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秀典

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善意天逆 果て無く黒

魔王様大爆散

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★あらすじ。
 フェイさんに見つかって襲い掛かられた僕。
 像の上から通路にまで逃げたのだが、やっぱり追いつかれてしまった。
 結界も無く、攻撃を避け続けるだけの僕に、ミアさんの応援が来る。
 指輪を使って攻撃を頼むが、武器の装着に手間取った。
 あんまり状況が変わらず、攻撃を避けきれなくなった僕は雷の魔法を食らってしまう。
 そこにファラさんが現れ、フェイさんの鎧を叩き斬った。
 飛べなくなったフェイさんにファラさんの言葉が刺さり、三年越しの和解が成立した。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
 ランズ・ライズ・ライト (父)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
 ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
 リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
 フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)


 キッチリ倒したフェイさんを縛りあげ、グリアさんの落ちた下の方を見るのだが。

「うおお、魔王様あああああ! 我に娘の彼氏を倒す力を与えてくださいませえええええ!」

「ふざけるな! 俺の方が先に手を掴んだんだ。先に貰うのは俺の方だ!」

「馬鹿野郎、家の娘は今日にもヤバイんだ! 貰うなら俺が先だあ!」

 やっぱりこんな変な教団に入っているから、自分の娘のことになると人が変わってしまうようだ。
 まだ気絶している魔王様は、もむくちゃにされながら髪の毛やら腕やらを引っ張られ、服とかをはぎ取られてしまっている。
 見る間にスッポンポンになり果て、ボロ雑巾のようになってしまった。

「我が君、もう少しで着くから、そこで待っていてくれ!」

 そしてグリアさんだが、魔王像をよじ登って、腰のあたりまで来ているようだ。
 待っていればその内ここまで来るだろう。
 まあそれは良いとして、魔王を置いて帰るのは問題がある。
 やはり回収してからギルドに戻らなければならないだろう。

「いちいちこんな二人を運べないし、まずは道を見つけましょうか」

 ファラさんが言っているこんな二人とは、フェイさんとディザリアさんのことである。
 今は縛られて大人しくしているが、こんな二人を持ち運んでいたらいくら体力があっても足りないだろう。
 かと言って、今ディザリアさんを自由にさせたら大惨事になってしまう。

「そうですね、じゃあ探してみましょうか」

 だから僕はグリアさんと二人を放置することに決めた。

「ワタシ、サガす!」

 そして僕の隣にいたミアさんは、僕の言葉に頷いて道を探し始めた。
 今回はやむを得ず使ってしまったが、感情まで変えてしまうこの指輪は今後は使わない方がいいだろう。

「お、ありました。こっちに来てください」

 僕とファラさんも手分けして道を捜すと、下に続いていそうな道を発見した。
 フェイさんとディザリアさんの二人を放置して下りて行くのだけど。

「渡すかあああああああ!」

「娘の為だあああああああ!」

「どらああああああああ!」

 っとまあすごく混乱が続いている。
 流石にこの人数の中から魔王を取り返すのは無理そうだ。

「お父さんじゃないし、斬り倒すのは少しためらうわね」

 ファラさんが抜いた剣を収めている。
 でも向かってきたら斬り倒すのだろう。

「え~っと、落ち着くまで待ってみましょうか。この中に突っ込んでも怪我するだけですし」

 僕がそう言うと。

「ヨメ、ワカッたー!」

 ミアさんは手を挙げてピョンと跳んでいる。

「じゃあのんびり待ちましょうか」

 ファラさんはその場で腰を下ろして、騒ぎが終わるのを待っている。
 僕とミアさんもそれにならって腰を下ろしたのだが。

「なかなか終わりませんねぇ」

「ダなー!」

 既に指輪の効果も切れて、ミアさんの能力は元に戻っている。

「我が君、今の内に弁当でも食べるか? 私がアーンをしてやるぞ?」

 像を登っていたグリアさんは、もうこっちに合流していた。
 荷物からお弁当を取り出し、その中には卵焼きや肉類の存在も見えている。

「つつしんで遠慮します!」

 だけど僕は断った。

「我が君いいいいいいいいいいい!?」

 グリアさんのお弁当は気になるが、これ以上懐かれては僕の命の危機に関わって来るからだ。
 まあそれは良いとして、これ以上長くなるのなら、上に残してきた二人も連れて来た方がいいのかも知れない。
 そろそろトイレとか行きたいかもしれないし。

