物理的破壊で済むと思うな!

井之四花 頂

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1 県立日輪高校

転校初日⑤

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 5人の沈黙にうんざりしたのか、別所先生が渋い顔で俺を見た時、向かって左端の色黒モヒカン男が立ち上がった。身長が2メートル近い上に筋肉達磨のような体つきで、制服がかなりきつそうに見える。その彼が机を回って俺の前に歩み寄ってくる。

 モヒカンが俺の正面に立った。無言のまま、傲然と俺を見下ろしている。

 こっちが自己紹介したのにあいさつの一つもなしか──と癪に障ったのでそいつの顔を睨み返すと、相手は膝をかがめて、正面から顔と顔を突き合わせる格好になった。互いに鼻息が掛かりそうな距離でモヒカン男は目を細め、左の手のひらを俺の額に当てた。

「……何?」

 モヒカン野郎は俺と睨み合ったまま、口の端をほんのわずかに持ち上げた。続いて俺の額から手を離して膝を伸ばし、薄笑いを浮かべたまま後ろを振り向く。

「問題なし。呼吸してるし体温もある」

 一気に緊張が解けた様子で、他の4人は姿勢を崩した。

 司令塔の彼は下を向いて苦笑し、眼鏡女子は片手で顔をあおぎ、右端の長髪男は上体を後ろにそらして天井を見上げた。謎めいた美少女は表情を変えずにベランダ側を向き、俺に横顔を見せている。

 中央の彼が、子供っぽさの残る甲高い声で言った。

「お待たせですね先生! やっと普通の高校生が来ましたか」
「ひどい言い方だな」
「だってそうでしょ。一昨日も4日前も1週間前も……」

 その瞬間、教室の一隅から「やかましいわ!」と怒鳴り声が割り込んできた。

 声が発せられた方を見ると、それまで無人だった窓側の最後尾に、いつの間にか一人の男がふんぞり返っていた。机の上に両足を投げ出し、ズボンのポケットに両手を突っ込んで椅子にそっくり返っている彼は、服装からして男子生徒のようだが、それにしては風体があまりにも異様だった。

 何よりも際立っているのはその髪型で、リーゼントのひさしが額から10センチ近くも付き出している。さらに鼻の下には薄い口髭を生やし、これ見よがしに不貞腐れた表情でガムをクチャクチャ噛んでいる。袖を通しているだけの制服も、途方もなく高くした襟が耳の直下まで伸びていて、ホックを留めたら確実に口が隠れる。

 この襟にプラスチックのカラーをつけたりすればこの上もなく窮屈だろうし、絶えず鼻の頭が引っ掛かるのではないか。どう見ても襟元を留めることを考えた仕様とは思えない。

 ただ、俺も話には聞いていた。40年以上前、中高を問わず荒れた学園ではこういうファッションが随分と流行っていたのだとか。

「おい先公。さっさと授業始めろ。ここは学校だろ?」

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