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1章 出会いの町キャルト
STORY12 ケットシー救出作戦④
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ドタドタドタドタ……
リアーナのよって蹴り落とされた男が階上から転げてきた。
「いってててて…。くそ、あの女……」
男は階上を睨みながら吐き捨てる。
「ん? だれだ、てめぇは?」
自分を見下ろすウラボスに気づいた男が不審者を見るような視線を向けてくる。ウラボスはニコリと笑う。
「あんたが言う《あの女》の仲間さ」
言ってウッドロッドで頭を殴り、気絶させた。
「そんじゃあ、上はリアーナたちに任せるとして……」
ウラボスのすぐ後ろに大男の姿があった。頭上に掲げた大剣を振り返る間も与えずに振り下ろす。日焼けした腕や顔には歴戦の戦士を思わせるような無数の傷痕がある。
ガッ
ウラボスはウッドロッドで受け止める。
「なんだと!?」
大男は驚いたように声を洩らす。だが、それも一瞬の事だった。すぐに床を蹴ってウラボスとの距離をあける。
(俺はこいつの相手でもしておくとしようかな)
先ほど口にしていたセリフを心の中で続ける。
「この俺の剛剣をそんな棒切れで受け止めるなんざ、どんなトリックを使ってやがる?」
大男はある種の興味を持ったようである。
「なに、大したことはない。杖に魔力をまとわせて強化しているだけだ」
あっさりとネタを明かす。だが、大男は眉をひそめる。
「武具強化魔術だと? この家と周囲には魔術弱化の魔法陣の影響を受けているという話だったが?」
「ああ、そうさ。けど、弱化されるだけで無効化されているわけじゃない」
ウラボスの返答を聞いて大男はニヤリと笑う。
「おもしれぇ。つまり、てめぇはそれだけすげぇ魔術師ってわけか! だったら、この剣士ギャヌアの相手として不足なしだ!!」
大男は愉快そうに笑い、声のトーンを上げる。
「簡単にくたばってくれるなよ?」
ギャヌアの動きは素早い。並みの男なら扱うのも難しいような大剣をいとも軽々と振りかざしてみせる。
ウラボスはギャヌアの攻撃をウッドロッドでさばきつつ反撃するが、そのほとんどはかわされてしまう。もっとも、ウラボスとしても現時点では本気で反撃しているわけではないのだが…。
(剣士ギャヌア、か。戦闘力に関してはグランザより上だな。これほどの大剣を武器にしていてこの動きはなかなかのものだ。太刀筋もいい。それなりに実戦経験を積んできているか。これだけ動いて息ひとつ乱さないということはタフさもある。単なる見かけ倒しというわけではないか)
攻防を繰り広げながら分析するウラボス。
「うらぁ!」
ギャヌアは大剣を気合いとともに振り下ろす。ウラボスはそれをウッドロッドで床へと受け流し、距離をとる。
バキバキバキバキッ
大きな音をたてて床板の一部が破壊された。
「ありゃりゃ…」
ウラボスは破壊された床を見て肩をすくめる。
「クハハハハッ。この状況でその余裕! 大いにけっこう!!」
ますますテンションを上げたギャヌアの動きは速くなっていく。
「まさかこんな面白いやつとやれるとはな。これだから傭兵稼業はやめられん!」
部屋中を所狭しと暴れまわる。置かれていた家具類は次々と破壊され、床一面に残骸が降り注ぐ。
(場所を移すほうがよさそうだな)
ウラボスは開け放たれたままの玄関から外へと飛び出し、ギャヌアを誘い出す。
「クハハ……。いいねぇ、ここならおもいきりやり合えるってもんだ!」
大剣を武器とするギャヌアにとっても屋外での戦闘は望むところであった。
「水圧矢魔術」
ウラボスが魔術名を詠唱する。圧縮された水の矢が連続的に発射された。それらを右へ左へとたくみにかわしながら接近したギャヌアは大剣を振るう。
