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善意天逆 果て無く黒

魔王様の戦力調査

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★前回のちょっとしたあらすじ。
 魔王と共にギルドを訪れた僕は、上司のスラーさんに会いに行った。
 そこで魔王フデが普通の人に戻りたいと報告するのだけど、そう簡単に許されるものではなかった。
 色々な交渉の末に、魔王フデの自由が保障されたかに見えた。(見えただけ)
 僕はスラーさんからその危険度を調べるように言われた。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
 ランズ・ライズ・ライト (父)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
 ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
 リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
 フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)


 僕とフデはギルドの寮に、ミアさんを向かいに行った。

「ミアさん、部屋に居ますよね? 入りますよ」

「イイぞ!」

 僕がノックをすると返事が聞こえてくる。
 僕は扉を開けると、ミアさんは大きな葉っぱを体に付けて不思議な踊りを舞っていた。

「…………」

 僕は一瞬言葉を失うが、ここに居るのは普通の人物ではないのだ。
 もしこれがファラさんだったら、即座に扉を閉めて見なかったことにしたが、相手がミアさんなのである。

「ミアさん、外に仕事に行きますよ」

 野暮らしの長いミアさんなら不思議でもないかと納得し、僕は普通に対応する。

「ウン、ワカッた!」

 部屋の中で不思議な踊りをしていたミアさんを呼びよせたのだけど。

「? ダレだ?」

 ミアさんはフデのことを気にしている。
 どうやら魔王を知らないようだ。

「よく聞け娘よ、この俺は……」

 フデは胸を張って、長ったらしい名前を言おうとしている。

「フデの人です」

 だから僕は、覚えやすい名前をミアさんに教えた。

「おいコラ、勝手にその呼び方を広めるんじゃあない! 普通に言おうと思ったのに!」

 フデは怒りだしているが、あんな長い名前をミアさんは覚えきれないだろう。
 だからこれが正解なのだ。

「フデ、ヨロダぞ!」

 ミアさんは一発で名前を覚えた。

「あああ覚えられてしまったじゃないか! 変な名前が広まってしまううううう! お前ええええええええええ!」

 フデは僕の体をガクガクと揺らして来る。

「まあいいじゃないですか、減るもんじゃなし」

 僕はそう言ったのだけど。

「増えるのが嫌なんじゃああああああ!」

 フデからは更に激しく揺らされて気持ち悪くなった。
 ここに来る前に食べた草のお弁当が、胃の中でグチャグチャとかき回されて。

「うおえええええええええええええええええええ!」

 僕は朝ごはんを吐き出した。

「ぎゃあああああああああああああ!」

「クササササササササ!」

 部屋の中は大惨事で、僕達はミアさんに謝りつつ、三人で部屋を掃除した。
 そして今、町の入り口より随分と離れて、誰の邪魔にもならないような広い場所に移動たのだ。

「じゃあジョ……フデさん、使える技とか魔法とか全部教えてください」

 僕はこれから、魔王フデの能力調査を始めようとしている。

「おいお前、何故今名前を呼ばなかった。まさかワザとやっているのか?」

 フデは僕のことを不審がっている。

「いえいえ、気にしないでください。僕の中ではもう決まった名前なので」

 だから僕は、確定していることを告げたのだ。

「勝手に決めるな! くそう、もういい、早く終わらせるぞ!」

 フデが諦めてくれたので、僕は続けようとするのだけど、どうやら丁度よく魔物が現れてくれたようだ。
 しかもこちらにズンズンと歩いて来ていた。

「うおおおおおお、でかーい!」

 僕はその巨体に驚いた。
 たぶんガースと呼ばれる大巨人だろう。
 この地域で見たという報告はないが。

「ハハハ! 驚いたか、俺が呼び寄せてやったんだぜ! さあ踊ってみせてやれギガース!」

 どうやらフデが呼んだらしい。
 言った通りに変な踊りを始めたギガースを見ると、やはり魔物を操るというのは本当らしい。

「ホウ、ハウ! ホウ、ハウ!」

 ついでにその踊りを見ていたミアさんも踊り出している。
 やってみたかったのだろう。

「さて、お前は俺の力を見たいと言ったな。丁度よくマトも来たところだ。見せてやろう、魔王と呼ばれたこの俺の魔の力を! さあ、天よいななけ、神よ魔王の前にひざまずけ! トール・ハンムアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 フデの魔法が発動し、晴れ渡る上空から極太の光は、ギガースへと狙い違わずぶつけられ、たった一発をもって倒してしまった。