「僕ちょっと上の二人を見て来ますね」

 僕は上に行く道を行こうとしたんだけど。

「我が君、上のことは気にする必要はないぞ。私は急いでいたから解いてはやらなかったが、ナイフだけは置いて来てやったからな。今頃自由になっている頃だろう」

「ぬあんですってええええええええええええ!」

 僕はグリアさんの言葉に驚いた。
 あの二人のどちらにと言えば決まっている。
 ディザリアさんの方だろう。

「アーッハッハッハ! 私を縛りあげるとはいい度胸だわ! 自由になった私が、全員全部全滅させてあげるわあああああああああああ!」

 僕はその声に上を向くと、ディザリアさんは魔王像のてのひらの上に乗り、この下の空間を見下ろしていた。

「エニアコンタエニアゴン……」

 既に怒りマックスという状態で、大量の魔力が腕から放出されている。

「うおおおおおおおおお、これはヤバイ!」

 僕は恐れ戦いた。
 絶対広域魔法を使う気だ。

「……! 逃げるわよミア!」

 それに気づいたファラさんは、上に向かう通路へ逃げて行く。

「ギギ!」

 ミアさんもそれに同行し。

「うん? 何を慌てているんだ我が君?」

 グリアさんは何も気付いていない。

「あとで文句を言ってやりますけど、今は逃げますよ!」

 僕もファラさん達が進んだ道を進むと、グリアさんも後からついて来ている。
 そして。

「……オメガアアアアアア・スタアアアアアアアアアンプ!」

 ディザリアさんの怒りが爆発した。

『ぎゃああああああああああああああああ!』

『うおわあああああああああああああああ!』

『はあああああああああああああああん!』

 何千もの人達は、地面の隆起で地の底から日のある空にまで打ち上げられた。
 一時的に村の空が真っ黒に変わり果て、そして落下して来たという。
 ある人は藁ぶきの屋根に突き刺さり、ある人は地面に激突したようだ。
 そんな状態だというのに、誰一人死人が出なかったらしい。
 こんな惨状を産んでも、一応は手加減をしていたのだろう。

「アーッハッハッハ! 全滅、全滅よおおおおおおおお!」

 ……後で聞いた話だが、この日、村に一つの伝説が生まれたらしい。
 日が天高く登る頃、突如地の底から黒い魔物達が噴き出して、空に舞い上がったと。
 そして家々を壊し回り、多大なる被害を与えたのだと。
 これからも村の伝説として語り継がれていくのだろう。

 でも僕達のせいじゃないですよ!?
 恨むのならディザリアさん一人にしてください!

 で、肝心の僕達はというと、上層にのぼる通路の中で揉みくちゃにされ、ディザリアさんが居る近くにうちあがった。

「アーッハッハッハ! アーッハッハッハ! アーッハッハッハッハッハ!」

 高笑いをあげながら通路に戻って来るディザリアさんに。

「うるさいわよアンタ!」

「あいたあああああ!?」

 ファラさんが殴り掛かり。

「反省してください!」

「いたあああああい!」

 僕も叩き。

「ニャアアアア!」

「ちょおおおおお!」

 ミアさんもついでに殴りつけた。


「む~、むううううう~!」

 ディザリアさんは、フェイさんよりも厳重に縛りあげられ、グリアさんに担ぎ上げられている。
 その口には猿轡さるぐつわがされ、魔法は一切使えないようにしてあった。

「ディザリア、流石にあれは駄目だと思うんだ。反省した方がいいぞ?」

 っと元凶であるグリアさんが話しかけている。
 とても残念だが、二人を運ぶためにもグリアさんを失う訳には行かないのだ。

「グリアさん、フェイさんも運んであげてください」

 僕はフェイさんを指さした。

「我が君、私に任せてくれ。力仕事は私の役割だ!」

 グリアさんはドーンと胸を叩き、縛られたフェイさんを肩に吊るしている。
 フェイさんの足を少し引きずっているが、まあ問題はないだろう。
 あとは外に出るだけだが、幸か不幸か天井には大穴が空き、上に登れるような道が出来上がっている。