「おっと…」
大剣は空を斬った。
(ふむ。やっぱり魔術の速さも威力もかなり落ちているな)
水圧矢魔術を射った時の感覚を確かめながらギャヌアの反撃をかわす。
ギャヌアは一歩さがって大剣を構え直した。
(なにか仕掛ける気か)
ウラボスの直感が危険を告げた直後だった。ギャヌアは大剣を縦横無尽に閃かせて凄まじい連続攻撃を繰り出し、ウラボスの体にいくつもの傷をつけていく。
「なかなかやるじゃないか」
ウラボスは感心した。今のは魔力によって一時的に動きを速くする加速魔術を使用しての連続攻撃だった。常識的には、大剣をはじめとした重量級の武器を扱う者はほとんど使わない戦法である。というのも、能力強化の魔術は一時的とはいえ飛躍的に能力を向上させるため肉体への負荷は非常に大きい。まして、重量級武器を使っての連続攻撃ともなると相当なものになるはずである。
ウラボスは一度ギャヌアから離れる。
(まさか、魔術弱化の魔法陣が発動している中であれだけ動けるとはね。少しばかり甘くみていたようだ)
ウラボスはギャヌアに対しての認識を改める。そして、それはギャヌアにとっても同じであった。今の攻撃でウラボスを倒せると確信していた。だが、実際には数ヶ所に傷を負わせる程度でしかなく、その一つ一つは浅く、致命傷にはならない。
「ぬ…ぐぅ…」
身体中が悲鳴をあげている。追撃にでたいのは山々ではあるが体がついてこない。
(ちっと無理し過ぎちまったか…)
ギャヌアは決着を急ぎ過ぎたことが悔やんだ。が、時間は戻せない。
「氷矢魔術!」
「ぬぅ…」
ウラボスが放った氷の矢を大剣で受けてガードする。だが、その反動は強く、後ろに仰け反ってしまった。それを好機とみてウラボスが駆ける。
「ぬうぉぉぉぉぉ!」
ギャヌアは強引に大剣を水平に振るって迎撃する。しかし、手応えはない。
「火炎矢魔術!」
跳躍して宙を舞ったウラボスはギャヌアの頭上に飛び越え様に炎の矢を射つ。
「ぐぁぁぁぁ!」
全身を炎に呑み込まれてよろめくが、倒れるわけにはいかず、どうにか踏みとどまる。炎は魔力を燃料としているため、それがなくなれば自然に鎮火した。
「雷撃矢魔術!」
着地したウラボスから容赦なく次なる魔術が繰り出された。
「ぬがぁぁ!」
全身を突き抜ける雷撃にたまらず片膝をつく。
ウラボスの攻撃は止まらない。掲げたウッドロッドをギャヌアの頭へと振り下ろす。
「調子に……のるんじゃねぇ!!」
ギャヌアはウッドロッドを大剣で受け止め、渾身の力で弾き返した。その反動によってウラボスは2、3歩後退する。ウラボスを倒す最大のチャンスの到来にギャヌアは大剣に武具強化魔術を施す。
「ぬうぉぉぉぉ!」
ギャヌアは吼え、大剣を何度も閃かせてはウッドロッドと斬り結ぶ。さすがに、先ほどのように加速魔術を使った連続攻撃は肉体的に厳しく、乱用はできない。それでもウラボスとも互角に渡り合っているように思われる。
「なにを笑ってやがる?」
激しい攻防戦の最中に口角を上げているウラボスに、ギャヌアが訊く。もちろん、攻撃の手を休めずにだ。
「いやいや、あんたが俺の予想よりも遥かにに強かったからさ。だが、まだまだ甘い。その程度じゃ俺を倒すことなんざできないぜ。出直してくるんだな」
「なんだと? そいつぁ、どういう意味だ?」
ギャヌアが聞き返した瞬間、ウラボスは素早く後退した。
「それじゃ、そろそろ決めさせてもらうとしようか!」
言い終わると、ウラボスは瞬時にギャヌアの身体中に打撃を加える。刹那の出来事に何が起きたのか理解が追い付かない。
(くそっ、どうなってやがる!?)
頭、両肩、胸、両肘、脇腹、腰、太股、両膝に凄まじい衝撃と痛みを感じて体勢が崩す。
(加速魔術か! やつには魔力弱化が効いてないのか!?)
そんなことを思わせるほどの強烈の連続攻撃だった。
(こんなとこで終われるか!)
