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善意天逆 果て無く黒
魔王様と魔物助け
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★あらすじ。
僕達は魔物使いのテストに町の外へやって来ていた。
まず結界を作って準備を終えると、コーディ君はスライムを操ろうとするのだけど、逆におそいかかれれてしまう。
フデが言うには多少の知能がないと無理ということで、コボルトを選んだ。
しかし探し出したコボルトは、オークに追いかけられている。
オークの方はフデに任せ、コーディ君はコボルトを操ることに成功した。
でもなんか頼まれごとをしたようで、襲われていたコボルトの村を助けることになってしまった。
★
クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)
★
フデには追跡装置も付けられているから、勝手に遠出することは出来ない。
だからスラーさんを説得に行ったのだけど。
「ふむ、まあいいんじゃないですか? 今回はテストですからね。悪い悪くないは、終わってから判断しましょう」
僕はどう説得したものかと悩んでいたけど、スラーさんは案外簡単に受け入れてくれたようだ。
「あ、ありがとう、スラーさん!」
コーディ君がコボルトの子と一緒に頭をさげている。
ちなみにこのコボルトの名前はコギーに決定した。
「ということで誰か人員を出してくれませんか? この二人だけだとすっごく心配なんで」
僕は戦力を出してくれるように、スラーさんにお願いしてみた。
「ライバルよ、俺の力を見くびるなよ? オーク程度今の状態でも何の問題もない!」
しかし元魔王のフデは、自分の力に自信があるようだ。
「フデ君、それはつまり、まだ封印が足りなかったということでしょうか? もう少し厳重に、アリさえ踏めない体にした方が……」
それはスラーさんに突っ込まれ。
「マスター、俺は全然弱いです! オークにもちゃんと負けますから、だから封印をしないでください!」
フデは必死に言い訳をしている。
「ハッハッハ、安心してください、ただの冗談ですよ。あ~、でも今日余っている人員と言えば……」
スラーさんはギルド内を見回し。
「じゃあ外で草むしりをしているディ……」
「ディザリアさん以外でお願いします!」
いきなりババを引かされるようなスラーさんの答えに、僕は速攻で断った。
「ふむ、とはいえ、今は全員出払っていますからねぇ。近場に居るのは確か……ツキコ君が買い出しに行っていたはずです。待っていれば戻って来るのではないですかね?」
「あれ、デッドロックさんは居ないんですか?」
僕は気になって聞いてみるも。
「なんでもミトラの町に行きたいそうで、今日はお休みになっていますよ」
たぶんディーラさんに会いに行ったんだろう。
ツキコさんの心境が気になるが、居ないよりはマシなはずだ。
「そうですか、じゃあここで待たせてもらいますね」
僕達はツキコさんが帰って来るのを待ち、コギーと遊んでいる。
一応魔物なのだけど、コーディ君に従順にしている姿はただの子犬みたいなものだ。
何時の間にか集まって来ていた受付の女性達に、お腹を撫でられたりして『可愛い』なんて言われている。
コギーも、満更でもない雰囲気だ。
でも良いのかそれで?
ここは君達を退治するギルドだぞ?
「……ただいま」
そうこうしている間に、ツキコさんはギルドに戻って来たようだ。
「あ、おかえりなさい、待っていたんですよ」
僕はツキコさんに声をかけたのだけど。
「? ……何しているの?」
なでられているコギーを見て、ためらいもなく腰のカタナを引き抜いた。
あんなに無害そうに振舞っているのに、確実にやる気だ。
デッドロックさんへの怒りをぶつけたいのだろう。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいツキコさん! その子は今の所は無害です! ちょっと新職業のテストしているんで、倒したら駄目ですよ!」
僕は必死に説得をする。
「……あっそう」
ツキコさんは納得してカタナを収めた。
僕はホッと胸を撫で下ろし。
「あのツキコさん、僕と付き合ってくれませんか?」
仕事に同行するように説得してみたのだが。
「……私の趣味じゃないわ。諦めてファラとでもデートしていたら?」
なんか僕は振られてしまったみたいだ。
言葉が足りなかったらしい。
「いやそうじゃなくて、戦力が足りないから僕の仕事に同行してください。このコギー君の村が危ないらしいんですよ!」
僕は未だに撫で続けられているコギー君を指さした。
「……いいことよね?」
魔物を退治することに一片の迷いもないツキコさんである。
まあ魔物を庇うような人ならこんな仕事はしていないだろう。
「いやそうなんですけど、スラーさんには許可をとってあるのでお願いします」
「……じゃあ、私からもお願いがあるわ。あれはコギーじゃなくてクロと呼びなさい」
可愛がられているコギーは、ツキコさんによりクロとして命名された。
そしてクロの首に赤い布を巻きつけ、首輪のようにしている。
さっきまで殺す気だったのに、意外と気に入っているのだろうか?
