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秀典

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 洞窟から無事帰った僕達三人は、ミトラの町で報告をする。
 軽く要件を済ませて帰ろうとするけど、僕はデッドロックさんに引き止められた。
 そう、まだ依頼料のことが残っているのだ。
 支払いを求めるデッドロックさんに、ギルド職員になる事を進めてローゼリアに呼び寄せた。
 しかし上司と交渉をするも、経費では落ちない的な話をされ、デッドロックさんに財布からお金を奪われてしまったのだ。


クー・ライズ・ライト (僕)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ディーラ・ストライウス (ミトラの町のギルド員)
アリーア・クロフォード・ストラバス(ギルドで寝ている人)


 デッドロックさんが仲間に加わり、何時も通りに活動を続ける戦力調査部の面々。
 僕はデッドロックさんに、毎日のように金を請求され、昼飯代をむしり取られている。
 しかしそんな日々を続けていては、僕のお腹は鳴りっぱなしなのだ。

 そんな僕は、なるべく朝早く出社し、誰にも見つからないようにギルドへやって来ている。
 僕は幾つもある机の下をコソコソ進み、もう出社しているスラーさんの居る場所に向かった。

「おはようございます、スラーさん、ちょっと頼みがあるのですけど……」

 僕はスラーさんを見上げながら、ちょっとしたお願いをしようとしている。

「おや、お早うございます、ライズ・ライト君。聞かずとも大体は分かりますけどね。まあ、言ってみてください」

 スラーさんは笑顔で対応してくれている。
 多少失礼な恰好ではあるけど、怒ってはいないようだ。

「あの、簡潔にいいますが、デッドロックさんが居ない場所に仕事に行かせて欲しいんです。僕の色々な事に関わって来るので、どうにか来月までお願いします!」

 僕は座った体勢のまま頭を下げた。

「ふむ、君は早く借金を返したらどうです? 君だってそれなりの稼ぎはあるでしょう」

 僕の懐具合をしらないスラーさんは、軽く不思議がっている。

「いや、あの、その……今月はちょっと……もう大分使ってしまって生活費しか残っていないんです……だから、あの、来月まで仕事が合わないように調整をお願いします」

 僕だってお金が無い訳ではない。
 来月の給料日にはちゃんと返せるぐらいの稼ぎはあるのだ。
 ただ今月は欲しい魔道具を買ってしまって、ちょっとだけ金欠だというだけなのである。

 だからデッドロックさんには来月まで待ってもらいたい。
 僕のお腹の為にも。

「君は全く仕方のない人ですね。今後の為にも少しぐらい貯金をしなさい。しかしこのままだと仕事にも影響がでそうですね。いやもう出ていますか? 仕方ありません。今回の分は経費では落とせませんけど、その分の費用は私が立て替えてあげましょう。デッドロック君が来たら、直ぐに返すのですよ?」

 そういってスラーさんは、充分に借金を返せるお金を貸してくれた。
 僕にとっての理想の上司です!
 出来る限り一生ついて行きたいです!

「スラーさん、どうもありがとうございます! これで僕の生活が護られますよ!」

「はぁ、利子は要りませんから、来月には返してくださいよ。私だって生活がキツイんですから。もし返さないというのであれば、ギルドとして追わせていただくことになりますけど、それは理解しておいてくださいね?」

 ギルドとして……それはお尋ね者として追われるということだろう。
 そこにはきっと、生死問わずなんて文言が書かれていたり……。

 笑っているスラーさんの目に怖さを覚えるが、この機会は逃せない。
 ご飯が食べられなければ力が出ない。
 この仕事では死に一歩近づくという事である。

「ありがたく使わせていただきます!」

 僕は無くさないように、懐にお金をしまい込んだ。

「それでスラ―さん、今日の仕事内容はどんな感じなんでしょうか? また町の外で調査でもしときます?」

「いえ、今日は上層部から厄介な案件が下りて来ています。ライズ・ライト君はナンバーズの存在は知っていますよね?」

「あ、はい。魔物の中で人に害する確率が高いものに付けられる番号持ちのことですね。低い数字のものほど狂暴で危なくなるとか」

 モンスターナンバーズ。
 ギルドの内ではナンバーズと言えば、番号を付けられた魔物のことである。
 十三から始まり、零で終わる番号を付けられた魔物達。
 だが別に、十四体の魔物というわけではない。

 十三なら結構一杯いるし、数字が減るほど少なくなる。
 場所によっては賞金首、ネーム持ち、ビックモンスターなんて呼ばれる強敵だ。
 ものによっては特別な名前が付けられ、依頼として貼り出されることもある。

 ただしナンバーサーティンぐらいになると、畑を荒らしてずっと逃げられてしまっているとか、その位のレベルになったりする。
 逆に、ナンバーワンと言えば、魔王クラスと言われる魔物だ。
 その先の零もあるが、まあ可能性として作られているだけだろう。

 そしてもう一点、ナンバーを付けたからという訳ではないが、魔物の形状にも特殊な物が見られる様になっていく。
 追われて生き延びた経験なのか、冒険者のように成長を遂げるのだ。
 環境に適応した進化といえるだろう。

