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秀典

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善意天逆 果て無く黒

魔王様と魔物助け

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★あらすじ。
 僕達は魔物使いのテストに町の外へやって来ていた。
 まず結界を作って準備を終えると、コーディ君はスライムを操ろうとするのだけど、逆におそいかかれれてしまう。
 フデが言うには多少の知能がないと無理ということで、コボルトを選んだ。
 しかし探し出したコボルトは、オークに追いかけられている。
 オークの方はフデに任せ、コーディ君はコボルトを操ることに成功した。
 でもなんか頼まれごとをしたようで、襲われていたコボルトの村を助けることになってしまった。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 グリス・ナイト・ジェミニ (双子の男の子)
 リューナ・ナイト・ジェミニ(双子の女の子)
 ミア・ミスト・レイン(元賞金首)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 グリア・ノート・クリステル(お姉さんの相棒)
 コーディ・フル・フラグメント(獣使い見習い)
 ランズ・ライズ・ライト (父)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 フェイ・ステラ・ラビス(ファラの父親)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 ディザリア・エルス・プリースト(破壊教)
 ナオ・ラヴ・キリュウ(リセルの弟でディザリアのチームメイト)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 ミカグラ・ツキコ(デッドロックさんの相棒)
 リセル・ラヴ・キリュウ (ローザリアのギルド受付)
 フデ = インフェニティ―・ダーク・ロード・ウミノメ・キング・ジョージ四世ファイナルモード・ディスティニー(没落魔王)


 フデには追跡装置も付けられているから、勝手に遠出することは出来ない。
 だからスラーさんを説得に行ったのだけど。

「ふむ、まあいいんじゃないですか? 今回はテストですからね。悪い悪くないは、終わってから判断しましょう」

 僕はどう説得したものかと悩んでいたけど、スラーさんは案外簡単に受け入れてくれたようだ。

「あ、ありがとう、スラーさん!」

 コーディ君がコボルトの子と一緒に頭をさげている。
 ちなみにこのコボルトの名前はコギーに決定した。

「ということで誰か人員を出してくれませんか? この二人だけだとすっごく心配なんで」

 僕は戦力を出してくれるように、スラーさんにお願いしてみた。

「ライバルよ、俺の力を見くびるなよ? オーク程度今の状態でも何の問題もない!」

 しかし元魔王のフデは、自分の力に自信があるようだ。

「フデ君、それはつまり、まだ封印が足りなかったということでしょうか? もう少し厳重に、アリさえ踏めない体にした方が……」

 それはスラーさんに突っ込まれ。

「マスター、俺は全然弱いです! オークにもちゃんと負けますから、だから封印をしないでください!」

 フデは必死に言い訳をしている。

「ハッハッハ、安心してください、ただの冗談ですよ。あ~、でも今日余っている人員と言えば……」

 スラーさんはギルド内を見回し。

「じゃあ外で草むしりをしているディ……」

「ディザリアさん以外でお願いします!」

 いきなりババを引かされるようなスラーさんの答えに、僕は速攻で断った。

「ふむ、とはいえ、今は全員出払っていますからねぇ。近場に居るのは確か……ツキコ君が買い出しに行っていたはずです。待っていれば戻って来るのではないですかね?」

「あれ、デッドロックさんは居ないんですか?」

 僕は気になって聞いてみるも。

「なんでもミトラの町に行きたいそうで、今日はお休みになっていますよ」

 たぶんディーラさんに会いに行ったんだろう。
 ツキコさんの心境が気になるが、居ないよりはマシなはずだ。

「そうですか、じゃあここで待たせてもらいますね」

 僕達はツキコさんが帰って来るのを待ち、コギーと遊んでいる。
 一応魔物なのだけど、コーディ君に従順にしている姿はただの子犬みたいなものだ。
 何時の間にか集まって来ていた受付の女性達に、お腹を撫でられたりして『可愛い』なんて言われている。

 コギーも、満更でもない雰囲気だ。
 でも良いのかそれで?
 ここは君達を退治するギルドだぞ?

