3 / 12
三 かんじざいぼさー
しおりを挟む
「お経? ユウジが?」
ミレイは目に涙を浮かべてながら、遠くをみるような目をする。
生前の我が子ユウジを思い出している。
「私も耳鳴りを聞きたい。ユウジの声なら、耳鳴りだってオッケーよ」
「でも、ずいぶんとおかしな耳鳴りだ。どういう訳だ?」
「ふつう。シャーとか、ジーと聞こえるのが耳鳴りでしょう? それが、死んだ我が子の声など不思議な話よ」
「俺がいつも気に掛けているか、そんな耳鳴りが聞こえるのか?」
「そうよ。あなたの思いが、ユウジの声を頭の中で生んだのよ」
「しかし、それにしても、ユウジが経を唱えるなど、ありもしないことだ。宗教など嫌いで、特にオウムの事件があってから、とっても気味悪がっていた」
突然、ユウジの声の音量が上がった。
かんじざいぼさつ・・・まかはんにゃみたじ・・・しょうけんごうんかいくう・・・
「痛い。痛い。声が大きすぎて、頭に響く」
俺は思わず耳を塞いだが、耳鳴りなので、それは全くの無益だった。
ミレイが寄ってきて、俺の頭を抱える。
「やはり、早いところ病院に行ったほうがいいよ。どんどんと症状が悪くなるみたい」
「病院って、耳鳴りで耳鼻科に行けばいいのか? ユウジの声が聞こえるので精神科にいけばいいのか?」
「そういえば、ここに来る前住んでいた、福角(ふくずみ)町に耳鼻科と脳神経科がならんであったわね。そこに行って、両方行けばいいかも」
「でも、あそこはユウジと死別した家がある。なんか気が進まないなあ」
「そんな流暢なことを言ってられないでしょうが。重い耳や脳の病気だったらどうするの?」
ミレイが重い病気と言うに及んで、俺は病院に行くことに決めた。症状が重くなる前に行ったほうがよい。
確か福角町の家は、まだ売れなくて、空き家のまま残っていたはず。誰も住んでいないが、やはり、前を通るとユウジのことを思い出してしまうが、そんなことは行ってられない。
そうこうするうちに、いよいよユウジの経が大きくなって、周りの音が何も聞こえなくなった。
しきふーいくーくーふーいしきー・・・やくぶにょうぜー・・・しゃりし・・・
「痛い。痛い。頭が割れそうだ。孫悟空の頭の金の輪のように、ユウジの経が大きくなるにつれて、頭を締め上げる」
俺は頭を押さえる。たぶん、脳溢血か何かで、脳の中がおかしくなっているのか。
ミレイは目に涙を浮かべてながら、遠くをみるような目をする。
生前の我が子ユウジを思い出している。
「私も耳鳴りを聞きたい。ユウジの声なら、耳鳴りだってオッケーよ」
「でも、ずいぶんとおかしな耳鳴りだ。どういう訳だ?」
「ふつう。シャーとか、ジーと聞こえるのが耳鳴りでしょう? それが、死んだ我が子の声など不思議な話よ」
「俺がいつも気に掛けているか、そんな耳鳴りが聞こえるのか?」
「そうよ。あなたの思いが、ユウジの声を頭の中で生んだのよ」
「しかし、それにしても、ユウジが経を唱えるなど、ありもしないことだ。宗教など嫌いで、特にオウムの事件があってから、とっても気味悪がっていた」
突然、ユウジの声の音量が上がった。
かんじざいぼさつ・・・まかはんにゃみたじ・・・しょうけんごうんかいくう・・・
「痛い。痛い。声が大きすぎて、頭に響く」
俺は思わず耳を塞いだが、耳鳴りなので、それは全くの無益だった。
ミレイが寄ってきて、俺の頭を抱える。
「やはり、早いところ病院に行ったほうがいいよ。どんどんと症状が悪くなるみたい」
「病院って、耳鳴りで耳鼻科に行けばいいのか? ユウジの声が聞こえるので精神科にいけばいいのか?」
「そういえば、ここに来る前住んでいた、福角(ふくずみ)町に耳鼻科と脳神経科がならんであったわね。そこに行って、両方行けばいいかも」
「でも、あそこはユウジと死別した家がある。なんか気が進まないなあ」
「そんな流暢なことを言ってられないでしょうが。重い耳や脳の病気だったらどうするの?」
ミレイが重い病気と言うに及んで、俺は病院に行くことに決めた。症状が重くなる前に行ったほうがよい。
確か福角町の家は、まだ売れなくて、空き家のまま残っていたはず。誰も住んでいないが、やはり、前を通るとユウジのことを思い出してしまうが、そんなことは行ってられない。
そうこうするうちに、いよいよユウジの経が大きくなって、周りの音が何も聞こえなくなった。
しきふーいくーくーふーいしきー・・・やくぶにょうぜー・・・しゃりし・・・
「痛い。痛い。頭が割れそうだ。孫悟空の頭の金の輪のように、ユウジの経が大きくなるにつれて、頭を締め上げる」
俺は頭を押さえる。たぶん、脳溢血か何かで、脳の中がおかしくなっているのか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる