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プロローグ
日々の生活に疲れた主婦
しおりを挟むはあ、今日も疲れた。
けど疲れていられない。
仕事は相変わらずきりが付かない。ああもう、客先の発注、あの手際の悪さったら! 五月雨式に発注よこされても風流でもなんでもないわよ。けど、もう考えても仕方ない。
急いで帰宅して、家族みんなの食事の準備をする。合間にお風呂の用意とちょこっと掃除。あ、明日は資源回収の日だ缶カラ出しとかないと。
「ご飯できたよ」
夕食の用意をして呼びかけても、中学生の息子は返事もしない。部屋から出て来るだけマシだけど、最近は学校にも行っていない。ひきこもりゲーマーなのはあたしの血かなあ。昔はずいぶんゲームにハマってたし。
一言の会話もなく食事を終えて息子が部屋に再び引きこもり、だいぶ経った頃にダンナが帰ってくる。いやあ亭主どの、あたしも明日仕事があって早く片づけたいんですけど。
こちらもお互い会話はほとんどない。あたしの名前、覚えてるかしら。近頃名前を呼ばれた覚えがなくて、自分でも忘れてしまいそうだ。白川未悠、旧姓の羽黒に戻しちゃっても気がつかないかもしれない。
そんなくたびれた、平凡な毎日に馴れ切った生活。その生活すら自分では主体的にコントロールできなくて、いやになる。ふとした拍子に昔のことを思い出す。やっぱり平凡だけどそれでも自分の時間があって、ゲームのランキング上げに血道を上げたりゲーム内で知り合った人と遊んだり――やっぱりゲームばっかりか――一時期熱中していたハンティングゲームでは「アゾフ狩場の女王」なんて称号を奉られて、ひとかどの有名人だったこともあった。
あの頃は……よかったんだろうな。
この頃は……わからない。
悪いとは思いたくない。人生なんてきっと、たいていこんなもの。人並み以上の生活水準であることはよくわかってる。
それでも、と考えてしまうのは昼間もらったメッセのせいかも知れない。相変わらず夢を追いかけている友だち。アラフォーにもなってまだ地に足つかないでいるやつ。あるラジオドラマの声優オーディションに通ったと、画面いっぱいのスタンプが歓喜の雄叫びを上げていた。
今までも何回か聞いたことがあるから、きっとその場限りでその後につながっていない。でもほんのスタンプひとつの、なんて嬉しそうなことか。「おめでとう」って型通り返信しながら、いつまでも浮わついたばかなヤツと思いながら、ちょっぴり羨ましい。ちょっぴり悔しい。
あたし、こうやって他人を羨みながら一生を終えていくのかな……。
それを深く考える余裕もなく、あたしの意識は横になるなり消えていく。
明日も四時起き。目覚ましセットしたっけかな……。
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