「……ただいま」

 そうこうしている間に、ツキコさんはギルドに戻って来たようだ。

「あ、おかえりなさい、待っていたんですよ」

 僕はツキコさんに声をかけたのだけど。

「? ……何しているの?」

 なでられているコギーを見て、ためらいもなく腰のカタナを引き抜いた。
 あんなに無害そうに振舞っているのに、確実にやる気だ。
 デッドロックさんへの怒りをぶつけたいのだろう。

「ちょっ、ちょっと待ってくださいツキコさん! その子は今の所は無害です! ちょっと新職業のテストしているんで、倒したら駄目ですよ!」

 僕は必死に説得をする。

「……あっそう」

 ツキコさんは納得してカタナを収めた。
 僕はホッと胸を撫で下ろし。

「あのツキコさん、僕と付き合ってくれませんか?」

 仕事に同行するように説得してみたのだが。

「……私の趣味じゃないわ。諦めてファラとでもデートしていたら?」

 なんか僕は振られてしまったみたいだ。
 言葉が足りなかったらしい。

「いやそうじゃなくて、戦力が足りないから僕の仕事に同行してください。このコギー君の村が危ないらしいんですよ!」

 僕は未だに撫で続けられているコギー君を指さした。

「……いいことよね?」

 魔物を退治することに一片の迷いもないツキコさんである。
 まあ魔物を庇うような人ならこんな仕事はしていないだろう。

「いやそうなんですけど、スラーさんには許可をとってあるのでお願いします」

「……じゃあ、私からもお願いがあるわ。あれはコギーじゃなくてクロと呼びなさい」

 可愛がられているコギーは、ツキコさんによりクロとして命名された。
 そしてクロの首に赤い布を巻きつけ、首輪のようにしている。
 さっきまで殺す気だったのに、意外と気に入っているのだろうか?
 ちなみに、黒い毛は一切ない。

「えっと、じゃあクロでいいかな?」

 コーディ君がコギーを説得し。

「ギャワン!」

「なんか良いみたいだよ?」

 簡単に受け入れてくれたので、ツキコさんも同行してくれることになった。
 そして準備をした僕達は、クロの案内で南にある森の街道へと連れて行かれる。
 道も何も無い森の中へ入って行くのだけど、コボルトの大きさで進める道に入って行くから、僕とフデにとってはすごく障害物が多いのである。

「ぐはぁ! あ、頭が!」

 僕が枝に頭をぶつけ。

「ライバルよ、ちゃんと周りを見ないからそういう、ぐはぁあああ!」

 フデも同様に別の枝に頭をぶつけ痛がっている。

「だ、だいじょうぶ?」

「コーディ、気にしないで置いて行きましょう。魔王と荷物は滅べばいいのよ」

 コーディ君は足をとめてくれているが、ツキコさんは気にしてもくれない。
 コーディ君とクロの頭を撫でながら先に進んで行く。

「待ってえええええええ!」

「ちょっと待て、俺を置いて行くなあああ!」

 僕とフデは本当に置いて行かれないように、身を低くして追い駆ける。
 森の中に入ってずいぶん経つが、危険な獣や魔物は一向に出て来ない。
 先頭を進むクロは、それなりの道を熟知しているのだろう。

「ギャワワン!」

「あっ、着いたみたいだよ」

 コーディ君はクロの声を聞き、ここが村であると告げている。
 よく見ると、枯れ枝を重ねて作った犬小屋のような住居があった。
 コボルト達が警戒して顔を出しているが、今の所襲って来る気配はなさそうだ。
 やはりクロが仲間になっているからだろうか?

 その中から、一体の老コボルトが僕達の前に現れた。
 雰囲気からすると長老か何かだろう。

「ギャワワワン」

 その長老がクロに声をかけ。

「ギャワワワン!」

 何かしらの会話をしているようだ。
 全く何を言ってるのか分からないから。

「コーディ君、何を言ってるのかわかりますか?」

 コーディ君に聞いてみたのだけど。

「僕クロの言葉しかわかんない。でも僕達のことを話してるみたいだよ」

 コーディ君は、操っているクロの言葉しか分からないようだ。
 クロが通訳して、それをコーディ君が僕達に伝えることになってしまう。
 手間がかかりすぎるし、コーディ君が言葉を理解していないと、おかしな事になってしまいそうだ。

「ギャワワン! ギャワワワワン!」

「うん、わかった」

 コーディ君がクロと何度も話を続け、やっと僕達に伝えられた。

「えっとね、近くに出来たオークの集落におそわれているんだって。倒して来てほしいって言ってるよ」

 つまり魔物の縄張り争いなのだろう。
 僕達人間が関わってしまえば絶対オークに恨まれる。
 オークによる人への襲撃が多くなるかもしれない。
 まあそうなったらギルドが対応するだろう。

