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第1章 香奈子編「私があなたに惹かれた理由」
11. 決断の時
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くちびるが離れてすぐ、若だんなが謝ってきた。
「すみません!こんなことして香奈子さんの気持ちを揺るがすようなことして」
「謝らないでください。明日帰るのは私で…。涼太郎さんの気持ちを利用するようなことをしたのは私で……」
「いえ、オレは香奈子さんと出会えて本当によかったと思っています。あの時、香奈子さんがオレを選んでくれて本当に良かった。オレ、やっと自分自身に戻れたような気がして。それって香奈子さんが傍にいてくれたからだと思うんです。明日、帰ってしまうのは寂しいけれど、オレは香奈子さんが好きです」
「…!」
若だんなが急に私の両手を握って真剣なまなざしを向けてきた。
「オレ、香奈子さんを手放したくないんです。好きだから」
「私も涼太郎さんのことが好きです。でも、今の仕事も好きで辞めるつもりは全然ありません。だから…、涼太郎さんに悲しい思いをさせてしまうかもしれないんです……」
「大丈夫、オレがサポートします」
「お互い一時的な想いで決めてしまうのは良くないって思うんです」
そう言うと、若だんなは何かを感じ取ったようで、手をゆっくりと離した。
「香奈子さんがそう思うのは仕方のないことですね。でも、オレの気持ちは変わらないし、知っておいてほしい…って思って」
「……」
「じゃあ、オレは部屋に戻ります。明日は遅くても8時にはここを出ないといけないので、そのつもりで支度をしてくださいね」
「わかりました」
「じゃ、香奈子さんおやすみなさい」
「おやすみなさい」
若だんなは、私の頭を優しくなでると部屋を出て行ってしまった。後ろ姿を見送ったけどなんだか淋しそうな背中だった。
理屈ではわかっている。これ以上若だんなを想っていてはダメだって。私たちはそれぞれ仕事も住む場所も違う。生活パターンも違う。ずっとここにいるわけにはいかない。
それに遠距離恋愛ができるかどうかも私にはわからない。好きという気持ちだけではどうにもならないこともある。そうわかっているのに、そんな気持ちとは裏腹に体が勝手に動いていた。
部屋を飛び出し、後を追った。階段を降り切ったところに若だんなの姿があった。食堂へ向かう廊下に進もうとしていた。
「あの!」
私の声に振り向いて下から見上げて、少し悲し気な笑顔を向けてくれた。
「どうしたんですか?」
ゆっくりと階段を上がってこようとしている。私は慌てて駆け下り若だんなに抱きついた。
「走ったら危ないですよ」
若だんなが優しい声で囁いた。
「お願い、今晩はそばにいてほしいの。最後の夜だから一緒にいたい」
「はー、香奈子さんは淋しがりなんですね。じゃあ酒でも飲みながら…、と言っても気分悪くなった人だから飲んでも梅酒ですけどね」
「それでもいいから、一緒にいてくれる?」
「いいですよ。香奈子さんから言わなかったら、きっとオレから言っていたと思います(笑)」
厨房から飲み物とつまみになるものを持ってくるという若だんなと一瞬でも離れたくなくて、手をつないで彼について歩いた。若だんなの部屋は民宿とは別の隣の建物にあるという。
温泉の入り口近くにある『関係者以外出入り禁止』と書かれた扉から外に出ると、そこは初めて彼とお互いの失恋話をしたあの堤防が見えた。その堤防の脇を通ると、隣の建物のドアが見えた。若だんなはポケットからカギを出して開けた。「香奈子さんどうぞ」と、私に先に入るように促した。
玄関で靴を脱いで部屋に入ると、思っていた以上に部屋が片付いていることに驚いた。きちんと整頓された本棚。洗った食器はきれいに片付けてあるし、床に物が散乱しているようなことがなかった。
「お邪魔します」と声をかけて入ったけど、あまりに整っている部屋に見渡してしまった。私の部屋よりきれいかもしれないと思った。
「部屋、きれいにしているんですね」
「あ~、物を整理して置いてあるだけなんですけどね」