「どうだ、この俺の力を目に焼き付けたか! これぞ魔王の力だああああああ!」

 フデの魔王は、自分の力に酔いしれているようだ。

「ヨメ、ピカーなっタ!? スゴい!」

 ミアさんはその力に喜んでいるが、魔王だというんだから、このぐらいはやって貰わないと困る。
 変にしょぼかったら、そんな奴を魔王認定したのかとか世間に言われてしまうからだ。

「あ、はい、分かりましたから次行きましょう」

 僕は次の魔法を行うように指示した。

「お前はもう少し驚け。もういい、次へ行くぞ!」

 こうして魔王フデは何度も魔物を呼び寄せ、その度に別の魔法を撃ち込み威力を見せていく。
 どうやら全ての属性が扱えるらしいが、単発魔法しか撃てないようだ。
 強力な魔法を使えるというのに、力や速度も高くて、魔王たり得る能力を持っている。
 しかしそんな能力よりも、一番厄介なのは誰でも扱える武具の作成なのかもしれない。

 軽くて丈夫で誰にでも扱える魔力を込めた装備は、フェイさんのような存在を作り出してしまうのだ。
 悪人の手に渡ってしまえば、それだけで国の危機にもなりかねない力である。
 当然厳重封印対象だろう。

 でもそんな武具を作り出せるフデの魔王が、何故負けてしまったかといえば、ひとえに人望の無さが原因なのかもしれない。
 もし人員が居たならば、こんな貧乏生活はしていないはずだ。

 僕はなんとなく可哀想になり、フデの肩にポンと手を置いた。

「なんだ、俺の力に恐れおののいたのか? 仕方のないやつだ。俺を尊敬するというなら一つぐらいなら道具を分けてやってもいいんだぞ?」

 だが何故か変な風にとらえられ、自分が尊敬されているとでも思いこんでいる。

「いやぁ、今はいいんで、ミアさんとでも遊んでいてください。僕はちょっと資料を書きますので」

 僕は、地面を行進しているアリを口に入れようとしているミアさんを指さした。

「任せておけ、女の扱いは手慣れているからな! おいお前、アリを食うぐらいだったらバッタの方が腹がふくれるぞ!」

 あまり手慣れていそうもないフデに任せ、僕は資料を書いていく。


 名前 :魔王フデ(名前は省略)
 レベル:56
 HP :3700
 MP :9999?
 力  :235
 速  :155
 大  :167
 危険度:今の所1
 技  :属性魔法色々。魔王の剣(名前が長いので省略)
     一属性を扱えて、同属性を防げる防具(浮遊効果あり)

 考察 :魔王と呼ばれた長い名前の人。
     省略してフデと呼ぶのを推奨。
     反省しているようで今の所は安全。
     大量の魔物を操れることを除けば、単体攻撃しか出来ないようだ。
     町の中に居る限りは、多属性結界を使えば安全に対処できる。
     もし敵対することになったら、一対一では勝ち目は薄い。
     ある程度の力を持つ冒険者を集め、数の力で対抗した方がいいだろう。

