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秀典

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善意天逆 果て無く黒

叫ばないでください魔王様

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★あらすじ。
 爆発した魔王教本部を調べると、地下におりるハシゴがあった。
 またも暴走しそうなディザリアさんを村長の家に帰し、僕達はその穴の中へおりて行く。
 地下におりて調べようとするが、僕達は黒色の集団に出会う。
 意外と良い人かもしれないその人達だが、ファラさんを切れさせたからどうにもならない。
 黒い人達は気絶させられ地面に転がった。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
 ランズ・ライズ・ライト (父)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
 フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)


 倒れた黒服の人達の服をはぎ取り、一応何か持っているか調べたのだけど。

「特に変わったものは持ってないみたいですね。じゃあこの服でも着て紛れ込んでみますか?」

 僕は服を着るように提案をした。

「はぁ? 嫌よ、そんな唾液まみれのマスクなんて付けたくないわ。やりたいなら一人でやれば?」

 ファラさんは気が乗らないようだ。

「我が君、私も他人の臭いが付くのはちょっと。どうしてもというのなら、マスクの裏側をペロッと舐めてから渡してくれませんか?」

 グリアさんは、真面な顔で真面じゃないことを言っている。

「服を着るのは諦めましょう」

 もちろん僕もそんな事をしたいとは思わない。

「ワタシ、キたー!」

 ミアさんだけが文句を言わずに黒い衣装を身に着けている。
 しかし、一人だけ黒くなっても意味はないだろう。
 変なお芝居も出来そうにないし。

「ミアさん、それは要りません。その辺に捨てといてください」

 僕はミアさんに指示し。

「ワカッたー!」

 ミアさんは着ていた黒い服を脱ぎ捨てた。

「直ぐ見つかっちゃうでしょうけど、このまま行きますか? というかそうするしかないんですけど……」

 僕はもう諦めている。

「見つかったら叩き潰して行けばいいだけよ。ほら、ボーっとしてないでついて来なさい」

 と言って教えられた道を堂々と歩き始めたファラさんと。

「ギ!」

 頷いてついて行くミアさん。
 これだけ堂々としているなら、意外と大丈夫だったり?
 僕は何度もくっ付いて来そうになるグリアさんを牽制し、ファラさんの後ろをついて行った。

 以外と長い道を歩き続けると、もの凄く広い空間に出た。
 僕達が居るのは、広場の周りを囲むように作られた高い通路だ。
 下を見下ろすと、大勢の人がひしめきあっている。
 百人どころか、数千人はいるかもしれない。

 どこから集まったのか知らないが、村の中に居る人間全部詰め込んでも足りない人数が居るようだ。
 中央奥には、巨大な魔王像があり、その指から吊るされた本物のフデの魔王が見える。

「こらああああ、俺をどうする気だ! 妙なことをしたら、ただでは済まさんぞ! おい、聞け、誰かああああああああああ!」

 ここまで聞こえるような大きな声で叫んでいるが、誰も助けてはくれないようだ。
 魔法とか使えるはずだが、それも封印されてたり?
 ただの一般人では、無理に助けに行っても戦力にはならないだろう。
 それはまあ許容範囲なのだけど、問題は……。

「むー、むーむー!」

 何故かその隣に吊るされているディザリアさんだろう。
 フェイさんには面が割れているし、帰る途中で捕まったのかも?
 あれからそんなに経っていないというのに、なんて簡単に捕まってしまうんだ。

 僕達と鉢合わせにならなかったとなると、別の入り口があるのかもしれない。
 その二人が吊るされた下には。

「さあ魔王様、諦めて我等に力をおおおおおおお!」

 フェイっさんが手を広げてフデを脅している。

「だから無理だって言ってるだろう! 今俺は封印されてるんだから! だからお願いです、下ろしてください!」

 もうフデに魔王としての面影はない。
 元から無かった気がしないでもないけど。

「むー、む~!」

 そしてディザリアさんは足をパタパタさせている。
 一応この場所から魔王像へ行くことも出来るようだ。
 この通路には見張りも居ないし、助け出すのも可能だが、流石に目立つだろう。
 やっぱり黒い服を持ってこれば良かった。

 僕達がどう動くのか悩んでいると。

「さあ皆さん、今日も元気に魔歌を歌いましょう!」

 フェイさんが変な動きをしながら。

「何が何でも娘が第一、スキンシップは欠かしません! 彼氏が出来たら脅して脅迫、それでも駄目なら実力行使、はい!」

 何かしら駄目な歌を大声で歌っている。
 これはもしかして聖歌の逆バージョンだったり?

