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前世と小説、そして今
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《主人公が目覚めたのが桐壷の更衣の立場だったら》
(主人公、性格悪いです。お気を付けください)
前世は紫の上と呼ばれ、殿の妻として過ごした
現代では源氏物語を研究しつつ、大学で教鞭をとった
そして今、私はかつて夫だった人の母の立場になってしまったようだ
彼女(…まぁ、今は私だが)の人生を簡単に説明しよう
しっかりとした後ろ盾もない中で更衣として入内し、帝の寵愛を受けた彼女は女御たちに散々な嫌がらせを受ける
その中で衰弱していき、皇子を産んだ後にこの世を去った
今の私も彼女と変わらない
・・・変わらないはずだった
後ろ盾もなく入内し、帝に気に入られた
現在、それを妬んだ弘徽殿の女御様を初めとしたお妃たちに様々な嫌がらせを受けている
後は子を産んで死ねばそれで私の役目は終わる・・・のだが、
残念ながら現代を生きた私は、この嫌がらせの日々を泣きながら耐えるだけの我慢強さを持ち合わせてはいなかった
そもそも、前世とは違い現代での私は生まれつき気が強かったのだ
何気によかった頭に加え、そこそこ整った容姿も災いし、いじめられることも多々あった
しかし、その度に心に掲げた二つの誓い
“やられたらやり返す
やられた相手には三倍返し”
これを実行してきた
そんな私にこんな理不尽な嫌がらせを黙って享受しろと言う方が無理だったのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弘徽殿の女御様は気分が悪い(実際はそう言って引きこもっているだけ)私をお優しくも心配してくださっているそうだ
お優しいことにお薬まで用意してくださったらしい
何やら秘伝の難しいお薬らしく、飲み方の伝授に加え、飲むところを見届けるようにわざわざ女房までよこしてくださった
ほんとうにお優しいことだ
「さぁ、お飲みになってください」
「・・・」
「どうなさいました?さぁ」
「・・・」
「さぁ」
女房に促され、そっと薬を手に取る
目線を外せば壁に隠れて私を睨み付ける弘徽殿の女御がいた
現代の小説ではこの場面で桐壷の更衣はこれが堕胎の薬であることを悟り飲む寸前で気を失った
だが私はここで気を失うほど乙女気質ではない
それに私のお腹にはかつての私が愛し、今も変わらず私の心に住み着いている人が宿っているのだ
彼を害なすものは何人たりとも許さない
「さぁ、御飲みくださいな」
いまだに薬を進める女房に向かって自分にできる最上級の笑みを浮べる
目を見開いた女房を鼻で笑って女御に目線を流した
「出てきてくださいな」
空間に私の声が響く
「弘徽殿の女御様?そのようなところでのぞき見など…一の宮様のご生母ともあろう方が情けない
帝の寵愛が私に向いて悔しいのはわかりますけれど、そのような事ばかりしていては本当に帝に嫌われますわよ?」
わざと嘲笑うように言葉を発せば
「なっ、なんですって!?」
顔を真っ赤にした嫉妬まみれの女が顔を出す
私は笑顔を張り付けたまま女御に向かって言葉をつづけた
「私の言っていることにどこか間違いがございますか?」
「っ…!生意気な!」
激高した女御が扇を持った手を振りかぶる
女房たちが悲鳴を上げ、私はにやりと口元を歪めた
バシンッ
乾いた音があたりに響く
「身の程を知りなさい!!だいたい卑しい身分の癖に・・・」
女御がキーキーと喚きたてる
女房たちはオロオロとするばかり
おさまりのつかなくなった場に、低い声が響いた
「何をしている?」
「み、帝!?」
慌てたような女御の声を無視し、帝が私の方に近寄ってくる
「桐壺?どうした?」
かけられた声にピクリと反応し、ゆっくりと顔を上げる
先ほど女御に叩かれ、私の頬は赤くなっているはずだ
加えて彼女の怒鳴り声も聞こえていたはず
後は仕上げに涙を浮かべて彼を呼べば・・・
「み、かど・・・」
「な!?その頬は・・・
・・・女御」
「わ、私は…」
「聞きたくない」
完璧だ
完全に女御が悪いと判断した帝は彼女を無視し、私の背に手を当て部屋を出る
わたわたと私の女房たちもついてきた
心配する帝を、大丈夫だと言い張って公務に戻らせ自分は桐壷に戻って人払いをし、殴られた頬を冷やす
これでいい
私のお腹に宿ったいとしい彼を守るためなら何でもしよう
彼を守るために、私は彼が大人になるまで絶対に生き抜く
そのためにも彼女の好きにさせるわけにはいかない
「ごめんなさいね、弘徽殿の女御様
相手が悪かったとあきらめてくださいな」
ぽつりと呟き、そっとお腹に手を当てる
「貴方は私が守って差し上げますわ
だから何も心配せずに元気に生まれてきてくださいね」
彼の幸せが、私の幸せ
彼のそばにいることが、私の幸せなんだ