ちなみに、黒い毛は一切ない。
「えっと、じゃあクロでいいかな?」
コーディ君がコギーを説得し。
「ギャワン!」
「なんか良いみたいだよ?」
簡単に受け入れてくれたので、ツキコさんも同行してくれることになった。
そして準備をした僕達は、クロの案内で南にある森の街道へと連れて行かれる。
道も何も無い森の中へ入って行くのだけど、コボルトの大きさで進める道に入って行くから、僕とフデにとってはすごく障害物が多いのである。
「ぐはぁ! あ、頭が!」
僕が枝に頭をぶつけ。
「ライバルよ、ちゃんと周りを見ないからそういう、ぐはぁあああ!」
フデも同様に別の枝に頭をぶつけ痛がっている。
「だ、だいじょうぶ?」
「コーディ、気にしないで置いて行きましょう。魔王と荷物は滅べばいいのよ」
コーディ君は足をとめてくれているが、ツキコさんは気にしてもくれない。
コーディ君とクロの頭を撫でながら先に進んで行く。
「待ってえええええええ!」
「ちょっと待て、俺を置いて行くなあああ!」
僕とフデは本当に置いて行かれないように、身を低くして追い駆ける。
森の中に入ってずいぶん経つが、危険な獣や魔物は一向に出て来ない。
先頭を進むクロは、それなりの道を熟知しているのだろう。
「ギャワワン!」
「あっ、着いたみたいだよ」
コーディ君はクロの声を聞き、ここが村であると告げている。
よく見ると、枯れ枝を重ねて作った犬小屋のような住居があった。
コボルト達が警戒して顔を出しているが、今の所襲って来る気配はなさそうだ。
やはりクロが仲間になっているからだろうか?
その中から、一体の老コボルトが僕達の前に現れた。
雰囲気からすると長老か何かだろう。
「ギャワワワン」
その長老がクロに声をかけ。
「ギャワワワン!」
何かしらの会話をしているようだ。
全く何を言ってるのか分からないから。
「コーディ君、何を言ってるのかわかりますか?」
コーディ君に聞いてみたのだけど。
「僕クロの言葉しかわかんない。でも僕達のことを話してるみたいだよ」
コーディ君は、操っているクロの言葉しか分からないようだ。
クロが通訳して、それをコーディ君が僕達に伝えることになってしまう。
手間がかかりすぎるし、コーディ君が言葉を理解していないと、おかしな事になってしまいそうだ。
「ギャワワン! ギャワワワワン!」
「うん、わかった」
コーディ君がクロと何度も話を続け、やっと僕達に伝えられた。
「えっとね、近くに出来たオークの集落におそわれているんだって。倒して来てほしいって言ってるよ」
つまり魔物の縄張り争いなのだろう。
僕達人間が関わってしまえば絶対オークに恨まれる。
オークによる人への襲撃が多くなるかもしれない。
まあそうなったらギルドが対応するだろう。
「……ああ、オークを全滅させればいいのよね? フフ、私の気晴らし、付き合ってもらうわよ……」
ツキコさんは、フデなんかよりよっぽど邪悪なオーラを纏い、カタナをチャキチャキさせている。
やる気充分だろう。
「おいライバルよ、あの姉ちゃんなんか怖いんだけど」
そのオーラに、フデも恐れをなしている。
「からかったりすると本当にやられますから注意してください。命が惜しくないなら止めませんけど」
僕はフデに警告を発する。
「充分注意しよう。でもお前の仲間ってそんなのばっかだな……」
「言わないでください、僕だって気にしているんですから」
ギルドの中では、僕のような真面な人が少ないのだ。
ファラさんもギリギリ向う側だろう。
「じゃあとりあえず、この村の中で待ってみましょうか。フデさんもあんまり役にたちそうにないですし」
僕はここを拠点にすることを提案した。
「……まあいいんじゃないの?」
「は、はい」
ツキコさんとコーディ君も頷いたが。
「さっきオークを倒したのを見ていなかったのか? 俺は充分に役に立つぞ。だからマスターに報告する時は……」
フデだけは文句を言って来ている。
「ああはいはい、何度も言わなくてもいいですよ。ちゃんと無駄な人員でしたって言っときますから」
「お~い、それは駄目だ! 絶対やめろ! あとでマスターに何をされるか……うぅ、頭が……」
フデの身に何があったのだろうか?