「男性の部屋ってもっとこう…」
「汚れ物とか床に散らばっているみたいな?」
「はい」
「みんながみんなそういう男ばかりじゃないですよ」
「そうですよね」
「ソファにどうぞ。座り心地がいいんでぜひ。香奈子さんも気に入ると思います」
そう言われて、モスグリーンの布地がかけてあるソファ。ちょこんと座ってしまったけど、肌触りが良い。
若だんなが隣に座ってお酒やおつまみを準備している。その姿が何だかすごく愛おしく感じて。思わず腕にしがみつきたい気持ちを抑えて、左腕を指で何度もなぞった。テーブルに物を乗せ終わると、若だんなは何も言わずに私を抱きしめてくれた。
「今晩はずっとこうしていいですか?」
そう言われて頷いた。優しく抱きしめてくれているこの時間が本当に愛おしくて、若だんなの腕を絡ませている手に少しだけぎゅと力が入ってしまった。痛くなかっただろうかと顔を上げて若だんなを見た。優しい手は私の頬を撫で、顔を近づけてくちびるを重ねてきた。もうそれが2人の間では当たり前かのように、ずっと恋人だったかのように自然だった。くちびるが離れたとき、私は閉じていた目を開けて若だんなを見つめた。
「私、さっき自分のことばかり言ってごめんなさい」
「いや、お互いの生活があるのは当然のことですから何とも思ってませんよ」
「…私も少し変わってしまったようです」
「?」
「涼太郎さんと出会って、以前の自分じゃなくなった気がします。あっ、いい意味ですよ。なんていうか、一人でなんでも頑張らなくていいんじゃないかって思えるようになったり、こうして人に甘えたり…とか」
「香奈子さんが甘えてくれてすごくうれしいです。もう、このまま離したくない!」
「私も離れたくないです」
私たちはぎゅっと抱き合ったり、くちびるを重ねたり。離れがたくて愛おしくてずっとそばにいたくて。何度抱きしめ合っても、キスし合っても足りない気がして。お互いがお互いを欲しているのがわかった。
でも、朝は容赦なくやってきた。気がつくと夜はあけ、朝日が昇ってくるのが見えた。朝日が若だんなの頬にあたって、後光がさしているかのようだ。
その頃から外が騒がしく動き出している音がしていた。
「オレ、ずっとこうしていたい。香奈子さん好きだ。でも、仕込みに行かなくちゃならない」
「私も帰る準備しなきゃだけど、涼太郎さんとこうしていたい」
私たちはお互いを必要としている。でも、心の奥底では「その先は?」という声が聞こえる。先が見えないし、涼太郎さんがどうしようと思っているかはわからない。だけど、私はなんとかしようと心に決めていた。
「涼太郎さん、仕事には行かなきゃ。若だんなでしょ、みんなに必要とされているのだから。それに私なんかのためにみんなに迷惑をかけちゃダメ。私も自分の部屋に戻るから」
「わかった。ご飯は食べにきてよ。それに汽船まで見送りするから今がんばってくる」
「うん。」
そう言って、手をつないで2人で部屋を出た。
「この階段を上がれば部屋にすぐつけるから、って知ってるか(笑)」
「うん。最初の日、ここから降りてきて堤防を見つけたんだもん」
「じゃ、また後で。食堂で待ってる」
「うん、6時過ぎには行くから」
そう言うと、若だんなはまた私を抱きしめ、軽くキスをして館内へ走っていった。私は防波堤に登り、海を見てから部屋に戻ることにした。私は朝焼けの海を初めて見ていた。海に日の光が当たってキラキラしている。引いては寄せる波が心地いい音をしている。
私は、このきれいな風景に涼太郎さんとのこれからをかけてもいいんじゃないかとふと思った。
部屋に戻って支度を…と言ってもほとんど何も持ってきていないから、忘れ物がないかどうかだけチェックして一睡もしていない顔をどうにか少しでもきれいに整えるくらいしかやることがなかった。
洗面台前の鏡をのぞいてみると、そこにいる私は一睡もしていないわりには肌にハリが戻っている気がする。目の下のクマもほとんど気にならないくらい。なぜか、自分が生き返った気がしていた。
あんなに未練があって立ち直れないとか、もう恋はしたくないとか思っていた自分は目の前から消え去っていた。この土地に来てリフレッシュしたからではなくて、新しい恋に大切にされているから…だと実感した。
