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指令2 未知のウイルスから人間を護りきれ!
38:出会えてよかった、ありがとう
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今、麻里菜は学校の最寄り駅の近くにあるショッピングモールにいる。
「麻里菜と制服デート~!」
「って、言っておいてほんとは涼みたかっただけでしょ」
「それもそうだけど、麻里菜ともっと平日も過ごしたいというか……その……」
その後の言葉が続かず、顔だけ赤くなり続ける美晴。
「まぁ、京浜止まっちゃってるし、ここで時間つぶした方がいいからね」
「そそ、結局はそういうこと!」
表向きは京浜東北線の運転再開までの埋め合わせ、本当のところはデートである。
「手つなご」
「いいよ」
麻里菜は右手に持っていたクラリネットのケースを左手に持ち替える。
「どうする? 吹部入るの?」
「いやぁ、これからまた何があるか分かんないし、私は入んないかな」
「だよね~、うちの学校そんなにうまくないし……みんながうまくないと意味ないんだよね~」
「確かに」
いつもの電車で帰っていれば電車が止まる前に家に着けただろうが、吹奏楽部から勧誘されて吹くハメになった。「えっ、ソロコンで優勝した人ですよね? ぜひ一緒に吹かせてください!」と。
おかげで部活動の最中に人身事故が起こって、あと一時間は動かないらしい。
「この中に楽器屋さんあるよね? 行こっか」
「あ、うん。ついでにリード買おう」
少し早歩きで美晴に連れられると、三階にそれはあった。
「すみません、練習室を予約していた高山です」
美晴はカウンターの店員に話しかける。
「えっ、予約?」
「へへっ、久しぶりに麻里菜と楽器吹きたくて。学校に楽器持っていくしちょうどいいって思ってね」
こ、これってわざと? 京浜止まったの関係なしにここに連れて来られる予定だったってこと?
「では、そこの二番のお部屋になります」
半分頭が混乱しながら、六十分だけ練習室を借りることとなった。
「表向きは楽器の練習、本当は麻里菜とこうやりたかったっていうのもあるんだけどね!」
荷物を置いた麻里菜に、美晴は後ろからぎゅうっと抱きついてくる。
「ちょっと、リュック下ろしたばっかだから汗臭いよ」
「臭くないよ、麻里菜はいい匂いだもん」
いつも一方的にハグされるがままの麻里菜だが、ゆっくりとふり返って美晴をじっと見上げる。
「麻里菜……?」
頭を美晴の肩にもたれ、腰に手をまわした。心臓が高鳴るのと同時に、張り詰めていた何かが洗い出されるような感覚に陥った。
美晴も麻里菜の肩にうずめるようにして、麻里菜の背中に手をまわす。
「自分の心に正直になろうって思ってさ」
「それはつまり? そんな遠回しじゃなくて」
「えぇーっ」
渋る麻里菜に美晴が耳うちでトドメをさす。
「ほら、言ってよ」
体をビクッと震わせた麻里菜は「耳弱いって分かっててこういうことするんだから……」と顔を赤らめる。
「美晴……美晴と出会えてよかった、ありがとう。大好き」
「好きじゃなくて、大好き?」
「うん……美晴は心のよりどころって感じ」
「えっ、ホントに?」
「うん」
ただただ恥ずかしく、また美晴の肩に顔をうずめる麻里菜。
美晴に頭をぽんぽんされると、クイッとほほに手を置かれて美晴の目を見させられる。
「麻里菜ってさ、キスしたことある?」
「したこと……ないけど」
「じゃあ麻里菜のファーストキス奪っていい?」
「えっ、ちょっ――」
美晴の顔が少し横に傾きながら迫ってくる。
唇と唇が触れ合った。
「えへへ、麻里菜、私も大好きだよ」
一瞬で唇を離したと思わせ、美晴は再び唇を触れさせた。
「んんっ……」
麻里菜の後頭部に美晴の手があるため、離れたくても離れられない。唇から美晴の体温を感じる。
また唇を離し一回呼吸してまた唇を――
と、麻里菜のほほに冷たいものを感じた。
「泣いてる……? どうしたの?」
「ごめん、ちょっとおとといのことを思い出しちゃって」
「おととい……」