ちょっと気になるけど、怖いから聞かないでおこう。
★
オークが襲って来る前に、僕は村の中に結界を作り出した。
そして相手の侵入を知らせるようにと、割れやすい小枝を散らばしている。
あとは待つだけだと、ずっと待機しているのだけど。
「……さあクロ、この枝を取って来なさい!」
ツキコさんは落ちていた枝を遠くに投げ、クロを犬扱いしている。
「クロ、頑張って」
多少迷っていたクロも、コーディ君の言葉で走って枝を持って来たりしている。
フデはコボルトを囲み、なにやら講義をしていた。
もちろん操ることも出来ていないし、その言葉も分からないんだろうけど、何故か人気がでているようだ。
訳が分からないけど、これが魔王の力なのかもしれないと微妙に感じていた。
そして僕は、周りのコボルト達から果物や肉のさし入れをもらっていたりする。
何の肉なのかは判断できないが、充分美味いから何の問題もない。
物凄い歓迎っぷりで、何時まででも居たい気さえしてくる。
「ふぅ、お弁当も食べよう」
僕はフデから貰ったお弁当を取り出し、おかずを一つずつ噛みしめて味わい尽くした。
コーディ君さまさまである。
このままオークが出て来ないでくれと願うが、やっぱりそうはいかないらしい。
パキパキと村の端々に仕掛けてあった小枝を踏み抜くオークの足音。
少なくとも四方向に四体は居そうである。
「……やっと来たのね、フフフ……ぶっころす!」
ツキコさんはオークが出てきている一方向に向かって行く。
「オーク如きが、この魔王に敵うとでも……ライバルよ、今のは報告しないでくれ。俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ」
フデは魔王として活躍することを恐れているようだ。
「あ~、はいはい。早く行って来てください。活躍しなかったらそのことを報告しますからね」
「ああ、俺に任せろ!」
僕の言葉に乗り、フデは誰も居ない所へ動き出す。
「く、クロ、行くよ」
「ギャワン!」
コーディ君もクロを連れて動き出すが、オークとのレベル差は相当なものだ。
流石に一人だけで任せる訳には行かないだろう。
「コーディ君、僕もそちらに行きます。無理をしないでたたかいましょう!」
「う、うん」
僕も同行し、一緒にオークの下へ駆けて行く。
もう一方は村のコボルト達に任せるしかないだろう。
「さて、来ましたよ」
しかし、僕達の下に来たオークは一体だけでは無かったようだ。
ワラワラとわき出て来たのは六体のオーク達。
コーディ君を護りながら戦うのは無理だと、能力の使用を決定した。
使うのは。
「結界の内にいる仲間の値を集めよ。……アディション・フィールド!」
僕が選んだのは、長期戦に優位なものである。
使うのは力と魔力で、たった二つだけだが、どうやらクロも仲間にカウントされているようだ。
四人の能力が変換されて、村の中に百六十の数値が落ちた。
そして僕は、百を力に回し、六十を速度へ変換する。
「てええええええええええい!」
村に踏み入れた最初の一体を殴りつけ、後方に居る三体にぶつけてやった。
「行くよ、クロ!」
「ギャワン!」
コーディ君はクロを操り、余った二体の内の一体へ向かう。
連携攻撃がオークに直撃するも、相手は倒れる気配がない。
「そーれえええええええ!」
僕は残されたもう一体を殴りつけ、反撃される前にぶつけてやった。
しかしどうやら、ぶつけただけでは倒せないようだ。
先ほどの三体と、今ぶつけた一体が動き出そうとしている。
まあ殴った奴は動かないようだが。
「コーディ君、その一体に攻撃を。僕は三体の方を相手にします。でも敵が起き上がるようなら逃げてください!」
僕はコーディ君に指示を出す。
「う、うん。やろう、クロ!」
「ギャワワン!」
太った体でノロノロと起き上がろうとしていたオークに、コーディ君とクロが襲い掛かる。
僕は他の三体に向かい。
「キイイイイイイイイイック!」
と、蹴りを放った。
それで一体を倒したのだが。
「うわぁ、来た」
コーディ君の方が少し不利みたいだ。
「てえええええええええい!」
僕は急いで戻り、コーディ君を襲っていた一体を後ろから叩き伏せた。
「あ、ありがとう」
「お礼は食べ物でいいです! 安くてもいいですけど、出来る限り美味しい物をおねがいします! あと油断はしないでくださいよ!」
僕は自分の欲望を小さな子供にぶつける。
「う、うん」
コーディ君は頷いているが、今は期待していない。
無事成長したその日には、きちんとおごって貰おう。
「おっと、話している暇はなさそうですね。オークが来ましたよ」
「わ、わかった。クロ!」
「ギャワン!」
オークの二体が襲い掛かって来ると、僕は一体を相手にし、コーディ君が残りの一体を引き受けている。
僕は向かって来る一体に集中し。
「とりゃああああああああ!」
二体を一気に叩きのめして、コーディ君が相手している最後の一体の下へ向かった。
「クロ!」
「ギャワワン!」
コーディ君は、オークの攻撃を避け、背後からはクロが攻撃を仕掛けている。
クロに攻撃が行けばコーディ君が攻撃をして、よく戦っていると思う。
随分戦いにも慣れてきているようだ。
僕が力を奪ってしまったからダメージとしてはあまりないが、連携としては相当なものだろう。
このまま見守っていてもいいんだけど、他の場所は?
