21 / 57
盗賊は深追い注意、で逆撃。
4.安堵
しおりを挟む
「まったく、無謀だな」
相変わらず稜水は落ち着いている。ほとんど息は乱れていない。これで剣の刃の使い手ではないというのだから、おそれいる。
「いったいどういう心算があったのだ?」
「ないよ、そんなもの」
俊哉の答えに、稜水の表情はますます渋くなった。俊哉は苦笑しながら言を継いだ。
「何にも考えていなかった。ただ、人ひとり助けられなくて御使いだのなんだの、おこがましいにもほどがある、と思っただけさ。
だが、後の捌きはさすがに稜水どのだ。助かったよ」
稜水が仏頂面なのは、照れ隠しなのか。黙って俊哉に剣を差し出した。俊哉は受け取りながら、
「賊どもの後始末は任せていいかい? かがりを送っていきたいんだが」
稜水は黙って片手を挙げて答えた。
かがりは、たまたま使いに出ていて巻き込まれてしまったらしい。言いつけられた用事は果たせなかったが、俊哉はそのまま連れ帰ることにした。
帰りついて、ことの次第を聞いた神官一家はしばし騒然となった。
ことにしのぎの母はかがりをひしと抱きしめて、今にも泣き出さんばかりだった。
「ごめんね、かがり。お使いなんかお願いしたばかりに、大変なことに巻き込んでしまって」
「そんな。大丈夫です。俊哉さまが助けて下さいましたから」
かがりはむしろ、けろっとして俊哉の方を見た。しのぎの母は俊哉に何度も何度も頭を下げた。今度は俊哉の方が恐縮してしまう。
しのぎも俊哉に近づいて、深く頭を下げた。
「俊哉さま。わたくしからもお礼を申し上げます。かがり、よかったわね」
「はい!」
「いや、本当におれは何もしてないから」
俊哉は身の置き所がない。稜水たち男衆の手柄を横取りしたようで、居心地が悪かった。
「ところで、俊哉さま。ご足労ですが、奥の間まで来ていただけますか。
大おばさまが、俊哉さまとお話しがしたいと申しておりまして」
相変わらず稜水は落ち着いている。ほとんど息は乱れていない。これで剣の刃の使い手ではないというのだから、おそれいる。
「いったいどういう心算があったのだ?」
「ないよ、そんなもの」
俊哉の答えに、稜水の表情はますます渋くなった。俊哉は苦笑しながら言を継いだ。
「何にも考えていなかった。ただ、人ひとり助けられなくて御使いだのなんだの、おこがましいにもほどがある、と思っただけさ。
だが、後の捌きはさすがに稜水どのだ。助かったよ」
稜水が仏頂面なのは、照れ隠しなのか。黙って俊哉に剣を差し出した。俊哉は受け取りながら、
「賊どもの後始末は任せていいかい? かがりを送っていきたいんだが」
稜水は黙って片手を挙げて答えた。
かがりは、たまたま使いに出ていて巻き込まれてしまったらしい。言いつけられた用事は果たせなかったが、俊哉はそのまま連れ帰ることにした。
帰りついて、ことの次第を聞いた神官一家はしばし騒然となった。
ことにしのぎの母はかがりをひしと抱きしめて、今にも泣き出さんばかりだった。
「ごめんね、かがり。お使いなんかお願いしたばかりに、大変なことに巻き込んでしまって」
「そんな。大丈夫です。俊哉さまが助けて下さいましたから」
かがりはむしろ、けろっとして俊哉の方を見た。しのぎの母は俊哉に何度も何度も頭を下げた。今度は俊哉の方が恐縮してしまう。
しのぎも俊哉に近づいて、深く頭を下げた。
「俊哉さま。わたくしからもお礼を申し上げます。かがり、よかったわね」
「はい!」
「いや、本当におれは何もしてないから」
俊哉は身の置き所がない。稜水たち男衆の手柄を横取りしたようで、居心地が悪かった。
「ところで、俊哉さま。ご足労ですが、奥の間まで来ていただけますか。
大おばさまが、俊哉さまとお話しがしたいと申しておりまして」
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
霊力ゼロの陰陽師見習い
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる