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指令2 未知のウイルスから人間を護りきれ!
22:# 今年起きることを予想する
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もうすぐ四月が終わるというのに、今年は朝にコートがいるような寒い年になりそうだ。本来ならばもう半袖が着たくなるような日もあるというのに。
学校指定のコートが届くのは夏になってからなので、麻里菜たち一年生は寒い寒い言いながら、駅からの道を歩いていた。
「麻里菜ー、寒いから手つなご」
「寒くなくてもどうせつなぐでしょ」
「じゃあ恋人つなぎ」
美晴は麻里菜の手のひらと自分の手のひらを重ね、指をたがいちがいに組み合わせる。
「他の人にチラチラ見られそうだけど」
「いいのいいの! 学校公認カップルに認定してもらうの!」
「この学校で本当にあるのか……?」
美晴の冷たい指先が手の甲に伝わってくる。
「麻里菜の手、あったかい」
「……眠いからね」
「眠いからあったかくなるって赤ちゃんみたい。赤ちゃんより麻里菜はかわいいけど」
「またそうやって……。私の機嫌をとっても何もしないよ?」
すると、美晴の右手の指が麻里菜のほほをつついた。
「私はただそう思っただけだから言ったのに。分かってないなぁ~」
「前も言ったけど、他人からかわいいって言われたことなんてお世辞にもないから。つい癖で」
「一目惚れだったのにな~! この上目遣い」
麻里菜はムッとした顔に変える。
「チビですが、何か?」
「なんで怒ってるの~、麻里菜をいじろうとしたわけじゃないのに~」
麻里菜はふと、一つの感情が芽生えた。
美晴を……抱きしめたい。
こういうことなのか。私にもそんな感情、あったんだ。
美晴がなぜあいさつ代わりにハグしてくる(下心あり)のか、麻里菜には見当もついていなかった。だが一ヶ月弱 美晴とともに過ごしていくうちに、彼女から影響を受けたのだろう。
麻里菜はつないでいた手を離し、美晴の片腕を抱いて頭をもたれ、「怒ってないよ」と少し低めの声で言った。低い声でも怒りをこらえているような声ではない。
「ちょっとちょっと! それはやばい!」
「じゃあ離す……」
「そのままで! ……おっと?」
美晴はピタッと立ち止まる。
「麻里菜からそうやってアピールしてきたっていうことは……なるほど、構ってほしいの?」
「いや、アピールしたとか、構ってほしいわけじゃなくて……その……」
「分かった! なんとなくそうしたくなったから?」
うぐっ……!
麻里菜のほほや耳がたちまち赤くなり、美晴は「当たった!」と愉快そうだ。
「ふーん……あとで存分に構ってあげるからね~」
麻里菜はほてって暑くなった自身を手であおぎ、美晴の腕を離した。
「麻里菜ってあんまり感情を表に出さないと思ってたけど、図星だと顔に出ちゃうタイプ? ポーカーフェイスできない系?」
いや、そんなことはないはず。えっと……どう説明すればいいんだ?
「ここじゃ大声では言えないけど、ポーカーフェイスはできるはずだよ。敵に表情からさとられてたら、妖魔界も人間界も救えてないはずだし」
「そっか。……あっ、分かった!」
ここのところ無駄に勘がいい美晴がひらめいたようである。
「麻里菜って私以外に告られたことはないし、自分から告ったこともないって言ってたよね?」
「……うん」
「恋愛には疎いってこと! 自分が照れちゃうような経験をしてこなかったから、耐性がついてないんだ!」
「あ……それだ」
これほどないほど腑に落ちる答えに、麻里菜は認めるほかなかった。
美晴の口角がゆっくりと上がる。
「よーし、麻里菜の弱点はっけ~ん!」
今度は逆に腕をつかまれる。身長差が十センチ以上あるので、美晴は少しかがむようにしている。
麻里菜は内心「やばい」と思いながらも、ポーカーフェイスで「……どんなことやら」とそっぽを向いた。
パソコンの画面に張りついている蓮斗は、あることが話題になっているのを知った。
「ここの『今年起きることの予想』スレからか……」
昨年の十二月にも話題になったが、それから追加されたコメントも含めて再び話題になっているようだ。起こってほしいことや起こってほしくないことまで、たくさんの人がつぶやき、投稿している。
その時、蓮斗は凄まじい勢いで『いいね』が増えていくツイートが目に入った。毎日みんなの話題を追っているのでよくあることである。が、内容に目を疑った。
『#今年起きることを予想する
これ実現したら高齢者の交通事故が減りそうな件』
そのツイートにあった画像。おそらくスクショをしたのだろう。『老人だけが死ねウイルスが蔓延して、超高齢化社会が緩和される』と。
「これがこんなにいいねされて……この世の終わりだな。先週大きなニュースになったからって、すぐにこうだ」
