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第四章 元冒険者、真の実力を見せつける
39:傷だらけの冒険者ギルド
次の日、遊撃隊と迎撃隊から選ばれた騎士たちに、モンスターとの戦い方を教えていた。
ちなみに私は遊撃隊でもあり迎撃隊でもあるが、団長からの特別推薦という形になっている。
「人間と違うのは、モンスターには『疲れる』というのがないことですね」
「耐久戦ができないということか」
「はい、やろうとしてもこっちの体力がやられます」
モンスター自体を傷つけない限り、動きが鈍ることはない。
「あと、モンスターごとに弱点が違うので、ダンジョンによく出るモンスターのことは把握しておいた方がいいと思います」
私はポケットから紙を三枚取り出し、ディスモンドに手渡した。
「まとめてくれたのか」
実は昨日の夜、自分が思い出せる限りで、よく遭遇したモンスターを書き出していたのだ。
「ギルドから騎士団の方にもモンスターの資料は受け取ったが、こちらの方が分かりやすい」
もちろん、冒険者ギルドからそういう情報が届くのを見越していた。私の資料には、実際に戦った人にしか分からないようなことを中心にまとめられている。
「なるほど、このアウバールという奴はそんなにすばしっこいのか。それなら騎馬相手に強い弓使いに任せるか」
「何? 俺にも見せろ」
「弓使い」という言葉に反応したリッカルドが、ディスモンドの横から私の資料をのぞき見した。
「明日出動でこの量は厳しいな。もう一日時間があれば、全員分書き写せるのだが」
確かに、初級・中級・上級のダンジョンに出るモンスターのすべてとなると、リッカルドの速記術をもってしても難しいだろう。
私も一年以上冒険者をやってきて、じっくり身に着けた情報である。
「それなら、僕たちが今日で頑張って覚えて、本番は僕たちの指示で動いてもらうようにすればいいんじゃないですか?」
「あぁ、それしかない」
オズワルドの提案にうなずく兄たち。私もきっとその指示役に回るよね。
そして、わざわざ自分が大変な思いをする方の選択をした三兄弟に、私は感心するいっぽうだった。
ついに半年ぶりに冒険者ギルドに帰ってきてしまった。
しかし、あのときから私は変わった。腰まで伸びた銀髪はコシと艶があるまっすぐな髪に、表情は生き生きとし、『雪のような白い肌』が少し赤みを帯びて輝いている。
だが、今は鎧を着ているため、それらは外から確認できないのだが。
「ベーム騎士団のみなさま、お待ちしておりました」
ギルドの建物に入ると、管理人が私たちを出迎えてくれた。その周りには、普段は見られない騎士たちを見ようと、女性の冒険者たちが集まってきている。
「はぁ、やっぱりかっこいいねー!」
「私たちとは、もう見た目から違うもんね」
「やっぱりリッカルド様、いい……」
「オズワルド様の方がいいでしょ。見た目はかわいい系なのにめっちゃ強いし」
「なんで! 真面目で気配りができるディスモンド様が一番!」
そこで静かな戦争が繰り広げられていることが気になりすぎる。この地獄耳のせいだ。
「ねぇねぇ、あの子がクリスタルじゃない? ディエゴのパーティを追放されたのに騎士団にスカウトされた」
げっ、気づかれた。
「いいよね~! だってあの三兄弟と一緒に練習できるなんてうらやましすぎる!」
そ、そっち?
「ぜったいモテてるよね! もしかして、三兄弟の誰かともう『そういう関係』になってたり?」
「なってるでしょ! スカウトだもんね。お気に入りだろうから、ね?」
なってない! 今言われてみて自分でもびっくりしてるけど、あの三兄弟をそういう目で見たことない!
