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番外編
春の上(朧月夜との仲発覚前)
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辺りを照らすのは夜空に浮かぶ大きな満月
その光を受けて輝きながらひらり、ひらりと舞い散る桜の花びら
「綺麗…」
私は一人桜を眺めていた
今日、殿は紅葉のお兄様の宴に御呼ばれしているのでおそらく帰っては来ない
いつも一緒に眠っているため一人では中々寝付けず、少納言たちに頼んで格子を上げてもらっていた
「こんなにすばらしい月夜は琴の音もいっそう冴えるというものですわ」
微笑んでいう女房の一人
「そうね、一曲弾いてみようかしら」
そう言って琴を引き寄せ、軽く掻き鳴らす
一つ息を吸い込んでから、お気に入りの曲を奏で始めた
……
「聞いた事のない楽ですね?」
声をかけられて顔を上げると月明かりを背にした殿が立っていた
うわ、きれい・・・
「殿…お帰りなさいませ
紅葉のお兄様とご一緒と伺っておりましたので、今日はお戻りにならないものだと思っておりましたわ」
「あぁ、大分引き止められたけどね」
言葉を切って私のすぐ横に座る殿
いつの間にか側にいたはずの少納言たちはいなくなっている
ゆっくりと腕が伸びてきてそっと肩を抱き寄せられた
「桜を見ていたらどうしても貴女に会いたくなってしまって」
「桜…ですか?」
「えぇ、貴女は桜に似て居るから…」
桜、ね・・・そう言えば、ずいぶん前に紅葉のお兄様にも似たようなこと言われたな…
二人そろって同じ事を言うなんんて…よっぽど私が桜に似てるの?
・・・桜に似てるってどんなの?
確かに“紫の上”は現代でも“樺桜の君”って言われたりするけど…
しばらくの間黙り込んでいたらしい
殿が顔を覗き込んでいた
「上は桜はお嫌いかい?」
「え?いいえ、私、桜は大好きですわ
花の中で一番好き」
笑顔を返して言葉を続ける
「私、春が好きですわ
色とりどりの花が咲き乱れて、眠っていた者たちが目を覚まし、新しい命芽生える
すばらしい季節ですもの」
するとお兄様も笑顔になった
「そうだね、貴女には春が似合う
生き生きとして清らかで、何よりも美しく穏やかな春が」
そっと額に唇が落ちてくる
それを受け入れるようにお兄様の首に手を回すと今度は目元、頬と順番に口付けられ、
そして最後に唇が重なった
私は春が好き
だってお兄様とはじめて出会った季節ですもの
その光を受けて輝きながらひらり、ひらりと舞い散る桜の花びら
「綺麗…」
私は一人桜を眺めていた
今日、殿は紅葉のお兄様の宴に御呼ばれしているのでおそらく帰っては来ない
いつも一緒に眠っているため一人では中々寝付けず、少納言たちに頼んで格子を上げてもらっていた
「こんなにすばらしい月夜は琴の音もいっそう冴えるというものですわ」
微笑んでいう女房の一人
「そうね、一曲弾いてみようかしら」
そう言って琴を引き寄せ、軽く掻き鳴らす
一つ息を吸い込んでから、お気に入りの曲を奏で始めた
……
「聞いた事のない楽ですね?」
声をかけられて顔を上げると月明かりを背にした殿が立っていた
うわ、きれい・・・
「殿…お帰りなさいませ
紅葉のお兄様とご一緒と伺っておりましたので、今日はお戻りにならないものだと思っておりましたわ」
「あぁ、大分引き止められたけどね」
言葉を切って私のすぐ横に座る殿
いつの間にか側にいたはずの少納言たちはいなくなっている
ゆっくりと腕が伸びてきてそっと肩を抱き寄せられた
「桜を見ていたらどうしても貴女に会いたくなってしまって」
「桜…ですか?」
「えぇ、貴女は桜に似て居るから…」
桜、ね・・・そう言えば、ずいぶん前に紅葉のお兄様にも似たようなこと言われたな…
二人そろって同じ事を言うなんんて…よっぽど私が桜に似てるの?
・・・桜に似てるってどんなの?
確かに“紫の上”は現代でも“樺桜の君”って言われたりするけど…
しばらくの間黙り込んでいたらしい
殿が顔を覗き込んでいた
「上は桜はお嫌いかい?」
「え?いいえ、私、桜は大好きですわ
花の中で一番好き」
笑顔を返して言葉を続ける
「私、春が好きですわ
色とりどりの花が咲き乱れて、眠っていた者たちが目を覚まし、新しい命芽生える
すばらしい季節ですもの」
するとお兄様も笑顔になった
「そうだね、貴女には春が似合う
生き生きとして清らかで、何よりも美しく穏やかな春が」
そっと額に唇が落ちてくる
それを受け入れるようにお兄様の首に手を回すと今度は目元、頬と順番に口付けられ、
そして最後に唇が重なった
私は春が好き
だってお兄様とはじめて出会った季節ですもの
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