欠陥品と彼女達 〜俺の世話係の瀬戸さんは今日もツンツンしている〜

桂要

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第2話 続・屋上にて

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 今回は、ドスドスという足音と、乱暴なドアの開け方から天音ちゃんとは別の人だろう。

「峯岸(みねぎし)、いい加減授業に出ろ」

 予鈴がなっているのにここにいることと、声が少し大人びていることから、生徒ではなく先生だろう。
 そして、この学校で唯一俺にとやかく言ってくるめんどくさい先生は一人しかいない。

「あんたも峯岸だろ、姉ちゃん。また来たのかよ」

 俺が向きなおると、そこには百七十センチの俺より五センチほど低い身長の女性が立っていた。
 その正体はなにを隠そう俺の実の姉である、峯岸彩香(みねぎしあやか)だ。 
 まさかの俺のクラスの担任でもある。ちょっと気まずいんだよな、これが。

「学校では先生なんだからちゃんと先生って言え」

 姉ちゃんが、手に持っていた出席簿らしきもので、俺の頭をポン……ではないな、ゴンと叩いた。
 いやいや、そこ普通平面でやるだろ。なんで角で、しかも一番痛いほうで叩くんだよ。
 俺は、姉ちゃんにぶったたかれた脳天を抑えながら、口を開く。

「そんなことより、授業は? 行かなくていいの?」
「五限目は担当がないんだ。だからこうして伊吹(いぶき)に絡みにきたんだ」

 うわーだる絡みかよ。帰ってくれよ。それか仕事してろよ。
 ていうか、学校なんだから姉ちゃんも峯岸呼びを突き通せよ。

「だる絡みとはなんだ。これが私の仕事だ」
「俺とこうやって駄弁るのが?」
「伊吹を更生させて授業に出席させることだ」

 俺が姉ちゃんの揚げ足を取ると、姉ちゃんは鋭い眼差しになり、間髪入れずに訂正をした。
 ちょっと怖気づいてしまった。危ない危ない、チビってしまうところであった。
 それにしても、失敬な。更生とはなんだ、俺がグレにグレ切った不良みたいじゃないか。

「授業をサボって屋上で寝てる時点で十分不良だ」

 姉ちゃんが、まるで天音ちゃんのように頭を抱え、大きなため息を吐いた。
 別に成績がいいんだから不良じゃないだろ? ……え? 不良か不良じゃないかに成績は関係ないって?
 そこから少しの間、沈黙が続いた。
 暖かい風のせいで徐々に眠気が強まり、給食後の国語の様な眠気だった。
 俺がもう半分ほど目を閉じ始めた時、姉ちゃんが口を開いた。

「勉強の調子はどうだ?」

 姉ちゃんは俺の方をチラッと向き、ニカっと微笑みながらそういった。
 前も言ったが、俺は高校の勉強を中学のときに全て終わらせている。
 だから勉強するわけでもなく帰ったらだらーっとしているのだ。

「調子も何も、勉強なんてしてないよ」

 俺がそう言うと、姉ちゃんは明後日の方向を向いて少し黙った。

「なんで学校をサボるんだ?」
 
 次の質問を考えついたらしい姉ちゃんは俺の方を向き直った。
 姉ちゃんは、さっきよりも少し真面目な顔をしていた。
 いや、これが本題だったのだろう。
 
「学校は行ってるよ」
「屋上でずっとサボってるんだから行ってないのと変わらないだろ」

 俺は少し考えをまとめ、再び姉ちゃんの方に向き直った。
 なんなのだろうか一体、なぜ俺にそう絡んでくるのだろうか。
 俺は授業を受ける意味だけでなく、姉ちゃんの本意も分からなかった。

「もう知ってることを習う必要なんてないじゃん。俺は勉強をしてないんじゃなくてし終えたの。一応、週に2回は授業を受けるようにしてるけどそれも無駄だと思う」
 
 俺は高校の勉強はほぼ完璧に頭に入っている。ならわざわざ勉強する意味なんてないと俺は思う。
 まぁ個人の感想だが。
 世の中には、俺のような考えの人もいれば、姉ちゃんのように学校は行くべきだという人もいる。俺は断然に前者だがな。しってるならもう学ぶ必要はないと思う派だ。
 というか、そんなに行くべきとか言うなら誰かれっきとした根拠の一つや二つぐらいだして欲しいものだ。

「それでもだな……うーん……」

 姉ちゃんは頭を抱え悩んでいた。
 顔はこわばり、なんとかして俺に反論しようとしていた。

「お?答えられない感じ?」
「ぐぬぬ……」

 俺が煽ると、どうやら部が悪いようでそっぽを向いた。
 姉ちゃんはこう言う口論に弱い。大抵は口論に負けると手を出し始めるが、ここは学校だ。そんなことはしないだろう。あ、いや。姉ちゃんならするかもしれないな……
 ま、まぁ俺の完全勝利だ! 多分……

「き、今日のところは勘弁してやるから明日からはしっかり毎日、授業に出ろよ……」
「だから、授業を受けなきゃいけない理由を──」

 俺が更に追い打ちをかけようとすると無視してかけ足で立ち去ってしまった。
 くぅ、後味が悪い。勝ち逃げよりも決着がついてないのに逃げ出されるほうがイラっとくる。

「まだ話が終わってないけど、まぁいいや寝るか」
 
 俺がもう一度寝っ転がり、眠りにつこうとすると、またドアが開いた。
 なんだよ、また俺に論破されに来たのか?
 俺は、仕方なく、もう一度起き上がって姉ちゃんの方を見た。
 姉ちゃんはドアを盾のようにして、頭だけひょいと出していた。

「伊吹、最後にこれだけ。学校は勉強だけじゃないぞ。ありがちでそこまで響かないかもだが、これは事実だ」

 姉ちゃんはそう言い残して去っていった。

「勉強だけじゃない……か……」

 確かに、学校は人間関係を学んだりとか人との関わり方を学ぶところでもあるとはよく言うが……
 それならもうほぼほぼ大丈夫だと思う。
 まぁいいか。
 俺は考えるのも面倒くさいのでこのまま眠りにつくことにした。
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