心の中で反論しながら、久しぶりに会った管理人の話を一生懸命聞く。
「そこに集まってきているのは初級冒険者です。彼女らはダンジョンが危険すぎて討伐に行けないので、ピンピンしています」
こっそり見に来たつもりが管理人に見つかってしまっている。遠回しに管理人の毒舌をくらった女性冒険者たちは、散り散りになってどこかに消えていった。
「ですが、中級冒険者と特に上級冒険者は満身創痍になっています」
えっ……。
背中に冷や汗がつたっていく。
「一度、上級冒険者を総動員させて、史上最強のモンスター『デス・トリブラス』に挑みましたが、あまりの強さに傷だらけになりながら撤退しました」
その中にはサム兄、姉、セス兄がいるはずだ。弓使い最強と言われる兄や姉でもダメだったなんて……。今の三人の容体は大丈夫なのかな。
「一番の戦力である上級冒険者が討伐に行ける状態ではなくなってしまったのと、デス・トリブラスを倒す手助けをしてほしいと思い、ベーム騎士団にお願いした所存でございます」
あぁ……きっとお兄さまやお姉さまはひどい状態なんだね。もしかしたら……。
最悪の事態も想定しておく。
「モンスターを相手に戦ったことはないが、今までの実戦と訓練で培ったものは生かせるだろう。力になるぞ」
管理人とディスモンドが握手を交わす。私以外にモンスターと戦った経験がないことだけが、一番の気がかりだもんね。剣や弓の技術だけで言えば、騎士はみんな上級冒険者並みだし。
「それではさっそくですが、三つのグループに分かれてほしいです。それぞれ初級・中級・上級のダンジョンに行っていただきます」
指令を受けたディスモンドは、自ら「俺は上級にいこう」と名乗り出た。
「それなら俺は中級に行こう。指示に慣れていないオズは初級で」
「了解」
リッカルドは中級、そして彼の命令でオズワルドが初級ダンジョンに行くことになった。
「第六十期以前の者は上級に、第六十一期から六十五期までは中級に、第六十六期以降の者は初級に行くことにする」
ディスモンドは入団時期で、さっとグループ分けを済ませる。これに従うと、私は七十二期だから初級になるけど――
「だが、一人だけ特例とする。クリスタルは俺と上級に来い」
……ですよね。
「総員、行動開始!」
私は腰に双剣を差したまま弓を握り、嫌な思い出しかない上級ダンジョンに向かった。
ちなみに私は遊撃隊でもあり迎撃隊でもあるが、団長からの特別推薦という形になっている。
「人間と違うのは、モンスターには『疲れる』というのがないことですね」
「耐久戦ができないということか」
「はい、やろうとしてもこっちの体力がやられます」
モンスター自体を傷つけない限り、動きが鈍ることはない。
「あと、モンスターごとに弱点が違うので、ダンジョンによく出るモンスターのことは把握しておいた方がいいと思います」
私はポケットから紙を三枚取り出し、ディスモンドに手渡した。
「まとめてくれたのか」
実は昨日の夜、自分が思い出せる限りで、よく遭遇したモンスターを書き出していたのだ。
「ギルドから騎士団の方にもモンスターの資料は受け取ったが、こちらの方が分かりやすい」
もちろん、冒険者ギルドからそういう情報が届くのを見越していた。私の資料には、実際に戦った人にしか分からないようなことを中心にまとめられている。
「なるほど、このアウバールという奴はそんなにすばしっこいのか。それなら騎馬相手に強い弓使いに任せるか」
「何? 俺にも見せろ」
「弓使い」という言葉に反応したリッカルドが、ディスモンドの横から私の資料をのぞき見した。
「明日出動でこの量は厳しいな。もう一日時間があれば、全員分書き写せるのだが」
確かに、初級・中級・上級のダンジョンに出るモンスターのすべてとなると、リッカルドの速記術をもってしても難しいだろう。
私も一年以上冒険者をやってきて、じっくり身に着けた情報である。
「それなら、僕たちが今日で頑張って覚えて、本番は僕たちの指示で動いてもらうようにすればいいんじゃないですか?」
「あぁ、それしかない」
オズワルドの提案にうなずく兄たち。私もきっとその指示役に回るよね。
