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目覚めたら異世界、で焦る。
2.焦燥
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呆然として、俊哉は力なく座り込んだ。
目の前の少女とほぼ同じ目線の高さになる。
少女はひざの上できちんと手をそろえ、小首をかしげて微笑みながら俊哉を見た。
長い黒髪が、さらりと流れる。
深く澄んだ双眸に見つめられ、俊哉はどきりとして視線を外した。
「申し遅れました。
わたくし、しのぎと申します。
この世界での、俊哉さまの案内役を仰せつかっております」
少女―――しのぎは再び手をついて頭を垂れた。
白い衣服は和服に似た着物のようだ。
「おれの名前を知っているんだな」
「はい。わが神からの託宣がございました。
別の世界から来るものがあると。
その方のお側について、この世界を案内せよと」
するとここは異世界なのか。
自分の住む世界とは違うところへ飛ばされたのか。
おれは異世界に行きたいなどと願ったことはないのに。
―――本当か?
「あなたさまは、あなたさまの住まう世界からこの世界へ召喚されました。
これから、この世界で暮らすことになります」
「……意味が理解できないのだが」
「転生、いえ、転移というのでしょうか。
あなたさまはこの世界で、別の人生を生きることになります。
ですが、生まれ変わりというわけではありません。
あなたさまは山名俊哉さま。それは変わりません。
ただ、生きる世界が変わった、ということです」
「困る」
即座に俊哉は答えた。
「今日はオペもあるし、その前の仕事も片付けなくちゃならないし、そのほかいろいろと……。
第一、なんでおれなんだ?」
「わかりませぬ。それは教えてもらえませんでした」
しのぎは、すまなそうに生真面目に答えた。
「あなたさまにも事情がおありでしょうが、これはわが神の御業によるもの。
わたくしにはどうすることもできませぬ」
少女は謝るように顔を伏せた。
長い黒髪がさらりと揺れて表情を隠す。
俊哉は途方にくれた。
(どうすればいい?)
(どうしたらいい?)
目の前の少女とほぼ同じ目線の高さになる。
少女はひざの上できちんと手をそろえ、小首をかしげて微笑みながら俊哉を見た。
長い黒髪が、さらりと流れる。
深く澄んだ双眸に見つめられ、俊哉はどきりとして視線を外した。
「申し遅れました。
わたくし、しのぎと申します。
この世界での、俊哉さまの案内役を仰せつかっております」
少女―――しのぎは再び手をついて頭を垂れた。
白い衣服は和服に似た着物のようだ。
「おれの名前を知っているんだな」
「はい。わが神からの託宣がございました。
別の世界から来るものがあると。
その方のお側について、この世界を案内せよと」
するとここは異世界なのか。
自分の住む世界とは違うところへ飛ばされたのか。
おれは異世界に行きたいなどと願ったことはないのに。
―――本当か?
「あなたさまは、あなたさまの住まう世界からこの世界へ召喚されました。
これから、この世界で暮らすことになります」
「……意味が理解できないのだが」
「転生、いえ、転移というのでしょうか。
あなたさまはこの世界で、別の人生を生きることになります。
ですが、生まれ変わりというわけではありません。
あなたさまは山名俊哉さま。それは変わりません。
ただ、生きる世界が変わった、ということです」
「困る」
即座に俊哉は答えた。
「今日はオペもあるし、その前の仕事も片付けなくちゃならないし、そのほかいろいろと……。
第一、なんでおれなんだ?」
「わかりませぬ。それは教えてもらえませんでした」
しのぎは、すまなそうに生真面目に答えた。
「あなたさまにも事情がおありでしょうが、これはわが神の御業によるもの。
わたくしにはどうすることもできませぬ」
少女は謝るように顔を伏せた。
長い黒髪がさらりと揺れて表情を隠す。
俊哉は途方にくれた。
(どうすればいい?)
(どうしたらいい?)
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