異性に向ける感情とは少し変わってしまったけれど、
今も私は彼を愛してる
その事実に変わりはない
(主人公、性格悪いです。お気を付けください)
前世は紫の上と呼ばれ、殿の妻として過ごした
現代では源氏物語を研究しつつ、大学で教鞭をとった
そして今、私はかつて夫だった人の母の立場になってしまったようだ
彼女(…まぁ、今は私だが)の人生を簡単に説明しよう
しっかりとした後ろ盾もない中で更衣として入内し、帝の寵愛を受けた彼女は女御たちに散々な嫌がらせを受ける
その中で衰弱していき、皇子を産んだ後にこの世を去った
今の私も彼女と変わらない
・・・変わらないはずだった
後ろ盾もなく入内し、帝に気に入られた
現在、それを妬んだ弘徽殿の女御様を初めとしたお妃たちに様々な嫌がらせを受けている
後は子を産んで死ねばそれで私の役目は終わる・・・のだが、
残念ながら現代を生きた私は、この嫌がらせの日々を泣きながら耐えるだけの我慢強さを持ち合わせてはいなかった
そもそも、前世とは違い現代での私は生まれつき気が強かったのだ
何気によかった頭に加え、そこそこ整った容姿も災いし、いじめられることも多々あった
しかし、その度に心に掲げた二つの誓い
“やられたらやり返す
やられた相手には三倍返し”
これを実行してきた
そんな私にこんな理不尽な嫌がらせを黙って享受しろと言う方が無理だったのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弘徽殿の女御様は気分が悪い(実際はそう言って引きこもっているだけ)私をお優しくも心配してくださっているそうだ
お優しいことにお薬まで用意してくださったらしい
何やら秘伝の難しいお薬らしく、飲み方の伝授に加え、飲むところを見届けるようにわざわざ女房までよこしてくださった
ほんとうにお優しいことだ
「さぁ、お飲みになってください」
「・・・」
「どうなさいました?さぁ」
「・・・」
「さぁ」
女房に促され、そっと薬を手に取る
目線を外せば壁に隠れて私を睨み付ける弘徽殿の女御がいた
現代の小説ではこの場面で桐壷の更衣はこれが堕胎の薬であることを悟り飲む寸前で気を失った
だが私はここで気を失うほど乙女気質ではない
それに私のお腹にはかつての私が愛し、今も変わらず私の心に住み着いている人が宿っているのだ
彼を害なすものは何人たりとも許さない
「さぁ、御飲みくださいな」
いまだに薬を進める女房に向かって自分にできる最上級の笑みを浮べる
目を見開いた女房を鼻で笑って女御に目線を流した
「出てきてくださいな」
空間に私の声が響く
「弘徽殿の女御様?そのようなところでのぞき見など…一の宮様のご生母ともあろう方が情けない
帝の寵愛が私に向いて悔しいのはわかりますけれど、そのような事ばかりしていては本当に帝に嫌われますわよ?」
わざと嘲笑うように言葉を発せば
「なっ、なんですって!?」
顔を真っ赤にした嫉妬まみれの女が顔を出す
私は笑顔を張り付けたまま女御に向かって言葉をつづけた
「私の言っていることにどこか間違いがございますか?」
「っ…!生意気な!」
激高した女御が扇を持った手を振りかぶる
女房たちが悲鳴を上げ、私はにやりと口元を歪めた
バシンッ
乾いた音があたりに響く
「身の程を知りなさい!!だいたい卑しい身分の癖に・・・」
女御がキーキーと喚きたてる
女房たちはオロオロとするばかり
おさまりのつかなくなった場に、低い声が響いた
「何をしている?」
「み、帝!?」
慌てたような女御の声を無視し、帝が私の方に近寄ってくる
「桐壺?どうした?」
かけられた声にピクリと反応し、ゆっくりと顔を上げる
先ほど女御に叩かれ、私の頬は赤くなっているはずだ
加えて彼女の怒鳴り声も聞こえていたはず
後は仕上げに涙を浮かべて彼を呼べば・・・
「み、かど・・・」
「な!?その頬は・・・
・・・女御」
「わ、私は…」
「聞きたくない」
完璧だ
完全に女御が悪いと判断した帝は彼女を無視し、私の背に手を当て部屋を出る
わたわたと私の女房たちもついてきた
心配する帝を、大丈夫だと言い張って公務に戻らせ自分は桐壷に戻って人払いをし、殴られた頬を冷やす
これでいい
私のお腹に宿ったいとしい彼を守るためなら何でもしよう
彼を守るために、私は彼が大人になるまで絶対に生き抜く
そのためにも彼女の好きにさせるわけにはいかない
「ごめんなさいね、弘徽殿の女御様
相手が悪かったとあきらめてくださいな」
ぽつりと呟き、そっとお腹に手を当てる
「貴方は私が守って差し上げますわ
だから何も心配せずに元気に生まれてきてくださいね」
彼の幸せが、私の幸せ
彼のそばにいることが、私の幸せなんだ
異性に向ける感情とは少し変わってしまったけれど、
今も私は彼を愛してる
その事実に変わりはない
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