だからこそ、帰りたくない気持ちがどうしても沸き起こって抑えるのが難しい。私が若だんなに「自分の生活がある」と言ったように、若だんなにも若だんなの生活がある。これはどうしようもない現実だ。避けて通ることができない現実……。
でも、鏡に映っている自分は、もう前の自分とは違う。2人の未来のためにお互いで歩み寄ることができるはず。
頬をパンパンと軽くたたいて、気持ちを奮い立たせて「ご飯を食べに行く」という約束を守りに行くことにした。
食堂に降りてみると、それなりに混んでいた。休暇を楽しんでいる人というよりは、作業関係の仕事着を着ている人が多い。1人で座れる席を探していると、女将さんが声をかけてきた。
「おはようございます。具合は良くなりましたか?」
「はい、もうすっかり良くなりました。昨晩はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「いえいえ、良くなられて何よりです。あちらの席を若だんなが用意していましたので、どうぞ」
「あっはい」
席を用意してくれていたんだ。そう思うと思わず頬が緩んでしまう。両手で頬を抑えながら案内された席に来てみると、テーブルに『予約席』の札がある。これも若だんなの配慮だろうか。この席からも海が見える。なぜか不思議と若だんなが近くにいて私を守ってくれているような気がしてならなかった。
「お待たせしました」
女性スタッフさんがお膳を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
私の目の前には、前日と同様に海鮮物が中心の朝ごはんが広がっていた。ただ一つ違っていたのは、プチデザートがついていたこと。たっぷりのフルーツにヨーグルトソースがかけられていた。しかも、ハートの形の小さなチョコレートがのせてある。見ただけで若だんなが私のために添えてくれたとしか思えない。お礼を言いたくて食堂全体を見まわしてみたけど、若だんなの姿はなかった。きっと忙しいのだろう。だけど、気持ちがとてもうれしかった。
ここでのおいしい食事を堪能して、若だんなの気持ちのこもったプチデザートもしっかり味わって「ごちそうさまでした」と手を合わせて立ち上がった時、女将さんが「おそまつさまでした」とお膳を下げに近寄ってきた。
「本当においしかったです。ごちそうさまでした」
「喜んでいただけて本当に良かったです。ありがとうございました」
「また、遊びにきますから。今度はちゃんと予約して。今回は突然にもかかわらず泊めてくださってありがとうございました」
「その際はお待ちしております」
一礼をして、席を立って部屋に荷物を取りに行った。送ってくれるといった若だんなには申し訳ないけど、離れるのがつらくなるからタクシーで汽船乗り場まで1人で行こうと思っていた。フロントに立ち寄り、タクシーを呼んでもらうことにした。
「すみません、タクシーを呼んでもらえますか?」
「はい、かしこまりました。もうお立ちですか?」
「ええ、できれば早い時間帯の船に乗りたくて」
「わかりました。すぐに呼びますが少しお時間がかかると思いますので、到着しましたらお部屋にご連絡します」
「いえ、バッグを取ってきて清算したら外で待ちますから大丈夫です」
「かしこまりました」
私は部屋に戻り、身支度を整えてすぐに部屋を出た。フロントに戻ってきて清算をしていたら「タクシーが来たようです」と言われた。意外と早いと思ってお礼を言った。
「ありがとうございます。素晴らしい休暇が過ごせました。ありがとうございました。また来ます」
「ぜひお待ちしております。ご利用ありがとうございました。」
財布をバッグに入れて顔を上げると、入口にいたのは若だんなだった。
「送っていくって言ったでしょ」
「大丈夫です。タクシーを呼んでもらったので」
「それ、多分オレのことだと思いますよ」
「え?」
「香奈子さん専用のタクシーみたいなものなんで」
