瀬野の短編集「恋愛」

瀬野凜花

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臆病な僕ときみの嘘

1-3

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 キミがずっと行きたかったカフェで、ケーキを食べた。

「んー! 甘い! おいしい!」

 はしゃぐキミの笑顔がもっと見たくて、僕のケーキを差し出した。

「一口食べる?」
「いいの?」

 遠慮がちなキミのフォークが、僕のケーキを小さく切り取った。

「わ、これもおいしい」

 目を見開いたキミの視線は、僕のケーキから離れない。

「もう一口食べなよ。もっと大きくていいよ」

 パアッとキミの顔が輝いた。
 今度は標準的な一口サイズに切り取って口に運び、幸せそうににこにこと笑うキミ。

 待てよ。

 ケーキを見下ろし、キミのフォークが切った跡を見つめる。
 これってもしかして、間接キ……。
 いやいや、フォークは別々のものを使っているし、直接ケーキに口をつけたわけでもないし。

「ねえ、間接キス、なのかな」
「は⁉︎」

 キミの爆弾発言に、僕の心臓は30cmくらいは飛び跳ねたと思う。

「ちがうと思うけど!」
「だよね」

 慌てて否定すると、キミは大して気にする様子もなく、また幸せそうにケーキを食べ始めた。

 動揺しているのは僕だけなのかよ。エイプリルフールだからって、何を言ってもいいと思っているんじゃないか?

 僕自身がケーキを食べるようにすすめたことは都合よく忘れて、キミの言動に心の中で文句を言った。

「そういえば」

 思い出したように顔を上げたキミは、少し真面目な顔をしていた。

「わたし、もうすぐ死ぬんだよね」

 僕は目を瞬かせた。
 キミはどうやら、エイプリルフールをまだまだ満喫するつもりのようだった。

「それは、大変だ。病気? 事故?」
「うーん、病気かな」
「早く入院しないと!」
「来週には入院するよ」

 キミはにやりと笑った。
 ポンポンと続く会話に、僕もなんだかエイプリルフールが楽しくなってきた。

「僕も、もうすぐ死ぬんだよね」
「え」

 キミの意表をつけたようだ。心の中でガッツポーズをした。

「病気? 事故?」
「事故!」
「じゃあ、1年くらい家から出るのは禁止」
「そんなの無理だよ!」

 僕たちは顔を見合わせて、ぷっと吹き出した。
 キミの笑顔を見ながら、教室で今のように声を上げて笑っていたキミの姿を思い出した。

 僕はその笑顔を見て、キミに恋をしたんだ。
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