「フフ……死ねええええええ!」
ツキコさんの方は問題がなさそうで、術と言われる力を振るい、大群を相手している。
で、フデの方は……。
「その程度の攻撃、俺に効くはずがないだろう! どれ程の攻撃であっても……あいたッ、後頭部はやめろ! ちょっ、待て、囲むんじゃない! 痛、痛いって! あああああ、うっとうしい!」
流石に元魔王らしく、頑丈さは相当にあるようだ。
囲んでいたオークを吹き飛ばし、攻撃するとまた囲まれて吹き飛ばすを繰り返している。
あそこはまあどうでもいいだろう。
そしてもう一方の村人が護っている場所だが、どうやら瓦解し始めているようだ。
あそこばかりは、そう時間は残されていないらしい。
だから僕は急ぎ倒すことを決め。
「とおおお!」
僕は最後の一体に、横から跳び蹴りを食らわせて撃退した。
「コーディ君、あの場所に向かいますよ。何度も言いますけど、無理はしないでくださいね」
「う、うん」
僕達は村人が戦っている場所を指さし、コーディ君とクロを連れて、一緒に向かって行った。
★
どうやら僕達が戦っていた場所が一番小規模だったようで、こちらは十体を超えるオーク達があふれ出て来ていた。
コボルト達は半数を倒され、囲まれてしまっている。
僕は思い切って走り。
「てええええええい!」
オークの一体を蹴り飛ばすと、ドミノ倒しのように倒れていく。
中には仲間の武器で倒されてしまうものも出ているが、全部を倒すのには無理があったようだ。
それでも開いた隙間から大半のコボルトは逃げて行くが、取り残されてしまった者達もいるらしい。
足の遅い長老コボルトと、それに付き添うメスコボルトだ。
うん、たぶんメス。
「ギャワワン!」
それを見て、命令もなしにクロが助けに入ったようだ。
オークの攻撃を防ごうと、僕のように跳び蹴りをしている。
「あ、クロ!」
もしかしたら知り合いや家族なのかもしれないが、コーディ君までそれを追い掛け行ってしまう。
「コーディ君、そこに行ったら! あ~もうしょうがない!」
これは僕も行かなければならないだろう。
しかし、次々に起き上がるオークに、危険な感じが漂っている。
力と速度しか上げてないから、武器に刺されれば死んでしまう。
一人なら逃げ切ることも可能だけど、コーディ君とクロはやる気である。
「とりあえず、死ぬよりはマシでしょう。何とか着地してくださいよ? そおおおおおい!」
僕は村長とメスコボルトを手で掴み、オークを越えるようにポーンと投げ捨てた。
ちょっと心配だったけど、メスコボルトだけでなく村長も無事に着地したようだ。
でも着地の際、村長は腰をやってしまったらしい。
メスコボルトに助けられている。
まあ生きているならどうでもいい。
問題はオークに囲まれている僕達の方だ。
もう立ち上がって武器を構えられている。
このまま突破はむずかしいだろう。
だが、何か手はないかと考えていた僕に、頼もしき助っ人が現れたようだ。
「助けが必要なようだなライバルよ。俺が助けに来てやったぞ」
僕達を囲んだオークを突破し、フデが駆け付けてくれた。
だから僕は。
「じゃあ任せま~す!」
っと、その隙間からコーディ君の手を引き、クロを連れて脱出して行った。
「ちょっ、えっ!? おいいいいいいいい!」
フデは僕達の代わりに囲まれて、オークに襲われようとしている。
まあ頑丈だし、死ぬこともないだろう。
あそこはフデに任せればいいが、こちらも追っ手が三体来ているようだ。
しかしそのぐらいなら。
「てええええい!」
「クロ!」
「ギャワン!」
僕とコーディ君、クロも手伝って、オークの三体を撃退した。
その間にも自分の相手を倒し切ったツキコさんが、フデの下へ向かって行く。
もうこうなれば勝ったようなものだ。
「……斬殺!」
ツキコさんにより、無残なスプラッターが形成されている。
そんな光景に、コボルト達も怯えてしまった。
「いたああああ! お前俺にまでぶつけるな。すごい痛いんだけど!」
稀にフデにもぶつけられているのだけど、その体は斬り裂けないようだ。
ギルドから、隙があったらやって来いとか言われていたり?
あり得なくはないが……。
「これで最後だあああああ!」
しばらくしてツキコさんの手によりオークは全滅されたのだけど。
「ケ、ケツはやめろおおおおおおおお! はぁん……」
ツキコさんの手は止まらず、フデのケツを狙い続けている。
僕にとっては全然なんにも関係無いから、好きなだけやってもらえばいいだろう。
だがオークの襲撃は、まだ終わっていなかったらしい。
村の端からバキバキィっと小枝の割れる音が聞こえて来る。
「ブギャアア、フギイイイイイイイイ!」
一体だけのようだけど、普通のオークよりも三倍は大きな個体だ。
獣の皮を使ったマントや、何かの頭蓋を使った冠のようなものを頭にかぶっている。
手には大きなナタを持ち、体はドス黒く変色してた黒豚のようだ。
こいつがオークの王なのだろうか?
「こいつを倒せば終わりみたいですね。さあやっちゃってくださいフデさん」
僕はフデに指示を出したのだけど。
「ケ、ケツが痛くて動けんぞ……」
「……使えない魔王だわ。フンッ!」
「ギャアアアアアアア!」
フデはツキコさんにより、ケツにカタナを突き立てられた。
「フデさん、役に立たなかったと報告を……」
僕は試しにスラーさんに伝えることを言うが。
「やめて! 本当にやめてえええええ、あああああ、尻が痛くて動けないいいいい!」
フデは立ち上がろうと頑張っているが、尻の痛みで立てなくなっているようだ。
戦力が減ってしまったけど、もう三人でやるしかないだろう。
「兎に角やるしかないでしょう。コーディ君、先ほどよりも気を張ってください。捕まっても攻撃されても死ぬぐらいに思っていてくださいね!」
「う、うん」
僕の言葉にコーディ君は頷いた。
「ツキコさん、攻撃は任せます。僕はこれで防御しますから!」
僕は尻を押さえているフデを持ち上げた。
「おいいいいい!」
