魔法少女の敵なんだが魔法少女に好意を寄せられて困ってる

ブロッコリークイーン

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第11話

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 なぜ余の心がモヤモヤするのだ?

 こんな感情は生まれて初めて持った。

 なぜだ!

 魔法少女が今負けそうになっているのだぞ。

 普段だったら勝てる相手に苦戦をしているのだぞ。

 余がいつも負けている魔法少女がボコボコにされているのだぞ。

 なのになぜ余の心のモヤモヤは大きくなっていくのだ。

 喜べよ、魔法少女が負けそうになっているのだぞ。

 自己暗示をしろ、魔法少女が負けて嬉しいと。

「ピンクそろそろやばいって」

「もう私たちも限界です」

 桜井莉緒が戦えない間ずっと高宮千沙と九重菫が持ち堪えてくれている。

「私だって頑張ってるって」

 桜井莉緒が怒りに任せながら叫ぶ。

「でも、頑張っても頑張っても魔法が出ないんだもん」

 頑張って精神状態が良くなるわけではないからな。

「そこをなんとか頑張ってよ」

「ピンクさん頑張って」

 高宮千沙と九重菫は戦いながらも桜井莉緒に応援をする。

 頑張ってない奴なんてこの場にはいない、だからどっちも相手の状態を把握できていない。

「ピンクなら絶対に出来るよ」

「ピンクさんは私たちのリーダーなんですから」

「私には無理だよ」

「無理じゃない、ピンクはそういう人間じゃない」

「ピンクさんはいつだって私たちに笑顔を届けてくれたじゃないですか」

 高宮千沙と九重菫は戦いながら必死に桜井莉緒に声をかける。

「私、みんなでクレープ食べに行きたい」

「私は学校の近くにできた所が良いです」

「じゃあここで勝ったら明日行こう」

「そうしましょう」

「諦めるなんて私たちらしくないよ」

「そうですよ」

 高宮千沙も九重菫もかなりボロボロになってきている。

 もうやられるのも時間の問題だ。

「大丈夫、私たちもついてるから」

「そうですよピンクさん。ピンクさんは一人じゃないですから」

「みんな…」

 お、ピンクの中のマナが微かに普通になりかけている。

 これが人間の友情というやつか。

 余には今後永遠に関わることのない言葉だ。

 余は孤高の王だからな、友情なんか邪魔でしかない。

「私頑張ってみるよ」

「それでこそピンクだよ」

「一緒に頑張りましょうピンクさん」

 ピンクの中のマナは少しずつではあるがいつも通りになってきている。

 この調子だったら出るんじゃないか、合体技が。

「もう私もブルーも限界に近いから最後に賭けよう」

「そうですね」

「今ならいける気がする」

 ここで出るんだな、合体技が。

 ここで出なかったらもう倒すことが出来なかなって負けてしまうだろう。

「じゃあいこうみんな」

「「うん」」

 出る、あの合体技が。

「「「スーパースマイルスプラッシュ」」」

 

 
 出ると思っていた合体技は残念ながら不発に終わってしまった。

「ごめん。みんな」

 合体技を放つ前に桜井莉緒の魔法が乱れてしまっていた。

 マナの調子も良くなってきていて出ると思っていたのだがな。

 やはり、相手が父親だから合体技を放つ前にそれが過ぎったのだろう。

「ううん、気にしないで」

「仕方ないですよ」

 高宮千沙と九重菫は桜井莉緒に励ましの言葉をかける。

 三人は明らかに落ち込んでいる様子だ。

「私たちに魔法少女は荷が重すぎたのかもね」

「そうかもしれませんね」

 もうすっかり諦めムードになってきている。

 なんだこの魔法少女どもは、余が知っている魔法少女ではない。

 余が知っている魔法少女どもはこんなところで負けるはずがない。

 学校では底なしで元気なくせになんで今は違うんだよ。

 元気すぎるくらいがお前らだろ。

 なのになんで今はそんな暗い顔をしているんだ。

 諦めないのがお前らの良いところではないのか?

「それに私たちは普通の高校生だし」

「地球を救え、なんて無理だったんだ」

 なんだこいつら。

 余はこんな奴らに負けたのか?