『何が何でも娘が第一、スキンシップは欠かしません! 彼氏が出来たら脅して脅迫、それでも駄目なら実力行使!』

 しかも全員で復唱してるし。
 まさかここに居る人達は、全員娘持ちのお父さんなんじゃ?
 これだけ人数が居るとなると、国内外から集まって来ていたり?
 それから長い歌が続けられ、最後に。

「愛してるよファラちゃあああああああああん!」

「ラビアアアアアアアアアア!」

「マイリイイイイイイイイイ!」

 っと各々の娘の名前を叫んでいる。

「さあ魔王様、これで我等、魔王様に力を頂いてクソ彼氏から娘を守ろう教の教えが伝わったかと思います! お力を我等にプリーズ!」

『プリース!』

 フェイさんの声に合わせ、多くの声が続いている。
 もしフデが賛同したら、とんでもない団体が出来てしまう。
 もう封印してあるから大丈夫なんだけど。

 しかしフェイさんはどれ程の行動力があるのか。
 三年でこんな団体をつくり出すとは、恐るべしだ。

「ふぅ、ちょっと殺して来る!」

 ファラさんが人数差を気にせずおりて行こうとしている。

「ちょっとファラさん、あの人数は無理です、落ち着いてください! そして殺したら駄目ですよ。それよりまずディザリアさんを助けましょう」

 僕はファラさんの腕を掴んで何とか引き留めた。

「……そうね、その方が効率的かもしれないわ。いっそ全滅させてもらいましょうか」

 ファラさんはディザリアさんを使う気だ。
 確かに、あの人なら言われなくてもやるだろう。
 本当にやられたらこ困るけど、とりあえず助けないことにはどうにもならない。

「え~っと、じゃあ出来る限り壁際を屈んで行きましょうか。その辺なら下から見えないと思いますし」

 僕はそう指示を出す。

「ワタシ、ヤる!」

 ミアさんは元気にピョンと跳んで。

「我が君、私の背中に乗せてやろう! さあ!」

 グリアさんは今の話を聞いてくれなかったのだろう。
 背を向けて僕が乗るのを期待している。

「ミアさん、下の人に見つかるから跳んだら駄目ですからね」

 僕はグリアさんをスルーして、ミアさんに注意すると。

「ヨメ、ワカッた!」

 ミアさんは手を挙げて返事をしている。
 大きな声も止めた方がいい。

「大丈夫、だよね?」

 僕は下の状況を覗くが、今の所は大丈夫みたいだ。
 まだ娘と思われる名前の数々を叫び続けている。
 胸をなでおろし、魔王像に捕まっているディザリアさん下へ向かって行った。

 僕は中腰になって歩いているのだけど。

「これ、結構疲れる」

 無理して歩いているけど、足がはち切れそうだった。

「我が君、やはり私に乗って行ってもいいのだぞ?」

 グリアさんはあお向けになり、妙な体勢で歩いている。
 確かに乗ってしまえば楽なのだけど。
 ファラさんからは蔑んだ視線を感じるし、あそこに乗るのは絶対に不味い。

「いや、遠慮します」

 だから僕はグリアさんの提案を拒否して、四つん這いで歩くことを決めたのだった。
 膝がちょっと痛いけど、今までよりはましだろう。

 コソコソと移動し続け、魔王像の裏っかわ。
 何千人の目がこちらの方向を見つめている。
 ここで下手に動いたら、すぐに見つかってしまうだろう。
 フデとディザリアさんを同時に助けるか、それとも一人ずつ助けるか……。

「私とミアでディザリアを助けるから、あんた達はあっちのを何とかしなさい」

 ファラさんが言っているのは、当然フデのことである。
 あれを助けるのはあんまり気が乗らないんだけど、まあやるしかないだろう。
 僕とグリアさんはフデを助けようとするのだが。

「我が君、私と二人っきりになってどうする気だ? そんなに私とデートしたかったのか?」

 グリアさんは全然何にも理解してくれない。
 何時まで頭がやられたままなんだろう?
 正直僕一人の方がいい気がするが、どうせついて来る。
 僕は諦めて、ズリズリとほふく前進して行った。


