よくある冒険者パーティー内のよくある恋愛模様

れぐまき

文字の大きさ
1 / 34

1


「お前、ホントに可愛げねーな。たまには男建てろよ」
仕方ないじゃないか。こっちは女だてらに冒険者なんてやってんだ。
お前が好みの看板娘みたいにナヨナヨしてたら既に死んでる。

「今回だって一月近く連絡すらないと思ったらいきなり家押しかけてきてさ」
ダンジョンに潜ってたんだから連絡なんて出来るわけないだろう。そんなことも分からないのか。

「あげくの果てにグチグチ言いやがって」
恋人の家に見知らぬ女物の靴やら紅やら香水やらが置いてあって尋ねないわけがないだろう。

「話し合いにもならねーじゃねーか」
話し合い?一方的に連れ出して、一方的にキレてるのはお前だろう。


「もういいわ。もう会わねーから。うちにも来んなよ」



そう言って去っていった男。
相手からしつこく言い寄られ、私が折れるようにして始まった交際は、2年の時を経てこんなに呆気なく終わってしまった。

悔しい。
たくさん言いたいことはあったのに、ひとつも口にできなかった。

怒り、哀しみ、やるせなさ。
ないまぜになった感情の制御が難しい。腹の中でもやもやしたものがうごめき、じわりと視界がゆがむ。

泣いてたまるか。あんなヤツのせいで。

ぐっと唇を噛みしめて俯いた。



「……アリア…?」
「!」


聞き慣れた低い声。弾かれたように勢いよく顔を向けると、見慣れた長身の男が困ったような笑みを浮かべて立っていた。

「ジークさん…」

声が震える。自分で思っていたより弱々しい声が出てしまい、バツが悪くて唇を噛んだ。
ジークは形のいい眉をますます下げてこちらに近寄ってくる。

「ん~…と、ゴメンね?盗み聞きするつもりとか無かったんだけど、聞こえちゃって」
「…」
「えと…俺、飯行くとこだったんだけど…飲みにでも行く?」


いえ、大丈夫です。お見苦しいものをお見せしてすみません。失礼します。
常時であればそう言って断るところだ。
でも今日は…

「あー…そんな気分じゃないかな…ゴメンね?気が利かなくて…またパーティのみんなとでも…」
「奢りなら」

誘いを引っ込めようとした言葉を遮り口を開く。

「ジークさんの奢りなら行きます。貴方も一人じゃさみしいでしょう?」

優しい彼が心配してくれているのはわかってる。気を使って誘ってくれているのも。なのにどうしても素直になれない。強がって余計な言葉をつけてしまった。

こういうところが可愛げないって言われるんだよ
変なこと言わずにありがとうございますっていえばよかった…

少しの後悔を隠すため、わざと挑むように長身の彼を見上げる。
ジークは一瞬びっくりしたように目を開き、すぐに優しく微笑んで頷いた。

「もちろん。奢るよ。」

大きな手のひらが頭に乗せられる。
ぽんぽんと宥めるように叩かれた頭。いつもなら子供扱いするなと怒るところだが、何故か声が出なかった。

「さ、行こう?俺お腹減っちゃった~」

おどけるように明るい声を出すジークに優しく背中を押されて足を動かす。
最近気に入っている居酒屋の話や、この間依頼で討伐したモンスターの話、さらにはパーティーメンバーの昔話など。特に意味のない話題をいつも通りの落ち着いた低い声がゆったりと紡いでいく。それに合わせて強張っていた気持ちが徐々に解れ、少しだけ軽くなるのを感じた。

「…っふふ、何それ。意味わかんない」

自分がパーティーに入る前のメンバーの失敗談に、思わず笑いが漏れた。くすくすと笑っていればぽんと優しく頭を叩かれる軽い衝撃。
笑みをそのままに彼を見上げて、息を呑んだ。

「…」
「…」

大通りに面した通りは騒がしいはずなのに、周囲の音が遠くに聞こえた。しばし無言で視線を交わす。徐々に顔に熱が集まる。たぶん、すでに耳まで赤くなっているのではないだろうか。
恥ずかしいのに、彼の優しい瞳から目が外せない。

「…」

先に視線を外したのは彼の方だった。

「…あ、店ついたよ。入ろ~」
「あ…はい…」

笑みの種類を、何時もの掴めない笑顔に変えたジーク。私もはっと我に返って俯き、店の扉に手をかけた彼に続く。
無意識に触れた自分の頬は、やっぱり燃えてしまうのではないかというくらいに熱かった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

グリモワールの塔の公爵様【18歳Ver】

屋月 トム伽
恋愛
18歳になり、結婚が近いと思われたプリムローズは、久しぶりに王都の邸にいる婚約者に会いに行っていた。 だけど、義姉クレアと婚約者ジャンのベッドインを目撃してしまい、婚約破棄されてしまったプリムローズ。 プレスコット伯爵家から追い出すための名目で、金持ちの子爵様に売られるも同然の後妻に入ることになったプリムローズ。 そんなある日、夜会で出会ったクライド・レイヴンクロフト次期公爵様から結婚をもうしこまれる。 しかし、クライドにはすでに親の決めた婚約者がおり、第2夫人でいいなら……と、言われる。 後妻に入るよりは、第2夫人のほうがマシかもとか思っていると、約束だ、と頬にキスをされた。 「必ず迎え入れる」と約束をしたのだ。 でも、クライドとのデートの日にプリムローズは来なかった。 約束をすっぽかされたと思ったクライドは、その日から一向にプリムローズと会うことはなかった。 時折出す手紙のやり取り。プリムローズがどうしたいのかわからないクライドは困惑していた。 そして、プレスコット家での現状を知り、クライドはプリムローズをプレスコット伯爵邸から連れ出し、グリモワールの塔に連れて行き……。 最初は、形だけの結婚のつもりかと思っていたのに、公爵様はひどく甘く、独占欲の固まりだった。 ※以前投稿してました作品を【18歳Ver】に書き直したものです。

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

4月2日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?