振り返ってフロントにいる女性スタッフさんはにこっと笑っていた。きっと若だんなが手をまわしていたに違いないということに気がついた。うれしい気持ちがあったが、別れるつらさもあって。両方の気持ちが混ざり合い、何とも言えない心持だった。
私も引きつり気味だったがにこりと微笑み返して若だんなの方を見た。急いで靴を履き外へ出て若だんなの後を追った。
「離れるのがつらいから一人で帰ろうと思ったのにどうして?」
「それはオレも同じ。自分だけだと思ったら大間違いだから。彼女の再出発くらい後押しさせてほしい」
「か…彼女…」
助手席側のドアを開けられて乗ったはいいけど、彼女の言葉にドキドキしていた。運転席に乗り込みエンジンをかけた若だんなは心なしか緊張した顔をしている。
「オレの彼女!香奈子さんは。付き合ってって言ってなかったけどオレはそのつもりでいた」
「彼女って言われたことがうれしかったし…。私もそうなったらいいなって。そうじゃなきゃ昨日みたいなことはしないよ」
そう言ったら、ハンドルとは反対の手で私の手を握ってくれた。
「今は一時離れるだけ。遠距離と言っても毎日話だってできるから大丈夫。それに休みを取って会いに行くから」
「私も会いに来る、絶対」
話したいことがいっぱいあるけど、何か声に出したら涙があふれてきてしまう。若だんなも同じ気持ちだったのだろうか。お互い黙ったままだった。つないだ手がお互いの気持ちなんだって思っていた。
汽船乗り場には7時30分過ぎに着いた。
駐車場に車を停めると、若だんなは私を抱きしめた。
「ずっとこうしていたいけど、香奈子を困らせたくない」
「私もおんなじだよ」
「出発の時間までこうしてていい?ちゃんと切符買って、乗り場まで案内するから」
「うん」
「オレ、親と交渉して今以上に仕事がんばって休みを取れるようにするから」
「うん、私もがんばる」
「電話も毎日するし、LINEもするから」
「若だんなってけっこう甘々系だったんだね」
「えっそう?」
「うん、最初はドS系の怖い人かと思ったけど、私のことお姫様を扱うみたいに接してくれるし、耳元で優しく囁くように話してくれるし」
「嫌だった?」
「ううん、そういうところに癒されたし、好きになったんだよ」
「大好きだよ、香奈子」
「私も大好き!」
そういうと若だんなは体を話して、私の目をまっすぐ見た。いつになく真剣な顔をしている。
「こんなこと言うと、香奈子が嫌な思いをするかと思ってたんだけど、どうしても知っておいてほしくて」
「うん」
「オレと結婚を前提に付き合ってほしい」
「えっ…」
「返事は今じゃなくて全然いいから。今は香奈子の気持ち落ち着くことが一番大事だと思ってるし」
そう言われて涙が頬を伝っていった。若だんなが指で優しく涙をぬぐってくれた。
「ごめん、悲しませるようなこと言って。だから泣かないで」
「ううん、悲しいんじゃないの。幸せ過ぎて…すごくうれしくて…。こんな私でよかったらよろしくお願いします」
涙声でそういうのが精一杯な私を笑顔で抱きしめてくれて、「オレもうれしい」そう言って優しくキスしてくれた。
2人で過ごす時間はあっという間に過ぎ、汽船案内が入ってしまった。急いで車を降り、手をつないで切符を買いに向かった。そして、汽船乗り場で切符を出そうとしたところで、手を引っ張られて若だんなに抱きしめられた。
「着いたら連絡して」
「うん」
「香奈子、オレに出会いに来てくれてありがとう」
「私も涼太郎に会えてよかった。ここに来てよかった」
「気をつけて帰るんだぞ」
「うん、涼太郎もね」
私を離し、頭を優しくなでてくれた。笑顔の若だんながまぶしかった。
私は、搭乗口に入り、人の流れに流されながら若だんなに向かって手を思いきり降った。若だんなが見えなくなるまで。淋し過ぎて涙が流れてしょうがなかったけど、思いきりの笑顔で若だんなの姿を見つめた。
船に乗って席に座ると、ハンカチで涙を拭いた。そうしているうちに出航のドラが鳴った。船がゆっくりと進んでいく。
それを見ていて浮かんだのは、私たちの物語は始まったばかりだってことだった。今この気持ちは本物だし、これから先、幸せな日もあればケンカして悲しくなる日もあると思う。でも、きっと今日のことを思い出してこれまで誰とも築けなかった素敵な関係を結べると思う。というか信じている。
