無色の騎士《ナイト・オブ・カラーレス》

花月慧

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第一章 第二部

規則

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「なんじゃこりゃ」

ターニャ達と集まろうしていた場所には二つの人だかりが出来、よく見てみると、中心にはドブルとターニャがそれぞれ囲まれているようだった。

「ああ、アタルさあん。遅かったですねえ」

茫然としていた僕にアリアが横から話しかけていた。

「おぉ、メアリィか。…で、なにこれ?」

「二人とも美男美女ですからねぇ。アタルさんを待っている間にぃ、お二人に生徒が殺到してしまってぇ。」

成る程、ターニャのところはメイド服の人達と男子生徒が揉めているような…。

「よしっ、しばらく落ち着かなそうだから僕は先に帰るよ。アリアはどうする?」

「はいぃ。私はぁ、お姉様達を待っていますわあ」

「了解、じゃあお先っ!ぶふっ!」

これで、何度目だろうか…。僕はお腹を押さえて空を舞った。

「こらっ!アタルっ!遅いっ!いつまで、待たせんのよ」

お腹を押え悶絶する僕にターニヤは怒りをぶつけてくる。…もう少し、人を労る気持ちを持ってほしいものである。

「ぐっ、僕が遅かったのが悪かったけど毎度、毎度突っ込んでくんなっ!僕じゃなかったら死んでるぞっ!」

それに対してターニャは、舌を出してあっかんべーとしている。くっ、可愛いじゃねえかこん畜生っ!……おっと、ターニャの策にハマルとこだったぜ!ここは、ガツンと言ってやらねば。

「いい加減にしろ「ターニャさん、誰だいこいつは!」よ…」

出鼻を挫かれました…。

「ん?アタルだよ。同じ村出身の」

「どうも、アタルです」

「それよりも、先程のお返事聞かせてもらえませんか?」

なんだコイツ?握手しようとした僕を無視して!この差し出した右手どうすればいいのさっ!僕はそっと右手を戻し、ターニャに尋ねた。

「で、コイツ誰?」

「知らない。急に話しかけてきて、私のパートナーにならないかって」

困惑そうにターニャは答えた。よく分からないやつから言い寄られてるのか…。コイツの本性知っても同じことが言えるのだろうか。

そんなことを考えていると言い寄ってきた相手に胸ぐらを掴まれた。

「貴様っ!今、俺が話してるところ、いてててっ!」

僕は彼の親指を掴み、捻りあげた。昔、ドブルと不良撃退ごっこしてこんなことやってたなあと思い出しながら、僕は親指を掴んだままさらに捻った。

「いたたたたっ!!や、や、やめろっ!やめてくれっ!た、頼むっ!」

「んー、どうする?ターニャ」

「止めといたほうがいいわよ。何か偉そうな身分の人っぽいから」

は?なにそれ?先に言っとけよな!確かによく見ると上等そうな服を着てらっしゃる。

「も、も、申し訳ありませんっ!お、お怪我はありませんか?」

「……アタル、ダサ」

ターニャが何か言っているが気にしない。この方のご機嫌を取らなければ、もしかしたら退学になってしまう!そしたら、僕の学園生活がっ!……あれ?別に退学しても問題なくね。何で、拘ってたんだろ?

「き、貴様っ!俺は第二皇子のビービルだぞ!父様に言いつけて、お前を死刑にしてやる!それと、そこの女!お前も俺の言うことを聞かないと酷い目に合わすぞ!」

「ぷっ!」

涙目になりながらビービルは叫び、僕はその様子に吹き出してしまった。

「な、何が可笑しいっ!!」

「いやあ、名前を名乗らず、見ず知らずの女の子に言い寄るのがこの王族の礼儀かと思いまして…。…残念な皇子だなあと思いまして…」

最後の呟きを聞かれたのか、いつの間にかこちらに集まっていた彼の取り巻きが何人も青筋を額に浮かべこちらを睨み叫んだ。

「お前っ!この方に何て無礼な態度を!」

「謝罪しろ!」

「死んで詫びろ!」

この状況はマズイなあと感じ、そっとターニャに視線を向けると、メイド服を着た集団に取り囲まれていた。ん?メアリィ、あんた何してんだ?

