不気味な念仏

いち こ

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二 息子の声

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朝飯は、ご飯に味噌汁、それと納豆と沢庵だった。
ここに移り住んでから、ずっとこの朝飯だ。我ながらこんな朝飯で、身体が持つことが不思議だった。

肉を食いたいが、肉など売るスーパーもないし、犬や猫、時に猪などはいるが、動物を殺して食べようとも思わない。

自然と野菜だけの食生活になる。唯一、小松菜からタンパク質がとれると聞いたことがある。なので、夜は小松菜ばかり食う。

こんな偏った食事だから、耳鳴りが発生したのかもしれない。
「いただきます」

拝んだ瞬間に、耳鳴りが消えた。
ふつっと消えて、外の雀のチュンチュンが聞こえた。

「消えた。しんとなった」
 首をかしげていると、ミレイが怪訝そうな顔をしてきた。

「なにが? 身体がまたおかしいの?」
「耳鳴りだよ。消えた。不思議に音がしない」

「あら? それはよかった? でも、念のために病院にいったほうがいいよ」
「大丈夫。大したことない。第一、ここじゃ病院など通えるはずもない」

 とりあえず、耳鳴りが去ったのを喜んで、沢庵を口に入れたときに、今度は人の声が聞こえだした。

「おや? おや?」
「なに? どうしたの?」

「人の声が聞こえる。段々と音量が大きくなる」
「人? だれ?」

 耳の中で大きくなる声はどこかで聞いたことがある声だった。誰だ?
 そうだ。我が子のユウジだ。三年前二十歳で心臓の病で死んだ。

「三年前に死んだユウジの声だ」
「ユウジ? どうして? 突然聞こえる?」

 病気で死んだ我が子の名前を突然言われて、ミレイも混乱をしていた。
「訳がわからないが、確かに聞こえる」

「今朝の耳鳴りと関係があるかも」
 
  ハヤトはもう一度、耳をポンポンとしてみる。
「だんだんと音が大きくなる。間違いない。ユウジだお経を唱えている」
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