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善意天逆 果て無く黒

ローザリアギルド入り口から出て右に三軒行って、曲がり角を右に進み、五本目の十字路の角にある以下略 に住むのはジョージ

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★前回の荒筋っぽいもの。
 僕はクー・ライズ・ライトという名のギルド職員である。
 冒険者の為に日々働くのだけど、何故かお金が貯まって行かないのだ。
 しかし、そんな血の涙を流す日々も、もう直ぐ終わろうとしている。
 あとたった一月とちょっとで綺麗な体になれるのだ。
 フェイさんを探すことなんてどうでもいい。
 早く真面な生活がしたい。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
 ランズ・ライズ・ライト (父)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
 ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)


 この世界には魔王という存在が、三体確認されている。

 まず一体目は百眼の魔竜である。
 竜が魔王? っと疑問を持つ人もいるだろう。
 だが極限の力を持つという称号なので、人型であるとは限らないのである。

 どんな魔竜かと言えば、名の通りに、体に百の目を持つらしい。
 曖昧なことを言っているが、それは仕方がないのである。
 何故なら、その姿を見ただけで死が訪れると言われるからだ。

 事実として、五十人の精鋭調査隊を派遣して、四十七人が死傷している。
 他三名は、偶然にも姿を見ずに助かって逃げ帰ったらしい。
 この大陸とは別の大陸では、町の上空を飛ぶその魔竜を見て、五百人近くが亡くなったと噂がある。

 もちろんそれが事実なのかは分からない。
 偶然にも、五百人が同時期に心臓発作を起こして死んだのかも知れないのだが、可能性は低いのだろう。
 その力が本当であるのなら、もう何万人規模で死人が出ているのかもしれない。
 人の言葉を操るとも聞くが、真実は不明だ。

 二体目は、広大な海を根城にする純炎の海王だ。
 大きな島のような巨大さで、背には絶えず炎が燃え続けている。
 そんな巨体であるというのに、海に居るどんなものよりも速いのだ。
 その海王に狙われれば、巨大な帆船であれ飲み込まれてしまう。
 果ては島国を一つ噛み砕いたとか、大波で町を壊滅させたとかそんな噂も聞く。

 この魔物によって、海運業にかなりの被害が出ている。
 別大陸とのやり取りが無くなったのは、この魔物のせいだ。
 ギルドとして殆どの情報がそろっているが、圧倒的な巨体を倒す術は見つかっていない。
 例えディザリアさんのような大規模魔法使いを千人そろえたとしても、海に潜られれば手出しは出来ないのである。

 当然討伐を望む声もあるし、今でも挑んで行く冒険者も居るが、戻ってきた者は数名だけだ。
 魔竜や海王を倒す為には、万を超える規模の討伐隊を必要とするが、国はそれを許可しないだろう。
 多大なる犠牲者が出てしまえば、国の防衛にも関わって来るからだ。
 魔王を一体倒しても、通常の魔物の進行により国が滅びては話にならないのである。

 そして第三の魔王だが、六年ほど前に空に虚像が現れ、自身が魔王だと名乗っている。
 確か名を、インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディステニーだったかな?
 僕もその虚像を見たが、黒髪の少年の姿をしていたはずだ。

 もちろんそれだけで魔王認定なんてされないが、インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニーの声に反応して、国中枢部に魔物が進行してきたらしい。
 というか名前が長いし、言うのが大変だ。
 もう頭文字を繋げて、イダロウキジシフデ……いやそれも言いにくいし、もうフデにしよう。

 ということで魔王フデが操った魔物は国を襲うが、本人が居なかったためか見事返り討ちに合い、魔物は全滅させられている。
 だがその思想や、大量の魔物を操ると言う特殊性を考え、国が動いた。
 事態を重く見た国の重鎮は、フデを魔王として認定したのだ。

 しかし魔王として認定され、度々あった国への進行も、二年が経った頃には全く見られなくなって来る。
 今現在としては、ほとんど忘れられた存在だった。
 だがフェイさんの存在が登場したことにより、その存在感を増している。
 もしかしたら、その魔王フデが力を貸しているんじゃないかと疑いがあるからだ。