「ほらさっさと行くわよ」

 ファラさんは手足を使い、その道を登って行く。

「あっ、はーい」

「ウン!」

 僕とミアさんも続き。

「わ、我が君、これではちょっと登れないんだが? 待ってくれ、置いて行かないでえええええ!」

 グリアさんを置き去りにして行った。
 まあその内登って来るだろう。
 頑張って地上に出るが、やはり壮絶な光景になっていた。
 見る限り怪我も無いようだが、屋根やら壁やらに人が突き刺さって想像を絶する光景になっている。

 村の中は大騒ぎで、あとでディザリアさんには謝らせなければならないだろう。
 それはグリアさんと共に後々やってもらうとして、今は裸の魔王を見つけなければならない。
 しかしここから見る限りは見当たらないのだけど、一体どこに?

「ヨメ、アれ!」

 何か見つけたミアさんが、僕の服をぐいぐい引っ張った。

「ん、何ですかミアさん? もしかして見つけました?」

「ウン! アレだ!」

 僕とファラさんはミアさんに案内され、煙突に突き刺さった下半身を目撃した。
 もちろん下半身も全裸である。
 広げられた両足は三角に垂れ下がり、丁度太陽に照らされた雄大な山のようだ。

「ふぅ、汚いケツね」

 ファラさんはフデの尻にも動じていない。

「ケツケツ!」

 ミアさんはよく分からない。
 もしかしたら見慣れているのかも?

「まあ逆でなくてよかったですね」

 あれが逆向きだったら、ちょん切られていても不思議ではない。

「それじゃあクー、行ってきて」

「えっ? 僕一人でですか?」

 ファラさんは僕にアレを抜いて来いと言っている。
 確かに、アレを引き抜く時には男の大事な物が見えてしまうが、僕としても見たいとは思わない。

「早く行きなさい」

 ファラさんはどうあっても行かせる気だろう。
 どうせ断っても行かされるのだから、言い合いをしても無駄である。

「あ~、分かりました。じゃあ行って来ま~す」

 僕は渋々ながら頷いて、その家の人に許可を取る。
 そして家をよじ登り、落ちないようにロープで体を固定して、はさまっているフデの足を手に持った。

「よいしょおおおおおおおお!」

 屋根の上で多少バランスが悪いけど、一応力いっぱい引っ張ってみるのだが、ガッチリ噛み合って簡単には抜けてくれないようだ。
 下を見ても二人は手を貸してはくれなさそうで、僕はもう一度頑張ってみることにした。

「ぐにににににににににににに!」

 僕はグッと力を込めてフデを引っ張ると、つっかえていた物が無くなったようにスポーンと空に舞い上がった。
 上半身はススに塗れ、真っ黒になっている。
 あまりの勢いに思わず手を放してしまったが、空中に投げ出されたフデは、太陽を背にしてピタリと静止した。
 煙突から抜けた衝撃で意識を取り戻したのか?

「我は一体……? 記憶が混濁して思い出せぬ。……ああ、そうだ、我は魔王である。我こそはこの世界に君臨する魔王、インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー也!」

 フデの背後には邪悪なオーラが渦巻き、太陽がのみ込まれているように見える。
 気を失う前に、煙突の角にでも頭を打ち付けたのだろうか?
 昔の記憶がぶり返しているのかもしれない。
 それに、服とか色々はぎ取られたから封印も解けているようだ。