近いうちに、きっと涼太郎に会いに行く!そう決めている自分がいた。
「すみません!こんなことして香奈子さんの気持ちを揺るがすようなことして」
「謝らないでください。明日帰るのは私で…。涼太郎さんの気持ちを利用するようなことをしたのは私で……」
「いえ、オレは香奈子さんと出会えて本当によかったと思っています。あの時、香奈子さんがオレを選んでくれて本当に良かった。オレ、やっと自分自身に戻れたような気がして。それって香奈子さんが傍にいてくれたからだと思うんです。明日、帰ってしまうのは寂しいけれど、オレは香奈子さんが好きです」
「…!」
若だんなが急に私の両手を握って真剣なまなざしを向けてきた。
「オレ、香奈子さんを手放したくないんです。好きだから」
「私も涼太郎さんのことが好きです。でも、今の仕事も好きで辞めるつもりは全然ありません。だから…、涼太郎さんに悲しい思いをさせてしまうかもしれないんです……」
「大丈夫、オレがサポートします」
「お互い一時的な想いで決めてしまうのは良くないって思うんです」
そう言うと、若だんなは何かを感じ取ったようで、手をゆっくりと離した。
「香奈子さんがそう思うのは仕方のないことですね。でも、オレの気持ちは変わらないし、知っておいてほしい…って思って」
「……」
「じゃあ、オレは部屋に戻ります。明日は遅くても8時にはここを出ないといけないので、そのつもりで支度をしてくださいね」
「わかりました」
「じゃ、香奈子さんおやすみなさい」
「おやすみなさい」
若だんなは、私の頭を優しくなでると部屋を出て行ってしまった。後ろ姿を見送ったけどなんだか淋しそうな背中だった。
理屈ではわかっている。これ以上若だんなを想っていてはダメだって。私たちはそれぞれ仕事も住む場所も違う。生活パターンも違う。ずっとここにいるわけにはいかない。
それに遠距離恋愛ができるかどうかも私にはわからない。好きという気持ちだけではどうにもならないこともある。そうわかっているのに、そんな気持ちとは裏腹に体が勝手に動いていた。
部屋を飛び出し、後を追った。階段を降り切ったところに若だんなの姿があった。食堂へ向かう廊下に進もうとしていた。
「あの!」
私の声に振り向いて下から見上げて、少し悲し気な笑顔を向けてくれた。
「どうしたんですか?」
ゆっくりと階段を上がってこようとしている。私は慌てて駆け下り若だんなに抱きついた。
「走ったら危ないですよ」
若だんなが優しい声で囁いた。
「お願い、今晩はそばにいてほしいの。最後の夜だから一緒にいたい」
「はー、香奈子さんは淋しがりなんですね。じゃあ酒でも飲みながら…、と言っても気分悪くなった人だから飲んでも梅酒ですけどね」
「それでもいいから、一緒にいてくれる?」
「いいですよ。香奈子さんから言わなかったら、きっとオレから言っていたと思います(笑)」
厨房から飲み物とつまみになるものを持ってくるという若だんなと一瞬でも離れたくなくて、手をつないで彼について歩いた。若だんなの部屋は民宿とは別の隣の建物にあるという。
温泉の入り口近くにある『関係者以外出入り禁止』と書かれた扉から外に出ると、そこは初めて彼とお互いの失恋話をしたあの堤防が見えた。その堤防の脇を通ると、隣の建物のドアが見えた。若だんなはポケットからカギを出して開けた。「香奈子さんどうぞ」と、私に先に入るように促した。
玄関で靴を脱いで部屋に入ると、思っていた以上に部屋が片付いていることに驚いた。きちんと整頓された本棚。洗った食器はきれいに片付けてあるし、床に物が散乱しているようなことがなかった。
「お邪魔します」と声をかけて入ったけど、あまりに整っている部屋に見渡してしまった。私の部屋よりきれいかもしれないと思った。
「部屋、きれいにしているんですね」
「あ~、物を整理して置いてあるだけなんですけどね」
「男性の部屋ってもっとこう…」
「汚れ物とか床に散らばっているみたいな?」
「はい」
「みんながみんなそういう男ばかりじゃないですよ」
「そうですよね」
「ソファにどうぞ。座り心地がいいんでぜひ。香奈子さんも気に入ると思います」