 で、僕達はフェイさんの居場所を探すようにとギルドから言われているのだけど、居場所はサッパリ見つからない。
 まれにファラさんを見つめる視線があったりするが、フェイさんは空を飛べる為に追い駆けることが出来ないのだ。
 だから結局一ヶ月探して見つからないので、通常の仕事をしつつ、手掛かりがあったら探す感じになっている。

 今何をしているかというと。

「いらっしゃいませー。ようこそギルドへ-」

 と、棒読みで冒険者に対応をしている。
 何故こんなことになっているのかと言えば、ギルド内で風邪が流行ってしまったからだ。
 受付嬢の大半はダウンしてしまい、運営に支障が出るからと、戦力調査部にも人員を借りている。

「その依頼ですねー、受け付けましたー」

 だから僕は、受付係となっていた。
 ギルドには今も大勢の冒険者が居るのだが、僕が男だからかあんまり人気がないらしい。
 今対応している一人をさばけば、後ろに並んでいる人は居ない。
 人が流れているのは、同じく受付をしているファラさんの所だ。

 愛想も何も振りまいていないというのに、なんとなく悔しい。
 ミトラの町の、デルメオ君の気持ちがわかった気がした。
 ちなみにミアさんは、まだ受付は無理そうなのでお休みしている。

「暇だ……」

 っと僕は呟くが。

「クー、暇だったらこっちを手伝いなさい」

 どうもファラさんに聞かれていたらしい。

「はーい」

 僕は軽く返事をして行ってみると、ファラさんの受け持つ受付には、小さな少年と少女が依頼を受けていた。
 二人共背も低く、たぶん十二歳ぐらいだと思う。
 赤い髪の子が男の子で、桃色の髪の子が女の子だ。
 どちらも顔が似ているから、兄妹か双子かそんな感じだろうか?

 そして男の子の体は、剣や鎧で武装している。
 まだ歳も若いが、僕とファラさんも十三で冒険者に登録しているし、あり得ないことではないだろう。

「それであの、手伝えって何をです?」

 僕はファラさんに声をかけたのだが。

「クー、この子達の面倒を見なさい」

 ファラさんから、どうもおかしなことを言われている。

「えぇ? 僕にその子達を養えっていうんですか? お金の無い僕には絶対無理ですからね!」

 お金の無い僕は、ファラさんに抗議するように叫んでいる。

「冒険者として面倒を見なさいって言ってるのよ。この子達の保護者も風邪をひいたみたいで、それで薬を買うお金が欲しいんだって。でも流石にこの子達だけで行かせるわけにはいかないじゃない。だからあんた、ついて行きなさい」

 ファラさんの話をちゃんと聞くと、家で面倒をみろという話ではないらしい。
 つまり僕はこの子達の保護者代わりになれというのだろう。
 他の冒険者に任せるという手もあるが、その人物が悪人だったら……考えればきりがない。

「う~ん、まあ暇ですし、それならいいかなぁ?」

 僕は首をひねりながら考えていると。

「「おねがいしま~す!」」

 その少年少女から屈託のない笑顔が向けられた。
 なぜかその顔に怯んでしまうのは、僕の心が邪悪だからだろうか?
 いや、そんなことはないと思いたい。
 二人だけで行かせるのもなんだし、まあいいだろう。

「じゃあよろしくお願いします」

 僕はお客さんに頭を下げた。
 このぐらいの歳の子なら、まだ冒険者になりたてだろう。

「ありがとう兄ちゃん! 俺っちグリス・ナイト・ジェミニだよ!」

 男の子はそう名乗り、親指をグッと立てた。
 恰好を見ると、体に合わせた白い鎧と、腰には剣がある。
 たぶん前衛系なのだろう。

「お兄さん、あたしリューナ! リューナ・ナイト・ジェミニよ!」

 リューナと名乗った女の子は、ペコっと頭を下げている。
 こちらの女の子は、魔導士風の恰好をしているようだ。
 体に合わせたローブと、手には木製のロッドを持っている。

 だがじつは、子供に合わせた装備というのは、武具店であまり売り出されていない。
 子供の冒険者というのがそもそも珍しいので、作ったとしてもなかなか売れないのである。
 つまりこの子達の装備はオーダーメイドなのだ。