「麻里菜があの毒ガスで倒れた時、もう麻里菜と会えないって思っちゃって。麻里菜に守ってもらったのに、何もできないのかって。蓮斗に治してもらって私の隣に来た時、嬉しくて目がうるみそうで……」
そう言うと美晴はしゃっくりを上げて泣き出した。
「もう、すごい心配したんだからね」
互いの額をピタリと合わせると、美晴は「私をかばったおしおき」と唇をまた触れさせる。
麻里菜の頭の中は真っ白でぼうっとしてきてしまった。「そうしなかったら美晴の命もないよ」と反論する気力も出なかった。
「じゃあ……そろそろ練習しよっか」
「う、うん」
美晴がニコッと笑って顔を遠ざける。
麻里菜はイスに座り、ハッキリと聞こえる心音を抑えるために深呼吸をしてから、手の甲をほほに当てる。ほてったほほを急速冷却する。
「麻里菜、これ一緒に吹こう」
「LiSAの『炎』……聞いたことはあるって、げっ」
なんと、美晴は原曲キーのままの楽譜を持ってきたのだ。
クラリネットで吹くと、サビから調号がシャープ六つになるのだ。
「美晴はフルートだからいいけどさ……クラ鬼畜なんだけど」
「えー、麻里菜ならできるでしょ?」
「頑張ってはみる」
シャープにならない唯一の音『シ』を四角で囲み、臨時記号のナチュラルに丸をつけていく。
「私もちゃんとは楽譜見てないから……ここで転調して……」
美晴も要所要所を吹きながら確認していく。
「残り十分になったら合わせるからね。あとの五分は片づけの時間にするから」
「オッケー」
サビ前をさらっているのを止めて、返事をする。
やっぱり、美晴の方がリーダーシップがあるんだよなぁ。
「あのさ、私が一応姉だけど、美晴の方がこうやって誰かを引っ張っていけるから……実質美晴の方が姉なんじゃないかなって」
美晴はフルートから口を離す。
「そんなことないよ。ぜんぜん麻里菜の方が姉だって。立てこもり事件の時だって、私が妖力に目覚めた時だって、引っ張ってくれたのは麻里菜だもん。私が麻里菜を引っ張れるのは日常生活くらいしかないし」
「なんか、お互いが依存してる気がする」
苦笑してクラリネットのマウスピースをくわえる麻里菜。サビ前の練習を再開する。
「うん、双子だけど戸籍上は他人だし、将来的には同棲……」
「えっ、何だって?」
「な、なんでもない!」
……実はちゃんと聞こえてるよ。将来的にね、いつかはね。
まぁ、寂しくはなくなるか。
三十分まるまる練習し終わると、美晴が手を叩いた。
「それじゃあ、合わせてみよっか」
キュウビとヌエが奏でるのは、二人だけの秘密の音だった。曲名のとおり、あのとき二人の胸には大きな炎が灯っていた。
静かに曲が終わっても、耳には互いの音が残響より濃く残っている。
「麻里菜と制服デート~!」
「って、言っておいてほんとは涼みたかっただけでしょ」
「それもそうだけど、麻里菜ともっと平日も過ごしたいというか……その……」
その後の言葉が続かず、顔だけ赤くなり続ける美晴。
「まぁ、京浜止まっちゃってるし、ここで時間つぶした方がいいからね」
「そそ、結局はそういうこと!」
表向きは京浜東北線の運転再開までの埋め合わせ、本当のところはデートである。
「手つなご」
「いいよ」
麻里菜は右手に持っていたクラリネットのケースを左手に持ち替える。
「どうする? 吹部入るの?」
「いやぁ、これからまた何があるか分かんないし、私は入んないかな」
「だよね~、うちの学校そんなにうまくないし……みんながうまくないと意味ないんだよね~」
「確かに」
いつもの電車で帰っていれば電車が止まる前に家に着けただろうが、吹奏楽部から勧誘されて吹くハメになった。「えっ、ソロコンで優勝した人ですよね? ぜひ一緒に吹かせてください!」と。
おかげで部活動の最中に人身事故が起こって、あと一時間は動かないらしい。
「この中に楽器屋さんあるよね? 行こっか」
「あ、うん。ついでにリード買おう」
少し早歩きで美晴に連れられると、三階にそれはあった。
「すみません、練習室を予約していた高山です」
美晴はカウンターの店員に話しかける。
「えっ、予約?」
「へへっ、久しぶりに麻里菜と楽器吹きたくて。学校に楽器持っていくしちょうどいいって思ってね」
こ、これってわざと? 京浜止まったの関係なしにここに連れて来られる予定だったってこと?