 このままでは魔王として覚醒してしまう。
 そう思った僕は。

「違います、あなたの名前はフデです。忘れたんですか? 自分で名乗ってたじゃないですか」

 なんとか現在の記憶をよみがえらせるワードを教えた。

「貴様、我はそんなおかしな名前では……? ……ん? 言われていた記憶が頭に……? 我はフデなのか?」

 フデは記憶が混乱している。

「そうです、あなたは魔王じゃありません。ケモネハウスというボロ小屋に住んで、草を食い漁るフデさんです!」

 僕は忘れたくても忘れられない、今現在の生活状況を教えた。

「……ち、違う、我は魔王で、そんな生活はただの夢だ! 違うもん! だって違うんだもん! 我は貧乏じゃないんだもん!」

 じつは記憶が戻っていても認めたくないだけかもしれない。

「フデさん、そんなフルチンで言ってたって威厳なんてありませんよ! もう記憶も戻っているんでしょう? 下におりて来て降伏してください!」

 僕は確信してそう言ったんだけど。

「うるさああああああああああああああああい!」

「うわああああああああ!」

 フデは僕に魔力弾を撃ち出した。
 僕は何とか避けたのだけど、家の屋根は爆散して大穴が開いている。
 これが本来の魔王の力なのかと恐怖を覚えるが、今では立派な貧乏人だ。

「フデさん、落ち着いてください。もう暴れないならギルドで食べ物をくれるって約束したじゃないですか! 新しい住処も、お金も貰えるって言うのに、投げ捨てちゃっていいんですか!? また草やら虫やらを食べる生活に戻っても良いんですかぁ!?」

 僕は説得を続けながら地面におりて行く。

「我は……いや俺は、フデ……いやフデじゃないし! 俺はジョージだって言ってるだろうがああああああああああああああ!」

 どうやら、フデの暴走は止まらないらしい。
 邪悪そうな魔力弾を、所かまわず村の中に撃ち放った。
 その攻撃のために、村の中は更に凄惨な光景へと変わっていく。

「あぶな!」

 僕はギリギリで回避し。

「ホワわ!」

 ミアさんは何事もなかったように首を動かすだけで躱し。

「うわ、もう攻撃した方がいいんじゃないの? 防御力も無さそうだし」

 ファラさんはもう投げナイフでも使おうとしている。
 しかし落ちぶれて草をもしゃもしゃしている魔王であっても、一応魔王は魔王なのだ。
 攻撃してターゲットが絞られたら、僕達に勝ち目があるかどうか分からない。

「まだ攻撃はしない方がいいです。とりあえず逃げながら結界を作ってみましょう」

 だから僕は、先にやれることをやっとこうと提案した。

「……はぁ、一撃で倒せるか分からないし、それがいいかしらね」

「ヨメ、ワカッた!」

 二人を納得させて僕達は村の中を移動して行く。
 何とか後ろから迫る魔力弾を避け続け、出来る限り巨大なものにしようと、一本ずつ鉄棒を地面に突き立てた。


 結界の為の鉄棒をたてようと移動しようとした時、村の民家の扉がドカンと開く。
 四つ、五つ、六つ、七つと、次々に開き。

『俺の家を壊したのはどいつだあああああああああ!』

 その中からは、武装した村人達が現れた。
 手には手入れされた剣や槍、弓とか色々な物を持っている。
 自分達の家を壊されまくって、怒りの頂点に達したらしい。

 そして先ほど挨拶した家の人もである。
 唯一と言ってもいいぐらい無傷だったのだが、フデに屋根を爆散させられて怒ったようだ。
 その男の人が僕達の姿を見て、剣を引き抜きながら走って来ていた。
 顔がすごく怖い。

「君達がやったんじゃないよねぇ?」

 その男の人が、キランと輝く刃を向けて、斬殺しそうな笑顔を向けている。

『いえいえ違います、あそこの人です』

 僕とファラさんは上空のフデを指さした。

「アッチ、アッち!」

 ミアさんも続いてピョンと跳ねる。

「ああ、そう。……じゃあ、行ったらああああああああああああ!」

 ただの村人のはずのその人は、ドーンと空に飛び上がり向かって行く。
 だがその人だけではない。

「能力を貰ったのが自分だけだと思うなコラァ!」

 他の人達も魔法を撃ったり。

「お前が魔王だとぉ? ふざけんな、俺がなる予定だったのに!」

 斬撃を飛ばしたり。

「魔王だぁ? 勇者は俺だ!」

 弓で矢を連射したりと、他の村人達もあり得ない戦闘能力を発揮していた。
 フデと拮抗するぐらいの戦闘能力があるとは、異世界から集まって来たというのは本当だったり?
 護る必要もないなら気にする必要もないだろう。

