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7・依頼人⑦向井絢斗
聞きたかったこと
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「こ、こ、こっわ━━━!!」
翌日、恐ろしいことが身に起こり、俺は驚愕した。
昨夜俺はポカポカの床暖房でうとうとし、ケントさんと抱きあって眠った。
体調不良なのに加え激しいセックスを何度もしたせいで、俺が目覚めたのは翌日の昼頃だった。いつの間にかベッドに移動しており、荒ぶったケントさんの声で起きた俺は、急いでリビングに向かった。
「ケントさん、どうかした……?」
「ああ、あまね、おはよう」
「おはよう」
「お前、スマホ見せろ」
「え?」
見ると、通知がたくさんきていた。マナーモードにしていたので全く気づかなかった。
「あー、涼くんからなんかきてるわ」
━━━ピンポンッ
ピンポンッ
ピンポンッ
「あ゛ーっ!!」
ケントさんは慌てて玄関へと向かった。
戻ってきたのは、ケントさんと涼くんだった。
「え、涼くん?!」
「連絡ないから来たんだとよ」
「心配したー!! 良かった、生きてた」
「え、あ、ごめん、寝てた……ケントさんちなんで知ってるの?」
「位置情報アプリ入れた」
「え? 誰に? 俺のスマホに?」
「だってあまね、拉致られたりするじゃん」
「こ、こ、こっわ━━━!!」
涼くん、いつの間にか俺のスマホにアプリを入れてたようだ。ロックしてない俺が悪いけども。
ケントさんといい涼くんといい、ちょっとおかしくない?!
「部屋番号がわからない、って電話がこっちにきたんだよ。マンションの入り口でわめくとか迷惑な話だ」
ケントさんはたいそうご立腹のようだった。俺はあわあわしてどうしたら良いかわからない。
「とりあえず昼飯作るから、話すならそこに座れ」
と、キッチンそばのテーブルを指差した。
「ケ、ケントさんごめんね?」
「許さない、あとで覚えてろよ」
ケントさんが言うとほんと怖すぎる。俺、身体持つかな……。
「あー、ケント先生、ほんとーにすみません! でもあまねのこと乱暴にしないでねっ」
「うるさい。めちゃくちゃ激しくしてやる」
「ちょっ、ケント先生~、あまね壊れちゃうじゃん。いきなり来たオレが悪いですけど、生存確認はするって言ったでしょ?」
ケントさんと涼くんが言い合っているが、俺は口がはさめずただ椅子の上で縮こまってオドオドするしかなかった。
どちらかの味方をすれば、反対が怒る。板挟み状態だった。
「とりあえず、話したいこと話してとっとと帰れっ」
ジューッとフライパンの熱する音とともにケントさんは話すのを止めた。
「あ、涼くんごめん、俺作るとこ見たい」
俺は椅子から立ち上がり、キッチンのカウンターに手をついてケントさんの調理する姿を眺めた。
「へー、ケント先生料理もできるんだ」
涼くんも俺のとなりに来て、カウンター越しにケントさんを眺めた。
「ね、すごいよね。手際が良くて見とれる」
俺が軽く微笑みながら眺める様子に、涼くんはふぅと息を吐いた。
「あまねはケント先生にゾッコンなんだなあ」
「えー?」
フフ、と俺が笑うと、ケントさんは嬉しかったのか口角を少しだけ上げた。
「ペペロンチーノ?」
「そう。涼が来たからメニュー変更。あまね、またパスタだけど大丈夫?」
「大丈夫、パスタ好き」
「良かった」
ニンニクの香ばしい匂いが漂い、厚切りのベーコンがジュウジュウと音を出して焼けていく。キャベツとゆで汁を加えて、しょうゆと塩コショウで味付けをし、パスタをザッと入れた。
軽く混ぜて皿に盛ると、涼くんは「おお~」
と歓声を上げた。
「めっちゃスパダリだわ、ケント先生」
スパダリ?
