかけるような事はしない。
最初の頃は「最悪の事態」「不測の展開」に思えたが、過ぎてみれば「些細な事」のように感じられる。当たり障りなく接して来る速水は強敵ではかったからだ。
苛立ちを感じる傍らで、俺は「この日常」にも慣れてきていたのだ。毎日のように同じ事を繰り返していれば「慣れる」のが人間だ。
決して認めたくはないのだが、速水の姿は「日常風景」の一つになっている。そこに居るのが当たり前で、そこに居られると困る。何とも不思議な感覚だ。これをどう理解すれば良いのかさえも分からないのだから、人間の「慣れ」とは本当に恐ろしい…。
《大体、何でこんな風になったんだ…?!》
改めて、そんな事を考える。「その場しのぎ」でやり過ごして来た結果がこれだ。
俺は自分中心に物事が動くと思っている。何度も言うが、俺は孤独の中で生きている。俺の世界には俺しか居ないのだから当然だ。そして、俺の「戦い」も自分の中だけで繰り広げられている。要は、メリットとデメリットを考えて、最終的に「自分の気が済めば良い」だけの話だ。表向きには何の悪害も無いのだから誰に文句を言われる筋合いもない。復讐に関しても他の事に関しても同じだ。周りとの接触を避けているのもその為だ。余計なものは必要ない。
余計ついでに言っておく。かの有名な「見ざる、言わざる、聞かざる」という言葉があるだろう。「他人の事をどうこう言うな」という意味だ。小学生でも知っている言葉だが、その真髄を分かっている人間など見た事がない。言葉の意味を知っているだけでは何の役にも立たないという証拠だ。俺に言わせれば「見ない、聞かない、考えない」の方が手っ取り早い。そうすれば、余計な煩わしさからは逃れる事が出来るからだ。これが俺の解釈だ。上辺だけの綺麗事を並べ立てる奴等よりも筋が通っているだろう。
そうやって自分を納得させながら生きる事にも慣れていた。いや、そうせざるを得なかった。そうしなければ生きられなかった。それがいつしか、俺の凝り固まった「日常」を作り上げていた。変化を恐れ、介入される事を拒み、自分の世界だけを死守する。孤独に生きるとはそういう事だ。
今では、その全てが「マンネリ化状態」となっていた。
そんな俺を速水の存在が大きく揺り動かしていた。速水が傍に居るだけで、俺は「自分という人間」を見せられているようでならない。それが苛立ちの原因だった。
今までは、周りの人間を眺める事はしていても自分で自分を眺める事など殆ど無かった。ノンケ野郎に俺の気持ちなど分かるはずもないからだ。奴等は比較対象にもならない存在だった。だが、速水は違う。敵陣の中に現れた最強の天敵でありながらも、ある意味で「同じサイドの人間」と言える。俺の複雑な人生に絡みついてきた「新たな難問」だ。
物言わぬ速水の「存在感」は俺の中で大きくなるばかりだ。そのせいで、妙な焦りと混乱が生じ始めていた。
《ホント…速水のせいで調子が狂う…!》
「認めたくない現実」と「突き付けられる現実」がある。今までの人生もそうだったが、今回は何処か違っている。過去の事例に当てはまらないだけに、それをどう処理して良いのかが分からないでいた。そして、速水の事を考えると自分の嫌な部分にも目を向けなければならなくなる。そこにも抵抗感があった。だが、このままでは埒が明かない。
独りの空間に身を置きながら、取り留めもなく漂っていた思考を引き締める。
《仕方ない!嫌だけど考えるしかないよな…》
この数日間で俺の中に起きた変化がある。何となくやり過ごしていたのだが、正直なところは困惑していた。俺の意識と思考と感情は別々の所で彷徨っている。急激な変化の中で、俺は気付かぬ内に「人生のターニングポイント」へと歩みを進めていた。
「ターニングポイント」とは人生の大きな転換期の事だ。実際には、もっと後に訪れる事となる。
今のところは「序章」といったところだ。ただ、自分では気付いていないだけに、ここから先の展開は混乱を極めるだろう。収拾がつかなくなる事は間違いない。慎重派の俺だけに、繰り返し巻き返し噛み砕きながら事を進めるしかない。だが、これは避けて通れない道だ。
この数日間、胸の中で膨れ上がるモヤモヤした感覚がある。それは今までに無かったものだ。俺は「その感覚」の正体を掴みきれないでいる。
