瀬野の短編集「恋愛」

瀬野凜花

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臆病な僕ときみの嘘

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『おはよう。今日は雪だね』

 スマートフォンに届いたメッセージ。
 カーテンを開けて外を見ると、眩しい朝日が差し込んだ。

 君は朝からエイプリルフールを楽しんでいる。

 大学を卒業し社会人となって、数年が経った。僕は年々クリスマスやらバレンタインやらの行事が面倒になってきているのに、同い年であるはずの君はどんな行事でも全力で楽しむのだ。学生の頃みたいに。

『僕の目と耳は、今日の天気は大嵐だと言っているよ』

 そう返信して、外出の準備に取りかかった。ずっとメッセージのやり取りはしていたが、2人で会うのは数か月ぶりだ。気合いを入れなければ。

 待ち合わせ場所に着くまでの間も、メッセージアプリを介した会話は続いた。

『パジャマで家を出ちゃった』
『僕は左右で違う靴を履いてる』

『駅の前にマンモスがいて電車に乗り遅れそう』
『偶然だな。僕は今日、マンモスに乗って行く予定だよ』

『ごめん、電車を乗り間違えて宇宙に着いちゃった』
『きっと流れ星に乗ればすぐだ』

 君は絶好調だ。後で見返せるように、嘘は全部メッセージで送って記録に残したいらしい。明日になってもエイプリルフールを楽しみたい君の、わくわくしている表情が目に浮かんだ。
 早起きが苦手な君は、午前中しか嘘をついてはいけないという説は不採用にしたらしく、1日嘘を楽しむのだと張り切っていた。

 楽しみ方が少し風変わりで、全力な君が、好きだ。
 今日こそは想いを伝えられるだろうか。

 君のおかげで、僕もエイプリルフールを人並み以上に満喫できている。
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