 注意 :特殊な武具を作り出せる為に注意が必要。
     変に流通したら国の危機に発展しそう。
     厳重封印推奨。


「ふう、書けた」

 僕は描き記した資料をリュックに移そうとするが。

「ちょっとそれを見せてみろ。俺がチェックしてやろう」

 フデが資料を奪おうとしてきた。

「駄目です。これは冒険者に見せるための重大な資料なので、勝手に書けないようになってるんです。本人が書いたら絶対誇張するでしょう?」

 僕はフデと書いたことを知られないように、資料をリュックにしまい込んだ。

「お前まさか、俺の名前を変な名前にしているんじゃないだろうな!? ちょっと見せろ!」

 おっと、フデに気付かれてしまった。

「そんなことはないですよ? じゃあ終わったので帰りましょうか。ミアさん、その人の足にしがみ付いて動けないようにしといてください」

 僕は町に帰るために、ミアさんを重しにしようと頼み込んだ。

「ワカッたー!」

 ミアさんはそれを素直に聞いて、フデの足にしがみ付いた。

「やっぱり書いたな貴様! ちょっ、放せ、動けんだろう!?」

 フデはミアさんをズリズリ引きずっている。
 僕は今の内に町に走り、ギルドへと戻って行った。


「スラーさん、魔王の資料をどうぞ」

 僕はギルドに戻り、魔王の資料を提出していた。

「……ライズ・ライト君、このフデというのは?」

 スラーさんは書かれている名前を見て不思議がっている。
 確かに意味を知らなければ分からない名前かもしれない。

「これは名前の最後についていた、フンババルンバ・デンデンムシの頭文字をつなげたものです」

 僕は適当に名前を言って答えた。

「ふむ、確かに。ではそうすることにしましょうか。元のままでは長すぎますからね」

 でもスラーさんは、本来の名前を憶えていないのか、その言葉に納得してしまう。

「しかし略称だけでは不十分でしょう。本来の名前も私が書いておきましょう」

 スラーさんはペンを取り出し、フデと書いた名前の下に何か書き込んでいる。
 のぞき込むと、インクドンドン・ダート・ローバ・ウミウシ・ギング・ジョーズ四姓フンババルンバ・デンデンムシと書かれていた。
 もしかしてワザとやっているのだろうか?

「スラーさん、インクドンドンじゃなくてイカゲソブンブンですよ」

 ボケているのかと思って、僕は一応突っ込んでみた。

「おや、間違えてしまいましたか? はっはっは、私としたことが失敗してしまいましたね」

 普通に書き込もうとしているところを見ると、名前を憶えていないのかもしれない。
 それとも、変な名前の魔王として後世に残そうとしているのだろうか?
 反省したとはいえ、人類に敵対した魔王には容赦がない。
 まあその程度で許されたと思えば優しいものだ。