 だとするならば、この子達がお金を持っていなくても、保護者の方は意外と金を持っているのかもしれない。
 それはつまり、貧困生活から抜け出せるチャンスだといえるだろう。

「僕はクー・ライズ・ライトと申します。ではまずはその保護者様に挨拶に行きましょう! 案内をお願いします、お坊ちゃまとお嬢様!」

 僕はこの二人の手を掴む。

「えっ、兄ちゃん?」

「なに、お兄さん?」

 この二人に事情を説明している暇はない。

「ちょっとクー……」

 僕はファラさんに止められる前に、二人をギルドの外へ連れ出した。
 その二人の手を解放したのは、ギルドから少し離れた場所だ。

「お坊ちゃん、お家はどこでしょうか?」

 僕は敬意を払い、グリスに声をかけるのだが。

「兄ちゃん、お坊ちゃんとかやめてよ。恰好悪いだろ!」

「お兄さん、私も名前で呼んでね」

 どう二人共、呼び方が気に入らないらしい。

「じゃあグリス君、保護者様の場所に案内してくれるかな?」

 僕は名前を言いなおし、保護者様の居場所を聞いた。

「兄ちゃん、俺っち達はジョージに秘密で行きたいんだ。だから先に仕事をしてからならいいよ」

「あたしお金が欲しいの、だから先に仕事して!」

 この兄弟は、自分達で稼いだお金で、そのジョージという人の薬を買いたいのだろう。
 そう言えば、魔王の名前にもジョージというミドルネームが入っていたような?
 まあ町中に居るはずもないし、全く関係ない人だろう。

★閑話タイトル。昔やってしまった中二病に、ひたすら後悔して忘れ去ろうとしているジョージ(タイトルと内容は異なります)


「それで結局どんな依頼を受けたんですか?」

 結局何をするのか分からない僕は、この二人の兄妹に、どんな依頼を受けたのかを聞いてみた。

「俺っち達が受けたのは、キャンドルリザードの討伐だぜ!」

 グリス君は拳を握って熱く発言した。

「トカゲ倒すの、トカゲ!」

 リューナさんも目を輝かせている。
 キャンドルリザードとは、炎を扱うトカゲである。
 ベイビードラゴンよりもかなり小さいが、レベルとしてはそこそこ高い。
 確か二十二ぐらいあった気がする。

 本来駆け出し冒険者が倒せるようなものではないけど、属性が丸わかりなトカゲなんて僕の敵にはならないのである。
 まあ問題があるとすれば、必要な結界をどう作るかというだけだろう。

「ってことで僕の職業は……」

 と、軽く自分の職業の説明をして。

「それじゃあ二人の職業とレベルを教えてくださいね」

 このまま行っても充分勝てるけど、念の為に二人の能力を聞いておいた。

「よく聞いたな兄ちゃん! 俺っちは、たああああ!」

 グリス君はその場で跳びあがり、着地と同時にポーズをとった。

「スーパーナイトのレベル二だぜ!」

 ナイトトルーパーや、騎士の守護者ナイトガーディアンなら職業にあるけど、スーパーナイトなんてものはない。
 鎌を持っていないとなると、たぶんナイトガーディアンだろう。
 子供の時にはよくあることだが、何となく付けてみたかったのかもしれない。

 ちなみにナイトガーディアンは、重い鎧を着て、仲間達を護る盾の役割をする者のことを指す。
 まあレベルが低い内は、どの前衛職だろうと差はないだろう。

「あたしは! たああああ!」

 グリス君と同じように、リューナさんはその場で跳びあがった。

「ウィッチプレスト、レベル三よ!」

 やはりその場で着地して、パシッとポーズをとっている。
 バスターメイジと言われたらどうしようかと思ったけど、どうやら違うようだ。
 そのウィッチプレストとは、後衛職に位置するものである。
 ウィザードプレストと呼ばれる職業の、女性バージョンだ。

 まあ名前が違うだけで、同じ職業と考えてもらえばいいだろう。
 で、どんな職業かといえば、攻撃魔法を連射して使う攻撃系である。
 ただし、バスターメイジと違って範囲魔法は使えず、単発攻撃魔法特化だ。
 魔力がある限り撃ち込まれる魔法は、敵が一体であるならば、かなり優位に戦えるだろう。