そう言われて、モスグリーンの布地がかけてあるソファ。ちょこんと座ってしまったけど、肌触りが良い。
若だんなが隣に座ってお酒やおつまみを準備している。その姿が何だかすごく愛おしく感じて。思わず腕にしがみつきたい気持ちを抑えて、左腕を指で何度もなぞった。テーブルに物を乗せ終わると、若だんなは何も言わずに私を抱きしめてくれた。
「今晩はずっとこうしていいですか?」
そう言われて頷いた。優しく抱きしめてくれているこの時間が本当に愛おしくて、若だんなの腕を絡ませている手に少しだけぎゅと力が入ってしまった。痛くなかっただろうかと顔を上げて若だんなを見た。優しい手は私の頬を撫で、顔を近づけてくちびるを重ねてきた。もうそれが2人の間では当たり前かのように、ずっと恋人だったかのように自然だった。くちびるが離れたとき、私は閉じていた目を開けて若だんなを見つめた。
「私、さっき自分のことばかり言ってごめんなさい」
「いや、お互いの生活があるのは当然のことですから何とも思ってませんよ」
「…私も少し変わってしまったようです」
「?」
「涼太郎さんと出会って、以前の自分じゃなくなった気がします。あっ、いい意味ですよ。なんていうか、一人でなんでも頑張らなくていいんじゃないかって思えるようになったり、こうして人に甘えたり…とか」
「香奈子さんが甘えてくれてすごくうれしいです。もう、このまま離したくない!」
「私も離れたくないです」
私たちはぎゅっと抱き合ったり、くちびるを重ねたり。離れがたくて愛おしくてずっとそばにいたくて。何度抱きしめ合っても、キスし合っても足りない気がして。お互いがお互いを欲しているのがわかった。
でも、朝は容赦なくやってきた。気がつくと夜はあけ、朝日が昇ってくるのが見えた。朝日が若だんなの頬にあたって、後光がさしているかのようだ。
その頃から外が騒がしく動き出している音がしていた。
「オレ、ずっとこうしていたい。香奈子さん好きだ。でも、仕込みに行かなくちゃならない」
「私も帰る準備しなきゃだけど、涼太郎さんとこうしていたい」
私たちはお互いを必要としている。でも、心の奥底では「その先は?」という声が聞こえる。先が見えないし、涼太郎さんがどうしようと思っているかはわからない。だけど、私はなんとかしようと心に決めていた。
「涼太郎さん、仕事には行かなきゃ。若だんなでしょ、みんなに必要とされているのだから。それに私なんかのためにみんなに迷惑をかけちゃダメ。私も自分の部屋に戻るから」
「わかった。ご飯は食べにきてよ。それに汽船まで見送りするから今がんばってくる」
「うん。」
そう言って、手をつないで2人で部屋を出た。
「この階段を上がれば部屋にすぐつけるから、って知ってるか(笑)」
「うん。最初の日、ここから降りてきて堤防を見つけたんだもん」
「じゃ、また後で。食堂で待ってる」
「うん、6時過ぎには行くから」
そう言うと、若だんなはまた私を抱きしめ、軽くキスをして館内へ走っていった。私は防波堤に登り、海を見てから部屋に戻ることにした。私は朝焼けの海を初めて見ていた。海に日の光が当たってキラキラしている。引いては寄せる波が心地いい音をしている。
私は、このきれいな風景に涼太郎さんとのこれからをかけてもいいんじゃないかとふと思った。
部屋に戻って支度を…と言ってもほとんど何も持ってきていないから、忘れ物がないかどうかだけチェックして一睡もしていない顔をどうにか少しでもきれいに整えるくらいしかやることがなかった。
洗面台前の鏡をのぞいてみると、そこにいる私は一睡もしていないわりには肌にハリが戻っている気がする。目の下のクマもほとんど気にならないくらい。なぜか、自分が生き返った気がしていた。
あんなに未練があって立ち直れないとか、もう恋はしたくないとか思っていた自分は目の前から消え去っていた。この土地に来てリフレッシュしたからではなくて、新しい恋に大切にされているから…だと実感した。
だからこそ、帰りたくない気持ちがどうしても沸き起こって抑えるのが難しい。私が若だんなに「自分の生活がある」と言ったように、若だんなにも若だんなの生活がある。これはどうしようもない現実だ。避けて通ることができない現実……。
