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盗賊は深追い注意、で逆撃。
1.自信
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「ゆうべはとんだ醜態をお見せいたしまして、まことに恥ずかしゅうございます」
ひたすら恐縮して平伏するしのぎ。酔いつぶれて子供のように連れ帰ってもらうなど、恥ずかしさに身の置き所がないという態だ。
「いや、昨日は本当に助かった。ひとえに、きみのお手柄だよ」
俊哉も妙に照れてしまい、大らかにしのぎの労をねぎらうほどの余裕はない。
お互いにぎこちない朝のあいさつを、ひとしきり交わす二人であった。
朝食後、俊哉は外で熱心に身体を動かした。
初めて真剣で立ち合い、勝利したことで、俊哉には大きな自信になった。だが、まだまだだ。もっともっと強くならなければ。いざというとき、しのぎや皆を守れない。
剣はもちろん、使えるものは何でも使う。
ほかに使えるものはないものか。
昼近くの野辺に出て腰を下ろし、俊哉はひたすら頭をめぐらした。
しのぎが食事を持ってきてくれた。礼を言って握り飯を受け取り、ほおばりながら、俊哉はなおも考えていた。
昼にはまだ少し早く、俊哉にほど近い場所で、せっせと草を刈っている者がいる。
手慣れた手つきで鎌を振るい、手際よくしかし確実に、そして少しも倦むことなく、彼は草を刈っていた。
そのうちその辺のすべての草を刈りつくしてしまいそうな勢いだ。
彼の表情は、満ち足りていた。自分の仕事に誇りとやりがいを持っているのが感じられた。
「精が出るね、彼は」
俊哉がしのぎに話しかけた。
「鎌の源左さん、ですね」
鎌の使い手なのか。
「刃の降りた鎌をお持ちなのです。ですからこの辺りでは有名なんですよ。
草刈りや刈り入れに、たくさんお声がかかります」
なるほど、力のあるアイテムを持っているから皆が認めてくれるし、本人も自信を持って仕事に打ち込めるというわけか。
神刃のシステムも悪くない。自分の仕事に絶大な自信と誇りを持てる。こんな素晴らしいことはない。
世の中には今やっていることに自信がもてず、それどころか何をやっていいのかすらわからず、右往左往している人間が大勢いるというのに。
俊哉は源左を、心底うらやましいと思った。
と同時に、いたずら心も湧いてきた。もしかするとそれは嫉妬だったのかもしれない。
たとえば、機械仕掛けの草刈機をこの世界で「発明」したらどうなるだろう。
発動機は無理だが、簡単な芝刈り機のようなものなら作れそうだ。そうして仕事が効率化され、誰でも出来るようになってしまったら、刃の持ち主の仕事はどうなってしまうのだろう……。
「無理ですわ」
俊哉の考えは言下に否定されてしまった。
「そのようなものは、天刃さまがおゆるしになりませぬ」
「天刃さま?」
「刃に係わる神さまを総じて神刃さまと呼ぶことが多いですが、その中の最高位の神さまです」
しのぎの説明は続いた。
「実を言えば、そのようなことを思いついた者もおりました。ですが、うまく行きませんでした。天刃さまがお許しにならないのだろう、とよく言われたものです」
やはりこの世界は、刃の神さま抜きには語れないようだ。
ひたすら恐縮して平伏するしのぎ。酔いつぶれて子供のように連れ帰ってもらうなど、恥ずかしさに身の置き所がないという態だ。
「いや、昨日は本当に助かった。ひとえに、きみのお手柄だよ」
俊哉も妙に照れてしまい、大らかにしのぎの労をねぎらうほどの余裕はない。
お互いにぎこちない朝のあいさつを、ひとしきり交わす二人であった。
朝食後、俊哉は外で熱心に身体を動かした。
初めて真剣で立ち合い、勝利したことで、俊哉には大きな自信になった。だが、まだまだだ。もっともっと強くならなければ。いざというとき、しのぎや皆を守れない。
剣はもちろん、使えるものは何でも使う。
ほかに使えるものはないものか。
昼近くの野辺に出て腰を下ろし、俊哉はひたすら頭をめぐらした。
しのぎが食事を持ってきてくれた。礼を言って握り飯を受け取り、ほおばりながら、俊哉はなおも考えていた。
昼にはまだ少し早く、俊哉にほど近い場所で、せっせと草を刈っている者がいる。
手慣れた手つきで鎌を振るい、手際よくしかし確実に、そして少しも倦むことなく、彼は草を刈っていた。
そのうちその辺のすべての草を刈りつくしてしまいそうな勢いだ。
彼の表情は、満ち足りていた。自分の仕事に誇りとやりがいを持っているのが感じられた。
「精が出るね、彼は」
俊哉がしのぎに話しかけた。
「鎌の源左さん、ですね」
鎌の使い手なのか。
「刃の降りた鎌をお持ちなのです。ですからこの辺りでは有名なんですよ。
草刈りや刈り入れに、たくさんお声がかかります」
なるほど、力のあるアイテムを持っているから皆が認めてくれるし、本人も自信を持って仕事に打ち込めるというわけか。
神刃のシステムも悪くない。自分の仕事に絶大な自信と誇りを持てる。こんな素晴らしいことはない。
世の中には今やっていることに自信がもてず、それどころか何をやっていいのかすらわからず、右往左往している人間が大勢いるというのに。
俊哉は源左を、心底うらやましいと思った。
と同時に、いたずら心も湧いてきた。もしかするとそれは嫉妬だったのかもしれない。
たとえば、機械仕掛けの草刈機をこの世界で「発明」したらどうなるだろう。
発動機は無理だが、簡単な芝刈り機のようなものなら作れそうだ。そうして仕事が効率化され、誰でも出来るようになってしまったら、刃の持ち主の仕事はどうなってしまうのだろう……。
「無理ですわ」
俊哉の考えは言下に否定されてしまった。
「そのようなものは、天刃さまがおゆるしになりませぬ」
「天刃さま?」
「刃に係わる神さまを総じて神刃さまと呼ぶことが多いですが、その中の最高位の神さまです」
しのぎの説明は続いた。
「実を言えば、そのようなことを思いついた者もおりました。ですが、うまく行きませんでした。天刃さまがお許しにならないのだろう、とよく言われたものです」
やはりこの世界は、刃の神さま抜きには語れないようだ。
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