「おい!お前《無能》なんだろう!なんで、学園もこんな奴を入学させたのか知らんが、退学するなら許してやろう」

ビービルは偉そうにそう言ってきた。まあ、辞めてもいいんだけどね。そう言おうとしたとき、空が人が降ってきた。 

「僕は、風紀委員のレオだ。これは、何の騒ぎかな」

「に、兄さまっ!」

ビービルと取り巻きだけが青い顔をして、ワナワナと震えている。ん?兄さま?だ、第一皇子ってこと?

「ビービル、この学園では身分は関係ないと教えたはずだが…。例え王族だろうが元奴隷だろうが学園が認めた者は皆等しく生徒として扱われる。今一度、説明せねば分からぬのか……貴様は!」

第一皇子の風紀委員レオさんが殺気を放ち、ビービルに話しかける。僕やターニャは魔獣相手に何度も経験してるので平気だがレオさんの殺気を身近で感じ、その場にペタんと座り込んだ。

「…分かったようで何よりだ!」

若干力づく感は否めないが、それを指摘するほど僕は愚かではない。なので、華麗にここはスルーだ。

「さて、僕はこの方達と大事な話があるから、ビービル先に戻ってなさい」

「でも、兄さんこの『無の』!わ、わ、分かりました!」

レオが睨み付けると、ビービルとその取り巻きは蜘蛛の子を散らすようにその場を去っていった。

「ふぅ。不出来な愚弟で申し訳ない」

「い、いえ。…本当に御咎めはないんですか?」

「ああ、ないから安心して。この学園では身分に拘らず個々の能力を重んじているからね。まあ、私の愚弟のように勘違いしてる奴もいるのだがね…。そこで、我等風紀委員がいるというわけだ!」

レオさん曰く、風紀委員は学園の風紀を守ると共に学園内で身分差別をする者に目を光らせているらしい。

「でも、今後の進路を考えたら媚を売っといた方が得なんじゃないの?」

メイド集団から飛び出し、ターニャが質問した。確かに、そういうのを考えれば、ビービルの取り巻き達は賢い選択をしているかもしれない。

「確かにそうだね……。でも、そういった権力を使ったと分かれば我々から成績の減点をさせてもらう」

「え?成績の減点…。そ、それだけですか?」

「この学園では、学期ごとに個人の成績をつけているんだ。総合して学園が定める規定に満たない生徒は×がつく。その×が3つ貯まると、退学という訳さ。」

なるほど、身分差別の減点がどのくらいか分からないが、そういう抑止力があるなら学園にいる限り大丈夫か。

「でもそういうのって、禍根を残しませんか?」

「まあね。それで、王都から優秀な人材が流出している現状だよ」

なるほど、そこに話が繋がるのか……。優秀な人材を重宝する地方、貴族など身分の高い者を贔屓する王都。うーん、王都先行き不安だなあ。そんな僕の表情を察したのか、レオさんが近寄ってくる。

「というわけで、人材の確保に僕は勤しんでいるという訳さ。では改めて、紹介させてもらうよ。魔導学園2年のレオ・バンデスだ」

「アタル・ボルドウィンと申します」

「そう畏まらなくていいよ、アタル君。僕のことは気軽にレオと呼んでくれればいいからさ」

王族に対して、そんな態度は大丈夫なんだろうか、そんなことを考えているとレオさんは、ターニャにも近づき挨拶していた。

「先程は愚弟がすまなかった。もし、また何かあればこれを使ってくれ。これは魔力を込めると近くの風紀委員に危険を知らせる魔導具だ。遠慮せず使うといい」

レオさんは胸のポケットからリング状のものを取り出した。

「え、こ、こんな高そうなもの、頂けません!」

「僕らがいないときに何かあったら困るから、貰っといたら?」

「んー、そうね。ありがたく頂戴します。殿下!」

「殿下じゃなくて、レオでいいんだけどね…」

夕方を告げる鐘の音が鳴ったので、レオさんとはそこで別れ、いまだに囲まれているドブルを置いて、僕らは宿舎に帰ることにした。

帰る途中、メイド服の集団はターニャの親衛隊らしい。いつの間に勢力を増やしたのだろうか…。あまり、深く考えても仕方ない。僕はこの件について放置した。

彼女らは、後に結成される秘密諜報部隊《山嵐》と姿を変えるのだが、それはまた別のお話し…。

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