ギャヌアは大剣を横に凪ぎ払い、続いて地面に突き刺して杖代わりにし、どうにか立ち上がった。だが、遅すぎた。
「残念だったな。……雷撃矢魔術!」
すでに攻撃体勢をとっていたウラボスが魔術名を唱えた。何発も連続で発射された雷の矢が次々にギャヌアに命中する。
「ぬぐわぁぁぁぁ!!」
ギャヌアは絶叫をあげた。
(これまで…か……)
ギャヌアは意識が急速に遠退いていくのを感じていたが、もはやどうすることもできなかった。
◎
「やれやれ……」
ギャヌアとの戦闘に勝利したウラボスは廃屋の中へと戻ってきた。窓の外を見れば地面に倒れているギャヌアの姿がある。まだまだ本気ではなかったとはいえ、闘いをこれほどまでに楽しめたのは久しぶりであった。
(あいつ、まだ強くなれるポテンシャルを秘めているよな。その時の再戦が楽しみだ)
期待に自然と笑みがこぼれる。
「リアーナァァァ!!」
その時だ。リャッカの悲痛な叫び声が2階から響いてきた。ウラボスは弾かれたように階段を駆け登った。
奥の部屋の扉は開かれていて騎士ジグーマの姿がある。鎧は返り血を浴びて赤く染まっている。そして、足元にはリアーナとケットシーの姿がある。
ウラボスは廊下を一瞬で移動し、騎士をおもいきり蹴り飛ばした。ジグーマは部屋の奥の棚に激突する。その手からブロードソードが床に滑り落ちる。
「ウラボス?」
リアーナの声がする。
「大丈夫か!?」
ウラボスの問いかけにリアーナは頷く。だが、隣で息絶えているケットシーの亡骸を目にして大きく取り乱す。
ジグーマがリアーナに斬りかかった刹那、ケットシーは自らの危険を省みることなくリアーナを突き飛ばし、身代わりとなって凶刃に倒れたのであった。
「そんなっ!? 私なんかを庇って! どうしよう! ねぇっ! どうすればいいの!?」
激しく動揺し、血まみれのケットシーを抱き抱え、救いを求めるようにウラボスを見る。しかし、いかにウラボスといえども既に絶命した者を蘇生させることはできない。まして、ケットシーは致死量をはるかに越える血液を失っているのだ。
「落ち着け……。残念だけど、そのケットシーを助けることはできない。失った命を無理に戻すことなどできない。いや、あってはならないんだ…」
血まみれのケットシーとリアーナを懐に抱き、優しく諭す。
「でも…でもぉ……」
その胸に顔を埋めて泣きじゃくるリアーナ。隣ではリャッカも大粒の涙を流している。
「今は眠るんだ。…睡眠魔術…」
優しく静かに催眠魔術を詠唱する。リアーナが眠りに落ちたのを確認してそっと床に寝かせる。
「…ウラボ……ス……」
魔術に対して耐性のあるリャッカですらウラボスの催眠魔術には抵抗できず、強烈な睡魔に襲われ、まもなく眠ってしまった。
「くっ…うぅ……」
ウラボスに蹴り飛ばされたジグーマはどうにか立ち上がった。
「く…そ……。冒険…者…ふぜいが!……」
怒りに満ちた視線をぶつけるジグーマであったが、ウラボスが振り返った瞬間、その表情は凍りつく。
「久しぶりだよ。こんなに腹がたったのはいつ以来だろう……」
ウラボスはゆっくりとした歩調でジグーマに近寄っていく。
「ひぃぃっ!」
ジグーマは底知れない恐怖に腰が抜けて座り込む。
「わ、悪かった! 自首して罰を受ける! だから命だけは助けてくれ! 頼む!!」
命乞いをするジグーマを冷たく見下ろす。
「もちろん罰は受けてもらうさ。ただ、おまえを裁くのはケットシーたちだ」
「わかった! おとなしく連中の裁きを受けると約束する!!」
(しめた! ケットシーどもは基本的におとなしい連中だ。反省してる素振りを見せれば大した罪には問われないだろう)
ジグーマは内心ではほくそ笑んでいた。
「ところで、俺がどうしてリアーナとリャッカを眠らせたか、その理由はわかるか?」
不意に投げ掛けられた言葉にジグーマは戸惑う。
「……なぜだ?」
恐る恐る問い返す。ウラボスはフンと鼻を鳴らす。
「簡単なことさ。これから始まる惨劇を見せるのは刺激が強すぎるかと思ったんだ」
