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第四章 元冒険者、真の実力を見せつける
41:これにて証明、謝罪の返答
兄たちの無事を確認し、今度は姉の部屋に向かう。サム兄と同じくらいのケガをしているそうだが、どれほどのケガなのだろうか。
不安げな表情を浮かべて、姉の部屋のドアを叩く。
コンコンコン
「ごめんください、クリスタルです」
「えっ、クリスタル!?」
ガバッと布団か何かをはいだような音がした直後、「あっ、やっちゃった。痛てて……」ともだえ苦しむような声がし、私はドアノブに手をかけた。
ガチャ
兄たちと同じく、部屋の鍵は開いていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
姉はベッドの下でうずくまっていた。
私は開けたドアも閉めずに、真っ先に姉に駆け寄る。
「クリスタルが来て……嬉しくなって……足首の骨が折れてること……忘れてた……」
そう言われて姉の右足首を見てみると、包帯はもちろんのこと、その下に何かで足を固定されているようだった。石膏だろうか。
サム兄のように頭はやられていないが、右半身が全体的にやられているようだ。肩も腕も手首も足首も。
「とりあえず、ベッドに戻します」
「運べる?」
「頑張ります」
弓と双剣で鍛えた両腕が、まさかこういう時に役立つなんて。
掛け布団をいったんテーブルに置くと、私より背の高い姉をお姫様だっこした(顔には出ていないが、実は歯を食いしばっている)。そっとベッドに寝かせ、布団をかけてやる。
そして何事もなかったかのようにドアを閉めにいく。
「なんか妹にこうされるなんて、お姉ちゃんなのに情けないね」
力なく笑う姉に「こういうのはお互い様ですよ」と返しておく。その返答になぜか目を丸くする姉。
「……この前会ったときから、また変わってる」
「まぁ、騎士になったっていうのが大きいですね」
「そうだよ! クリスタルが騎士になれちゃったこと!」
私は今、本来の姉の姿をひしひしと感じている。あの時から『隠しているようだが漏れ出ていたもの』があるが、その答え合わせをしているようだ。ちょっとドジで、おしゃべりで、積極的で、好奇心旺盛で、他人思いで。
あぁ、小さいころからこういう風に話したかった。
「しかも双剣も扱えるなんて……。ますますお父さまのせいで才能の芽が踏みつぶされてたんだなって思ったよ」
こんなにも父の悪口を言う姉を初めて見た。私がそれを苦笑いでごまかす。数秒の静寂のあと、言いづらそうに姉が口を開く。
「でも……どうしてギルドに来てくれたの? 増援とはいえ、他の人に任せることもできただろうに」
やはり一番気になるところだろう。思っていることをそのまま話すことにした。
「この前、お姉さまが店に来て私に謝りましたよね。そのあとお兄さまたちも謝りにきましたが、誰にも返答をしていなくて。謝罪の返答として、ここに来ることを決めました」
「ここに来たっていうことは……?」
「お許しします。よくよく考えてみたら、お父さまが元凶だと気づきました。お兄さまたちはお父さまに従っただけで、お姉さまはお父さまとお兄さまに従っただけなので」
ぱぁっと明るくなる姉の顔。その中には安堵も含まれていた。
本当はついこの間までは許すつもりはなかった。いくら父が元凶とはいえ、私にしたことは言うまでもない事実だからだ。このまま縁を切って騎士に専念しようとも考えていた。
だが、この増援要請をきっかけに考え直してみた。三人とも生きてくれててよかった。
「ありがとう……。許してくれて、しかもここに来てくれて。そうだ、いいこと教えてあげる」
一瞬ではつらつとした雰囲気に戻った姉は、若干声をひそめながら言った。
「私ね、実はクリスタルが追放されてから先日まで、ディエゴのパーティにいたの。クリスタルにしてきたことを色々暴いてやったから、クリスタルがどういう状況だったのか分かった」
と、何か企んでいそうな怪しい笑みを浮かべる姉。
「実はクリスタルを追放してから、ディエゴたち苦労してるそうよ~。どうなってるかは、自分の目で確かめてみて」
あのディエゴたちが、苦労することってあるの!? むしろ、あのときは私が下手すぎてそのフォローに苦労してたくらいなのに。
「えっ、どうして私を追放したのに苦労してるんですか」
「あの三人とも剣使いでしょ? だから飛行モンスターが狩れなくなったらしいの」
私の下手な弓でもあるのとないのとでは、少しは違かったのだろうか。そんなはずはないだろうに。
「あとは噂だけど、クリスタルが何かの能力を持ってて、その能力でディエゴたちを助けてたんじゃないかっていう話」
能力と聞いて、姉にバレない程度にビビる。
こっちにも、そういう話が出てたの?