 僕達は戦いの様子を見ながら一本目の鉄棒を打ち込んだ。
 しかし時間が経つ度に、村人の方が押され始めている。
 何人かがやられ、同じ村人から回復を受けてた。
 もうちょっと急いだほうがいいかも知れない。

 手分けして結界を作れれば早いのだけど、残念ながら自分の手でやらないとできないのである。
 僕達は走って鉄棒を設置し、大きな結界を完成させた。
 だがその間にも村人達はフデに半数を打ち倒され、風前の灯火になっている。

「さて、今回は……」

 結界を作ったはいいけど、何を使うべきか。
 何時もならどの魔法を狙うか悩むところだけど、今回ばかりは決まっている。
 その数値も、魔王と戦うに充分な数値になるはずだ。

「結界の内なる生命よ、数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」

 だから僕は、始めて覚えた最初の魔法をこの場で選んだ。
 そして現れ出た生命の数は、二千四百三十五である。
 フデの数値は調べ尽くしてあるし、それ以上に自分を強化するだけだ。

 千二百を力に、六百を速度に回す。
 三百三十五を魔力防御へ回し、残り三百を秒数へ。

「じゃあ、行って来まーす!」

「いってらっしゃい」

「ヨメ、ガンバれ!」

 僕はファラさんとミアさんに告げて、たった一歩を踏み込んだ。
 キュゥゥゥゥゥぅゥゥゥゥゥン……っと、高音を立て、フデと戦おうとしていた村人の横を通り過ぎる。
 そして一気に迫ったフデの目の前。

「だらあああああああああああ!」

 気付かせることもせずにその顔を殴り飛ばした。
 地面にぶつかり転がるが、流石に魔王と言うだけはある。
 ふらっと立ち上がり、焦点を失った目で睨み返して来た。

「ぐはあああああああああああああ!」

 瘴気のような息を吐き出し、体は構わず動き続けている。
 無数の魔弾を撃ち放ち、僕一人を狙い定めているようだ。
 避けることは可能だが、時間は流れ過ぎて行く。

 もう三十秒は経っただろうか?
 五分なんてあっと言う間だ。
 だから魔力弾の中を真っ直ぐ突き進み、フデに向かって拳を振るうことにした。

「てええええええええええええい!」

 体には壁にぶつかったような衝撃が来るが、構わず拳を前方に伸ばす。
 確かに感じる感触に、僕はそのまま振り抜いた。
 吹き飛ばされるフデを見て、やっと殴った確信がえられる。

「ぐふうううう……」

「らあああああああああ!」

 しかし、ダメージを受けながらも立ち上がるフデに、僕は連続攻撃をしかけた。
 バキィっと打ちこんだ蹴りの一撃にも耐え、フデはまたも立ち上がって来る。
 残りは四分か三分半か。
 どんどん減って行く時間に焦りを感じるが、フデもそう長くは持たないだろう。

 僕は攻撃を続けようとするが、フデの体に変化が起こる。
 体には黒煙がまとい付き、黒色の鎧が装着されていく。
 フェイさんが着ていた物に似ているが、もっと豪華で、更に全身を覆い尽くす。
 しかし、元が裸なので、左右に別れた腰当ての部分からはブラブラとした物が見えている。
 触るのは嫌だが、弱点はあそこだ!

「うおおおおおおおおおおお!」

 僕は拳をかたく握り、極限の力を込めて打ち付けた。

「ウギあぐおあぁぁぁイイイイイイぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 究極のダメージを食らい、よく分からない声をあげてフデは両ひざを地に落とす。
 だが僕は攻撃の手を緩めない。
 瀕死のフデに向かって更に拳を打ち下ろす。

「……ちょ、ちょっと待て! もうやんない。もうやんないから! 俺もう気が付いた! 目を覚ましたってええええええええ!」

 フは痛みで目を覚ましたらしい。
 この惨状を生みだしたフデを、普通に許してしまえば僕達に怒りが向くだろう。
 だから僕は、もう気が付かない振りをして、思いっきりぶん殴ることにした。

「成仏してください」

「ぎゃあああああああああああ……」

 僕の一撃に断末魔の悲鳴をあげて倒れるフデ。
 まあ普通に生きているのだけど、これで魔王は退治された。
 村人達も多少気が晴れるんじゃないだろうか?
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