「ひぃぃぃぃっ!! まま…待て! いや、待ってください!! 俺を裁くのはケットシーなんだろ!?」
ジグーマはかつて経験したこともないような恐怖に半泣きになる。
「それはおまえが殺したケットシーとこれまでに犠牲になっていったケットシーの分だ。うちのリーダーの分は俺が代行する」
「た、助けてくれぇぇぇ!」
ジグーマは這う這うの体で逃走を試みる。が、武具強化魔術を施されたウッドロッドによって右足の骨を砕かれてしまう。
「ぐぁぁぁぁ!」
ジグーマは絶叫し、床を転げ回る。
「逃がすと思ったか? だが、安心してもいいぞ。俺は命までは奪うつもりはない。あくまでも俺はだがな。おまえをケットシーに引き渡したあとは保障できない。連中はあれで仲間意識が強いからな。極刑もあり得ない話ではないな。まっ、それも身から出た錆ということで諦めろ。……もっとも、その前に俺が制裁してやるのも忘れてもらっちゃ困るけどね」
ウラボスは冷笑を浮かべた。
◎
ジグーマの制裁を終えたウラボスは、魔術弱化の魔法陣を発動させる媒体となっていた2階奥の部屋の照明を破壊した。
「ウニャア……」
「おっ、案外早かったじゃないか」
催眠魔術の効果が解け、目覚めたリャッカに声をかける。
「ウニャッ!?」
覚醒したばかりの脳で状況を整理する。
「あいつはどうなったニャ?」
床で失神しているジグーマを指差して訊く。
「生きてるよ。全身を複雑骨折してはいるけどな」
「そ、そうかニャ。一応は生きてるのかニャ」
いまや鎧はデコボコになり、口から泡を吹いて気絶しているジグーマを見て、ウラボスを本気で怒らすのはよそうと心に決める。
「魔術弱化の魔法陣は無効化したのかニャ」
「ああ。ついさっきな」
「それで、これからどうするニャ?」
リャッカに訊かれ、天井を仰ぐ。
「まずはそこに転がってる外道騎士をケットシーの里に連行する。最終的にそいつを裁く権利は連中にあるからな」
ウラボスの考えに頷いて賛成の意を表す。
「それがいいニャ。こいつには相応の罰が与えられるはずニャ。里へはあたしの瞬間移動魔術で行くニャ」
「頼む」
「任せるニャ。でも、その前にグランザと合流するニャ。それからウラボスとリアーナにも同行してほしいニャ。今回の件では二人に世話になったニャ。是非とも礼をしたいニャ!」
「そんなものは必要ない。そもそも、俺たちはだれも救うことができなかった。うちのリーダーならきっとそう言うだろうさ」
リャッカは微笑した。
「たしかに言いそうニャ。だけど、やっぱり里には来てほしいニャ。ウラボスとリアーナがいなければあいつを捕まえることはできなかったニャ。このまま何もしないなんてケットシーの名折れニャ!」
「まぁ、そういうことならリアーナに判断を委ねるとするか。うちのリーダーだからな」
「わかったニャ。…こいつの仲間はどうしたニャ?」
「それなら縛って1階に転がしてあるよ。一人、逃げられたけどね」
ウラボスが1階へ戻った時、ギャヌアの姿は既に消えていた。
「……ひとつ訊いてもいいかニャ?」
リャッカが改まって訊く。
「なんだよ?」
「ウラボスほどの実力があればなんだってできるニャ。どうしてリアーナについているニャ?」
ウラボスは静かに笑う。
「リアーナにも同じことを言われたよ。理由は単純なものさ。俺はこいつを気に入っている。それだけだ」
返ってきたのは単純明快な答えだった。だが、嘘をついているようには見えない。
今度はリャッカが笑う。
「なんだか納得ニャ。あたしもリアーナは気に入ってるニャ」
「だろ?」
ウラボスとリャッカは互いに顔を見合せて微笑んだ。
◎
「そうですか……。さらわれたケットシーたちはみんな……」
キャルト近郊の森。リアーナが目覚めるのを待ってやってきたウラボスたちと合流したグランザが沈痛の面持ちで力無げに言った。
「…ごめんなさい……」
深々と頭を下げて謝罪するリアーナ。
「そんな! リアーナさんとウラボスさんには感謝してます!」