 グリアさんが心配ではあるが、僕はゆっくりフデに近づいて行く。
 気付かれませんようにと心で願い、魔王像の腕の部分にを進んでいる。
 像の腕の幅は、僕が大きく腕を広げて同等ぐらいだ。
 先に進むほどに細くなるし、途中でポッキリ折れないか心配である。

「我が君、帰ったら風呂にでも入るといい。ちょっと臭うぞ」

 グリアさんは僕の後ろからついて来ている。

「グリアさん、何処の臭いを嗅いでるんですか! お尻を嗅がないでください!」

 グリアさんは僕の尻に顔を近づけている。
 今の状況を考えてくれと言いたい。

「大丈夫だ我が君、私は一向にかまわない!」

 グリアさんは言う事を聞いてくれないから。

「僕がかまうんですからね!」

 僕はなるべく急いで前に進んで行くが、グリアさんも同じスピードで追って来ていた。
 やっぱり先に行かせれば……いや、それはそれで問題がある気がする。

「ハァハァハァ……」

 僕はグリアさんの猛攻をくぐり抜け、無事に掌の部分にまで到着した。
 しかし、僕が両足を乗せた瞬間、ビキィっと不安な音が響いてしまう。
 考えたくは無かったが、この像の手首の辺りに、小さな亀裂が入っていた。

「お、おい、お前俺の部屋に来た奴だろ? 早く俺を助けてくれ」

 フデは僕達に気付いたようだ。
 しかし今はかまっている場合ではない。

「グリアさん落ち着いて、そこからゆっくり引き返してください。フデは諦めましょう」

 僕はそう言ってグリアさんをなだめるのだけど。

「我が君、そんなウソを言っても私にはお見通しだぞ。さあ、ここは二人っきりだぞ。我が君いいいいいいいいいい!」

「諦めないでえええええええ!」

 グリアさんは僕に抱き付こうと、声を張りあげて大きくジャンプし、フデは叫んだ。
 ちなみに、グリアさんは重量武器の大剣を背負ったままだ。
 ひび割れた像の手首にそんな重量物が乗ってしまったら。
 そう考えた僕は、グリアさんの下から腕の方へと滑り抜けた。

 そしてダァンっと着地したグリアさんの体重で、手首にあったヒビが途方もない勢いで増えて行く。

「ん、何だ? お、おい、像が割れているぞ!」

「た、大変だ。あのままでは魔王様が落ちてしまわれる!」

 その音は先ほどよりも大きく響き、下に居た人達に気付かれたらしい。

「お、おい、なんか下がって来て居る気がするんだけど!? 聞いてるよな、おい!?」

 フデが慌てているけど、もう遅いのだ。
 グリアさんを乗せたまま、ガラガラと手首から先が落ちて行く。

「我が君いいいいいいいいいいい!」

 叫ぶグリアさんと。

「いやああああああああああ!」

 縛られたまま落ちて行くフデ。

「グリアさんごめんなさい。出来れば成仏してください。ついでにフデも」

 僕は手を合わせて二人の成仏を祈った。
 でも二人共頑丈だし、このぐらいじゃ生き延びてしまうだろう。
 二人を巻き込んだまま落下して行く手の部分が、ドッゴオオオオオっと盛大に地面に落ちた。

「ぐぅぅ、何事!?」

 その音に、娘の名前を叫び続けていたフェイさん達も、流石に気が付いたらしい。
 ついでに言うと、やっぱり二人共無事みたいだ。
 目を回す程度で怪我もしていないフデや、落ちた手首の上でシュタっと着地したグリアさん。
 まあ例え無事であっても、何千人の前に放り出されたら無事で居られる保証はないが。

