紫の桜

れぐまき

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開花

7

カタン―…



「ん・・・・・」

また物音?

さっきとは違い、はっきりと聞こえた音に意識が浮上していく
現実と夢の間を行ったりきたりしていた私にはさっきから時間が経ったのかどうかも分らない
立て続けに聞こえてきた音にさすがに怖くなってしまいもう眠気は何処かへ行ってしまった


「誰かいるの…?」


答えは返ってこない

気のせい?


「…」


ゆっくりと身を起こす


この時代、なかなかいい返事をよこさない女性の寝室に女房の手をかりて忍び込み、手篭めにしてしまうという事はよくある話
私に届いた手紙の中にもそれを思わせるような情熱的な文がなかったわけではない
ない、が…

・・・まさか、ね?

引きつった笑みを浮かべて音のした方…几帳の向こうを見つめる
すると風もないのに几帳がゆれた
隙間からチラリと人影が見え、それと同時に僅かに男性が好みそうな香の匂いが漂ってくる


「!!」


ビンゴ、だと!?!?!


ちょ、え、いや、う、嘘でしょ!?
ムリムリムリムリムリムリムリムリ!!!
イヤだって!!

いや、確かに現代に居た頃はそれなりに遊んでましたよ?
それなりに彼氏はいたし?
お兄様じゃない人とそういう関係になったこともありますよ?
学生の頃はお酒の勢いでワンナイトラブ(笑)なんてこともありましたよ?
だからって!!
こんな避妊技術のない世の中で顔も何も分らない男に抱かれるなんて絶対イヤー!!!!!


頭の中がパニックになっている間にもその人影は少しずつ近づいてきている

今夜は新月

明かりもすべて消してしまっている今はほぼ真っ暗で微かに物の形が見える程度
この邸に不慣れな私は真っ暗な中では逃げ出すことも出来ない
一方、男は明かりを持っているようでぼんやりと足元が光っている

声を上げることも考えたが無駄だと気づく
私が気づいた物音に近くで眠っている女房達が気付かないはずがない、という事は手引きした者がうまく他の女房をごまかしているのだろう

もしくは女房すべてがグルか…

最近、夜に私についているのはこの邸の女房ばかり
少納言をはじめとしたなじみの者達は昼間しかいない
お父様が用意した女房たちは北の方様の姫様付きだった者たちがほとんどで私のことを疎ましく思っているものも多い為、私が男に襲われようと攫われようと、彼女達からしてみれば厄介払いが出来て好都合なのだ

いや、彼女達だけでなくもしかしたらお父様の手引きなのかもしれない
やけに早く結婚させたがっていたし、北の方様を気にしてもいたし…
そうだとすれば助けを求めた所で誰か来てくれる訳がない

完璧に私が不利だ…!
不利どころか私に勝ち目なんて全くない

なすすべのない私はただただ身を固くし、男の影を見つめ続けた
感想 1

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