「こっちはこっちでいろいろと大変だったみたいだな」
恐縮がるグランザに治癒魔術を施し終えたウラボスが言った。周囲の様子から何があったかのおおよその想像はできた。
「はい。できるならだれも殺したくはありませんでした……」
グランザは肩を落として項垂れる。
「しかたないさ。殺らなきゃ殺られていたんだろ?」
「それはそうですけど…」
「そうニャ。グランザが気に病むことないニャ。それよりも早く集まるニャ。瞬間移動魔術するニャ」
リャッカは周りに全員が集まるのを待ってミスリル・ロッドを掲げる。足元に出現した魔法陣が輝きを放った。
リアーナのよって蹴り落とされた男が階上から転げてきた。
「いってててて…。くそ、あの女……」
男は階上を睨みながら吐き捨てる。
「ん? だれだ、てめぇは?」
自分を見下ろすウラボスに気づいた男が不審者を見るような視線を向けてくる。ウラボスはニコリと笑う。
「あんたが言う《あの女》の仲間さ」
言ってウッドロッドで頭を殴り、気絶させた。
「そんじゃあ、上はリアーナたちに任せるとして……」
ウラボスのすぐ後ろに大男の姿があった。頭上に掲げた大剣を振り返る間も与えずに振り下ろす。日焼けした腕や顔には歴戦の戦士を思わせるような無数の傷痕がある。
ガッ
ウラボスはウッドロッドで受け止める。
「なんだと!?」
大男は驚いたように声を洩らす。だが、それも一瞬の事だった。すぐに床を蹴ってウラボスとの距離をあける。
(俺はこいつの相手でもしておくとしようかな)
先ほど口にしていたセリフを心の中で続ける。
「この俺の剛剣をそんな棒切れで受け止めるなんざ、どんなトリックを使ってやがる?」
大男はある種の興味を持ったようである。
「なに、大したことはない。杖に魔力をまとわせて強化しているだけだ」
あっさりとネタを明かす。だが、大男は眉をひそめる。
「武具強化魔術だと? この家と周囲には魔術弱化の魔法陣の影響を受けているという話だったが?」
「ああ、そうさ。けど、弱化されるだけで無効化されているわけじゃない」
ウラボスの返答を聞いて大男はニヤリと笑う。
「おもしれぇ。つまり、てめぇはそれだけすげぇ魔術師ってわけか! だったら、この剣士ギャヌアの相手として不足なしだ!!」
大男は愉快そうに笑い、声のトーンを上げる。
「簡単にくたばってくれるなよ?」
ギャヌアの動きは素早い。並みの男なら扱うのも難しいような大剣をいとも軽々と振りかざしてみせる。
ウラボスはギャヌアの攻撃をウッドロッドでさばきつつ反撃するが、そのほとんどはかわされてしまう。もっとも、ウラボスとしても現時点では本気で反撃しているわけではないのだが…。
(剣士ギャヌア、か。戦闘力に関してはグランザより上だな。これほどの大剣を武器にしていてこの動きはなかなかのものだ。太刀筋もいい。それなりに実戦経験を積んできているか。これだけ動いて息ひとつ乱さないということはタフさもある。単なる見かけ倒しというわけではないか)
攻防を繰り広げながら分析するウラボス。
「うらぁ!」
ギャヌアは大剣を気合いとともに振り下ろす。ウラボスはそれをウッドロッドで床へと受け流し、距離をとる。
バキバキバキバキッ
大きな音をたてて床板の一部が破壊された。
「ありゃりゃ…」
ウラボスは破壊された床を見て肩をすくめる。
「クハハハハッ。この状況でその余裕! 大いにけっこう!!」
ますますテンションを上げたギャヌアの動きは速くなっていく。
「まさかこんな面白いやつとやれるとはな。これだから傭兵稼業はやめられん!」
部屋中を所狭しと暴れまわる。置かれていた家具類は次々と破壊され、床一面に残骸が降り注ぐ。
(場所を移すほうがよさそうだな)
ウラボスは開け放たれたままの玄関から外へと飛び出し、ギャヌアを誘い出す。
「クハハ……。いいねぇ、ここならおもいきりやり合えるってもんだ!」
大剣を武器とするギャヌアにとっても屋外での戦闘は望むところであった。
「水圧矢魔術」