「では、そこの二番のお部屋になります」
半分頭が混乱しながら、六十分だけ練習室を借りることとなった。
「表向きは楽器の練習、本当は麻里菜とこうやりたかったっていうのもあるんだけどね!」
荷物を置いた麻里菜に、美晴は後ろからぎゅうっと抱きついてくる。
「ちょっと、リュック下ろしたばっかだから汗臭いよ」
「臭くないよ、麻里菜はいい匂いだもん」
いつも一方的にハグされるがままの麻里菜だが、ゆっくりとふり返って美晴をじっと見上げる。
「麻里菜……?」
頭を美晴の肩にもたれ、腰に手をまわした。心臓が高鳴るのと同時に、張り詰めていた何かが洗い出されるような感覚に陥った。
美晴も麻里菜の肩にうずめるようにして、麻里菜の背中に手をまわす。
「自分の心に正直になろうって思ってさ」
「それはつまり? そんな遠回しじゃなくて」
「えぇーっ」
渋る麻里菜に美晴が耳うちでトドメをさす。
「ほら、言ってよ」
体をビクッと震わせた麻里菜は「耳弱いって分かっててこういうことするんだから……」と顔を赤らめる。
「美晴……美晴と出会えてよかった、ありがとう。大好き」
「好きじゃなくて、大好き?」
「うん……美晴は心のよりどころって感じ」
「えっ、ホントに?」
「うん」
ただただ恥ずかしく、また美晴の肩に顔をうずめる麻里菜。
美晴に頭をぽんぽんされると、クイッとほほに手を置かれて美晴の目を見させられる。
「麻里菜ってさ、キスしたことある?」
「したこと……ないけど」
「じゃあ麻里菜のファーストキス奪っていい?」
「えっ、ちょっ――」
美晴の顔が少し横に傾きながら迫ってくる。
唇と唇が触れ合った。
「えへへ、麻里菜、私も大好きだよ」
一瞬で唇を離したと思わせ、美晴は再び唇を触れさせた。
「んんっ……」
麻里菜の後頭部に美晴の手があるため、離れたくても離れられない。唇から美晴の体温を感じる。
また唇を離し一回呼吸してまた唇を――
と、麻里菜のほほに冷たいものを感じた。
「泣いてる……? どうしたの?」
「ごめん、ちょっとおとといのことを思い出しちゃって」
「おととい……」
「麻里菜があの毒ガスで倒れた時、もう麻里菜と会えないって思っちゃって。麻里菜に守ってもらったのに、何もできないのかって。蓮斗に治してもらって私の隣に来た時、嬉しくて目がうるみそうで……」
そう言うと美晴はしゃっくりを上げて泣き出した。
「もう、すごい心配したんだからね」
互いの額をピタリと合わせると、美晴は「私をかばったおしおき」と唇をまた触れさせる。
麻里菜の頭の中は真っ白でぼうっとしてきてしまった。「そうしなかったら美晴の命もないよ」と反論する気力も出なかった。
「じゃあ……そろそろ練習しよっか」
「う、うん」
美晴がニコッと笑って顔を遠ざける。
麻里菜はイスに座り、ハッキリと聞こえる心音を抑えるために深呼吸をしてから、手の甲をほほに当てる。ほてったほほを急速冷却する。
「麻里菜、これ一緒に吹こう」
「LiSAの『炎』……聞いたことはあるって、げっ」
なんと、美晴は原曲キーのままの楽譜を持ってきたのだ。
クラリネットで吹くと、サビから調号がシャープ六つになるのだ。
「美晴はフルートだからいいけどさ……クラ鬼畜なんだけど」
「えー、麻里菜ならできるでしょ?」
「頑張ってはみる」
シャープにならない唯一の音『シ』を四角で囲み、臨時記号のナチュラルに丸をつけていく。
「私もちゃんとは楽譜見てないから……ここで転調して……」
美晴も要所要所を吹きながら確認していく。
「残り十分になったら合わせるからね。あとの五分は片づけの時間にするから」
「オッケー」
サビ前をさらっているのを止めて、返事をする。
やっぱり、美晴の方がリーダーシップがあるんだよなぁ。
「あのさ、私が一応姉だけど、美晴の方がこうやって誰かを引っ張っていけるから……実質美晴の方が姉なんじゃないかなって」
美晴はフルートから口を離す。
「そんなことないよ。ぜんぜん麻里菜の方が姉だって。立てこもり事件の時だって、私が妖力に目覚めた時だって、引っ張ってくれたのは麻里菜だもん。私が麻里菜を引っ張れるのは日常生活くらいしかないし」
「なんか、お互いが依存してる気がする」
苦笑してクラリネットのマウスピースをくわえる麻里菜。サビ前の練習を再開する。
「うん、双子だけど戸籍上は他人だし、将来的には同棲……」
「えっ、何だって?」
「な、なんでもない!」
……実はちゃんと聞こえてるよ。将来的にね、いつかはね。
まぁ、寂しくはなくなるか。
三十分まるまる練習し終わると、美晴が手を叩いた。
「それじゃあ、合わせてみよっか」
キュウビとヌエが奏でるのは、二人だけの秘密の音だった。曲名のとおり、あのとき二人の胸には大きな炎が灯っていた。
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