蓮斗はパソコンでスクショをしておいた。内容が内容なので、通報されたら消されてしまう可能性もあるからだ。
スクショした時点ですでに二万もの『いいね』が押されており、バズったと言っていいだろう。
「毎年こういうスレとか投稿で話題になるが……毎年起きてほしくない予想のどれかが当たっちまうんだよな」
話題になった投稿をスクショし、年末に予想が当たったか確認するのが、蓮斗の密かな楽しみなのだ。
「俺も何かしら予想はするけど当たった試しがねえ」
つぶやきながら、昨日メールに送られてきたいかにも怪しいURLを、蓮斗はそれを押せないように改造して送り返してやった。おまけに自作のコンピューターウイルスも。
「あいつがこのメールを開いた瞬間、今までに作って拡散させて金を手に入れていたウイルスの情報、警察に全部ぶちまけられるんだからな……!」
送信完了の文字が表示され、蓮斗は「こっちのセキュリティも強化しねぇと」と言いながらメールを閉じた。
次の日、L|NEグループ『あやかしデュエット+α』で、蓮斗が『やったぞ!』とともにURLが送られてきた。動画のリンクらしく、サムネイルが表示されている。
蓮『ウイルス作成罪もろもろで捕まった奴いるだろ? ツイッターやインスタのDMで拡散させて、金を騙し取ったりな。確か、JUST FOR YOUっていうやつ』
麻里菜はサムネイルをタップした。民放のニュースを切り取った動画である。「今日未明、警察に届いたメールはなんとコンピューターウイルスの情報でした」とアナウンサーが述べているが。
麻『これって例のハッキング?』
蓮『まぁ、ハッキングもしたけどな。こっちも同じくウイルスを使った。メールを開いた途端に、そのコンピューターの中にあるウイルス情報が警察に送られるっていうやつを』
麻『何か……すごいことをしたんだね』
家族よりは機械音痴でない麻里菜も、理解するのに数秒かかった。
美『でもさぁ、れんとのしたことも犯罪でしょ?』
麻『確かに……今日捕まった犯人ってウイルス作成罪だって言ってたからね』
麻里菜は蓮斗の返答を待った。そもそもウイルスを作ることすら犯罪なのだから。
待ち時間に少し調べる。どうやら作成・提供・供用・取得・保管、いずれも犯罪らしい。
これ、知らない間にウイルスの情報を持っていたとしても、犯罪になるのか……? まぁいいか。
蓮斗の長文メッセージが表示された。
蓮『それはその……俺もバレたらお縄。だが……俺はウイルスを使って金を取るなんて、一切してないからな。こうやってウイルスを悪い方に使ってる奴をこらしめてるだけだ』
この前は国会議員の経歴詐称をリークしたというのだから、一見『正義』と言われれば正義なのかもしれない。
グレーゾーンを生きる蓮斗に、麻里菜は少し親近感が湧いてきたのだった。
学校指定のコートが届くのは夏になってからなので、麻里菜たち一年生は寒い寒い言いながら、駅からの道を歩いていた。
「麻里菜ー、寒いから手つなご」
「寒くなくてもどうせつなぐでしょ」
「じゃあ恋人つなぎ」
美晴は麻里菜の手のひらと自分の手のひらを重ね、指をたがいちがいに組み合わせる。
「他の人にチラチラ見られそうだけど」
「いいのいいの! 学校公認カップルに認定してもらうの!」
「この学校で本当にあるのか……?」
美晴の冷たい指先が手の甲に伝わってくる。
「麻里菜の手、あったかい」
「……眠いからね」
「眠いからあったかくなるって赤ちゃんみたい。赤ちゃんより麻里菜はかわいいけど」
「またそうやって……。私の機嫌をとっても何もしないよ?」
すると、美晴の右手の指が麻里菜のほほをつついた。
「私はただそう思っただけだから言ったのに。分かってないなぁ~」
「前も言ったけど、他人からかわいいって言われたことなんてお世辞にもないから。つい癖で」
「一目惚れだったのにな~! この上目遣い」
麻里菜はムッとした顔に変える。
「チビですが、何か?」
「なんで怒ってるの~、麻里菜をいじろうとしたわけじゃないのに~」
麻里菜はふと、一つの感情が芽生えた。
美晴を……抱きしめたい。
こういうことなのか。私にもそんな感情、あったんだ。
美晴がなぜあいさつ代わりにハグしてくる(下心あり)のか、麻里菜には見当もついていなかった。だが一ヶ月弱 美晴とともに過ごしていくうちに、彼女から影響を受けたのだろう。
麻里菜はつないでいた手を離し、美晴の片腕を抱いて頭をもたれ、「怒ってないよ」と少し低めの声で言った。低い声でも怒りをこらえているような声ではない。
「ちょっとちょっと! それはやばい!」
「じゃあ離す……」
「そのままで! ……おっと?」
美晴はピタッと立ち止まる。
「麻里菜からそうやってアピールしてきたっていうことは……なるほど、構ってほしいの?」
「いや、アピールしたとか、構ってほしいわけじゃなくて……その……」
「分かった! なんとなくそうしたくなったから?」
うぐっ……!