ウラボスが魔術名を詠唱する。圧縮された水の矢が連続的に発射された。それらを右へ左へとたくみにかわしながら接近したギャヌアは大剣を振るう。
「おっと…」
大剣は空を斬った。
(ふむ。やっぱり魔術の速さも威力もかなり落ちているな)
水圧矢魔術を射った時の感覚を確かめながらギャヌアの反撃をかわす。
ギャヌアは一歩さがって大剣を構え直した。
(なにか仕掛ける気か)
ウラボスの直感が危険を告げた直後だった。ギャヌアは大剣を縦横無尽に閃かせて凄まじい連続攻撃を繰り出し、ウラボスの体にいくつもの傷をつけていく。
「なかなかやるじゃないか」
ウラボスは感心した。今のは魔力によって一時的に動きを速くする加速魔術を使用しての連続攻撃だった。常識的には、大剣をはじめとした重量級の武器を扱う者はほとんど使わない戦法である。というのも、能力強化の魔術は一時的とはいえ飛躍的に能力を向上させるため肉体への負荷は非常に大きい。まして、重量級武器を使っての連続攻撃ともなると相当なものになるはずである。
ウラボスは一度ギャヌアから離れる。
(まさか、魔術弱化の魔法陣が発動している中であれだけ動けるとはね。少しばかり甘くみていたようだ)
ウラボスはギャヌアに対しての認識を改める。そして、それはギャヌアにとっても同じであった。今の攻撃でウラボスを倒せると確信していた。だが、実際には数ヶ所に傷を負わせる程度でしかなく、その一つ一つは浅く、致命傷にはならない。
「ぬ…ぐぅ…」
身体中が悲鳴をあげている。追撃にでたいのは山々ではあるが体がついてこない。
(ちっと無理し過ぎちまったか…)
ギャヌアは決着を急ぎ過ぎたことが悔やんだ。が、時間は戻せない。
「氷矢魔術!」
「ぬぅ…」
ウラボスが放った氷の矢を大剣で受けてガードする。だが、その反動は強く、後ろに仰け反ってしまった。それを好機とみてウラボスが駆ける。
「ぬうぉぉぉぉぉ!」
ギャヌアは強引に大剣を水平に振るって迎撃する。しかし、手応えはない。
「火炎矢魔術!」
跳躍して宙を舞ったウラボスはギャヌアの頭上に飛び越え様に炎の矢を射つ。
「ぐぁぁぁぁ!」
全身を炎に呑み込まれてよろめくが、倒れるわけにはいかず、どうにか踏みとどまる。炎は魔力を燃料としているため、それがなくなれば自然に鎮火した。
「雷撃矢魔術!」
着地したウラボスから容赦なく次なる魔術が繰り出された。
「ぬがぁぁ!」
全身を突き抜ける雷撃にたまらず片膝をつく。
ウラボスの攻撃は止まらない。掲げたウッドロッドをギャヌアの頭へと振り下ろす。
「調子に……のるんじゃねぇ!!」
ギャヌアはウッドロッドを大剣で受け止め、渾身の力で弾き返した。その反動によってウラボスは2、3歩後退する。ウラボスを倒す最大のチャンスの到来にギャヌアは大剣に武具強化魔術を施す。
「ぬうぉぉぉぉ!」
ギャヌアは吼え、大剣を何度も閃かせてはウッドロッドと斬り結ぶ。さすがに、先ほどのように加速魔術を使った連続攻撃は肉体的に厳しく、乱用はできない。それでもウラボスとも互角に渡り合っているように思われる。
「なにを笑ってやがる?」
激しい攻防戦の最中に口角を上げているウラボスに、ギャヌアが訊く。もちろん、攻撃の手を休めずにだ。
「いやいや、あんたが俺の予想よりも遥かにに強かったからさ。だが、まだまだ甘い。その程度じゃ俺を倒すことなんざできないぜ。出直してくるんだな」
「なんだと? そいつぁ、どういう意味だ?」
ギャヌアが聞き返した瞬間、ウラボスは素早く後退した。
「それじゃ、そろそろ決めさせてもらうとしようか!」
言い終わると、ウラボスは瞬時にギャヌアの身体中に打撃を加える。刹那の出来事に何が起きたのか理解が追い付かない。
(くそっ、どうなってやがる!?)
頭、両肩、胸、両肘、脇腹、腰、太股、両膝に凄まじい衝撃と痛みを感じて体勢が崩す。
(加速魔術か! やつには魔力弱化が効いてないのか!?)
そんなことを思わせるほどの強烈の連続攻撃だった。
(こんなとこで終われるか!)
