瀬野の短編集「恋愛」

瀬野凜花

文字の大きさ
7 / 21
臆病な僕ときみの嘘

2-2

しおりを挟む
 最近出来たばかりのカフェに、2人で入った。

 ケーキを一口食べた君は、ムフフと笑ってスマートフォンを手に取った。
 ピロンとメッセージの通知音が鳴る。

『私、実は甘いものが嫌いなんだよね』

 君の前にずらりと並んだケーキたちを見る。
 既に君は1つ目を食べ終えて、2つ目に手をつけているところだった。

「おいしい?」
「おいしい! 来てよかった! ありがとう!」

 食い気味な返事に苦笑する。
 君のケーキを食べている様子を見るだけで、お腹がいっぱいになりそうだ。

『僕のショートケーキは、君にはあげない』

 3つもケーキを注文する君に合わせて、僕も2種類選んだ。しかし、僕は今食べているタルトだけで満足だ。

 メッセージを見た君は少し考えこむ様子を見せたあと、パッと表情を明るくしてスマートフォンに文字を打ち込み始めた。

『お腹がいっぱいだからいらない!』

 ショートケーキを君の方に寄せる。

「ありがとう!」
「どういたしまして」

 君は嬉しそうに食べ始めた。
 口いっぱいに頬張って味わう君は可愛い。

 最初は、エイプリルフールの嘘はメッセージで送るなんていうルールは面倒だと正直思っていた。だが意外と楽しいかもしれない。
 君が声に出した言葉に嘘はないと信じられるから。

「来てよかった!」
「僕も」

 4月1日にデートをすることに乗り気になれなかった僕だけど、すっかり楽しくなっていた。
 もし今日告白したら、良い返事をもらえるだろうか。

 そんなことを考えていたとき、ふと思い出した。
 高校を卒業した年のエイプリルフールのあの日も、こうしてケーキを食べたっけ。
 胸がチクリと痛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...