フデは嫌がっているが、その頑丈さは盾として使えるレベルなのだ。
防具の無い僕には丁度良い物なのである。
「……じゃあ任せるわ」
ツキコさんもうなずいている。
「ライバルよ、マジでやる気か!? 俺の身がどうなってもいいのか!?」
元魔王のくせに黒豚に恐怖しているようだ。
「はい、僕の身が危ういんで使わせて貰います。頑張って防いでください! さあ行きますよ!」
でも僕はためらわない。
「きゃああああああああああ!?」
フデの悲鳴が響き、戦いの準備が整った。
「ブギャアアアア、ピギィイイイイイイイイ!」
大ナタを振り上げる黒豚の王に、僕はフデを振り上げる。
僕達は魔物使いのテストに町の外へやって来ていた。
まず結界を作って準備を終えると、コーディ君はスライムを操ろうとするのだけど、逆におそいかかれれてしまう。
フデが言うには多少の知能がないと無理ということで、コボルトを選んだ。
しかし探し出したコボルトは、オークに追いかけられている。
オークの方はフデに任せ、コーディ君はコボルトを操ることに成功した。
でもなんか頼まれごとをしたようで、襲われていたコボルトの村を助けることになってしまった。
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クー・ライズ・ライト (僕)
グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
ランズ・ライズ・ライト (父)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)
★
フデには追跡装置も付けられているから、勝手に遠出することは出来ない。
だからスラーさんを説得に行ったのだけど。
「ふむ、まあいいんじゃないですか? 今回はテストですからね。悪い悪くないは、終わってから判断しましょう」
僕はどう説得したものかと悩んでいたけど、スラーさんは案外簡単に受け入れてくれたようだ。
「あ、ありがとう、スラーさん!」
コーディ君がコボルトの子と一緒に頭をさげている。
ちなみにこのコボルトの名前はコギーに決定した。
「ということで誰か人員を出してくれませんか? この二人だけだとすっごく心配なんで」
僕は戦力を出してくれるように、スラーさんにお願いしてみた。
「ライバルよ、俺の力を見くびるなよ? オーク程度今の状態でも何の問題もない!」
しかし元魔王のフデは、自分の力に自信があるようだ。
「フデ君、それはつまり、まだ封印が足りなかったということでしょうか? もう少し厳重に、アリさえ踏めない体にした方が……」
それはスラーさんに突っ込まれ。
「マスター、俺は全然弱いです! オークにもちゃんと負けますから、だから封印をしないでください!」
フデは必死に言い訳をしている。
「ハッハッハ、安心してください、ただの冗談ですよ。あ~、でも今日余っている人員と言えば……」
スラーさんはギルド内を見回し。
「じゃあ外で草むしりをしているディ……」
「ディザリアさん以外でお願いします!」
いきなりババを引かされるようなスラーさんの答えに、僕は速攻で断った。
「ふむ、とはいえ、今は全員出払っていますからねぇ。近場に居るのは確か……ツキコ君が買い出しに行っていたはずです。待っていれば戻って来るのではないですかね?」
「あれ、デッドロックさんは居ないんですか?」
僕は気になって聞いてみるも。
「なんでもミトラの町に行きたいそうで、今日はお休みになっていますよ」
たぶんディーラさんに会いに行ったんだろう。
ツキコさんの心境が気になるが、居ないよりはマシなはずだ。
「そうですか、じゃあここで待たせてもらいますね」
僕達はツキコさんが帰って来るのを待ち、コギーと遊んでいる。
一応魔物なのだけど、コーディ君に従順にしている姿はただの子犬みたいなものだ。
何時の間にか集まって来ていた受付の女性達に、お腹を撫でられたりして『可愛い』なんて言われている。
コギーも、満更でもない雰囲気だ。
でも良いのかそれで?
ここは君達を退治するギルドだぞ?
「……ただいま」
そうこうしている間に、ツキコさんはギルドに戻って来たようだ。
「あ、おかえりなさい、待っていたんですよ」
僕はツキコさんに声をかけたのだけど。
「? ……何しているの?」
なでられているコギーを見て、ためらいもなく腰のカタナを引き抜いた。
あんなに無害そうに振舞っているのに、確実にやる気だ。
デッドロックさんへの怒りをぶつけたいのだろう。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいツキコさん! その子は今の所は無害です! ちょっと新職業のテストしているんで、倒したら駄目ですよ!」
僕は必死に説得をする。
「……あっそう」
ツキコさんは納得してカタナを収めた。
僕はホッと胸を撫で下ろし。
「あのツキコさん、僕と付き合ってくれませんか?」
仕事に同行するように説得してみたのだが。
「……私の趣味じゃないわ。諦めてファラとでもデートしていたら?」
なんか僕は振られてしまったみたいだ。
言葉が足りなかったらしい。
「いやそうじゃなくて、戦力が足りないから僕の仕事に同行してください。このコギー君の村が危ないらしいんですよ!」
僕は未だに撫で続けられているコギー君を指さした。
「……いいことよね?」
魔物を退治することに一片の迷いもないツキコさんである。
まあ魔物を庇うような人ならこんな仕事はしていないだろう。
「いやそうなんですけど、スラーさんには許可をとってあるのでお願いします」
「……じゃあ、私からもお願いがあるわ。あれはコギーじゃなくてクロと呼びなさい」
可愛がられているコギーは、ツキコさんによりクロとして命名された。
そしてクロの首に赤い布を巻きつけ、首輪のようにしている。
さっきまで殺す気だったのに、意外と気に入っているのだろうか?