スパダリってなんだろ……。
「てか、お前たち話さなかったな? お前いつまでいるつもりなんだよ。食べたら帰れよ」
悪態をつきながらテーブルに3つパスタを置き、冷蔵庫から生ハムの乗ったサラダを出した。
「えーっ! ケント先生すごい」
「うるせーわ」
この3人で食事をするのもなかなか怖いものだったが、俺と涼くんがケントさんをベタ褒めしたおかげか和やかに食卓を囲むことができた。
涼くんの食いっぷりにケントさんはいささか引いていたが、冷蔵庫からさらに昨晩の残りを出してくれた。
「あまね、昨日これ食べたんだ? いーなー! オレも今度泊まっていいですか?」
「ダメに決まってるだろ。大体お前どうやってここに来たんだ」
「彼女の送迎ですよ~帰りは夕方に来てくれます~」
「お前彼女いたのか。……まあいるよな」
「ケント先生は? 今はいるんですか? あまねの前はいたんですよね?」
りょ、涼くん、俺が聞けなかったことをさらっと言ってる。俺はドキドキしながら耳を傾けた。
「今いるわけないだろ。前は……今年はつきあってないのばかりだな」
「つきあってない? あー、エッチだけってことか」
ははーん、と涼くんはニヤニヤした顔でケントさんを見つめた。
「でもこのうちは誰のなんですか? 分譲マンションですよね。ケント先生って結婚してたんですか?」
さらに切り込んでいった。涼くん、すごい。
「ここは、姉の夫が投資目的で買ったんだよ。住まないと悪くなるから、とりあえず住んでやってるんだ」
「投資かあ、なるほどね。食器とか、椅子とか、数が多いから1人では住んでないと思いましたけど」
「よく人が来てたんだよっ! お前、早く食べろ」
ケントさんはだんだんイライラしてきたが、涼くんのおかげでケントさんのこと色々と知れて良かった。
「人って誰ですかー? 女の人? あまねとつきあってから来ましたか?」
あー。それは、俺が知りたかったことで、知りたくなかった質問。答えが怖い。
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「あら探しですよ~。その返しは来てるってことですね」
━━━やっぱり。俺はバレないように、少し落ち込んだ。
「直哉とかだよ。お前まじでもう帰れ」
「あまねと2人きりで、話させてください」
ヘラヘラ質問していた涼くんは、スッと表情が変わり、真剣な眼差しになった。
「あまねは、カメラアイですよ? 物の配置は覚えている。誰か来てるの気づいてたはずだ」
「━━━ッ」
「そういうのって、傷つきますよね?」
翌日、恐ろしいことが身に起こり、俺は驚愕した。
昨夜俺はポカポカの床暖房でうとうとし、ケントさんと抱きあって眠った。
体調不良なのに加え激しいセックスを何度もしたせいで、俺が目覚めたのは翌日の昼頃だった。いつの間にかベッドに移動しており、荒ぶったケントさんの声で起きた俺は、急いでリビングに向かった。
「ケントさん、どうかした……?」
「ああ、あまね、おはよう」
「おはよう」
「お前、スマホ見せろ」
「え?」
見ると、通知がたくさんきていた。マナーモードにしていたので全く気づかなかった。
「あー、涼くんからなんかきてるわ」
━━━ピンポンッ
ピンポンッ
ピンポンッ
「あ゛ーっ!!」
ケントさんは慌てて玄関へと向かった。
戻ってきたのは、ケントさんと涼くんだった。
「え、涼くん?!」
「連絡ないから来たんだとよ」
「心配したー!! 良かった、生きてた」
「え、あ、ごめん、寝てた……ケントさんちなんで知ってるの?」
「位置情報アプリ入れた」
「え? 誰に? 俺のスマホに?」
「だってあまね、拉致られたりするじゃん」
「こ、こ、こっわ━━━!!」
涼くん、いつの間にか俺のスマホにアプリを入れてたようだ。ロックしてない俺が悪いけども。
ケントさんといい涼くんといい、ちょっとおかしくない?!