ギャヌアは大剣を横に凪ぎ払い、続いて地面に突き刺して杖代わりにし、どうにか立ち上がった。だが、遅すぎた。
「残念だったな。……雷撃矢魔術!」
すでに攻撃体勢をとっていたウラボスが魔術名を唱えた。何発も連続で発射された雷の矢が次々にギャヌアに命中する。
「ぬぐわぁぁぁぁ!!」
ギャヌアは絶叫をあげた。
(これまで…か……)
ギャヌアは意識が急速に遠退いていくのを感じていたが、もはやどうすることもできなかった。
◎
「やれやれ……」
ギャヌアとの戦闘に勝利したウラボスは廃屋の中へと戻ってきた。窓の外を見れば地面に倒れているギャヌアの姿がある。まだまだ本気ではなかったとはいえ、闘いをこれほどまでに楽しめたのは久しぶりであった。
(あいつ、まだ強くなれるポテンシャルを秘めているよな。その時の再戦が楽しみだ)
期待に自然と笑みがこぼれる。
「リアーナァァァ!!」
その時だ。リャッカの悲痛な叫び声が2階から響いてきた。ウラボスは弾かれたように階段を駆け登った。
奥の部屋の扉は開かれていて騎士ジグーマの姿がある。鎧は返り血を浴びて赤く染まっている。そして、足元にはリアーナとケットシーの姿がある。
ウラボスは廊下を一瞬で移動し、騎士をおもいきり蹴り飛ばした。ジグーマは部屋の奥の棚に激突する。その手からブロードソードが床に滑り落ちる。
「ウラボス?」
リアーナの声がする。
「大丈夫か!?」
ウラボスの問いかけにリアーナは頷く。だが、隣で息絶えているケットシーの亡骸を目にして大きく取り乱す。
ジグーマがリアーナに斬りかかった刹那、ケットシーは自らの危険を省みることなくリアーナを突き飛ばし、身代わりとなって凶刃に倒れたのであった。
「そんなっ!? 私なんかを庇って! どうしよう! ねぇっ! どうすればいいの!?」
激しく動揺し、血まみれのケットシーを抱き抱え、救いを求めるようにウラボスを見る。しかし、いかにウラボスといえども既に絶命した者を蘇生させることはできない。まして、ケットシーは致死量をはるかに越える血液を失っているのだ。
「落ち着け……。残念だけど、そのケットシーを助けることはできない。失った命を無理に戻すことなどできない。いや、あってはならないんだ…」
血まみれのケットシーとリアーナを懐に抱き、優しく諭す。
「でも…でもぉ……」
その胸に顔を埋めて泣きじゃくるリアーナ。隣ではリャッカも大粒の涙を流している。
「今は眠るんだ。…睡眠魔術…」
優しく静かに催眠魔術を詠唱する。リアーナが眠りに落ちたのを確認してそっと床に寝かせる。
「…ウラボ……ス……」
魔術に対して耐性のあるリャッカですらウラボスの催眠魔術には抵抗できず、強烈な睡魔に襲われ、まもなく眠ってしまった。
「くっ…うぅ……」
ウラボスに蹴り飛ばされたジグーマはどうにか立ち上がった。
「く…そ……。冒険…者…ふぜいが!……」
怒りに満ちた視線をぶつけるジグーマであったが、ウラボスが振り返った瞬間、その表情は凍りつく。
「久しぶりだよ。こんなに腹がたったのはいつ以来だろう……」
ウラボスはゆっくりとした歩調でジグーマに近寄っていく。
「ひぃぃっ!」
ジグーマは底知れない恐怖に腰が抜けて座り込む。
「わ、悪かった! 自首して罰を受ける! だから命だけは助けてくれ! 頼む!!」
命乞いをするジグーマを冷たく見下ろす。
「もちろん罰は受けてもらうさ。ただ、おまえを裁くのはケットシーたちだ」
「わかった! おとなしく連中の裁きを受けると約束する!!」
(しめた! ケットシーどもは基本的におとなしい連中だ。反省してる素振りを見せれば大した罪には問われないだろう)
ジグーマは内心ではほくそ笑んでいた。
「ところで、俺がどうしてリアーナとリャッカを眠らせたか、その理由はわかるか?」
不意に投げ掛けられた言葉にジグーマは戸惑う。
「……なぜだ?」
恐る恐る問い返す。ウラボスはフンと鼻を鳴らす。
「簡単なことさ。これから始まる惨劇を見せるのは刺激が強すぎるかと思ったんだ」
「ひぃぃぃぃっ!! まま…待て! いや、待ってください!! 俺を裁くのはケットシーなんだろ!?」
ジグーマはかつて経験したこともないような恐怖に半泣きになる。
「それはおまえが殺したケットシーとこれまでに犠牲になっていったケットシーの分だ。うちのリーダーの分は俺が代行する」
「た、助けてくれぇぇぇ!」