「どっちも違うわああああああああ! ハァハァ……」

「タノシー!」

 丁度よく、魔王はミアさんを引きずり戻って来ていた。

「よく聞け、俺の名前はウミノメ・ジョージでいいから、是非それにしてください!」

 たぶんそれが本名なのだろう。
 かなり短くなって呼びやすくなっている。
 しかし、まだフデと言った方が短い。

「つまり、頭文字をとってウジということでいいのでしょうか?」

 僕はそう聞いたのだけど。

「謝るから勘弁してください。どうぞジョージでお願いします」

 フデは頭を下げて許しを乞うている。

「ふむ、仕方ないですね。ではそうしましょうか」

 スラーさんの許しが出て、ジョージという名前で資料が作成された。
 今後冒険者の間では、フデ=ウミノメ・ジョージという名前で広がっていくだろう。

「さて、準備も出来ましたから、そのフデさんを封印して差し上げなさい」

 スラーさんがパチンと指を鳴らすと、屈強な男達が現れた。
 そしてフデを囲んで能力封印をこころみている。
 僕達が外に行っている間に用意していたのだろう。

「甘んじて封印は受け入れよう! でもその前に、そのフデという名前も消すんだ!」

 フデは資料に書いてある自分の名前を指さしているが、スラーさんは気にせず机に資料をしまい込んだ。

「フデの魔王として後世に名を残してしまううううううううううう! なんかやだああああああああ!」

 フデは悲しんでいるが、大人しく封印をされようとしている。
 しかしそんな時に、このローザリアのギルドが、ドーンと大きく揺れたのだった。

「何があったんですか? 皆さん、確認をお願いします」

 スラーさんはなるべく慌てず皆に指示を出している。

「誰かが攻撃してるんじゃ? まさかフェイさんが!?」

 僕は何となく嫌な予感がしてしまう。
 そして。

「魔王様ああああああああああ、捕まったとお聞きしてえええええええ、ファラのついでにお助けに参りましたあああああああ!」

 建物の中に居ても相当大きなフェイさんの声が聞こえた。
 その声で大体の目的は分かるのだが。

「違う違う、俺がやらせているんじゃないからな!? 信じて、お願い!」

 屈強な男達に見下ろされて慌てているフデをみると、やっぱりフェイさんの独断だったりするのだろう。
 僕はギルドの外へ確認しに行ったのだけど、騒ぎに気付いていた冒険者達も外へ出ていた。
 その中には受付で仕事をしていたファラさんの姿も見える。

 やはり自分の父親だし気になったのだろう。
 フェイさんに見つかると厄介だし、僕は隠れながら状況を見つめているが。

「ファラアアアア、お父さんが助けに来たよおおおおおお! 魔王様と一緒に家に帰ろうじゃないかああああああ!」

 結構人が多いというのに、娘を見つけるセンサーは凄いようだ。
 フェイさんはファラさん軽く探し出し、空から見下ろしている。

「お父さん、下りて来て大人しく捕まりなさい。今なら百叩きぐらいで勘弁してあげるわ」

 ファラさんは怒っているのだけど。

「ふむ、娘にポカポカ叩かれるのは父親の特権ではあるが、今優先すべきはファラちゃんの救出と魔王様の奪還だ。おおそうだ、魔王様とならば付き合うことを許可してもいいのだぞ? あのお方は素晴らしいからな」

 フェイさんはその言葉を全然聞いてはくれないし、その恋人まで勝手に決めようとしている。
 周りには種から産まれたグリーンデビルが大量に現われ、更に空からは鳥の魔物まで引き連れていた。
 前回の襲撃より数も多く、もはや劣化魔王とでもいう存在になり果てている。

「さあ者共、ファラちゃんを奪い返すのだああああああああ!」

 フェイさんの命令で魔物達が一斉に動き出した。
 冒険者が必死で戦い続けているが、僕は戦いには参加せずに結界を作ることに専念している。
 だが。

「お前を逃がすと思ったのか? クー・ライズ・ライトオオオオオオオオオオオオ! ゆけえええい、グリフォンよ!」

 しっかりフェイさんに見つかってしまったようだ。
 しかもあのグリフォンさんは、キャンドルリザードから助けてくれた恩人の鳥さんなのでは?

「ぬああああああああ!」

 僕は結界を作るのを途中で諦め、ギルド内へと避難した。
 なんとか避難出来たのはいいけど、中は中で魔王の封印は続けられている。
 男達に囲まれて、フデの魔王は何やら変なアイテムやらを取り付けられていた。
 今は急ぐからと、僕はフデに声をかけた。

「フデさん、今外にフェイさんが来ています。魔物を操るアイテムってどんなのを作ったんですか?」

 そう僕はフデに聞いてみたのだが。

「おいお前、俺の名前を言ってみろ」

 なんか名前を言って欲しいようだ。

「ん? フデですよね?」

「違うわ! 俺はジョージだって言ってるだろうが! 答えて欲しいのなら俺の名前を読んでみろ!」

 僕はそれに答えたのだけど、何故か怒りだしている。
 そんなにジョージって言ってほしいのだろうか?