「部屋番号がわからない、って電話がこっちにきたんだよ。マンションの入り口でわめくとか迷惑な話だ」
ケントさんはたいそうご立腹のようだった。俺はあわあわしてどうしたら良いかわからない。
「とりあえず昼飯作るから、話すならそこに座れ」
と、キッチンそばのテーブルを指差した。
「ケ、ケントさんごめんね?」
「許さない、あとで覚えてろよ」
ケントさんが言うとほんと怖すぎる。俺、身体持つかな……。
「あー、ケント先生、ほんとーにすみません! でもあまねのこと乱暴にしないでねっ」
「うるさい。めちゃくちゃ激しくしてやる」
「ちょっ、ケント先生~、あまね壊れちゃうじゃん。いきなり来たオレが悪いですけど、生存確認はするって言ったでしょ?」
ケントさんと涼くんが言い合っているが、俺は口がはさめずただ椅子の上で縮こまってオドオドするしかなかった。
どちらかの味方をすれば、反対が怒る。板挟み状態だった。
「とりあえず、話したいこと話してとっとと帰れっ」
ジューッとフライパンの熱する音とともにケントさんは話すのを止めた。
「あ、涼くんごめん、俺作るとこ見たい」
俺は椅子から立ち上がり、キッチンのカウンターに手をついてケントさんの調理する姿を眺めた。
「へー、ケント先生料理もできるんだ」
涼くんも俺のとなりに来て、カウンター越しにケントさんを眺めた。
「ね、すごいよね。手際が良くて見とれる」
俺が軽く微笑みながら眺める様子に、涼くんはふぅと息を吐いた。
「あまねはケント先生にゾッコンなんだなあ」
「えー?」
フフ、と俺が笑うと、ケントさんは嬉しかったのか口角を少しだけ上げた。
「ペペロンチーノ?」
「そう。涼が来たからメニュー変更。あまね、またパスタだけど大丈夫?」
「大丈夫、パスタ好き」
「良かった」
ニンニクの香ばしい匂いが漂い、厚切りのベーコンがジュウジュウと音を出して焼けていく。キャベツとゆで汁を加えて、しょうゆと塩コショウで味付けをし、パスタをザッと入れた。
軽く混ぜて皿に盛ると、涼くんは「おお~」
と歓声を上げた。
「めっちゃスパダリだわ、ケント先生」
スパダリ?
スパダリってなんだろ……。
「てか、お前たち話さなかったな? お前いつまでいるつもりなんだよ。食べたら帰れよ」
悪態をつきながらテーブルに3つパスタを置き、冷蔵庫から生ハムの乗ったサラダを出した。
「えーっ! ケント先生すごい」
「うるせーわ」
この3人で食事をするのもなかなか怖いものだったが、俺と涼くんがケントさんをベタ褒めしたおかげか和やかに食卓を囲むことができた。
涼くんの食いっぷりにケントさんはいささか引いていたが、冷蔵庫からさらに昨晩の残りを出してくれた。
「あまね、昨日これ食べたんだ? いーなー! オレも今度泊まっていいですか?」
「ダメに決まってるだろ。大体お前どうやってここに来たんだ」
「彼女の送迎ですよ~帰りは夕方に来てくれます~」
「お前彼女いたのか。……まあいるよな」
「ケント先生は? 今はいるんですか? あまねの前はいたんですよね?」
りょ、涼くん、俺が聞けなかったことをさらっと言ってる。俺はドキドキしながら耳を傾けた。
「今いるわけないだろ。前は……今年はつきあってないのばかりだな」
「つきあってない? あー、エッチだけってことか」
ははーん、と涼くんはニヤニヤした顔でケントさんを見つめた。
「でもこのうちは誰のなんですか? 分譲マンションですよね。ケント先生って結婚してたんですか?」
さらに切り込んでいった。涼くん、すごい。
「ここは、姉の夫が投資目的で買ったんだよ。住まないと悪くなるから、とりあえず住んでやってるんだ」
「投資かあ、なるほどね。食器とか、椅子とか、数が多いから1人では住んでないと思いましたけど」
「よく人が来てたんだよっ! お前、早く食べろ」
ケントさんはだんだんイライラしてきたが、涼くんのおかげでケントさんのこと色々と知れて良かった。
「人って誰ですかー? 女の人? あまねとつきあってから来ましたか?」
あー。それは、俺が知りたかったことで、知りたくなかった質問。答えが怖い。
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「あら探しですよ~。その返しは来てるってことですね」
━━━やっぱり。俺はバレないように、少し落ち込んだ。
「直哉とかだよ。お前まじでもう帰れ」
「あまねと2人きりで、話させてください」
ヘラヘラ質問していた涼くんは、スッと表情が変わり、真剣な眼差しになった。
「あまねは、カメラアイですよ? 物の配置は覚えている。誰か来てるの気づいてたはずだ」
「━━━ッ」
「そういうのって、傷つきますよね?」
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