速水と出会ってからは混乱の連続だった気もするが、無視さえしていれば「その内に何とかなる」と思っていた。いくら腹が立っても面と向かってやり合う気など更々無い。上手く利用して「腹の虫が治まれば良い」ぐらいに考えていた。天敵相手に真っ向勝負をかけるような事はしない。
最初の頃は「最悪の事態」「不測の展開」に思えたが、過ぎてみれば「些細な事」のように感じられる。当たり障りなく接して来る速水は強敵ではかったからだ。
苛立ちを感じる傍らで、俺は「この日常」にも慣れてきていたのだ。毎日のように同じ事を繰り返していれば「慣れる」のが人間だ。
決して認めたくはないのだが、速水の姿は「日常風景」の一つになっている。そこに居るのが当たり前で、そこに居られると困る。何とも不思議な感覚だ。これをどう理解すれば良いのかさえも分からないのだから、人間の「慣れ」とは本当に恐ろしい…。
《大体、何でこんな風になったんだ…?!》
改めて、そんな事を考える。「その場しのぎ」でやり過ごして来た結果がこれだ。
俺は自分中心に物事が動くと思っている。何度も言うが、俺は孤独の中で生きている。俺の世界には俺しか居ないのだから当然だ。そして、俺の「戦い」も自分の中だけで繰り広げられている。要は、メリットとデメリットを考えて、最終的に「自分の気が済めば良い」だけの話だ。表向きには何の悪害も無いのだから誰に文句を言われる筋合いもない。復讐に関しても他の事に関しても同じだ。周りとの接触を避けているのもその為だ。余計なものは必要ない。
余計ついでに言っておく。かの有名な「見ざる、言わざる、聞かざる」という言葉があるだろう。「他人の事をどうこう言うな」という意味だ。小学生でも知っている言葉だが、その真髄を分かっている人間など見た事がない。言葉の意味を知っているだけでは何の役にも立たないという証拠だ。俺に言わせれば「見ない、聞かない、考えない」の方が手っ取り早い。そうすれば、余計な煩わしさからは逃れる事が出来るからだ。これが俺の解釈だ。上辺だけの綺麗事を並べ立てる奴等よりも筋が通っているだろう。
そうやって自分を納得させながら生きる事にも慣れていた。いや、そうせざるを得なかった。そうしなければ生きられなかった。それがいつしか、俺の凝り固まった「日常」を作り上げていた。変化を恐れ、介入される事を拒み、自分の世界だけを死守する。孤独に生きるとはそういう事だ。
今では、その全てが「マンネリ化状態」となっていた。
そんな俺を速水の存在が大きく揺り動かしていた。速水が傍に居るだけで、俺は「自分という人間」を見せられているようでならない。それが苛立ちの原因だった。
今までは、周りの人間を眺める事はしていても自分で自分を眺める事など殆ど無かった。ノンケ野郎に俺の気持ちなど分かるはずもないからだ。奴等は比較対象にもならない存在だった。だが、速水は違う。敵陣の中に現れた最強の天敵でありながらも、ある意味で「同じサイドの人間」と言える。俺の複雑な人生に絡みついてきた「新たな難問」だ。
物言わぬ速水の「存在感」は俺の中で大きくなるばかりだ。そのせいで、妙な焦りと混乱が生じ始めていた。
《ホント…速水のせいで調子が狂う…!》
「認めたくない現実」と「突き付けられる現実」がある。今までの人生もそうだったが、今回は何処か違っている。過去の事例に当てはまらないだけに、それをどう処理して良いのかが分からないでいた。そして、速水の事を考えると自分の嫌な部分にも目を向けなければならなくなる。そこにも抵抗感があった。だが、このままでは埒が明かない。
独りの空間に身を置きながら、取り留めもなく漂っていた思考を引き締める。
《仕方ない!嫌だけど考えるしかないよな…》
この数日間で俺の中に起きた変化がある。何となくやり過ごしていたのだが、正直なところは困惑していた。俺の意識と思考と感情は別々の所で彷徨っている。急激な変化の中で、俺は気付かぬ内に「人生のターニングポイント」へと歩みを進めていた。
「ターニングポイント」とは人生の大きな転換期の事だ。実際には、もっと後に訪れる事となる。
今のところは「序章」といったところだ。ただ、自分では気付いていないだけに、ここから先の展開は混乱を極めるだろう。収拾がつかなくなる事は間違いない。慎重派の俺だけに、繰り返し巻き返し噛み砕きながら事を進めるしかない。だが、これは避けて通れない道だ。
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