 ただ、レベルが三だというのなら、魔法は一種類しか使えないはずだ。
 本当ならもう少しレベルを上げて来て欲しいのだが、ファラさんに頼まれてしまったし、保護者様にお礼をもらう為にも頑張らなければならない。

「お二人の能力は把握できました! では行きましょう、キャンドルリザードの退治に!」

 僕はお金のために、堂々と宣言した。

「「お~~!」」

 二人も乗り気で、手を挙げて気合を入れている。
 そしてキャンドルリザードを探しに行こうとするのだが。

「そういえばどこに生息してるんでしたっけ?」

 キャンドルリザードの資料は見たことがあるけど、生息地は書いていなかった。
 色々な場所に出るとなると、一つの場所を特定して書く訳には行かないのである。

「兄ちゃん、俺っち知ってるよ! 北の山の火口付近に出るって聞いた!」

 グリス君はそう言うが、北の山までは相当時間が掛かる。
 行くとしたら今日中には帰ってこれないだろう。
 出来ればもう少し近い場所の方がいい。

「あたしは南にある屋敷あとに出るって聞いたわ!」

 リューナさんが言った南の屋敷あととは、フェイさんが住んでいた屋敷のことだろう。
 あそこなら近いし、今日中にも帰れるはずだ。

「ふむ、その屋敷なら山より近いですし、ちょっと行ってみましょうか」

 僕はその場所へ行くことを提案した。

「俺っちはどっちでもいいぜ。倒せればいいんだし!」

 グリス君は賛同し。

「あたしも大丈夫よ!」

 リューナさんも行けるということで、南の屋敷あとへ早速向かって行ったのだが、道中にコボルトが現れた。

「おっ、コボルト発見! てやあああああああ!」

 敵を発見すると、相手の強さなんて関係なしに突っ込んで行くグリス君。

「ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ!」

 怖がっているのか魔法を連射しているリューナさん。
 魔法はちゃんと狙っていないようで。

「あつい! あついって!」

 グリス君の背中に直撃するのもしばしばだ。

「そんな魔物は放っておいてもいいんですからね!?」

 そう叫んでも聞いてはくれない。

「あっ、ミスった」

 グリス君の攻撃は空を切り、代わりにコボルトが剣を振り上げている。

「ちょおおおおお!?」

 そんな状況に、僕は急ぎフォローに入った。
 鉄棒を構えてコボルトの攻撃を受け止めたのだが、僕としては結構辛いものがある。
 僕は後衛なんだけどと言いたい。

「兄ちゃん、そのまま押さえてて。じゃあ、行くぞおおおおお!」

 グリス君は、コボルトの後ろから突っ込んで来る。
 しかしそんな気配を感じたのか、コボルトはヒョイっと身を躱してしまった。

「うえええええ!?」

 グリス君の正面に立ってしまった僕と。

「兄ちゃん邪魔ああああ!」

 止まらないグリス君から、剣が振り下ろされた。

「うあああああ!」

 僕は振り下ろされた剣を必死で止めたが。

「ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ!」

 追い打ちをかけるように、リューナさんから炎の魔法がばらまかれた。

「「うあつ~い!」」

 それは僕とグリス君にも直撃するが、コボルトにはダメージを与えられない。
 もう僕一人の方がましだろう。
 しかも、しかもである。

「クキャキャキャキャキャ!」

 こんな僕達の状態を見て、コボルトの顔が笑っているようだ。
 是非倒してやりたいところだけど、僕達なんて相手にしていられないと去って行く。

「待てえええええ、逃げるなああああああ!」

 しかしそれを追い掛けようと、グリス君が動くのだけど。

「ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ!」

 同じく追撃しようとしていた、リューナさんが魔法を撃った。

「あつ~い!」

 それままたもグリス君の尻に直撃し、その足を止めさせている。
 もしかしてワザとやってるのだろうか?