ちなみに、黒い毛は一切ない。
「えっと、じゃあクロでいいかな?」
コーディ君がコギーを説得し。
「ギャワン!」
「なんか良いみたいだよ?」
簡単に受け入れてくれたので、ツキコさんも同行してくれることになった。
そして準備をした僕達は、クロの案内で南にある森の街道へと連れて行かれる。
道も何も無い森の中へ入って行くのだけど、コボルトの大きさで進める道に入って行くから、僕とフデにとってはすごく障害物が多いのである。
「ぐはぁ! あ、頭が!」
僕が枝に頭をぶつけ。
「ライバルよ、ちゃんと周りを見ないからそういう、ぐはぁあああ!」
フデも同様に別の枝に頭をぶつけ痛がっている。
「だ、だいじょうぶ?」
「コーディ、気にしないで置いて行きましょう。魔王と荷物は滅べばいいのよ」
コーディ君は足をとめてくれているが、ツキコさんは気にしてもくれない。
コーディ君とクロの頭を撫でながら先に進んで行く。
「待ってえええええええ!」
「ちょっと待て、俺を置いて行くなあああ!」
僕とフデは本当に置いて行かれないように、身を低くして追い駆ける。
森の中に入ってずいぶん経つが、危険な獣や魔物は一向に出て来ない。
先頭を進むクロは、それなりの道を熟知しているのだろう。
「ギャワワン!」
「あっ、着いたみたいだよ」
コーディ君はクロの声を聞き、ここが村であると告げている。
よく見ると、枯れ枝を重ねて作った犬小屋のような住居があった。
コボルト達が警戒して顔を出しているが、今の所襲って来る気配はなさそうだ。
やはりクロが仲間になっているからだろうか?
その中から、一体の老コボルトが僕達の前に現れた。
雰囲気からすると長老か何かだろう。
「ギャワワワン」
その長老がクロに声をかけ。
「ギャワワワン!」
何かしらの会話をしているようだ。
全く何を言ってるのか分からないから。
「コーディ君、何を言ってるのかわかりますか?」
コーディ君に聞いてみたのだけど。
「僕クロの言葉しかわかんない。でも僕達のことを話してるみたいだよ」
コーディ君は、操っているクロの言葉しか分からないようだ。
クロが通訳して、それをコーディ君が僕達に伝えることになってしまう。
手間がかかりすぎるし、コーディ君が言葉を理解していないと、おかしな事になってしまいそうだ。
「ギャワワン! ギャワワワワン!」
「うん、わかった」
コーディ君がクロと何度も話を続け、やっと僕達に伝えられた。
「えっとね、近くに出来たオークの集落におそわれているんだって。倒して来てほしいって言ってるよ」
つまり魔物の縄張り争いなのだろう。
僕達人間が関わってしまえば絶対オークに恨まれる。
オークによる人への襲撃が多くなるかもしれない。
まあそうなったらギルドが対応するだろう。
「……ああ、オークを全滅させればいいのよね? フフ、私の気晴らし、付き合ってもらうわよ……」
ツキコさんは、フデなんかよりよっぽど邪悪なオーラを纏い、カタナをチャキチャキさせている。
やる気充分だろう。
「おいライバルよ、あの姉ちゃんなんか怖いんだけど」
そのオーラに、フデも恐れをなしている。
「からかったりすると本当にやられますから注意してください。命が惜しくないなら止めませんけど」
僕はフデに警告を発する。
「充分注意しよう。でもお前の仲間ってそんなのばっかだな……」
「言わないでください、僕だって気にしているんですから」
ギルドの中では、僕のような真面な人が少ないのだ。
ファラさんもギリギリ向う側だろう。
「じゃあとりあえず、この村の中で待ってみましょうか。フデさんもあんまり役にたちそうにないですし」
僕はここを拠点にすることを提案した。
「……まあいいんじゃないの?」
「は、はい」
ツキコさんとコーディ君も頷いたが。
「さっきオークを倒したのを見ていなかったのか? 俺は充分に役に立つぞ。だからマスターに報告する時は……」
フデだけは文句を言って来ている。
「ああはいはい、何度も言わなくてもいいですよ。ちゃんと無駄な人員でしたって言っときますから」
「お~い、それは駄目だ! 絶対やめろ! あとでマスターに何をされるか……うぅ、頭が……」
フデの身に何があったのだろうか?
