あなたの人生、なまくらですか?

桐坂数也

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奉られて剣士さま、で窮地。

1.外界

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「おはようございます。俊哉さま」

しのぎの声に、俊哉はあわてて跳ね起きた。

「いてて……。」

身体中が痛みで悲鳴を上げる。痛む筋肉を無理に動かして身支度し、俊哉は部屋の外に出た。


しのぎが控えている。

「おはようございます。ゆうべはゆっくりお休みになれたでしょうか」

きちんと座って手をつき、口上を述べる姿は昨日と変わらず折り目正しく、清楚だった。

「ああ。昨日しのぎが鍛えてくれたおかげで、よく眠れたよ」

「からかわないで下さいまし」

若干の皮肉に、しのぎは少し赤くなった。

しのぎの指導は優しく穏やかだったが、決して生ぬるくはなかった。子供の頃に剣道を多少習った程度で、真剣など持つのも初めての俊哉である。慣れない動きの連続に、日が暮れる頃にはくたくたになっていた。

しのぎの指導はしかし、的確でもあった。たった一日で俊哉は、いちおうは「さまになる」状態にはなったのである。まだ基礎の基礎、という段階だったが。

「朝餉が用意してございます」

そう言って立ち上がるしのぎの袖口から、包帯のような白い布が見えた。手首から上に、両腕に巻いている。昨日は巻いていなかったものだ。
怪我でもしたのだろうか。


朝餉の給仕は、かがりだった。
茜色の髪の少女はこまめに立ち働いた。その健気な姿に、俊哉は妙に感動したものである。

かがりから、畏まった敬意と憧憬の視線を感じ、俊哉は気恥ずかしかった。
「神の御使い」という肩書きは、この世界で生きていく限りずっとついて回るものなのだろう。


食事ひとつとっても、この世界は日本によく似ていた。異世界というより多少時間軸の違った並行世界というべきなのかもしれない。


食事を終えて、神官であるしのぎの父君が俊哉に語りかけた。

「今夜は領主さまの館へ招かれておりますでな。日暮れには村に降りて参ります」

そろそろ、外界との多様な接触が始まろうとしている。
俊哉はまだ、この世界で剣士として生きていく覚悟ができなかった。


神はこの世界で自分に何をさせたいのか、黙して語ろうとしない。

(まったく、放任主義な神さまだ)

この時俊哉はまだ、事の重大さをまったくわかっていなかった。
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