紫の桜(番外編)

れぐまき

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私の夫

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《主人公がもし玉鬘のように攫われて違う人と結婚したら》










源氏の君に紅葉のお兄様

宮中の人気を二分する二人に接しながら長い時を過ごした私は、男性の理想が高い

細やかな気遣い
雅やかな和歌の遣り取り
さり気なく、しかしはっきりと香る華やかな香
余裕を含んだ穏やかな笑顔

私の理想は彼らそのものだった
だが、世の中にはそんな完璧な人間はほとんどいないに等しい

現に私の寝所に忍び込んで無理やり夫となり、さらには攫いだして自宅に連れ込むという暴挙をなしたこの男は私の理想とはかけ離れていた・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・」

私の斜め前に無言で座るのは私の夫
先ほどから何をするでもなく、ただ私をちらちらと伺ってくる

何か言いたいことでもあるのだろう

本来ならさり気なく言いたいことを聞き出してやればよいのだろうが、残念ながら私が彼にそんなことをする義理はないので私もただ黙って縫物を続ける

「・・・」
「・・・」

・・・鬱陶しい。

ちらちらとこちらを伺っては口を開き、パクパクさせてまた閉じる
これの繰り返しがすでに二桁を超えるほど行われた

イライラとした雰囲気が伝わったのだろう
彼は少し脅えたような反応を示した後、おずおずと口を開いた

「あ、あの…」
「何です?」
「えっと、あの・・・」
「・・・」
「…何でもないです」
「・・・」

言いたいことがあるならさっさと言えよ!

きっと前世の私ならキレていただろう
再び私をうかがい始めた夫にため息をつく


気遣いというよりも顔色を窺い、和歌は下手
香は微妙に季節のずれたもの
余裕などほど遠い、おどおどとした態度

女を盗み出すなどなぜそんなことが出来たのかわからないほど意気地のない男


私の理想とはかけ離れた夫を、いつか愛することができる日が来るのだろうか?


いまだに心には殿…源氏の君がいるというのに・・・
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