「ま、待てえええええ!」

 それでも追い駆けようとするのは根性があるが。

「待ってくださいグリス君! キャンドルリザードの討伐に行くんですよね? コボルトに目を奪われたら駄目ですよ」

 僕はなんとか肩を掴み、グリス君を引き止めた。
 下手に追い掛けて行けば、巣穴に連れて行かれたり、逆に罠を賭けられてしまう。
 コボルトはそこまで狂暴ではないから、色々痛めつけられて巣穴の外にでも捨てられるだけなのだけど、簡単に二人が泣かされる姿が想像できる。

「確かにそうだわ。あたし達は依頼を達成してお薬を買わなくちゃ!」

 僕の言葉にリューナさんはやることを思い出したらしい。

「う~ん、そうだな。俺っちもあんなザコにかまっている暇はないし、キャンドルリザード倒さなくちゃ!」

 リューナさんの言葉でグリス君もどうにか納得すると、やっと目的地へ向かう意思が固まったようだ。
 しかし、このまま進んだら、また同じことを繰り返すだろう

「リューナさんの魔力も少なくなったでしょうし、一回休憩して食事でもしましょうか。連携の確認もしたいですし……」

 魔力の回復よりも、僕は一度連携の確認をとりたかった。
 この二人と行動するのは思ったよりも大変だし、もう少しなんとかしないと、キャンドルリザードとの戦いも辛くなってしまう。

「じゃあ皆でご飯を食べて仲良くなりましょう」

 だから僕は、二人を餌付けするようにお弁当を取り出した。
 二人も持って来たパンやらを取り出している。

「「「いただきま~す!」」」

 しかし、何故か僕のお弁当を見た二人の反応がおかしい。

「兄ちゃん、それ何?」

 フタを開けた僕のお弁当をのぞき込み、グリス君は不思議そうな顔をしている。

「お兄さん、それ……草?」

 そしてもう一人のリューナさんの顔は、もの凄く引きつっているようだ。
 お弁当の中身には特別な物が入っている訳でもない。
 容器一杯に敷き詰められた、いたって普通の野草というだけである。

「兄ちゃん、貧乏なんだな。俺っちのこのパン、食べるか?」

「お兄さん、お肉もあるよ。存分に食べてね」

 二人共僕に優しくしてくれている。

「えっ、いいんですか? ありがとうございます! これで今日一日は頑張れると思います!」

 僕は満面の笑顔を浮かべて、二人の施しをしっかり受けとめた。

★閑話タイトル。最近懐かれた孤児院暮らしの子供に、高い装備をプレゼントしたけど、自分の金がなくなって貧乏暮らしになるジョージ(タイトルと内容は違います)


「だからですね、仲間に当たらないようにするのは基本なんですよ。んぐっ……プハァ! 味方の攻撃でダメージを受けたりしてたら攻撃タイミングを逃したりするでしょう。もうちょっと考えた方がいいですよ? これは美味いもう一つください」

 後衛の僕では前衛のことはあまり知らないけど、食事のお礼も兼ねて、軽く教えられる程度のことを教えている。

「兄ちゃんも苦労してるんだな。ほら、いいよ」

「おお、グリス君、君は神だ!」

 僕はグリス君からパンを手渡された。

「お兄ちゃん、お菓子もあるよ」

「め、女神様!? うぅ、こんなに優しくされたのは何時ぶりでしょう」

 リューネさんからはお菓子の袋を手渡された。
 人に優しくされたのは久しぶりで、なんだか目から涙まで流れている。
 最近ファラさんからもご飯を貰えなかったから涙脆くなっているのだろうか?
 しかし泣くのも養分が必要だし、今後の為に我慢しよう。

「……おっこれ美味い! えっと、だからですね、要は周りにも気をつけようってことですから。分かりました?」

 僕はご飯を食べながら二人に説明を続けた。

「俺っち何となく分かったぜ!」

「あたしも分かったわ!」

 二人共頷いているけど、本当に分かっているのか謎なところがある。
 もう一度手頃な魔物とでも戦った方がいいだろう。

「じゃあ分かった所で特訓です! あそこに丁度手ごろ魔物が来ましたから、二人で戦ってみてください!」

 僕は近くに見えたゴブリンを指さした。

「あっ、ゴブリンだ! 行くぜリューナ!」

 グリス君は、魔物を発見して走って行く。

「うんあたし頑張る! 狙えばいいのね! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ! ファイヤ!」

 リューナさんは狙いを定めてゴブリンに魔法を撃った。
 しかし、タイミングよくグリス君の背が現れて。

「ぎゃああああああ! あつーい!」

 っと直撃してしまった。
 襲われたゴブリンはというと、攻撃されたとも気が付かず、腹を抱えて笑っているのだ。
 そのまま小さな硬化を投げられ、歩いて去って行った。
 ここまで来るともう持ちネタの域である。

 これは何時まで経っても終われそうもない。
 もう現場に行って、手早く終わらせるべきだろうか?