「……ああ、オークを全滅させればいいのよね? フフ、私の気晴らし、付き合ってもらうわよ……」

 ツキコさんは、フデなんかよりよっぽど邪悪なオーラを纏い、カタナをチャキチャキさせている。
 やる気充分だろう。

「おいライバルよ、あの姉ちゃんなんか怖いんだけど」

 そのオーラに、フデも恐れをなしている。

「からかったりすると本当にやられますから注意してください。命が惜しくないなら止めませんけど」

 僕はフデに警告を発する。

「充分注意しよう。でもお前の仲間ってそんなのばっかだな……」

「言わないでください、僕だって気にしているんですから」

 ギルドの中では、僕のような真面な人が少ないのだ。
 ファラさんもギリギリ向う側だろう。

「じゃあとりあえず、この村の中で待ってみましょうか。フデさんもあんまり役にたちそうにないですし」

 僕はここを拠点にすることを提案した。

「……まあいいんじゃないの?」

「は、はい」

 ツキコさんとコーディ君も頷いたが。

「さっきオークを倒したのを見ていなかったのか? 俺は充分に役に立つぞ。だからマスターに報告する時は……」

 フデだけは文句を言って来ている。

「ああはいはい、何度も言わなくてもいいですよ。ちゃんと無駄な人員でしたって言っときますから」

「お~い、それは駄目だ! 絶対やめろ! あとでマスターに何をされるか……うぅ、頭が……」

 フデの身に何があったのだろうか?
 ちょっと気になるけど、怖いから聞かないでおこう。


 オークが襲って来る前に、僕は村の中に結界を作り出した。
 そして相手の侵入を知らせるようにと、割れやすい小枝を散らばしている。
 あとは待つだけだと、ずっと待機しているのだけど。

「……さあクロ、この枝を取って来なさい!」

 ツキコさんは落ちていた枝を遠くに投げ、クロを犬扱いしている。

「クロ、頑張って」

 多少迷っていたクロも、コーディ君の言葉で走って枝を持って来たりしている。
 フデはコボルトを囲み、なにやら講義をしていた。
 もちろん操ることも出来ていないし、その言葉も分からないんだろうけど、何故か人気がでているようだ。
 訳が分からないけど、これが魔王の力なのかもしれないと微妙に感じていた。

 そして僕は、周りのコボルト達から果物や肉のさし入れをもらっていたりする。
 何の肉なのかは判断できないが、充分美味いから何の問題もない。
 物凄い歓迎っぷりで、何時まででも居たい気さえしてくる。

「ふぅ、お弁当も食べよう」

 僕はフデから貰ったお弁当を取り出し、おかずを一つずつ噛みしめて味わい尽くした。
 コーディ君さまさまである。
 このままオークが出て来ないでくれと願うが、やっぱりそうはいかないらしい。
 パキパキと村の端々に仕掛けてあった小枝を踏み抜くオークの足音。
 少なくとも四方向に四体は居そうである。

「……やっと来たのね、フフフ……ぶっころす!」

 ツキコさんはオークが出てきている一方向に向かって行く。

「オーク如きが、この魔王に敵うとでも……ライバルよ、今のは報告しないでくれ。俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ、俺は人だ」

 フデは魔王として活躍することを恐れているようだ。

「あ~、はいはい。早く行って来てください。活躍しなかったらそのことを報告しますからね」

「ああ、俺に任せろ!」

 僕の言葉に乗り、フデは誰も居ない所へ動き出す。

「く、クロ、行くよ」

「ギャワン!」

 コーディ君もクロを連れて動き出すが、オークとのレベル差は相当なものだ。
 流石に一人だけで任せる訳には行かないだろう。

「コーディ君、僕もそちらに行きます。無理をしないでたたかいましょう!」

「う、うん」

 僕も同行し、一緒にオークの下へ駆けて行く。
 もう一方は村のコボルト達に任せるしかないだろう。

「さて、来ましたよ」

 しかし、僕達の下に来たオークは一体だけでは無かったようだ。
 ワラワラとわき出て来たのは六体のオーク達。
 コーディ君を護りながら戦うのは無理だと、能力の使用を決定した。
 使うのは。

「結界の内にいる仲間の値を集めよ。……アディション・フィールド!」

 僕が選んだのは、長期戦に優位なものである。
 使うのは力と魔力で、たった二つだけだが、どうやらクロも仲間にカウントされているようだ。
 四人の能力が変換されて、村の中に百六十の数値が落ちた。
 そして僕は、百を力に回し、六十を速度へ変換する。

「てええええええええええい!」

 村に踏み入れた最初の一体を殴りつけ、後方に居る三体にぶつけてやった。

「行くよ、クロ!」

「ギャワン!」

 コーディ君はクロを操り、余った二体の内の一体へ向かう。
 連携攻撃がオークに直撃するも、相手は倒れる気配がない。

「そーれえええええええ!」

 僕は残されたもう一体を殴りつけ、反撃される前にぶつけてやった。
 しかしどうやら、ぶつけただけでは倒せないようだ。
 先ほどの三体と、今ぶつけた一体が動き出そうとしている。
 まあ殴った奴は動かないようだが。