でも、鏡に映っている自分は、もう前の自分とは違う。2人の未来のためにお互いで歩み寄ることができるはず。
頬をパンパンと軽くたたいて、気持ちを奮い立たせて「ご飯を食べに行く」という約束を守りに行くことにした。
食堂に降りてみると、それなりに混んでいた。休暇を楽しんでいる人というよりは、作業関係の仕事着を着ている人が多い。1人で座れる席を探していると、女将さんが声をかけてきた。
「おはようございます。具合は良くなりましたか?」
「はい、もうすっかり良くなりました。昨晩はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「いえいえ、良くなられて何よりです。あちらの席を若だんなが用意していましたので、どうぞ」
「あっはい」
席を用意してくれていたんだ。そう思うと思わず頬が緩んでしまう。両手で頬を抑えながら案内された席に来てみると、テーブルに『予約席』の札がある。これも若だんなの配慮だろうか。この席からも海が見える。なぜか不思議と若だんなが近くにいて私を守ってくれているような気がしてならなかった。
「お待たせしました」
女性スタッフさんがお膳を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
私の目の前には、前日と同様に海鮮物が中心の朝ごはんが広がっていた。ただ一つ違っていたのは、プチデザートがついていたこと。たっぷりのフルーツにヨーグルトソースがかけられていた。しかも、ハートの形の小さなチョコレートがのせてある。見ただけで若だんなが私のために添えてくれたとしか思えない。お礼を言いたくて食堂全体を見まわしてみたけど、若だんなの姿はなかった。きっと忙しいのだろう。だけど、気持ちがとてもうれしかった。
ここでのおいしい食事を堪能して、若だんなの気持ちのこもったプチデザートもしっかり味わって「ごちそうさまでした」と手を合わせて立ち上がった時、女将さんが「おそまつさまでした」とお膳を下げに近寄ってきた。
「本当においしかったです。ごちそうさまでした」
「喜んでいただけて本当に良かったです。ありがとうございました」
「また、遊びにきますから。今度はちゃんと予約して。今回は突然にもかかわらず泊めてくださってありがとうございました」
「その際はお待ちしております」
一礼をして、席を立って部屋に荷物を取りに行った。送ってくれるといった若だんなには申し訳ないけど、離れるのがつらくなるからタクシーで汽船乗り場まで1人で行こうと思っていた。フロントに立ち寄り、タクシーを呼んでもらうことにした。
「すみません、タクシーを呼んでもらえますか?」
「はい、かしこまりました。もうお立ちですか?」
「ええ、できれば早い時間帯の船に乗りたくて」
「わかりました。すぐに呼びますが少しお時間がかかると思いますので、到着しましたらお部屋にご連絡します」
「いえ、バッグを取ってきて清算したら外で待ちますから大丈夫です」
「かしこまりました」
私は部屋に戻り、身支度を整えてすぐに部屋を出た。フロントに戻ってきて清算をしていたら「タクシーが来たようです」と言われた。意外と早いと思ってお礼を言った。
「ありがとうございます。素晴らしい休暇が過ごせました。ありがとうございました。また来ます」
「ぜひお待ちしております。ご利用ありがとうございました。」
財布をバッグに入れて顔を上げると、入口にいたのは若だんなだった。
「送っていくって言ったでしょ」
「大丈夫です。タクシーを呼んでもらったので」
「それ、多分オレのことだと思いますよ」
「え?」
「香奈子さん専用のタクシーみたいなものなんで」
振り返ってフロントにいる女性スタッフさんはにこっと笑っていた。きっと若だんなが手をまわしていたに違いないということに気がついた。うれしい気持ちがあったが、別れるつらさもあって。両方の気持ちが混ざり合い、何とも言えない心持だった。
私も引きつり気味だったがにこりと微笑み返して若だんなの方を見た。急いで靴を履き外へ出て若だんなの後を追った。