「ふう、お二人の実力は理解できました。これならきっとキャンドルリザードも倒すことが出来るでしょう。では次こそ本番です。行ってみましょう!」

 僕はもう諦めて、キャンドルリザードの居る場所に向かうことにした。

「「お~!」」

 二人は今やったことも忘れて、元気に返事をしている。
 自信を持つのはいいことだけど、過剰な自信は身をほろぼすぞ。
 ということで南の屋敷あとに来た僕達は、結界の準備を始める。

 大きく屋敷を囲むように、一本ずつ鉄棒を突き刺して行くのだけど。
 三本目を突き刺して最後の場所に向かおうとするが。

「よし、これであと一本だ。じゃあ二人共、次行きますよ。……んんん!?」

 僕は首を振り戻し、もう一度二人の姿を見ると。

「兄ちゃん、武器を置いて行ったら駄目じゃん。俺っち持って来てあげたぜ!」

 グリスの手には二本の鉄棒があり。

「お兄さんったら忘れっぽいのね。しっかりしているあたし達が拾って来てあげたわ!」

 リューナの手には一本の鉄棒が握られている。

「それ忘れてたんじゃなくて置いて来たんですよ。結界を作らないと測量士は何も出来ないんですから。ほら、町で一回説明したでしょ?」

 僕は二人の職業を聞いた時に、自分の職業も説明している。

「? そうだっけ? でも俺っち測量士とか見たことないし、結界とか言われても知らないもん」

「あたしも分かんないわ」

 二人共僕の職業のことを理解していないようだ。
 ギルドの仲間内でしか仕事をしていなかったから、測量士の知名度のなさを忘れていた。

「いや、説明しなかった僕も悪かったですね。とりあえず歩きながら説明しますんで、もう一度行きましょうか。今度は抜いたら駄目ですよ。戦えなくなっちゃいますから」

 僕はそう説明し。

「「は~い!」」

 二人が返事をしてまた結界を作っていく。
 今度こそ大丈夫だと思いたい。
 僕はまたも一本目の鉄棒を地面に突き刺し、二人を引き連れて歩いて行くのだけど。

「グリス、アレどうする?」

「う~ん、兄ちゃん待ちだな。なんか戦えないって言ってるし」

 僕の後ろからはそんな声が聞こえていた。
 何かあったのだろうか?
 そう思って後ろを振り向くと。

「兄ちゃん、そこ危ないぞ」

 そうグリスとから告げられたのだが、何が危ないんだと分かったのは、そんな言葉の前だった。

「ぎゃああああああああああ!」

 何故驚いたかといえば、目的だったキャンドルリザードが、もの凄い勢いで走って来ていたからだ。
 どうやら空を駆けるグリフォンに狙われているようである。
 敵の存在を知っていたグリスとリューナは、その場からヒョイと避けるのだけど、僕の行動は間に合わない。

「ぐはっ……!」

 僕は大きな巨体に後ろから追突されて、空中に投げ飛ばされ。

「ぁぁぁぁぁあああああああああああ! うげ……」

 そして、うつ伏せに地面に激突しまった。

「…………」

 そのまま暫く動けなくなっていた僕に。

「大丈夫か兄ちゃん?」

「お兄さん大丈夫?」

 二人が声を掛けて来た。

「大丈夫じゃないです……もう少し早く言ってください」

 僕は、膝に着いた砂を払いながら立ち上がる。
 あの魔物達はどうやら居なくなったらしい。
 たぶんキャンドルリザードは、追い駆けていたグリフォンの餌なのだろう。
 重要な情報だけど、これももうちょっと早く知りたかった。

「はぁ、酷い目にあいました。」

 とにかくキャンドルリザードと戦う為に、僕達は全力で結界を作り出すのだった。
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