「コーディ君、その一体に攻撃を。僕は三体の方を相手にします。でも敵が起き上がるようなら逃げてください!」

 僕はコーディ君に指示を出す。

「う、うん。やろう、クロ!」

「ギャワワン!」

 太った体でノロノロと起き上がろうとしていたオークに、コーディ君とクロが襲い掛かる。
 僕は他の三体に向かい。

「キイイイイイイイイイック!」

 と、蹴りを放った。
 それで一体を倒したのだが。

「うわぁ、来た」

 コーディ君の方が少し不利みたいだ。

「てえええええええええい!」

 僕は急いで戻り、コーディ君を襲っていた一体を後ろから叩き伏せた。

「あ、ありがとう」

「お礼は食べ物でいいです! 安くてもいいですけど、出来る限り美味しい物をおねがいします! あと油断はしないでくださいよ!」

 僕は自分の欲望を小さな子供にぶつける。

「う、うん」

 コーディ君は頷いているが、今は期待していない。
 無事成長したその日には、きちんとおごって貰おう。

「おっと、話している暇はなさそうですね。オークが来ましたよ」

「わ、わかった。クロ!」

「ギャワン!」

 オークの二体が襲い掛かって来ると、僕は一体を相手にし、コーディ君が残りの一体を引き受けている。
 僕は向かって来る一体に集中し。

「とりゃああああああああ!」

 二体を一気に叩きのめして、コーディ君が相手している最後の一体の下へ向かった。

「クロ!」

「ギャワワン!」

 コーディ君は、オークの攻撃を避け、背後からはクロが攻撃を仕掛けている。
 クロに攻撃が行けばコーディ君が攻撃をして、よく戦っていると思う。
 随分戦いにも慣れてきているようだ。
 僕が力を奪ってしまったからダメージとしてはあまりないが、連携としては相当なものだろう。

 このまま見守っていてもいいんだけど、他の場所は?

「フフ……死ねええええええ!」

 ツキコさんの方は問題がなさそうで、術と言われる力を振るい、大群を相手している。
 で、フデの方は……。

「その程度の攻撃、俺に効くはずがないだろう! どれ程の攻撃であっても……あいたッ、後頭部はやめろ! ちょっ、待て、囲むんじゃない! 痛、痛いって! あああああ、うっとうしい!」

 流石に元魔王らしく、頑丈さは相当にあるようだ。
 囲んでいたオークを吹き飛ばし、攻撃するとまた囲まれて吹き飛ばすを繰り返している。
 あそこはまあどうでもいいだろう。
 そしてもう一方の村人が護っている場所だが、どうやら瓦解し始めているようだ。
 あそこばかりは、そう時間は残されていないらしい。

 だから僕は急ぎ倒すことを決め。

「とおおお!」

 僕は最後の一体に、横から跳び蹴りを食らわせて撃退した。

「コーディ君、あの場所に向かいますよ。何度も言いますけど、無理はしないでくださいね」

「う、うん」

 僕達は村人が戦っている場所を指さし、コーディ君とクロを連れて、一緒に向かって行った。


 どうやら僕達が戦っていた場所が一番小規模だったようで、こちらは十体を超えるオーク達があふれ出て来ていた。
 コボルト達は半数を倒され、囲まれてしまっている。
 僕は思い切って走り。

「てええええええい!」

 オークの一体を蹴り飛ばすと、ドミノ倒しのように倒れていく。
 中には仲間の武器で倒されてしまうものも出ているが、全部を倒すのには無理があったようだ。
 それでも開いた隙間から大半のコボルトは逃げて行くが、取り残されてしまった者達もいるらしい。
 足の遅い長老コボルトと、それに付き添うメスコボルトだ。
 うん、たぶんメス。

「ギャワワン!」

 それを見て、命令もなしにクロが助けに入ったようだ。
 オークの攻撃を防ごうと、僕のように跳び蹴りをしている。

「あ、クロ!」

 もしかしたら知り合いや家族なのかもしれないが、コーディ君までそれを追い掛け行ってしまう。

「コーディ君、そこに行ったら! あ~もうしょうがない!」

 これは僕も行かなければならないだろう。
 しかし、次々に起き上がるオークに、危険な感じが漂っている。
 力と速度しか上げてないから、武器に刺されれば死んでしまう。
 一人なら逃げ切ることも可能だけど、コーディ君とクロはやる気である。