そして、わざわざ自分が大変な思いをする方の選択をした三兄弟に、私は感心するいっぽうだった。
ついに半年ぶりに冒険者ギルドに帰ってきてしまった。
しかし、あのときから私は変わった。腰まで伸びた銀髪はコシと艶があるまっすぐな髪に、表情は生き生きとし、『雪のような白い肌』が少し赤みを帯びて輝いている。
だが、今は鎧を着ているため、それらは外から確認できないのだが。
「ベーム騎士団のみなさま、お待ちしておりました」
ギルドの建物に入ると、管理人が私たちを出迎えてくれた。その周りには、普段は見られない騎士たちを見ようと、女性の冒険者たちが集まってきている。
「はぁ、やっぱりかっこいいねー!」
「私たちとは、もう見た目から違うもんね」
「やっぱりリッカルド様、いい……」
「オズワルド様の方がいいでしょ。見た目はかわいい系なのにめっちゃ強いし」
「なんで! 真面目で気配りができるディスモンド様が一番!」
そこで静かな戦争が繰り広げられていることが気になりすぎる。この地獄耳のせいだ。
「ねぇねぇ、あの子がクリスタルじゃない? ディエゴのパーティを追放されたのに騎士団にスカウトされた」
げっ、気づかれた。
「いいよね~! だってあの三兄弟と一緒に練習できるなんてうらやましすぎる!」
そ、そっち?
「ぜったいモテてるよね! もしかして、三兄弟の誰かともう『そういう関係』になってたり?」
「なってるでしょ! スカウトだもんね。お気に入りだろうから、ね?」
なってない! 今言われてみて自分でもびっくりしてるけど、あの三兄弟をそういう目で見たことない!
心の中で反論しながら、久しぶりに会った管理人の話を一生懸命聞く。
「そこに集まってきているのは初級冒険者です。彼女らはダンジョンが危険すぎて討伐に行けないので、ピンピンしています」
こっそり見に来たつもりが管理人に見つかってしまっている。遠回しに管理人の毒舌をくらった女性冒険者たちは、散り散りになってどこかに消えていった。
「ですが、中級冒険者と特に上級冒険者は満身創痍になっています」
えっ……。
背中に冷や汗がつたっていく。
「一度、上級冒険者を総動員させて、史上最強のモンスター『デス・トリブラス』に挑みましたが、あまりの強さに傷だらけになりながら撤退しました」
その中にはサム兄、姉、セス兄がいるはずだ。弓使い最強と言われる兄や姉でもダメだったなんて……。今の三人の容体は大丈夫なのかな。
「一番の戦力である上級冒険者が討伐に行ける状態ではなくなってしまったのと、デス・トリブラスを倒す手助けをしてほしいと思い、ベーム騎士団にお願いした所存でございます」
あぁ……きっとお兄さまやお姉さまはひどい状態なんだね。もしかしたら……。
最悪の事態も想定しておく。
「モンスターを相手に戦ったことはないが、今までの実戦と訓練で培ったものは生かせるだろう。力になるぞ」
管理人とディスモンドが握手を交わす。私以外にモンスターと戦った経験がないことだけが、一番の気がかりだもんね。剣や弓の技術だけで言えば、騎士はみんな上級冒険者並みだし。
「それではさっそくですが、三つのグループに分かれてほしいです。それぞれ初級・中級・上級のダンジョンに行っていただきます」
指令を受けたディスモンドは、自ら「俺は上級にいこう」と名乗り出た。
「それなら俺は中級に行こう。指示に慣れていないオズは初級で」
「了解」
リッカルドは中級、そして彼の命令でオズワルドが初級ダンジョンに行くことになった。
「第六十期以前の者は上級に、第六十一期から六十五期までは中級に、第六十六期以降の者は初級に行くことにする」
ディスモンドは入団時期で、さっとグループ分けを済ませる。これに従うと、私は七十二期だから初級になるけど――
「だが、一人だけ特例とする。クリスタルは俺と上級に来い」
……ですよね。
「総員、行動開始!」
私は腰に双剣を差したまま弓を握り、嫌な思い出しかない上級ダンジョンに向かった。
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