「はい、その通りです。今回行ってもらいたいのは、九の番号を付けられた魔物です。ギルドから固有名称つけられ、絶望のアギアとされました。元々は十の番号をつけられていましたが、番号が上がり進化の兆候がみられたということで再調査となったわけです」

「はぁ、冒険者でも倒しきれなかった訳ですね。賞金が安すぎたんじゃないんですか?」

「その辺りの調整はこちらの仕事ではないですからね。まあ運営陣には頑張ってもらいたいところです。それでライズ・ライト君、かなり危険が伴うものなので拒否権がありますよ。どうします、受けますか?」

「当然やります!」

 僕は喜んで受け入れた。
 このナンバーズの調査もボーナス案件なのだ。
 もちろんナンバーによって上下するが、一桁ならドンと貰えるはずなのだ。

「それは良かった。ではこれが十だったころの資料です。参考にしてください。因みにですが、もし帰ってこれない状態になってしまったなら、来月の給料は私がいただいておきますので、ご了承を」

「あ……はい……」

 まさかスラーさんは、僕を殺す為にこの話をふったのでは?
 いやいやそれは無いはずだ。
 僕にも拒否権があったのだし。

 僕はスラ―さんから渡された資料を見る。

 名前 :絶望のアギア・ナンバー10
 レベル:26
 HP :260以上
 MP :40
 力  :90
 速  :90
 大  :170
 危険度:6
 技  :鋭い斬撃。
     暗闇と同化。
 備考 :フードを被った様な魔物。
     人型に近く、両腕が剣になっている。
     魔法で気配発見出来ず。
     木々を駆け上ったりと逃げ足が速い。
     主に旅人が襲われ、子供が居ると真っ先に狙われる。
     被害多数。
     出現地帯はローザリアの南の森の街道。

 僕は資料に書かれたものに驚いた。

「うわ、子供が襲われてるんですか? こんなの放って置いたら不味いでしょうに」

「だから早急に調査して依頼を出したいんだけどねぇ。メンバーは任せるから、仕事を終わらせて来てください」

「はい! じゃあ皆が出社して来たら、早速きいてみますね!」

 僕は拳を握ってやる気を見せた。

「それと、デッドロック君にお金を渡すのを忘れずに」

「あ、そうでした……」

 うっかり忘れる所だった。
 もし忘れて使ってたら……二人によって処刑されていたかもしれない。
 僕は安全を考慮して、デッドロック出社してくるのを待ち、まずお金を渡すことにした。

 そわそわ待ち続けていると、知った顔の出社して来ている。
 ファラさんや他の同僚達、それと……発見!
 扉からデッドロックさんの姿が見えた。
 今直ぐに渡しに行こうと、僕は走って挨拶する。

「お早うございますデッドロックさん、今日全額持ってきました!」

 僕は懐からお金を取り出し、デッドロックさんの前に突き出した。

「ほぉ、やっと支払う気になったか。今まで逃げ回っていたのに、どんな心境の変化なんだろうな? まあ支払ってくれるならいい。確認させて貰うぞ」

「どうぞ!」

 僕はお金を手渡し、デッドロックさんは金額を数えている。

「……ちゃんとあるようだな。今後はもうするんじゃないぞ」

 納得してくれてよかった。
 ついでにデッドロックさんを誘うのも悪くないかな?

「あの、それとは別にお話があるんですけど。ナンバーズに興味はないですか?」

「はぁ、ナンバーズ?! まさか名前持ちの事か?!」

「はい、一応調査にはボーナスが出るんですけど、一緒に行ってみませんか?」

「悪いが却下だ。そんなもの相手にしてたら命が幾つあっても足りねぇからな。拒否権もあるって知ってるぜ」

 まああまり無理に誘うのは出来ないし、他の人に声をかけてみよう。

「はぁ、そうですか。じゃあ別の人に声をかけてみますね」

「おう、まあ死なねぇように頑張りな」

 デッドロックさんが駄目だと知った僕は、何時も通りにファラさんに声をかけた。

「で、どうでしょうかファラさん」

「ク―、あんたそんなものを受けるなんて、よっぽど金がないのね。……まあ引き受けてあげても良いけどさ、速さがあるようだし、私一人じゃ護り切れないわよ」

 なるほど。
 資料の数値は九十だけど、これ以上になっているとしたら厄介だ。
 元々攻撃寄りなファラさんだけでは対処しきれないか? 

「じゃあ他の人にも声をかけてみますから、同行お願いしますね」

「はいはい、じゃあ決まったら声をかけて。それまで他の仕事してるから」

「ありがとうございます。では後で!」

 この職場には、他にも色々と人員がそろっている。
 追跡専門の人とか、回復専門の人とか。
 オールマイティな人や、特殊な人もそろっている。

 さて、誰に声をかけようか?
 やっぱり僕を護ってくれる防御寄りの人にしよう。
 僕は、まだ眠そうに机に突っ伏していた、黒髪の女性に話しかけた。
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