「離れるのがつらいから一人で帰ろうと思ったのにどうして?」
「それはオレも同じ。自分だけだと思ったら大間違いだから。彼女の再出発くらい後押しさせてほしい」
「か…彼女…」
助手席側のドアを開けられて乗ったはいいけど、彼女の言葉にドキドキしていた。運転席に乗り込みエンジンをかけた若だんなは心なしか緊張した顔をしている。
「オレの彼女!香奈子さんは。付き合ってって言ってなかったけどオレはそのつもりでいた」
「彼女って言われたことがうれしかったし…。私もそうなったらいいなって。そうじゃなきゃ昨日みたいなことはしないよ」
そう言ったら、ハンドルとは反対の手で私の手を握ってくれた。
「今は一時離れるだけ。遠距離と言っても毎日話だってできるから大丈夫。それに休みを取って会いに行くから」
「私も会いに来る、絶対」
話したいことがいっぱいあるけど、何か声に出したら涙があふれてきてしまう。若だんなも同じ気持ちだったのだろうか。お互い黙ったままだった。つないだ手がお互いの気持ちなんだって思っていた。
汽船乗り場には7時30分過ぎに着いた。
駐車場に車を停めると、若だんなは私を抱きしめた。
「ずっとこうしていたいけど、香奈子を困らせたくない」
「私もおんなじだよ」
「出発の時間までこうしてていい?ちゃんと切符買って、乗り場まで案内するから」
「うん」
「オレ、親と交渉して今以上に仕事がんばって休みを取れるようにするから」
「うん、私もがんばる」
「電話も毎日するし、LINEもするから」
「若だんなってけっこう甘々系だったんだね」
「えっそう?」
「うん、最初はドS系の怖い人かと思ったけど、私のことお姫様を扱うみたいに接してくれるし、耳元で優しく囁くように話してくれるし」
「嫌だった?」
「ううん、そういうところに癒されたし、好きになったんだよ」
「大好きだよ、香奈子」
「私も大好き!」
そういうと若だんなは体を話して、私の目をまっすぐ見た。いつになく真剣な顔をしている。
「こんなこと言うと、香奈子が嫌な思いをするかと思ってたんだけど、どうしても知っておいてほしくて」
「うん」
「オレと結婚を前提に付き合ってほしい」
「えっ…」
「返事は今じゃなくて全然いいから。今は香奈子の気持ち落ち着くことが一番大事だと思ってるし」
そう言われて涙が頬を伝っていった。若だんなが指で優しく涙をぬぐってくれた。
「ごめん、悲しませるようなこと言って。だから泣かないで」
「ううん、悲しいんじゃないの。幸せ過ぎて…すごくうれしくて…。こんな私でよかったらよろしくお願いします」
涙声でそういうのが精一杯な私を笑顔で抱きしめてくれて、「オレもうれしい」そう言って優しくキスしてくれた。
2人で過ごす時間はあっという間に過ぎ、汽船案内が入ってしまった。急いで車を降り、手をつないで切符を買いに向かった。そして、汽船乗り場で切符を出そうとしたところで、手を引っ張られて若だんなに抱きしめられた。
「着いたら連絡して」
「うん」
「香奈子、オレに出会いに来てくれてありがとう」
「私も涼太郎に会えてよかった。ここに来てよかった」
「気をつけて帰るんだぞ」
「うん、涼太郎もね」
私を離し、頭を優しくなでてくれた。笑顔の若だんながまぶしかった。
私は、搭乗口に入り、人の流れに流されながら若だんなに向かって手を思いきり降った。若だんなが見えなくなるまで。淋し過ぎて涙が流れてしょうがなかったけど、思いきりの笑顔で若だんなの姿を見つめた。
船に乗って席に座ると、ハンカチで涙を拭いた。そうしているうちに出航のドラが鳴った。船がゆっくりと進んでいく。
それを見ていて浮かんだのは、私たちの物語は始まったばかりだってことだった。今この気持ちは本物だし、これから先、幸せな日もあればケンカして悲しくなる日もあると思う。でも、きっと今日のことを思い出してこれまで誰とも築けなかった素敵な関係を結べると思う。というか信じている。
近いうちに、きっと涼太郎に会いに行く!そう決めている自分がいた。
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