「分かりましたよジョージさん、お願いしますから教えてください」

 僕はその意思に従い、素直にお願いした。

「うおおおおお、やった! やっと呼んでくれたのだな! 良いだろう、早速教えてやろう。魔物を操ることが出来るアイテムは、腕に装着する腕輪なのだよ。どうだ、役に立つ情報だろう? その分減刑してくれると嬉しいですはい」

 フデの魔王は、囲んでいる男達に頭を下げながらお願いしている。
 もう魔王としての威厳はないだろう。

「ありがとうございます。じゃあもう一度行って来ますね」

 僕は外に出ようとすると。

「待て、お前にも一つアイテムを分けてやろう。これを持って行け」

 フデからポンと投げられたのは、銀で作られた指輪だった。

「これは?」

 僕はフデに説明を求めた。

「それを持っていれば、一体だけ魔物を操ることが出来る。奴から好きな魔物を奪い取ってやれ」

 たぶん力の方向性が違うのだ。
 一体に力を集中しているから、多くを操るフェイさんからでも魔物を奪えるということだろう。
 僕は一応封印していた人達を見るが、早く行けと言わんばかりに手をふっている。

「じゃあフデさん、ありがたく使わせてもらいます!」

 僕はフデにお礼を言って、手をふった。

「やっぱり返せええええええええええええええ!」

 僕は小指に指輪をはめて、外へ出て行った。


 僕はギルドの外へ出て、早速指輪の力を使おうとしていた。
 狙うのはもちろんあのグリフォンさんである。
 別に鳥の顔が分かる訳ではないけど、直観があのグリフォンがそうだと告げていた。
 だから僕は掌を向けて。

「こちらに来い!」

 そう叫んだ。
 すると僕の身に着けていた指輪から糸のような光がグリフォンに伸びて行く。
 それがつながると、グリフォンはこちらに向かって来ていた。
 降下して来る姿に、多少恐怖を感じながら到着するのを待つのだが。

「ヨメ、キター!」

 僕の目の前に、ミアさんがピョンと跳んで現れてしまう。
 ミアさんの体により向けていた掌が遮られ、グリフォンはジャキっと爪をあらわにさせた。

「うぎゃあああああああああ!」

「ニャアアアアアアア!」

 僕の悲鳴とは違い、ミアさんは楽し気に手を挙げている。
 しかし、そうこうしている内にグリフォンが迫って来ていた。

「ぎゃああああああ、助けてええええ!」

 僕は背中を向けて逃げるのだけど。

「ヨメ、ワカッたー!」

 ミアさんは武器も持たずに突っ込んで行く。
 僕は止めるのか迷ったのだけど、もう止められるタイミングではなくなっている。

「ワタシ、ツヨい! ニニニニニニニニニニニ!」

 ミアさんとは結構一緒に戦って来たけど、その突進は今までにないぐらいに速かった。
 バンと平手で叩くと、巨大なグリフォンが吹き飛ばされている。
 どう考えてもおかしい。
 ミアさんにこんな力は無かったはずだが?

 ……まさか、魔族は魔物扱いで指輪の効果があったのか?
 しかも能力値をアップさせるとか、そうとう良いアイテムのようだ。
 でもなんか、僕の魔力とか使われている気がしてならない。
 これは他の魔法との併用は無理そうだ。

「ヨメ、ワタシ、ヤッた!」

 ミアさんは何時もより高くジャンプし、手を挙げて喜んでいる。
 少し予定とは違ったけど、一応戦力がアップしている気がしなくもない。
 でも僕としては何にも出来なくなるから、やっぱりダウンしているのだろうか?

「あっ、何時も通りか。はっはっはっ!」

「ウニ?」

 僕は現状を笑い飛ばし、不思議がっていたミアさんの頭をポンポン叩いた。

「ミアさん、じゃあ敵を倒して行きましょう! もちろん僕を護るのが最優先で!」

 僕は敵を指さしミアさんに命じた。

「ギギ!」

 ミアさんは頷き、近くに居るグリーンデビルを叩きに行く。

「そこに居たかクー・ライズ・ライトオオオオオオオ! やってしまえ魔物共おおおおお!」

 しかし、またもフェイさんに見つけられてしまう。
 命令に従い、グリーンデビルや別のグリフォン、キマイラのようなものや、巨大な鷲のような魔物とか、様々な魔物が襲い掛かって来た。

