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蕾
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しおりを挟む「そろそろきちんと返事を返してくださってもよいのではありませんか?」
部屋に入って来るなりいつもの軽口もなくそう言われ、私は首を傾げた
「何のことでしょう?」
問うと彼は眉をしかめる
「文の返事に決まっているでしょう」
「文…?」
文の返事なら毎回ちゃんと返している
…確かに時間はかかっているがそこは大目に見てほしい
そう伝えると彼は眉間の皺をさらに深くした
「…貴女、私の話を理解していないのですね」
呆れを含んだ声音で言われてむっとする
業平殿はため息をついて言葉を続けた
「私が言っているのは“いい返事”が欲しいという意味です」
「いい返事…?」
「貴女から帰ってくるのは私の求婚をかわすものばかり
私達は既に認められた婚約者同士なのですよ?
そろそろ了承の返事をいただかないと先に進めないでしょう」
「さき・・・?」
「…契りを交わすという事ですよ」
「・・・・・・・・・・・なっ!?ちぎ…!?なんて事を言うんですか!?!?破廉恥な!!」
思わず声を荒げるが、彼は動じない
それどころかにやりと見慣れた笑みを浮かべた
「何を言っているんですか?夫婦になるという事はそういうことでしょう…まさか知識がない訳ではないですよね?」
からかうような声音
確かに知識がないわけではない
女房やお姉さま方からその手の教育は受けている
だが自分の身に起こるとなると話は別だ
それも幼い頃から兄弟のように育ってきた業平殿が相手など・・・
顔が燃えるように熱い
おそらく私の顔は真っ赤だろう
彼の笑顔が憎たらしい
キッ!と睨み付けると綺麗な笑みで返される
「恥らう姿も可愛らしいですが、私もそんなに長い間待って差し上げられるほど余裕がないんです。早々に覚悟を決めてください」
「か、覚悟・・・?」
「あぁ、無理なら無理でも構いませんよ?少々強引になりますが、不可能でもないですし」
「な!?さっきと言っていることが違うじゃないですか!!」
「気にしないでください」
「気にします!!」
「ま、そういうことですから」
「どういうことですか!?!?」
「そういうことです」
立ち上がる業平殿
「では今日はこれで。次は満月の夜に参ります
それまでに覚悟を決めていてくださいね」
そういって去っていく彼
次の満月の夜って…
明後日じゃなかったっけ・・・?
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