ちょっと気になるけど、怖いから聞かないでおこう。
★
オークが襲って来る前に、僕は村の中に結界を作り出した。
そして相手の侵入を知らせるようにと、割れやすい小枝を散らばしている。
あとは待つだけだと、ずっと待機しているのだけど。
「……さあクロ、この枝を取って来なさい!」
ツキコさんは落ちていた枝を遠くに投げ、クロを犬扱いしている。
「クロ、頑張って」
多少迷っていたクロも、コーディ君の言葉で走って枝を持って来たりしている。
フデはコボルトを囲み、なにやら講義をしていた。
もちろん操ることも出来ていないし、その言葉も分からないんだろうけど、何故か人気がでているようだ。
訳が分からないけど、これが魔王の力なのかもしれないと微妙に感じていた。
そして僕は、周りのコボルト達から果物や肉のさし入れをもらっていたりする。
何の肉なのかは判断できないが、充分美味いから何の問題もない。
物凄い歓迎っぷりで、何時まででも居たい気さえしてくる。
「ふぅ、お弁当も食べよう」
僕はフデから貰ったお弁当を取り出し、おかずを一つずつ噛みしめて味わい尽くした。
コーディ君さまさまである。
このままオークが出て来ないでくれと願うが、やっぱりそうはいかないらしい。
パキパキと村の端々に仕掛けてあった小枝を踏み抜くオークの足音。
少なくとも四方向に四体は居そうである。
「……やっと来たのね、フフフ……ぶっころす!」
ツキコさんはオークが出てきている一方向に向かって行く。
「オーク如きが、この魔王に敵うとでも……ライバルよ、今のは報告しないでくれ。俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ」
フデは魔王として活躍することを恐れているようだ。
「あ~、はいはい。早く行って来てください。活躍しなかったらそのことを報告しますからね」
「ああ、俺に任せろ!」
僕の言葉に乗り、フデは誰も居ない所へ動き出す。
「く、クロ、行くよ」
「ギャワン!」
コーディ君もクロを連れて動き出すが、オークとのレベル差は相当なものだ。
流石に一人だけで任せる訳には行かないだろう。
「コーディ君、僕もそちらに行きます。無理をしないでたたかいましょう!」
「う、うん」
僕も同行し、一緒にオークの下へ駆けて行く。
もう一方は村のコボルト達に任せるしかないだろう。
「さて、来ましたよ」
しかし、僕達の下に来たオークは一体だけでは無かったようだ。
ワラワラとわき出て来たのは六体のオーク達。
コーディ君を護りながら戦うのは無理だと、能力の使用を決定した。
使うのは。
「結界の内にいる仲間の値を集めよ。……アディション・フィールド!」
僕が選んだのは、長期戦に優位なものである。
使うのは力と魔力で、たった二つだけだが、どうやらクロも仲間にカウントされているようだ。
四人の能力が変換されて、村の中に百六十の数値が落ちた。
そして僕は、百を力に回し、六十を速度へ変換する。
「てええええええええええい!」
村に踏み入れた最初の一体を殴りつけ、後方に居る三体にぶつけてやった。
「行くよ、クロ!」
「ギャワン!」
コーディ君はクロを操り、余った二体の内の一体へ向かう。
連携攻撃がオークに直撃するも、相手は倒れる気配がない。
「そーれえええええええ!」
僕は残されたもう一体を殴りつけ、反撃される前にぶつけてやった。
しかしどうやら、ぶつけただけでは倒せないようだ。
先ほどの三体と、今ぶつけた一体が動き出そうとしている。
まあ殴った奴は動かないようだが。
「コーディ君、その一体に攻撃を。僕は三体の方を相手にします。でも敵が起き上がるようなら逃げてください!」
僕はコーディ君に指示を出す。
「う、うん。やろう、クロ!」
「ギャワワン!」
太った体でノロノロと起き上がろうとしていたオークに、コーディ君とクロが襲い掛かる。
僕は他の三体に向かい。
「キイイイイイイイイイック!」
と、蹴りを放った。
それで一体を倒したのだが。
「うわぁ、来た」
コーディ君の方が少し不利みたいだ。
「てえええええええええい!」
僕は急いで戻り、コーディ君を襲っていた一体を後ろから叩き伏せた。
「あ、ありがとう」
「お礼は食べ物でいいです! 安くてもいいですけど、出来る限り美味しい物をおねがいします! あと油断はしないでくださいよ!」
僕は自分の欲望を小さな子供にぶつける。
「う、うん」
コーディ君は頷いているが、今は期待していない。
無事成長したその日には、きちんとおごって貰おう。
「おっと、話している暇はなさそうですね。オークが来ましたよ」
「わ、わかった。クロ!」
「ギャワン!」
オークの二体が襲い掛かって来ると、僕は一体を相手にし、コーディ君が残りの一体を引き受けている。
僕は向かって来る一体に集中し。
「とりゃああああああああ!」
二体を一気に叩きのめして、コーディ君が相手している最後の一体の下へ向かった。
「クロ!」
「ギャワワン!」
コーディ君は、オークの攻撃を避け、背後からはクロが攻撃を仕掛けている。
クロに攻撃が行けばコーディ君が攻撃をして、よく戦っていると思う。
随分戦いにも慣れてきているようだ。
僕が力を奪ってしまったからダメージとしてはあまりないが、連携としては相当なものだろう。
このまま見守っていてもいいんだけど、他の場所は?