「うああああ、ミアさん助けてえええええええ!」

 そのピンチに、僕はミアさんに助けを求めた。

「ヨメ、マカセろ!」

 ミアさんは頑張って魔物を倒していくが、向かって来る数が多すぎるようだ。

「うあ、ちょっと不味いかも?」

 僕達はジワリと後退せざるを得なくなって、ギルドの壁際へと追いやられて行く。
 入り口がある場所とはかなり離れてしまって逃げ場もなさそうだ。
 かなりピンチであるものの。

「あんた達、邪魔よ!」

 全く攻撃もされずに放置されているファラさんが、敵の中央を突き進んで来ていた。
 まさに無敵状態で、敵がどれだけいても関係ないのである。
 稀にファラさんの前に行く魔物が居ても。

「ファラに手を出すんじゃあない!」

 フェイさんの命令で魔物はピタリと止まり。

「はあああああ!」

 ファラさんに叩き斬られている。
 娘に手加減しまくっているから、何時も通りフェイさんに勝ち目はないだろう。

「ぐぬぬぬぬ、ファラアアアアアア、そんな奴を庇うんじゃあない!」

 やっぱりファラさんが居るから魔法とかも使えないようで。

「今日はファラを取り戻すのは諦めるとしよう。しかああああああし、もう別の目的は達成している! 魔王様は奪い取らせてもらったあああああ! ファラアアアアア、また今度会おうねえええええええ!」

 どうやら魔物はギルドの中にまで入り込んでいたらしく、あのフデの魔王が縛られたまま魔物に担ぎ上げられ、ギルドの中から出て来ていた。

「魔王が逃げ出したぞおおおおおおおお!」

「まさかギルド情報を得る為に自ら出向いたのか!?」

 中に居たギルド職員や冒険者でも防ぎ切れなかったらしい。

「お、おい! 俺は助けてくれなんて一言も言っていないぞ! 違うんです。これは違うんですよ!? 俺が命じさせたわけじゃないんですからね!」

 フデは言い訳しているが、残念ながら魔王の言うことを信じる人は居ないだろう。

「助けてええええええええええええ!」

 まるでお姫様のように連れ去られて行くフデだが、助けに行く人も居ない。
 そう言えば封印はどうなったんだろう?
 まあ今更なるようにしかならないか?

 それはいいとして、またも起きてしまったフェイさんによる襲撃は、今後もきっと続くことになるだろう。
 やはりフェイさんの住処をみつけるしかないのだが、まだ手掛かりすらもつかめていない。
 結局飛び去って行くフェイさんを追うことも出来ず、僕達は道を塞ぐ魔物達を退治するばかりだった。

 しかし今回の襲撃で、本格的に動き出すことになりそうだ。
 戦力調査部全員が、スラーさんの前に集められている。

「さて皆さん、まんまと魔王を連れ去られてしまった訳ですが、今回は丁度良いタイミングだったと言えるでしょう。魔王の封印も完了していましたし、その居場所を知れる追跡魔法もかけてあります。つまり、あのフェイという男が何処に居るのか、完璧に把握できたという訳ですよ」

 スラーさんは地図を広げて、赤く光る場所を指さした。
 それはまだ動き続けて、この町の東の方面に向かっているようだ。
 意外と直ぐに動きを止め、そのまま動かなくなっている。
 そこはジェイク・キングの村と呼ばれる場所だった。

 ジェイク・キングというい人物が、百年以上前に作ったと言われている村だ。
 略してJKの村と言われ、何故かその名前を聞いて異世界から来たとか言う変な人が多く集まって来るという不思議な村である。

「ふむ、隣の村に潜んでいたようですね。しかしここの全員で行く訳にも行きません。ライズ・ライト君には引き続き指揮をまかせます。ここに居る何人かを引き連れて見事捕縛してきなさい」

 やはり僕が選ばれてしまったようだ。

「はい、任せてください」

 そう返事をして、僕は仲間を選び出した。
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