ジグーマは這う這うの体で逃走を試みる。が、武具強化魔術を施されたウッドロッドによって右足の骨を砕かれてしまう。
「ぐぁぁぁぁ!」
ジグーマは絶叫し、床を転げ回る。
「逃がすと思ったか? だが、安心してもいいぞ。俺は命までは奪うつもりはない。あくまでも俺はだがな。おまえをケットシーに引き渡したあとは保障できない。連中はあれで仲間意識が強いからな。極刑もあり得ない話ではないな。まっ、それも身から出た錆ということで諦めろ。……もっとも、その前に俺が制裁してやるのも忘れてもらっちゃ困るけどね」
ウラボスは冷笑を浮かべた。
◎
ジグーマの制裁を終えたウラボスは、魔術弱化の魔法陣を発動させる媒体となっていた2階奥の部屋の照明を破壊した。
「ウニャア……」
「おっ、案外早かったじゃないか」
催眠魔術の効果が解け、目覚めたリャッカに声をかける。
「ウニャッ!?」
覚醒したばかりの脳で状況を整理する。
「あいつはどうなったニャ?」
床で失神しているジグーマを指差して訊く。
「生きてるよ。全身を複雑骨折してはいるけどな」
「そ、そうかニャ。一応は生きてるのかニャ」
いまや鎧はデコボコになり、口から泡を吹いて気絶しているジグーマを見て、ウラボスを本気で怒らすのはよそうと心に決める。
「魔術弱化の魔法陣は無効化したのかニャ」
「ああ。ついさっきな」
「それで、これからどうするニャ?」
リャッカに訊かれ、天井を仰ぐ。
「まずはそこに転がってる外道騎士をケットシーの里に連行する。最終的にそいつを裁く権利は連中にあるからな」
ウラボスの考えに頷いて賛成の意を表す。
「それがいいニャ。こいつには相応の罰が与えられるはずニャ。里へはあたしの瞬間移動魔術で行くニャ」
「頼む」
「任せるニャ。でも、その前にグランザと合流するニャ。それからウラボスとリアーナにも同行してほしいニャ。今回の件では二人に世話になったニャ。是非とも礼をしたいニャ!」
「そんなものは必要ない。そもそも、俺たちはだれも救うことができなかった。うちのリーダーならきっとそう言うだろうさ」
リャッカは微笑した。
「たしかに言いそうニャ。だけど、やっぱり里には来てほしいニャ。ウラボスとリアーナがいなければあいつを捕まえることはできなかったニャ。このまま何もしないなんてケットシーの名折れニャ!」
「まぁ、そういうことならリアーナに判断を委ねるとするか。うちのリーダーだからな」
「わかったニャ。…こいつの仲間はどうしたニャ?」
「それなら縛って1階に転がしてあるよ。一人、逃げられたけどね」
ウラボスが1階へ戻った時、ギャヌアの姿は既に消えていた。
「……ひとつ訊いてもいいかニャ?」
リャッカが改まって訊く。
「なんだよ?」
「ウラボスほどの実力があればなんだってできるニャ。どうしてリアーナについているニャ?」
ウラボスは静かに笑う。
「リアーナにも同じことを言われたよ。理由は単純なものさ。俺はこいつを気に入っている。それだけだ」
返ってきたのは単純明快な答えだった。だが、嘘をついているようには見えない。
今度はリャッカが笑う。
「なんだか納得ニャ。あたしもリアーナは気に入ってるニャ」
「だろ?」
ウラボスとリャッカは互いに顔を見合せて微笑んだ。
◎
「そうですか……。さらわれたケットシーたちはみんな……」
キャルト近郊の森。リアーナが目覚めるのを待ってやってきたウラボスたちと合流したグランザが沈痛の面持ちで力無げに言った。
「…ごめんなさい……」
深々と頭を下げて謝罪するリアーナ。
「そんな! リアーナさんとウラボスさんには感謝してます!」
「こっちはこっちでいろいろと大変だったみたいだな」
恐縮がるグランザに治癒魔術を施し終えたウラボスが言った。周囲の様子から何があったかのおおよその想像はできた。
「はい。できるならだれも殺したくはありませんでした……」
グランザは肩を落として項垂れる。
「しかたないさ。殺らなきゃ殺られていたんだろ?」
「それはそうですけど…」
「そうニャ。グランザが気に病むことないニャ。それよりも早く集まるニャ。瞬間移動魔術するニャ」
リャッカは周りに全員が集まるのを待ってミスリル・ロッドを掲げる。足元に出現した魔法陣が輝きを放った。
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