「き、貴様は一体何者……ハッ!?」

 フェイさんは像の上を見上げてしまった。
 そして、一応心配して下を見ていた僕と、バッチリ目が合ってしまう。

「「…………」」

 僕はまだ大丈夫だと思いながら、ゆっくりと腕の部分から後退して行く。
 気のせいだったと思ってくれればいいのだけれど。

「クー・ライズ・ライトオオオオオオオオオオオ!」

 やっぱりフェイさんに気付かれていたようだ。
 そう上手くはいかなかった。

「侵入者だ、ひっ捕らえろ!」

 フェイさんはそう指示を出したのだが。

「え、でも娘の馬鹿彼氏じゃないし」

「大司教、やっぱり逃がしてあげましょうよ、この人は娘の恋人じゃないんですから。魔王様以外は要らないでしょう?」

 こんな感じである。

「何を言っておるか! この娘は兎も角、あの男は娘の彼氏なのだぞ!」

 フェイさんが説得しようとしているが。

『うちの娘の彼氏じゃありませんから』

 何千人と人数が居ても、ただの良い人達のようだ。
 それと、僕はファラさんの彼氏になった覚えはありません。

「ぬおおおおおお、役に立たん奴等め! だったらこの私の手で葬ってやろう! だあああああ!」

 全く無事のグリアさんを無視して、フェイさんが空中に浮き上がって来ていた。
 しかし、僕はもう逃げ始めていた。
 通路の角に鉄棒の一本をぶっ刺し、ファラさんが居る場所へ戻っている。
 背を向けて逃げるよりも安全だと考えたからだ。

「クー・ライズ・ライトオオオオ、私に向かって来るとは良い度胸だ! そんなにファラと結ばれたいのかああああああ!」

 フェイさんは、相変わらず僕とファラさんがつき合っていると思い込んでいる。

「全然違いますからね! 僕とファラさんはああああ!?」

「全世界の父親の怒りだああああああああ」

 僕の反論なんて聞かず、フェイさんは真っ直ぐ殴りかかって来た。
 怒りのオーラで拳が巨大に見える。
 しかし体術までは強化されていないようで、僕はヒョイっと躱して背後に回り込んだ。
 そのまま脇に手を入れて拘束したのだけど。

「は、はなせええええき、貴様、やはり私の尻までも!? させるかああああああああ!」

 フェイさんは、まだ僕が尻を狙っていると思っているらしい。

「誰がそんなことをすると言いましたか!?」

 だが僕は、断じてそんなものに興味はない。
 このままファラさん達が来るのを待っていようかと思ったけれど、どうもそうはいかないらしい。

「うおおおおおおおお、黒雲よいななけ、クラウド・ザ・ストライク!」

 フェイさんが魔法を使ってしまった。
 洞窟の上の方に雲みたいなものが現れて……って見ている場合じゃない、効果が無いからって自分ごと食らう気だ。
 僕が危険を感じてフェイさんから飛び退くと、ドーンと雷のが落ちて来る。
 それはフェイさんに直撃するが。

「クフゥ……私を捕まえようなんて無駄なことだ。諦めて成敗されるがいい、クー・ライズ・ライトオオオオオオオオオ!」

 黒い衣装が弾け跳び、中から何時もの鎧が現れた。
 その体が空中に浮かびあがる。
 そして、やっぱり何時も通りに僕に襲い掛かって来た。


「クラウド・ザ・ストライクウウウウ!」

 フェイさんの魔法で、上の雲から何度も雷が落ちて来る。

「ぬあああああああああああ!」

 僕は魔法が唱えられる度に、ピョ―ンと飛び退いたりして躱し続けていた。
 結界も作っていない今の僕には、それに対抗できる手段がないのである。
 背中を見せて逃げるのは無理だと、誰かしら助けが来るのを待ち続けている。
 そして初めに現れたのは。

「ヨメ、キター!」

 一番動きが素早いミアさんが、フェイさんの後ろから向かって来ている。

「ぬうう、このゴミを助けるというのなら、誰であろうと容赦はせん……ぞ?」

 しかし何故か攻撃もせず、ヒョイっと避けて僕の横へと来てしまった。

「ミアさん来てくれるのは嬉しいんですけど、あの人を倒さないと駄目なんですよ?」

 僕はミアさんに伝えるのだが。

「ヒト、タタクの、ダメだイワレた!」

 ミアさんはピョンと跳んで手を挙げている。
 たぶんギルドに教えられているのだろう。

「いや、そうなんですけどね! でも今はそうじゃなくて!」

 僕は説得をしようとするが。

「フハーッハハハ! クラウド・ザ・ストライクウウウウ!」

 フェイさんは、僕にそんな隙をあたえてはくれないようだ。
 前と変わらず当たらないのだが、もう避けるのもギリギリになってきている。
 随分使い方に慣れてきているようだ。

