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第38話
しおりを挟む何を余の背中ですやすや寝ているのだこのガキは。
「本当にごめんなさい。家にまで送ってもらっちゃって」
「気にするな」
別に母親に謝ってほしいとは思ってはいない、このガキが悪いのだから。
なぜ余は家まで送ってやる、と言ってしまったのだ。
「可愛すぎる」
桜井莉緒はボソッ独り言を呟く。
「ごめん。ちょっと写真撮っていい?」
桜井莉緒はなぜか余に尋ねてくる。
「余に聞くな」
ガキを写真撮るのになぜ余の許可が必要なのだ。
「あの、少し写真を撮らせてもらって良いですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
「起こすなよ」
「うん」
桜井莉緒はスマホを取り出してパシャパシャと撮り始めた。
ん?こいつ余のことも撮っていないか?
「おい、撮った写真を見せろ」
「はい」
桜井莉緒は自分が撮った写真を余に見せる。
そこに写っていたのはガキだけではなく余も写っていた。
「なぜ余も撮っているのだ」
「許可いらないって宇野くんが言ったじゃん」
「余のことも撮るとは思ってはいなかったのだ」
てっきりガキだけ撮るのだと思っていたが余も撮っていたとはな。
「でも、もう撮ったから大切にするね」
「大切にするな。今すぐ消せ」
なぜそんなものを大切にするのか意味が分からない。
ガキだけならともかく、余も写っているのだぞ。
「え~もったいない」
「もったいなくない。今すぐに消せ」
全くこいつは、余がガキをおぶって忙しい時になぜそんな事が出来るのだ。
こんな情けない姿を永遠に残されると思っただけでゾッとする。
「後でそれちょうだい」
「オッケー」
桜井莉緒と高宮千沙がコソコソと話していたが何を話してか内容までは聞き取れなかった。
そんなことは良いから絶対に消せよ。
***
「ここが家です」
やっと着いた。
結構歩いたがガキはずっとすやすやと寝ていやがった。
「おい、起きろ」
余は寝ているガキに声をかける。
「ん?ん~」
ガキは余の声に反応をして目を覚まし、目を擦って目を覚まそうとする。
ぐっすり眠り過ぎだ。
「お前の家だぞ。もう降りろ」
余は屈んでガキを降ろそうとする。
「いや。まだおにいちゃんといっしょにいる」
「こら。まだお兄さんたちは学校があるの。だから早く離れなさい」
「いやいやいやいや」
これがイヤイヤ期と言うやつなのか。
はぁ~早く降りてくれねぇかな。
「お兄さんが困ってるから早く離れなさい」
「いやいやいやいや」
このままだったら余がガキと一緒に住まなくてはならなくなってしまう。
「おい」
余は服を掴んでいる指を一本一本剥がしていき、ガキを降ろす。
「また会ってやるから今日はもう家に帰れ」
ガキは涙目になりながら余を見つめる。
「ぜったいに?」
「ああ」
「ぜったいのぜったいのぜったいに?」
「ああ」
「じゃあまたあそんでね」
「遊んでやるよ」
ガキはやっと余から離れた。
「じゃあな」
余は立ち上がり帰り道を歩く。
「またね」
余は振り向かずにただ手を挙げる。
やっと解放された、ただでさえ疲れているのにガキのせいで蓄積された。
「私たちとも遊んでね」
「お前らとは遊ばん」
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