「とりあえず、死ぬよりはマシでしょう。何とか着地してくださいよ? そおおおおおい!」

 僕は村長とメスコボルトを手で掴み、オークを越えるようにポーンと投げ捨てた。
 ちょっと心配だったけど、メスコボルトだけでなく村長も無事に着地したようだ。
 でも着地の際、村長は腰をやってしまったらしい。
 メスコボルトに助けられている。

 まあ生きているならどうでもいい。
 問題はオークに囲まれている僕達の方だ。
 もう立ち上がって武器を構えられている。
 このまま突破はむずかしいだろう。

 だが、何か手はないかと考えていた僕に、頼もしき助っ人が現れたようだ。

「助けが必要なようだなライバルよ。俺が助けに来てやったぞ」

 僕達を囲んだオークを突破し、フデが駆け付けてくれた。
 だから僕は。

「じゃあ任せま~す!」

 っと、その隙間からコーディ君の手を引き、クロを連れて脱出して行った。

「ちょっ、えっ!? おいいいいいいいい!」

 フデは僕達の代わりに囲まれて、オークに襲われようとしている。
 まあ頑丈だし、死ぬこともないだろう。
 あそこはフデに任せればいいが、こちらも追っ手が三体来ているようだ。
 しかしそのぐらいなら。

「てええええい!」

「クロ!」

「ギャワン!」

 僕とコーディ君、クロも手伝って、オークの三体を撃退した。
 その間にも自分の相手を倒し切ったツキコさんが、フデの下へ向かって行く。
 もうこうなれば勝ったようなものだ。

「……斬殺!」

 ツキコさんにより、無残なスプラッターが形成されている。
 そんな光景に、コボルト達も怯えてしまった。

「いたああああ! お前俺にまでぶつけるな。すごい痛いんだけど!」

 稀にフデにもぶつけられているのだけど、その体は斬り裂けないようだ。
 ギルドから、隙があったらやって来いとか言われていたり?
 あり得なくはないが……。

「これで最後だあああああ!」

 しばらくしてツキコさんの手によりオークは全滅されたのだけど。

「ケ、ケツはやめろおおおおおおおお! はぁん……」

 ツキコさんの手は止まらず、フデのケツを狙い続けている。
 僕にとっては全然なんにも関係無いから、好きなだけやってもらえばいいだろう。
 だがオークの襲撃は、まだ終わっていなかったらしい。
 村の端からバキバキィっと小枝の割れる音が聞こえて来る。

「ブギャアア、フギイイイイイイイイ!」

 一体だけのようだけど、普通のオークよりも三倍は大きな個体だ。
 獣の皮を使ったマントや、何かの頭蓋を使った冠のようなものを頭にかぶっている。
 手には大きなナタを持ち、体はドス黒く変色してた黒豚のようだ。
 こいつがオークの王なのだろうか?

「こいつを倒せば終わりみたいですね。さあやっちゃってくださいフデさん」

 僕はフデに指示を出したのだけど。

「ケ、ケツが痛くて動けんぞ……」

「……使えない魔王だわ。フンッ!」

「ギャアアアアアアア!」

 フデはツキコさんにより、ケツにカタナを突き立てられた。

「フデさん、役に立たなかったと報告を……」

 僕は試しにスラーさんに伝えることを言うが。

「やめて! 本当にやめてえええええ、あああああ、尻が痛くて動けないいいいい!」

 フデは立ち上がろうと頑張っているが、尻の痛みで立てなくなっているようだ。
 戦力が減ってしまったけど、もう三人でやるしかないだろう。

「兎に角やるしかないでしょう。コーディ君、先ほどよりも気を張ってください。捕まっても攻撃されても死ぬぐらいに思っていてくださいね!」

「う、うん」

 僕の言葉にコーディ君は頷いた。

「ツキコさん、攻撃は任せます。僕はこれで防御しますから!」

 僕は尻を押さえているフデを持ち上げた。

「おいいいいい!」

 フデは嫌がっているが、その頑丈さは盾として使えるレベルなのだ。
 防具の無い僕には丁度良い物なのである。

「……じゃあ任せるわ」

 ツキコさんもうなずいている。

「ライバルよ、マジでやる気か!? 俺の身がどうなってもいいのか!?」

 元魔王のくせに黒豚に恐怖しているようだ。

「はい、僕の身が危ういんで使わせて貰います。頑張って防いでください! さあ行きますよ!」

 でも僕はためらわない。

「きゃああああああああああ!?」

 フデの悲鳴が響き、戦いの準備が整った。

「ブギャアアアア、ピギィイイイイイイイイ!」

 大ナタを振り上げる黒豚の王に、僕はフデを振り上げる。
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