「どわあああ!?」

 僕しか狙っていないのは相変わらずだろう。
 ファラさんがこちらに来るのは随分かかりそうだし、ここは。

「指輪よ、お願いしま~す!」

 僕は説得よりも早い方法を選んで、ミアさんに使用した。
 指輪から伸びた魔力の糸が、ミアさんにガッチリと固定される。
 そして、僕の意識がミアさんに流れ込み。

「ワタシ、ヤる!」

 ミアさんの気持ちが確定した。
 しかも今回は前回の時のような中途半端なものではなく、完全に同調しきっている。

「ミアさん、フェイさんに攻撃を!」

 僕は攻撃の指示を出す。

「ヨメ、ワカッた!」

 そしてミアさんは頷き動き出したのだが。

「こいつに味方するというなら貴様も! ……?」

 フェイさんはそれに構え。

「んショ!」

 ミアさんは座り込んで武器を腕に装着し始めた。
 剣に取り付けられた服というのか、皮の部分を、クルクルっと巻いている。
 そして自分の腕に同化するように、ぐいぐい引っ張って調整してた。

「「…………」」

 まだ随分時間が掛かりそうだ。

「ワーッハハハハ、笑わせてくれるなよクー・ライズ・ライト! あの子の準備が終わる前に、先にぶち殺してくれるわ! クラウド・ザ・ストライクウウウウ!」

 フェイさんが魔法を唱え、またも雷が落ち始める。
 僕の状況は指輪を使う前とあんまり変わっていなかった。

「にょわああああああああ!」

 もうヤバイ、もうヤバイと思いながら、雷の魔法を躱し続けるが。

「ぎゃあああああああああ!」

 僕はついにその攻撃を食らってしまった。
 ダメージとしてはそこまでのものではないが。

「クラウド・ザ・ストライク! クラウド・ザ・ストライク! クラウド・ザ・ストライクウウウウウウウウウ!」

「ぎゃわわわわわわわわわわわわ!」

 痺れが残り硬直する僕に、フェイさんの第二第三の雷撃が落ちて来る。
 そろそろ脱出しないと本当に不味い。

「み、ミアさん、蹴りでいいです。蹴りでえええええ!」

 僕はもう待ちきれないと、ミアさんにお願いした。

「ウン、ワカッたー!」

 ミアさんは装着しようとしていた剣を諦め、わざわざ外して投げ捨てた。

「ウニイイイイイイイ!」

 そしてフェイさんに向かって跳び蹴りを放ったのだけど。

「馬鹿め、来ると分かっているものを私が避けられないとでも思っているのか!?」

 確かに、僕が声に出してしまえば、フェイさんに行動が知られてしまう。
 既に避けられて空中に飛び上がろうとしていた。
 だが更に上空から現れたのが。

「覚悟しなさいお父さん!」

「なぁッ、お父さんに何をするんだ、ファラ!?」

 魔王像の頭から跳びかかったファラさんだった。
 剣をフェイさんの鎧にぶつけて思いっきり薙ぎ斬っている。
 鎧には亀裂が入るが、フェイさんいダメージはなさそうだ。

 もうディザリアさんの救出が終わったのだろう。
 道の端にはそのディザリアさんが縛られたまま転がっている。
 拘束を解いたら僕達までやられてしまうし、この処置は正しいものだ。

「ぬあ、飛行能力が!?」

 そして鎧が壊れたからか、フェイさんは大きく飛び上がることが出来なくなっている。
 これでもう逃げられることはないだろう。

「観念するのねお父さん」

 ファラさんはフェイさんに剣を向ける。

「ファラアアアア、お父さんは心配しているだけなんだよ!? そんなクズと付き合ったって、お前は幸せにはなれないんだ。お前の将来の為にも、このクズはここで殺しといてやる!」

 フェイさんが言っているクズとは僕のことだ。

「お父さん、ずっと騙されてるけど、私はクーと付き合ってないから!」

 ファラさんは本当のことを言ってくれた。

「な、なんだってええええええええええ!?」

 娘であるファラさんの言葉を、フェイさんは一瞬で信じてしまう。
 そして驚き僕を見る。

「本当に付き合ってないですよ」

 僕は頷きながら肯定した。

「そ、そうだったのか! ……クー・ライズ・ライト、今まで私は勘違いしていたようだ。今後君のことは親友として付き合って行こうと思うんだが、どうだろうか?」

 フェイさんは充分に反省しているようだ。
 だから僕は。

「嫌ですよこんにゃろう。ミアさん、やっちゃってください!」

「ヨメ、ワタシ、ヤる!」

 僕の命令でミアさんが動き出した。
 思う存分叩きのめし、こうして三年越しの和解が成立したのだった。
 あとは捕まえて帰るだけだが、そう簡単にはいかなかったらしい。
 どうやら、下の方でも騒ぎがあるようだ。
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