記憶の魔女の涙と恋

瀬野凜花

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31 彩り豊かな日々~5~

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「お似合い、だってな」
「そうですね!?」

 店の中に押し込んでドアを閉める。もう、頭がパンクしそう。無理。

「助手、褒められたぞ」
「お話は良かったですしありがたかったですけど! お客さまも後悔のない道を選べたようで安心しましたけど! お客さまに敬語を使わない助手ってなんですか!」
「あ、悪い。気が抜けてた」

 んもう。
 頬を膨らませて不満を主張すると、指で潰されてプッと間抜けな音が鳴った。

「ちょっと、何してくれてるんですか!」
「ははっ! あんたといると楽しいし安心できるってことさ」
「意味が分かりません」

 プンスカ怒っていると、カイルさんに肩を引き寄せられて耳元でささやかれた。

「なあ、カイルって呼んでくれよ。さん付けするな。それから、あんたも敬語を外せ」

 色気混じりで吹き込まれた低く響く声に思わず耳を押さえると、カイルさんは楽しそうに笑った。

「あんた、ささやかれるのに弱いよな。それとも俺の声?」

 図星をつかれて顔だけではなく体まで熱くなり、勝手に力が入る。
 にらみつけるが、まるで効果はないようだ。

「カイルさん、帰ってください」

 このままだと、お客さまの結晶を落としてしまいそう。早くしまわなきゃ。

「カイル、帰ってって言えよ」

 ニヤニヤと笑っている。
 このひとはほんとうにほんっとうに、なんなの!

「カイル……さん。帰って!」
「カイル……さん、ねえ。今日はそれで許してやるよ。じゃあな」

 鼻歌を歌いながら満足げに帰っていくカイルさんの背中をにらみつける。
 今日はにらみすぎて眉の間とか額とかが筋肉痛になりそうだわ。カイルさんの騎士としての立場を考えて悩んでいたのがバカみたい!

 頬を膨らませ、ほてった顔を手であおぎながら結晶を瓶に入れる。
 今度いつ来ても大丈夫なように、カイルさんにもらった服を着てみようかな。
 そんなことを考えている自分がいることに気がついて、その場にずるずると崩れ落ちた。もうごまかせない。私、カイルさんのことが好きなんだ。
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