「ぐす……っおかあさんどこぉ」

 まだ逃げられていない女児がいた。

 桜井莉緒の父親の怪人化した近くに。

「ねぇあれ」

「逃げ遅れたのかな?」

 すると桜井莉緒の父親の怪人化が飛ばした瓦礫が女児の方へ飛んでいく。

「危ない」

 三人の魔法少女は慌てて飛び出したがこのままでは確実に間に合わない。

 遅い。

 余と戦った時はそんなものではなかったぞ。

 余は三人の魔法少女よりも早く女児のところへ行き、瓦礫を殴り飛ばした。

 そして腹いっぱい空気を吸って叫ぶ。

「なにしてんだぁ魔法少女!!」

 余以外に負けるなんか余が許さない。

  なぜモヤモヤしていたのかハッキリと分かった。

 余が何回も負けた魔法少女がこんな意味の分からない相手に負けるのが余のプライドが許さないのだ。

「こんな相手に負けるなよなぁ」

 余には余裕で勝ってこいつに負けるとか、まるで余が弱いみたいではないか。

「え?なんで宇野くんがここにいるの」

 桜井莉緒は余だということに気づいたようだ。

「宇野さんがなんでここに」

「同じクラスメイトのなんか変な奴だ」

 九重菫は同じクラス委員だから流石に余の名前を知っていた。

 が、高宮千沙、お前誰がクラスメイトの変な奴だ。

 余が変な奴なわけがないだろう。

「宇野くんなんでこんな所に来たの?危ないよ」

 ただのクラスメイトがここにいたらそら変だろうな。

「お前らが情けないからだろ」

 本当に情けなくて見ていられない。
 
「ぐすっ…」

 そういえば後ろに女児がいることを忘れてしまっていた。

「おい、ガキ。ここは危ないからどっか行ってろ」

 こんなよく泣くガキが後ろにいたら思い切り戦えないではないか。

「おにいちゃんがたすけてくれたの?」

「そうだと言ったらどうするんだ」

「ほんとうに!あのでかいかいぶつから救ってくれたの!」

「だからそれがどうしたんだ」

「ほんとうのほんとうに!」

「ああ、うっせぇ」

 余は女児を持ち上げる。

 さて、誰にもするかな、バレー部の高宮千沙でいいか。

「受け取れ」

 余は女児を高宮千沙に放り投げる。

「ええっ」

 女児は綺麗に高宮千沙の方へと飛んでいく。

「きゃっ」

 ナイスキャッチ。
 
 高宮千沙は見事に女児をキャッチした。

「ちょっと、子供を投げないでよ」

「戦いの邪魔だ。安全な所に連れて行ってやれ」

 やっと本気で戦えるな。

 と言っても、余はあいつらが言うナイトメアにはならないから本気ではないがな。

「おい、魔法少女。今から余は怪人化した中の人間を取り出す。取り出した後はお前らに任せるぞ」

 流石にナイトメアでないとあのデカブツには勝てないかもしれない。

 ナイトメアだったら絶対に勝てるがな。

 本当だぞ。

「宇野くん危ないよ、やめておいた方がいいよ」

「そうですよやめておいた方がいいですよ」

「やめときな怪我じゃ済まないよ」

 うるさいなこいつらは、お前らがダメダメだからこうなっているのだぞ。

 あとこいつらは余の実力を舐めているのか。
 
「お前らは黙って見ておけ。チャンスが来たら絶対に逃すなよ」

 余は一直線に怪人化の所へ向かう。

「はやっ」

「うそっ」

「あいつ本当に人間なの?」

 勢いに乗せて殴ろうとしたが腕が出てきて弾き飛ばされてしまった。

 ガシャンッ

 建物に打ち付けられたがそこまでダメージはない。

 うむ、これならいつかはいけるな。

 もう一度だ。

 だが、また弾き飛ばされてしまう。

 まだまだ。

 また弾き飛ばされる。

 次こそ。

 同じように弾き飛ばされる。

 今度こそ。

 が、また弾き飛ばされる。

 ふぅ何度も食らえば流石にダメージが蓄積されてきた。

 だが、おかげで奴のスピードには慣れてきたぞ。

「ねぇあいつ大丈夫なの?」

「もう止めるべきでしょうか」

「いや、私たちは信じてあげよう。宇野くんを」

 次はいける。

 もう一度一直線に向かう。

 伸びてきた腕をなんとかかわす。

 すると、もう一本の腕が出てきて余を襲う。

 が、余はそれも避け、もう一本の腕の方に乗り、頭部の方まで駆け上がっていく。

 あいつ結構深い所にいるな。

 頭部から中心部まで結構距離があるな。

 仕方ない。

 余は思いっきり頭突きをし、頭を入れ、そこから腕、身体をスライム状の中に入ることが出来た。

 スライム状の中に入ると桜井莉緒の父親の過去が頭の中に入ってくる。

 そういうことだったのか。

 そして余は桜井莉緒の父親に近づき、手を取り、脱出を試みる。

 すると

 サビシイィィィィサビシイィィィィ

「どうしたんでしょう?怪人化が暴れ出していますよ」

「寂しいって言ってるの?」 

「大丈夫なのかよあいつ」
 
 急に暴れるなよ、ここから出れねぇだろ。

 サビシイィィィィサビシイィィィィ

 だから暴れるなって、あまり手こずらせるな。

 仕方ない、魔法を使うしかない。

 魔法を使っているところを見られたくないから一瞬で終わらせる。

 右手に集合させて、一気に風を送り出した。

 その勢いで背中から桜井莉緒の父親と共に脱出することが出来た。

「すごっ」

「本当にやっちゃったよ」

「すごい人です」

「おい、後はお前らがなんとかしろ」

 余の使命はこれで終わりだ。

「いける?ピンク」

「大丈夫ですか、ピンクさん」

「もちろん。ここまでやってもらったんだから」

 次こそは出るか?合体技が。

「いこう、みんな」

「「うん」」

「「「スーパースマイルスプラッシュ」」」




 ドガァァァァァァァン

 魔法少女は見事に合体技を決めた。

 あのデカブツは跡形もなく消えてしまった。

「やったね、ピンク」

「出ましたね魔法」

「うん。みんなのおかげだよ」

 余をいつも倒している合体技をやっと出せたか。

 本当にいつまで待たせられたと思っているんだ。

 おかげですっかりボロボロになったではないか。

 でも、まぁよく頑張ったよお前は。

 この戦いは見事魔法少女の勝利で終わった。
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