麻里菜のほほや耳がたちまち赤くなり、美晴は「当たった!」と愉快そうだ。
「ふーん……あとで存分に構ってあげるからね~」
麻里菜はほてって暑くなった自身を手であおぎ、美晴の腕を離した。
「麻里菜ってあんまり感情を表に出さないと思ってたけど、図星だと顔に出ちゃうタイプ? ポーカーフェイスできない系?」
いや、そんなことはないはず。えっと……どう説明すればいいんだ?
「ここじゃ大声では言えないけど、ポーカーフェイスはできるはずだよ。敵に表情からさとられてたら、妖魔界も人間界も救えてないはずだし」
「そっか。……あっ、分かった!」
ここのところ無駄に勘がいい美晴がひらめいたようである。
「麻里菜って私以外に告られたことはないし、自分から告ったこともないって言ってたよね?」
「……うん」
「恋愛には疎いってこと! 自分が照れちゃうような経験をしてこなかったから、耐性がついてないんだ!」
「あ……それだ」
これほどないほど腑に落ちる答えに、麻里菜は認めるほかなかった。
美晴の口角がゆっくりと上がる。
「よーし、麻里菜の弱点はっけ~ん!」
今度は逆に腕をつかまれる。身長差が十センチ以上あるので、美晴は少しかがむようにしている。
麻里菜は内心「やばい」と思いながらも、ポーカーフェイスで「……どんなことやら」とそっぽを向いた。
パソコンの画面に張りついている蓮斗は、あることが話題になっているのを知った。
「ここの『今年起きることの予想』スレからか……」
昨年の十二月にも話題になったが、それから追加されたコメントも含めて再び話題になっているようだ。起こってほしいことや起こってほしくないことまで、たくさんの人がつぶやき、投稿している。
その時、蓮斗は凄まじい勢いで『いいね』が増えていくツイートが目に入った。毎日みんなの話題を追っているのでよくあることである。が、内容に目を疑った。
『#今年起きることを予想する
これ実現したら高齢者の交通事故が減りそうな件』
そのツイートにあった画像。おそらくスクショをしたのだろう。『老人だけが死ねウイルスが蔓延して、超高齢化社会が緩和される』と。
「これがこんなにいいねされて……この世の終わりだな。先週大きなニュースになったからって、すぐにこうだ」
蓮斗はパソコンでスクショをしておいた。内容が内容なので、通報されたら消されてしまう可能性もあるからだ。
スクショした時点ですでに二万もの『いいね』が押されており、バズったと言っていいだろう。
「毎年こういうスレとか投稿で話題になるが……毎年起きてほしくない予想のどれかが当たっちまうんだよな」
話題になった投稿をスクショし、年末に予想が当たったか確認するのが、蓮斗の密かな楽しみなのだ。
「俺も何かしら予想はするけど当たった試しがねえ」
つぶやきながら、昨日メールに送られてきたいかにも怪しいURLを、蓮斗はそれを押せないように改造して送り返してやった。おまけに自作のコンピューターウイルスも。
「あいつがこのメールを開いた瞬間、今までに作って拡散させて金を手に入れていたウイルスの情報、警察に全部ぶちまけられるんだからな……!」
送信完了の文字が表示され、蓮斗は「こっちのセキュリティも強化しねぇと」と言いながらメールを閉じた。
次の日、L|NEグループ『あやかしデュエット+α』で、蓮斗が『やったぞ!』とともにURLが送られてきた。動画のリンクらしく、サムネイルが表示されている。
蓮『ウイルス作成罪もろもろで捕まった奴いるだろ? ツイッターやインスタのDMで拡散させて、金を騙し取ったりな。確か、JUST FOR YOUっていうやつ』
麻里菜はサムネイルをタップした。民放のニュースを切り取った動画である。「今日未明、警察に届いたメールはなんとコンピューターウイルスの情報でした」とアナウンサーが述べているが。
麻『これって例のハッキング?』
蓮『まぁ、ハッキングもしたけどな。こっちも同じくウイルスを使った。メールを開いた途端に、そのコンピューターの中にあるウイルス情報が警察に送られるっていうやつを』
麻『何か……すごいことをしたんだね』
家族よりは機械音痴でない麻里菜も、理解するのに数秒かかった。
美『でもさぁ、れんとのしたことも犯罪でしょ?』
麻『確かに……今日捕まった犯人ってウイルス作成罪だって言ってたからね』
麻里菜は蓮斗の返答を待った。そもそもウイルスを作ることすら犯罪なのだから。
待ち時間に少し調べる。どうやら作成・提供・供用・取得・保管、いずれも犯罪らしい。
これ、知らない間にウイルスの情報を持っていたとしても、犯罪になるのか……? まぁいいか。
蓮斗の長文メッセージが表示された。
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