「フフ……死ねええええええ!」
ツキコさんの方は問題がなさそうで、術と言われる力を振るい、大群を相手している。
で、フデの方は……。
「その程度の攻撃、俺に効くはずがないだろう! どれ程の攻撃であっても……あいたッ、後頭部はやめろ! ちょっ、待て、囲むんじゃない! 痛、痛いって! あああああ、うっとうしい!」
流石に元魔王らしく、頑丈さは相当にあるようだ。
囲んでいたオークを吹き飛ばし、攻撃するとまた囲まれて吹き飛ばすを繰り返している。
あそこはまあどうでもいいだろう。
そしてもう一方の村人が護っている場所だが、どうやら瓦解し始めているようだ。
あそこばかりは、そう時間は残されていないらしい。
だから僕は急ぎ倒すことを決め。
「とおおお!」
僕は最後の一体に、横から跳び蹴りを食らわせて撃退した。
「コーディ君、あの場所に向かいますよ。何度も言いますけど、無理はしないでくださいね」
「う、うん」
僕達は村人が戦っている場所を指さし、コーディ君とクロを連れて、一緒に向かって行った。
★
どうやら僕達が戦っていた場所が一番小規模だったようで、こちらは十体を超えるオーク達があふれ出て来ていた。
コボルト達は半数を倒され、囲まれてしまっている。
僕は思い切って走り。
「てええええええい!」
オークの一体を蹴り飛ばすと、ドミノ倒しのように倒れていく。
中には仲間の武器で倒されてしまうものも出ているが、全部を倒すのには無理があったようだ。
それでも開いた隙間から大半のコボルトは逃げて行くが、取り残されてしまった者達もいるらしい。
足の遅い長老コボルトと、それに付き添うメスコボルトだ。
うん、たぶんメス。
「ギャワワン!」
それを見て、命令もなしにクロが助けに入ったようだ。
オークの攻撃を防ごうと、僕のように跳び蹴りをしている。
「あ、クロ!」
もしかしたら知り合いや家族なのかもしれないが、コーディ君までそれを追い掛け行ってしまう。
「コーディ君、そこに行ったら! あ~もうしょうがない!」
これは僕も行かなければならないだろう。
しかし、次々に起き上がるオークに、危険な感じが漂っている。
力と速度しか上げてないから、武器に刺されれば死んでしまう。
一人なら逃げ切ることも可能だけど、コーディ君とクロはやる気である。
「とりあえず、死ぬよりはマシでしょう。何とか着地してくださいよ? そおおおおおい!」
僕は村長とメスコボルトを手で掴み、オークを越えるようにポーンと投げ捨てた。
ちょっと心配だったけど、メスコボルトだけでなく村長も無事に着地したようだ。
でも着地の際、村長は腰をやってしまったらしい。
メスコボルトに助けられている。
まあ生きているならどうでもいい。
問題はオークに囲まれている僕達の方だ。
もう立ち上がって武器を構えられている。
このまま突破はむずかしいだろう。
だが、何か手はないかと考えていた僕に、頼もしき助っ人が現れたようだ。
「助けが必要なようだなライバルよ。俺が助けに来てやったぞ」
僕達を囲んだオークを突破し、フデが駆け付けてくれた。
だから僕は。
「じゃあ任せま~す!」
っと、その隙間からコーディ君の手を引き、クロを連れて脱出して行った。
「ちょっ、えっ!? おいいいいいいいい!」
フデは僕達の代わりに囲まれて、オークに襲われようとしている。
まあ頑丈だし、死ぬこともないだろう。
あそこはフデに任せればいいが、こちらも追っ手が三体来ているようだ。
しかしそのぐらいなら。
「てええええい!」
「クロ!」
「ギャワン!」
僕とコーディ君、クロも手伝って、オークの三体を撃退した。
その間にも自分の相手を倒し切ったツキコさんが、フデの下へ向かって行く。
もうこうなれば勝ったようなものだ。
「……斬殺!」
ツキコさんにより、無残なスプラッターが形成されている。
そんな光景に、コボルト達も怯えてしまった。
「いたああああ! お前俺にまでぶつけるな。すごい痛いんだけど!」
稀にフデにもぶつけられているのだけど、その体は斬り裂けないようだ。
ギルドから、隙があったらやって来いとか言われていたり?
あり得なくはないが……。
「これで最後だあああああ!」
しばらくしてツキコさんの手によりオークは全滅されたのだけど。
「ケ、ケツはやめろおおおおおおおお! はぁん……」
ツキコさんの手は止まらず、フデのケツを狙い続けている。
僕にとっては全然なんにも関係無いから、好きなだけやってもらえばいいだろう。
だがオークの襲撃は、まだ終わっていなかったらしい。
村の端からバキバキィっと小枝の割れる音が聞こえて来る。
「ブギャアア、フギイイイイイイイイ!」
一体だけのようだけど、普通のオークよりも三倍は大きな個体だ。
獣の皮を使ったマントや、何かの頭蓋を使った冠のようなものを頭にかぶっている。
手には大きなナタを持ち、体はドス黒く変色してた黒豚のようだ。
こいつがオークの王なのだろうか?
「こいつを倒せば終わりみたいですね。さあやっちゃってくださいフデさん」
僕はフデに指示を出したのだけど。
「ケ、ケツが痛くて動けんぞ……」
「……使えない魔王だわ。フンッ!」
「ギャアアアアアアア!」
フデはツキコさんにより、ケツにカタナを突き立てられた。
「フデさん、役に立たなかったと報告を……」
僕は試しにスラーさんに伝えることを言うが。
「やめて! 本当にやめてえええええ、あああああ、尻が痛くて動けないいいいい!」
フデは立ち上がろうと頑張っているが、尻の痛みで立てなくなっているようだ。
戦力が減ってしまったけど、もう三人でやるしかないだろう。
「兎に角やるしかないでしょう。コーディ君、先ほどよりも気を張ってください。捕まっても攻撃されても死ぬぐらいに思っていてくださいね!」
「う、うん」
僕の言葉にコーディ君は頷いた。
「ツキコさん、攻撃は任せます。僕はこれで防御しますから!」
僕は尻を押さえているフデを持ち上げた。
「おいいいいい!」
フデは嫌がっているが、その頑丈さは盾として使えるレベルなのだ。
防具の無い僕には丁度良い物なのである。
「……じゃあ任せるわ」
ツキコさんもうなずいている。
「ライバルよ、マジでやる気か!? 俺の身がどうなってもいいのか!?」
元魔王のくせに黒豚に恐怖しているようだ。
「はい、僕の身が危ういんで使わせて貰います。頑張って防いでください! さあ行きますよ!」
でも僕はためらわない。
「きゃああああああああああ!?」
フデの悲鳴が響き、戦いの準備が整った。
「ブギャアアアア、ピギィイイイイイイイイ!」
大ナタを振り上げる黒豚の王に、僕はフデを振り上げる。
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