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フラグは建てる前に折りたかった

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目の前の三神君はその反応は分かっていたよとでも言うように眼をふせた。
「やっぱり、君は覚えてないんだね。」
ごめん。何かちょっとシリアスな顔してるとこ悪いんだけど女子の哀れみの目と睨みがきついんだ。ねぇシリアルに砕いて良い?
いや…正直考えたくないのもある。自分が恋愛対象主人公って何処の小説だよ!ここだぁ…じゃない。無理。
「僕はね、1度君に会ったことがあるんだよ。一目惚れだった。高校1年生の時、僕が移動教室中に行く途中筆箱を落としてしまってその時拾って渡してくれたんだ。普通は僕を見るとやたらと近づこうとするか逃げるかなのに君は普通の人として接してくれたんだ。嬉しかった。それから僕は君の事を僕の友達に聞いたり…」

三神君は私に視線を向けたまま思い出を語るように話した。というか途中途中三神君ファンの女子に刺さる言葉入ってない?あと私は途中で話を聞くのを断念した。というかこれ以上聞けない。一言で言うなら無理つらいむである。何故なら私は今という今までこういう好意を向けられたことがないし、思いを向けたことがない。無関心という訳ではない。乙女ゲーが好きだし良いなと思ったことも無いわけではない。でも現実で、例えるならそう、甘いパンケーキにチョコとクリームとアイスとはちみつをぶっかけたようなゲロ甘な物を急に食べさせられた感じ。分かるだろうか。いや、分からないかもしれない。私は怖いのだ。人は好意を向けられると嬉しいというが、私はこういう好意は、今まで受けたことがない思いは恐いと思ってしまう。暫く上の空でいた私に三神君は

「急にこんな事を言ってごめんね。でも諦めないから。返事はまだで良い、これから好きにさせるから待ってて欲しい。」

眼をふせて微笑んだ。イケメンの無駄遣いと爆弾発言の攻撃。もう私のライフは0よ。
じゃあねと言って教室を出ていく三神君の後ろ姿を眺めている私に近くにいた結衣はニヤニヤと見ているが絶望と多大なる物を失ったような私の目に同情してくれたようでただ肩を叩いてくれた。それだけが救いである。
後の展開は予想できるだろうが詰め寄る女子と騒ぐ男子に広がる噂。疲労困憊とはこの事である。全く明日から夢小説みたいに嫌がらせが始まったらどうしてくれる。いや三神君に罪はないのだが。
私はその後疲れた心を癒し、現実逃避すべく乙女ゲーでオールをすることを決めたのだった。
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