リッカルドにも「超能力か実力かは分からないけれど、他の弓使いにはない力を持っている」と言われ、風のこどもというものに話しかけられ、冒険者の間でも超能力の話が出ている。
しかもさっき、三体のアウバールの真ん中に矢を当てると、その両隣にいたアウバールもなぜかバランスを崩していた。
デス・トリブラスのことも、ディエゴたちのことも、噂されている超能力も、ふいに全部知りたくなってしまった。
不安げな表情を浮かべて、姉の部屋のドアを叩く。
コンコンコン
「ごめんください、クリスタルです」
「えっ、クリスタル!?」
ガバッと布団か何かをはいだような音がした直後、「あっ、やっちゃった。痛てて……」ともだえ苦しむような声がし、私はドアノブに手をかけた。
ガチャ
兄たちと同じく、部屋の鍵は開いていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
姉はベッドの下でうずくまっていた。
私は開けたドアも閉めずに、真っ先に姉に駆け寄る。
「クリスタルが来て……嬉しくなって……足首の骨が折れてること……忘れてた……」
そう言われて姉の右足首を見てみると、包帯はもちろんのこと、その下に何かで足を固定されているようだった。石膏だろうか。
サム兄のように頭はやられていないが、右半身が全体的にやられているようだ。肩も腕も手首も足首も。
「とりあえず、ベッドに戻します」
「運べる?」
「頑張ります」
弓と双剣で鍛えた両腕が、まさかこういう時に役立つなんて。
掛け布団をいったんテーブルに置くと、私より背の高い姉をお姫様だっこした(顔には出ていないが、実は歯を食いしばっている)。そっとベッドに寝かせ、布団をかけてやる。
そして何事もなかったかのようにドアを閉めにいく。
「なんか妹にこうされるなんて、お姉ちゃんなのに情けないね」
力なく笑う姉に「こういうのはお互い様ですよ」と返しておく。その返答になぜか目を丸くする姉。
「……この前会ったときから、また変わってる」
「まぁ、騎士になったっていうのが大きいですね」
「そうだよ! クリスタルが騎士になれちゃったこと!」
私は今、本来の姉の姿をひしひしと感じている。あの時から『隠しているようだが漏れ出ていたもの』があるが、その答え合わせをしているようだ。ちょっとドジで、おしゃべりで、積極的で、好奇心旺盛で、他人思いで。
あぁ、小さいころからこういう風に話したかった。
「しかも双剣も扱えるなんて……。ますますお父さまのせいで才能の芽が踏みつぶされてたんだなって思ったよ」
こんなにも父の悪口を言う姉を初めて見た。私がそれを苦笑いでごまかす。数秒の静寂のあと、言いづらそうに姉が口を開く。
「でも……どうしてギルドに来てくれたの? 増援とはいえ、他の人に任せることもできただろうに」
やはり一番気になるところだろう。思っていることをそのまま話すことにした。
「この前、お姉さまが店に来て私に謝りましたよね。そのあとお兄さまたちも謝りにきましたが、誰にも返答をしていなくて。謝罪の返答として、ここに来ることを決めました」
「ここに来たっていうことは……?」
「お許しします。よくよく考えてみたら、お父さまが元凶だと気づきました。お兄さまたちはお父さまに従っただけで、お姉さまはお父さまとお兄さまに従っただけなので」
ぱぁっと明るくなる姉の顔。その中には安堵も含まれていた。
本当はついこの間までは許すつもりはなかった。いくら父が元凶とはいえ、私にしたことは言うまでもない事実だからだ。このまま縁を切って騎士に専念しようとも考えていた。
だが、この増援要請をきっかけに考え直してみた。三人とも生きてくれててよかった。
「ありがとう……。許してくれて、しかもここに来てくれて。そうだ、いいこと教えてあげる」
一瞬ではつらつとした雰囲気に戻った姉は、若干声をひそめながら言った。
「私ね、実はクリスタルが追放されてから先日まで、ディエゴのパーティにいたの。クリスタルにしてきたことを色々暴いてやったから、クリスタルがどういう状況だったのか分かった」
と、何か企んでいそうな怪しい笑みを浮かべる姉。
「実はクリスタルを追放してから、ディエゴたち苦労してるそうよ~。どうなってるかは、自分の目で確かめてみて」
あのディエゴたちが、苦労することってあるの!? むしろ、あのときは私が下手すぎてそのフォローに苦労してたくらいなのに。
「えっ、どうして私を追放したのに苦労してるんですか」
「あの三人とも剣使いでしょ? だから飛行モンスターが狩れなくなったらしいの」
私の下手な弓でもあるのとないのとでは、少しは違かったのだろうか。そんなはずはないだろうに。
「あとは噂だけど、クリスタルが何かの能力を持ってて、その能力でディエゴたちを助けてたんじゃないかっていう話」
能力と聞いて、姉にバレない程度にビビる。
こっちにも、そういう話が出てたの?
リッカルドにも「超能力か実力かは分からないけれど、他の弓使いにはない力を持っている」と言われ、風のこどもというものに話しかけられ、冒険者の間でも超能力の話が出ている。
しかもさっき、三体のアウバールの真ん中に矢を当てると、その両隣にいたアウバールもなぜかバランスを崩していた。
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